物理のかぎしっぽ 記事ソース/記憶の変容と忘却の要因について

記事ソース/記憶の変容と忘却の要因について

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記事ソースの内容

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記憶の変容と忘却の要因について
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記憶のはたらき
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記憶は知覚によって得られた周囲の環境についての情報を理解したり、
そこから何かの判断をしたり、その後の行動に反映させるためにそれらの情報を保存しておく必要がある。 
人間は外界を媒介にして成立し、感覚や知覚と違って主体の能動的な構えによっている。
それは記憶が思い出すことによって現在に役立てる働きであるから、
強く言語系の刺激によって媒介されているからであり、
過去の経験を定着、保持するためにも言語系は重要な役割を担っている。
習慣も記憶と同様で憶えていることである。
何年も乗らなかった自転車に乗るための練習は必要ない。
記憶の働きは記銘、保持、再生の3つの過程として考えることができる。
記憶の変容については、カーマイケルらが図形を被験者に提示するときに、言語情報を与え、
再生時に提示された言語情報にしたがって記憶が変わることをあきらかにした。
「亜鉛」と「メガネ」では微妙に図が変わる。また色の記憶でも記銘されたものより、
彩度が高まり鮮やかな色に再生されやすい。
しかし無意味図形にせよ、色にせよ、非言語的に記銘しているとは考えられない。
実験の課題に従って意図的にその特徴を抜き出しているはずである。
対象を意味づけるとおぼえやすい。無意味なものでも意味づけることによって、
被験者独自の価値が生まれるのだと思う。
いっぽう忘却は再生、再認の不能である。主体への意味づけが弱く、
活動に重要な位置を占めないもので、強い刺激による負誘導が原因の場合もあるし、
神経の疲労による場合もある。

楽しかった記憶は侘しい
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エビングハウスは無意味音節を使って、その保持時間を研究した最初の心理学者である。
自分自身を被験者にして3文字からなる無意味つづりを記銘材料にし、
節約法で実験をおこなった。節約法とはたとえば13個の無意味つづりを2回続けて正確に順序通り、
再生できるまで学習し、次に様々な延滞時間を設け、
その無意味つづりを同じレベルまで再学習するのに時間や試行数を節約できたかをみる方法である。
彼によると初めの一日で66%忘れられるが、二日目以降から次第に忘却が減少し、
30日前後でも20%は保持されるという結果をだしている。
エビングハウスの研究にもよるように、忘却率は日がたつにつれ、遅くなる。
しかし忘却の速度は記銘対象の内容と量に関係してくる。
材料の量が増加すると、無意味音節の学習と同じような結果を示す。
また集中学習は記銘材料を多義的な視点から関係づけることがむずかしくなり、
時間間隔を置いた学習より再生率が低くなる。
このように対象の性質が整理された意味のある体験の痕跡は忘却しにくい。
時間を置くことで忘却率が下がるというのは、精密な分化形成が神経細胞の保護制止を取り去るのである。
W.ジェームスの「楽しかった記憶は侘しい、苦しかった記憶は楽しい」という言葉のように
苦しかった思い出は二度とそのような目にはあいたくないという
現在の安心にたっているのでおかしみもあるのだと思う。
しかし、言葉の自家刺激によって意味づけられた記憶はより有効に働くとはいっても、
言語刺激は信号であるから、体験から浮いた紋切り型に機能すると、
その本質的な内容を抜き出すことができない。
また言語系に水路づけられた記憶でも課題の文脈から逸脱することによって有効な働きが機能しない。
したがって記憶とは常に体験との交わりの中でその本質に迫るべく、
分析、総合を意図的に実現することによってより有効になる。
また記憶には干渉説がある。ある対象の記銘に続く類似対象の記銘は先行した記憶を制止する。
また逆に前の記憶がそれに続く記憶を制止する現象がある。このように記憶される対象の前後が記憶を制止させる。
忘却は時間経過によって減衰するのではなく、情報と情報との干渉によって忘却が進んでいくと考えられたのである。
これを順向抑制と呼び、その後に経験した記憶の干渉を遡向抑制と呼ぶ。

@@reference: 亀谷純雄,伝えあい心理学原理,文化書房博文社,2006,p97-p115,4830110767@@
@@author:きり@@
@@accept:2019-12-10@@
@@category:心理学@@
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