物理のかぎしっぽ 記事ソース/フェルミオンの化学ポテンシャル

記事ソース/フェルミオンの化学ポテンシャル

これはrst2hooktailの記事ソース保存・変換用です(詳細).

コンバート

最近コンバートされた結果: HTMLPDFTeX

公開・更新メニュー ▼▲

記事ソースの内容

============================================================
フェルミオンの化学ポテンシャル
============================================================

今回はフェルミオン(特に電子)の化学ポテンシャルがどんなものなのか、
統計力学的、物性論的に考えてみたいと思います。
この話は土井正男『[物理の考え方2]統計力学』朝倉書店、2006年
を参考に書きました。

グランドカノニカル分布
=================================

グランドカノニカル分布とは、系を大きな環境(environment)と着目系(focused system)に分けて、
エネルギーと粒子の交換を許す時の考え方です。

系の総粒子数を $N_t$ 、総エネルギーを $E_t$ とし、
着目系には粒子数 $N$ 、エネルギー $E$ があるとします。
着目系の状態密度は $W(E,N)$ とし、
環境の状態密度は $W^\prime(E_t-E,N_t-N)$ とします。
(なお、この本では状態数 $\Omega$ と状態密度 $W$ は、
共にエントロピーを表すのに、 $S = k_B \ln W = k_B \ln \Omega$ と
等式が成り立つことに言及しています。 )

すると、着目系が $E,N$ となる時の確率 $P(E,N)$ は、

<tex>
P(E,N) &= C_1 W(E,N) W^\prime(E_t-E,N_t-N) \tag{##}
</tex>

と表せます。 ここと、以降でてくる $C_i$ は規格化定数です。ここで、

<tex>
S^\prime(E_t-E,N_t-N) = k_B \ln W^\prime(E_t-E,N_t-N) \tag{##}
</tex>

を使うと、式(1)は、

<tex>
P(E,N) &= C_1 W(E,N) e^{S^\prime(E_t-E,N_t-N)/k_B} \tag{##}
</tex>

となります。 $E_t>>E,N_t>>N$ より、テイラー展開を使って、

<tex>
S^\prime(E_t-E,N_t-N)/k_B = S^\prime(E_t,N_t)/k_B - \dfrac{\partial S^\prime}{\partial E_t}E - \dfrac{\partial S^\prime}{\partial N_t}N
</tex>

ここで、この話の要である公式を使います。環境系の温度を $T$ 、環境系の化学ポテンシャル $\mu$ として、

<tex>
\dfrac{\partial S^\prime}{\partial E_t} &= \dfrac{1}{T} \tag{##} \\
\dfrac{\partial S^\prime}{\partial N_t} &= -\dfrac{\mu}{T} \tag{##}
</tex>

です。よって、

<tex>
S^\prime(E_t-E,N_t-N)/k_B = S^\prime(E_t,N_t)/k_B - \dfrac{E}{k_B T} + \dfrac{N \mu}{k_B T}
</tex>

よって、逆温度 $\beta = \dfrac{1}{k_B T}$ を用いて、式(1)は結局、

<tex>
P(E,N) &= C_2 W(E,N) e^{-\beta (E - N \mu)} \tag{##}
</tex>

これがグランドカノニカル分布の考え方で、ここまでは本の通り、正しいです。

私の拡大解釈
=========================

ここで、私独自の拡大解釈を行います。(もしかしたら常識である可能性もありますが。)

では、これが系の量子力学的一準位が着目系だったらどうでしょう?
その準位のエネルギーを $\varepsilon$ と考えます。
環境系はその系自身で、着目する準位と粒子とエネルギーの交換をするのです。

その規格化定数を $C_3$ とすると、粒子が無い時、粒子がある時の
「確率」は、それぞれ 

<tex>
P(0,0) &= C_3 e^{-\beta(0-0)} = C_3 \tag{##} \\
P(\varepsilon,1) &= C_3 e^{-\beta(\varepsilon - \mu)} \tag{##}
</tex>

ですから、

着目準位に入る粒子数の「期待値」は、
<tex>
\langle n \rangle &= \dfrac{0 \cdot C_3 + 1 \cdot C_3e^{-\beta(\varepsilon - \mu)} }{C_3+ C_3e^{-\beta(\varepsilon - \mu)} } \\
&= \dfrac{1}{e^{\beta(\varepsilon - \mu)}+1} \\
&\equiv f(\varepsilon) \tag{##}
</tex>

そのエネルギーでの状態密度を量子統計力学らしく $D(\varepsilon)$ で表し、
またその系の最低準位を $E_{min}$ とすると、、
総粒子数 $N_t$ 、総エネルギー $E_t$ は、それぞれ、

