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記事ソース/グリーン関数を理解しよう(フォトンのグリーン関数)†これはrst2hooktailの記事ソース保存・変換用です(詳細). コンバート公開・更新メニュー ▼▲記事ソースの内容============================================================ グリーン関数を理解しよう(フォトンのグリーン関数) ============================================================ これからいくつかの記事を通して、 物性物理で扱われる絶対零度におけるグリーン関数の理解を目指します。 いくつかの定理などの証明は省略して、要点の俯瞰をする方針で行きます。 参考文献として、下に書くMahan先生の本を挙げて おきます。このシリーズでは $\hbar=1$ とします。 前の記事は ダイソン方程式と自己エネルギー_ です。 この記事が最後です。( 目次_ ) ゲージによるクーロン相互作用とフォトン相互作用の分離 ========================================================== この記事ではフォトンのグリーン関数を求めます。 フォトンには偏光の方向があり、少々厄介なので後回しにしたのです。 スピン無しの電磁相互作用のハミルトニアンの非相対論的極限は、 <tex> H = \sum_i \dfrac{1}{2m} \left[ \bm{p}_i - \dfrac{e_i}{c} \bm{A}(\bm{r}_i) \right]^2 + \dfrac{1}{2} \sum_{i \neq j} \dfrac{e_ie_j}{r_{ij}} + \sum_{\bm{k} \lambda} \omega_{\bm{k} \lambda} a^\dagger_{\bm{k} \lambda} a_{\bm{k} \lambda} \tag{##} </tex> となります。以下では $\mu$ や $\nu$ は $1,2,3$ もしくは $x,y,z$ を表すものとします。 $\lambda$ は偏光の自由度です。 ベクトルポテンシャル $A$ は、 <tex> \dfrac{1}{c} A_\mu &= \dfrac{1}{\sqrt{v}} \sum_{\bm{k} \lambda} e^{i \bm{k} \cdot \bm{r}} A_\mu(\bm{k},\lambda,t) \\ A_\mu(\bm{k},\lambda,t) &= \left( \dfrac{2 \pi}{\omega_{\bm{k}}} \right) \xi_\mu(\bm{k},\lambda) (a_{\bm{k} \lambda} e^{-i\omega_k t}+a^\dagger_{-\bm{k} \lambda} e^{i\omega_k t}) \tag{##} </tex> となります。生成消滅演算子 $a^\dagger_{\bm{k} \lambda},a_{\bm{k} \lambda}$ はボゾンの演算子です。 $\bm{k}$ はフォトンの進行方向を向く波数ベクトル、 $\lambda$ は偏光の自由度を表すラベルで、 $\xi_\mu(\bm{k},\lambda)$ はそれらから指定される実際の変更方向を表すベクトルです。クーロン相互作用とフォトン相互作用は本来同じ相互作用であり、ゲージを設定したことで分離されます。ここでは、クーロンゲージ $\nabla \cdot \bm{A} = \bm{0}$ を用いることで、スカラーポテンシャル $\psi$ がクーロン相互作用、ベクトルポテンシャル $\bm{A}$ がフォトン相互作用にそれぞれ対応するようになります。真空中のスカラーポテンシャル <tex> \psi_0(r) = \dfrac{e^2}{r} \tag{##} </tex> はグリーン関数 <tex> v_q = \dfrac{4 \pi e^2}{q^2} \tag{##} </tex> を持ちます。この相互作用は今回の話では瞬間的に伝わる(遠隔作用)という近似をします。 このグリーン関数は既に ウィックの定理_ で出てきています。 実際これは縦方向(波数ベクトルの方向)ポテンシャルのグリーン関数なのです。 この瞬間に伝わる性質から、周波数依存性はありません。 ファノン相互作用で相互作用する二つの電子はフォノングリーン関数 $D^{(0)}(\bm{q},\omega)$ と頂点 $|M_{\bm{q}}|^2$ に対して、 <tex> |M_{\bm{q}}|^2 D^{(0)}(\bm{q},\omega) \tag{##} </tex> で表されました。