物理のかぎしっぽ 査読/運動方程式(M.T著)/1

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\usepackage[top=30truemm,bottom=30truemm,left=25truemm,right=25truemm]{geometry} \title{ニュートンの運動方程式}

\begin{document}

\maketitle

今回はニュートンの運動方程式について解説していきます。公式の使い方というよりも,公式の意味などについての解説を中心に行っていきたいと思います。 ニュートンの運動方程式は運動の第2法則と呼ばれ,力学を学ぶ上では最も大切な公式の1つです。高校物理の教科書でも最初の方に出てくる公式ですね。最初に,公式を示してみましょう。物体の質量を$m$\mathrm{(kg)}, 加速度を$a$\mathrm{(m/s^2)}, 物体に働く力を$F$\mathrm{(N)}とすると

\begin{equation}

 ma = F

\end{equation} と表すことができます\footnote{本来であればベクトル表記するところです。}。公式自体は簡単なので覚えやすいですね。公式の意味としては,ある物体を動かそうと力を加えた際に,重い物体ほど動きにくく止まりにくい,また軽い物体ほど動かしやすく止まりやすいとなります\footnote{教科書によっては(1)式ではなく,

\begin{equation}

 F = ma

\end{equation} という表記がされている場合があります。この違いはどこからくるものなのでしょうか。そもそも物理は現象の因果関係の観察から始まります。現象を数式として表し,それに具体的な数値を当てはめて解を導き出します。物理の公式は基本的に「結果 = 原因」という形で作られています。そのため,左辺に何を書くのか,右辺に何を書くのかはとても重要になります。ニュートンの運動方程式は,物体に力が働いた結果として加速度が生じるという意味ですので,(2)式は厳密に言うと間違いであると思います。「物体に加速が生じた結果,物体に力が働く。つまり加速が力を生む」というのは直感的に考えてもおかしいですよね。もしかしたら教科書会社によっては,式の見やすさを重視して(2)式のような書き方をしているのかもしれませんね。 一昔前にニュースで2×3 = 6と3×2 = 6についての報道がありました。普通のかけ算では両方問題はないのですが,文章題になった際にはかける方とかけられる方とでは意味が異なるため,立式が題意に沿っていなければバツになるそうです。この報道を観たときは,「そんな順番が違うくらいでバツになるなんて小学生も大変だな」と厳密には違うかもしれないけれどマルにしてもいいのではないかと思っていました。しかし,この記事を書いていて,やっぱり式の意味は大切なので立式も厳密に行わなければならないと思いました。}。

実はこの式,みなさんが思っている以上に大切な式です。このニュートンの運動方程式から力学における様々な公式を導くことができます。言わば,力学の原点とも言うべき公式です。ここでみなさんの疑問は,「じゃあ,ニュートンの運動方程式はどうやって導くのだろうか」であると想像します。私はこの話を聞いたときに同じような疑問が浮かびました。結論から言うと,ニュートンの運動方程式は導くことはできないと思います。なぜかというと,(1)式はニュートンが自分自身の経験を式としてまとめた経験則であるためです。つまり,「こんな式になるんじゃないかな?」というような感じで導いた式なのです。この式が本当に合っているのかどうかは,分かりません。しかし,合っていると仮定して導いた様々な力学公式は今現在まで間違った結論を出したことはありません。物理という学問では理論の正しさは実験結果が理論値と一致するかどうかで決まります。今までの実験で間違った結論が出ていないので,ニュートンの運動方程式は正しいであろうということになっています(現段階ではの話です)。

もう少し理解が深めるために少しレベルの高い話をします。上記でニュートンの運動方程式が力学における基本公式だと書きました。これは半分正しくて半分間違っている表現です。大学レベルの教科書になるとニュートンの運動方程式は次のように表されています。 \begin{equation} \[

 \frac{dP}{dt}= F

\] \end{equation}

\footnote{*1と同様}。式の意味としては,「物体の運動量の時間微分は,その瞬間に物体に働く力に等しい」となります。現象で捉えれば,どちらの式も同じ事を言っています。また,(2)式を力学における基本公式として(1)式を導くこともできます(証明は割愛しますが一般的な教科書であれば載っているので調べてみてください)。この式が高校物理の教科書に載らない理由は,数学的な難しさがあるからではないかと思います。基本的に高校物理と高校数学では進度が合わないため,物理教員は授業の初めに数学を教えてその後で物理の話に入るといったことをします。以上の理由から,高校物理では数学的に見やすい運動方程式を採用しているのだと考えます(実際に加速度という概念の考え方も大切なので,加速度を理解するという意味合いもあるのかもしれません)。

今回の解説は以上です。運動方程式を用いた問題演習の解き方は問題集の解説に任せますので,ここでは物理的な概念の方を中心に解説を行いました。

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