<tex>
N_t &= \int_{E_{min}}^\infty \dfrac{D(\varepsilon)}{e^{\beta(\varepsilon - \mu)}+1} d \varepsilon \tag{##} \\
E_t &= \int_{E_{min}}^\infty \dfrac{\varepsilon D(\varepsilon)}{e^{\beta(\varepsilon - \mu)}+1} d \varepsilon \tag{##}
</tex>

となります。

粒子数の保存
=============================

ここで、あるエネルギー $x$ を基準にそれ以上にある粒子数 $N_+$ と、それ以下にあるホール数(空孔数) $N_-$ とすると、

<tex>
N_- &= \int_{E_{min}}^x D(\varepsilon)(1-f(\varepsilon)) d \varepsilon \tag{##} \\
N_+ &= \int_{x}^\infty D(\varepsilon) f(\varepsilon) d \varepsilon \tag{##} 
</tex>

ここで、 $N_+=N_-$ となる $x$ があります。よくよく考えるとそれはフェルミエネルギー $E_F$ です。
つまり、全体の粒子数が変わらない限り、フェルミエネルギー以下の粒子が、下にホールを残し、上に励起されて存在する訳ですから、温度がどう変わっても、下のホール数と上の粒子数は同じです。

すると、

<tex>
N_- &= N_+ \tag{##} \\
\int_{E_{min}}^{E_F} D(\varepsilon)(1-f(\varepsilon)) d \varepsilon &= \int_{E_F}^\infty D(\varepsilon) f(\varepsilon) d \varepsilon \tag{##} \\
\int_{E_{min}}^{E_F} D(\varepsilon) d \varepsilon &= \int_{E_{min}}^\infty D(\varepsilon) f(\varepsilon) d \varepsilon \tag{##}
</tex>

当然、これは総粒子数 $N_t$ ですね。

<tex>
N_t &= \int_{E_{min}}^{E_F} D(\varepsilon) d \varepsilon \tag{##} \\
&= \int_{E_{min}}^\infty \dfrac{D(\varepsilon)}{e^{(\varepsilon - \mu)/k_B T}+1} d \varepsilon \tag{##}
</tex>

総エネルギー $E_t$ についても同様に、

<tex>
E_t &= \int_{E_{min}}^{E_F} \varepsilon D(\varepsilon) d \varepsilon \tag{##} \\
&= \int_{E_{min}}^\infty \dfrac{\varepsilon D(\varepsilon)}{e^{(\varepsilon - \mu)/k_B T}+1} d \varepsilon \tag{##}
</tex>

が成立します。変数は、 $N_t,E_t,\mu,T$ の四つであり、二式の条件があるので、 $N_t,E_T$ を指定すれば、 $\mu,T$ が決定されます。


粒子数変化と化学ポテンシャル、温度の関係
=======================================================

最後に定性的な考察をして、終わりましょう。
式(18)について、温度 $T$ を一定にして粒子数 $N_t$ を増大させることは、ドーピングであり、フェルミエネルギー $E_F$ を増大させることになります。ここで、被積分関数で変わりうるのは、フェルミ分布関数 $f(\varepsilon) = \dfrac{1}{e^{(\varepsilon - \mu)/k_B T}+1}$ のみです。化学ポテンシャルの増大は全ての $\varepsilon$ で分布関数の大きさを増大させますから、結局、粒子数の増大は化学ポテンシャルの増大を引き起こします。

余談ですが、金属のフェルミ準位、言い換えて、フェルミ温度 $T_F = E_F/k_B$ は数万ケルビンに相当するそうです。 
そこから言える事は、まずそれ以上の温度がフェルミ統計でなくてもボルツマン統計でも有効となる温度です。また、常温程度では金属はフェルミ縮退を起こしている事が分かり、つまり、温度上昇と共に電子比熱が上昇していくことが分かります。また、純粋な化学ポテンシャルの変化は、フェルミ分布関数の $\varepsilon$ 方向の平行移動となり、純粋な温度下降はフェルミ分布関数の $\mu$ 付近における急激な減少を起こします。また、状態密度の様子によって、温度が変化すると化学ポテンシャルは変化します。絶対零度における化学ポテンシャルの事をフェルミエネルギーと言います。僕の知識ではこの辺が限界です。

それでは、今日はこの辺で。お疲れ様でした。

@@author:クロメル@@
@@accept:2018-03-05@@
@@category:統計力学@@
@@id:chemicalPotential@@
トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Modified by 物理のかぎプロジェクト PukiWiki 1.4.6 Copyright © 2001-2005 PukiWiki Developers Team. License is GPL.
Based on "PukiWiki" 1.3 by yu-ji Powered by PHP 5.2.17 HTML convert time to 0.060 sec.