これに対応して、電子電子相互作用では、 $\dfrac{4 \pi}{r^2}$ がグリーン関数であり、頂点は $e^2$ を表すと見なすことが出来ます。このどちらもグリーン関数として扱われるのです。それならば、ダイソン方程式がクーロン相互作用にも適用できるはずです。 <tex> v_q(\omega) = \dfrac{v_q}{1 - v_q P(\bm{q},\omega)} \tag{##} </tex> 因子 $P(\bm{q},\omega)$ は自己エネルギー、もしく偏極演算子です。ここから簡単に引き出せる議論があります。 等方的な誘電率 $\varepsilon$ を持った一様媒質中のマクスウェル方程式を考えます。 <tex> \nabla \cdot \bm{B} &= \bm{0} \\ \nabla \times \bm{E} &= \bm{0} \\ \varepsilon \nabla \cdot \bm{E} &= 4 \pi \rho \\ \nabla \times \bm{B} &= \dfrac{\varepsilon}{c} \dfrac{\partial}{\partial t} \bm{E} + \dfrac{4 \pi}{c} \bm{j} \tag{##} </tex> これらを解くと、ポテンシャルを使って次の様に表せます。 <tex> \psi(\bm{r}) &= \dfrac{1}{\varepsilon} \int \dfrac{d^3 r^\prime \rho(\bm{r}^\prime)}{|\bm{r}-\bm{r}^\prime|} \\ \nabla^2 \bm{A} - \dfrac{\varepsilon}{c^2} \dfrac{\partial^2}{\partial t^2} \bm{A} &= - \dfrac{4 \pi}{c} \bm{j} \tag{##} </tex> 最初の式を電荷密度を点電荷 $\rho(\bm{r}^\prime) = \delta(\bm{r}^\prime)$ として $\bm{r}$ でフーリエ変換すると、 <tex> \bar{v}_q = \dfrac{v_q}{\varepsilon} \tag{##} </tex> となります。これを式 $(6)$ と式 $(9)$ と比較することで、 <tex> \varepsilon(\bm{q},\omega) = 1 - v_q P(\bm{q},\omega) \tag{##} </tex> ここでは $\bm{q},\omega$ 依存性を含むように一般化しました。 この式は縦方向誘電関数の定義式になります。 クーロンポテンシャルの自己エネルギー部分から求まるのです。 フォトンの相互作用の形 ========================== ここで非摂動の相互作用 $V$ の形を求めておきましょう。フォトンの場合、これは式 $(1)$ の運動エネルギーに相当する部分からで二つあります。 <tex> \dfrac{e}{c}\sum_i \bm{j}(\bm{r}_i) \cdot \bm{A}(\bm{r}_i) &= \dfrac{e}{c} \sum_{\bm{q} \mu} j_\mu(\bm{q}) A_\mu(\bm{q}) \\ &= \dfrac{e}{mc} \sum_{\bm{q} \mu} A_\mu(\bm{q}) \sum_{\bm{k} \sigma}(\bm{k} + \dfrac{1}{2} \bm{q})_\mu C^\dagger_{\bm{k}+\bm{q},\sigma} C_{\bm{k} \sigma} \tag{##} </tex> と <tex> \dfrac{e^2}{2mc^2}\sum_i \bm{A}(\bm{r}_i)^2 &= \dfrac{e^2}{2m} \sum_{\bm{q} \bm{k} \mu} \rho(\bm{q}) A_\mu(\bm{k}) A_\mu(\bm{q} - \bm{k}) \tag{##} </tex> です。 $\rho$ は荷電粒子密度です。 フォトンのグリーン関数 ========================== ベクトルポテンシャルのグリーン関数(フォトンのグリーン関数)の表式は、 <tex> D_{\mu \nu}(\bm{k},t-t^\prime) = -i \sum_\lambda \langle | T A_\mu(\bm{k},\lambda,t) A_\nu(-\bm{k},\lambda,t^\prime) |\rangle \tag{##} </tex> となります。 $\lambda$ の和は光子の横方向(波数ベクトル $\bm{k}$ に対する2つの垂直方向)成分の和です。 $\xi_\mu$ はそれぞれの成分の偏光ベクトルになります。絶対零度における自由なグリーン関数は $| \rangle_0$ と $_0 \langle |$ を光子の真空として、次で表されます。 <tex> D^{(0)}_{\mu \nu}(\bm{k},t-t^\prime) &= \dfrac{-2 \pi i}{\omega_{\bm{k}}} \sum_\lambda \xi_\mu(\bm{k},\lambda) \xi_\nu(-\bm{k},\lambda) \ _0\langle | T [(a_{\bm{k} \lambda} e^{-i\omega_k t}+a^\dagger_{-\bm{k} \lambda} e^{i\omega_k t})] \\ &\times [(a_{-\bm{k} \lambda} e^{-i\omega_k t^\prime}+a^\dagger_{\bm{k} \lambda} e^{i\omega_k t^\prime})] |\rangle_0 \\ &= \dfrac{-2 \pi i}{\omega_{\bm{k}}} \sum_\lambda \xi_\mu \xi_\nu [ \Theta(t-t^\prime) e^{-i \omega_k (t-t^\prime)} \ _0\langle | a_{\bm{k} \lambda} a^\dagger_{\bm{k} \lambda} | \rangle_0 \\ &+ \Theta(t^\prime-t) e^{i \omega_k (t-t^\prime)} \ _0\langle | a_{-\bm{k} \lambda} a^\dagger_{-\bm{k} \lambda} | \rangle_0 ] \\ &= \dfrac{-2 \pi i}{\omega_{\bm{k}}} e^{-i \omega|t-t^\prime|} \sum_\lambda \xi_\mu \xi_\nu \tag{##} </tex> ここで、 $\xi$ は $\bm{k}$ に依存しないことを使い、 $\lambda$ を省略しました。 そのフーリエ変換は、 <tex> D^{(0)}_{\mu \nu}(\bm{k},\omega) &= \int_{-\infty}^\infty dt e^{i \omega(t-t^\prime)} D^{(0)}_{\mu \nu}(\bm{k},t-t^\prime) \\ &= \dfrac{4 \pi}{\omega^2-\omega^2_{\bm{k}} + i \delta} \sum_\lambda \xi_\mu \xi_\nu \tag{##} </tex> ここで $\sum_\lambda \xi_\mu \xi_\nu$ がよく分からないのではないでしょうか。 これはベクトルのダイアド積と言います。その性質は何らかのベクトル $\bm{V}$ を用いて、 <tex> \xi_\mu \xi_\nu \bm{V} &= | \xi_\mu \rangle \langle \xi_\nu | V_\nu \rangle \\ &= (\xi_\nu \cdot \bm{V}_\nu) \xi_\mu \tag{##} </tex> が成立します。さて、単位テンソルは次のようになります。 <tex> \delta_{\mu \nu} = \hat{x} \hat{x} + \hat{y} \hat{y} + \hat{z} \hat{z} \tag{##} </tex> テンソルは座標系に依らないので、 $\hat{k} = \bm{k}/|\bm{k}|$ を使っても、 <tex> \delta_{\mu \nu} = \sum_\lambda \xi_\mu \xi_\nu + \hat{k} \hat{k} \tag{##} </tex> となります。 これを行列として具体的に考えてみましょう。 $k_1^2 +k_2^2 +k_3^2 = 1$ として、例えば <tex> \hat{k} = \begin{pmatrix} k_1 \\ k_2 \\ k_3 \end{pmatrix} \tag{##} </tex> とします。よって、 $\xi_1$ の $z$ 成分をゼロとおく計算で、 <tex> \xi_{\lambda=1} &= \xi_1 \\ &= \dfrac{1}{\sqrt{k_1^2+k_2^2}} \begin{pmatrix} k_2 \\ -k_1 \\ 0 \end{pmatrix} \tag{##} </tex> <tex> \xi_{\lambda=2} &= \xi_2 \\ &= \dfrac{1}{\sqrt{k_1^2+k_2^2}} \begin{pmatrix} k_3 k_2 \\ k_3 k_1 \\ -k_1^2 - k_2^2 \end{pmatrix} \tag{##} </tex> と出来ます。 <tex> \xi_1 \xi_1 + \xi_2 \xi_2 &= \dfrac{1}{(\sqrt{k_1^2+k_2^2})^2} \begin{pmatrix} k_2 \\ -k_1 \\ 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} k_2 & -k_1 & 0 \end{pmatrix} + \dfrac{1}{(\sqrt{k_1^2+k_2^2})^2} \begin{pmatrix} k_3 k_2 \\ k_3 k_1 \\ -k_1^2 - k_2^2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} k_3 k_2 & k_3 k_1 & -k_1^2 - k_2^2 \end{pmatrix} \\ &= \dfrac{1}{(\sqrt{k_1^2+k_2^2})^2} \begin{pmatrix} k_2^2 & - k_1k_2 & 0 \\ - k_1k_2 & k_1^2 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} + \dfrac{1}{(\sqrt{k_1^2+k_2^2})^2} \begin{pmatrix} k_3^2 k_2^2 & k_3^2 k_1 k_2 & -k_3 k_1(k_1^2+k_2^2) \\ k_3^2 k_1 k_2 & k_3^2 k_2^2 & -k_3 k_2(k_1^2+k_2^2) \\ -k_3 k_1(k_1^2+k_2^2) & -k_3 k_2(k_1^2+k_2^2) & (k_1^2+k_2^2)^2 \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} k_2^2 + k_3^2 & -k_1 k_2 & -k_1 k_3 \\ -k_2 k_1 & k_3^2 + k_1^2 & -k_2 k_3 \\ -k_3 k_1 & -k_3 k_2 & k_1^2+k_2^2 \end{pmatrix} \\ &= \delta_{\mu \nu} - \hat{k} \hat{k} \tag{##} </tex> となります。一般の場合は、 $\hat{k}$ を軸とした回転行列 $R_{\mu \nu}$ として $\xi_\mu \to R_{\mu \nu} \xi_\nu$ とすれば同じ結果が得られます。 $R^T R = \delta_{\mu \nu}$ だからです。 話がそれましたが、これで式 $(15)$ が求まりました。 $k = |\bm{k}|$ として <tex> D^{(0)}_{\mu \nu}(\bm{k},\omega) = \dfrac{4 \pi[\delta_{\mu \nu} - k_\mu k_\nu /k^2]}{\omega^2-\omega^2_{\bm{k}} + i \delta} \tag{##} </tex> です。これをフォトングリーン関数と呼びます。 忘れないで欲しいのは、これは採用するゲージの条件により変わってくると言う事です。 クーロンゲージの採用により、「フォトン」はベクトルポテンシャル部分に決定されます。 フォトンのグリーン関数もまたダイソン方程式に従います。しかし、この場合行列(2階テンソル)の量なので 添え字の扱いには気を付ける必要があります。電子のグリーン関数は、 <tex> G(\bm{p},E) &= G^{(0)}(\bm{p},E) + G^{(0)}(\bm{p},E) \Sigma(\bm{p},E) G(\bm{p},E) \tag{##} </tex> これはスカラー関数でしたから、 <tex> G(\bm{p},E) &= \dfrac{G^{(0)}(\bm{p},E)}{1 - G^{(0)}(\bm{p},E) \Sigma(\bm{p},E)} \tag{##} </tex> 一方、フォトングリーン関数は、 <tex> D_{\mu \nu} &= D^{(0)}_{\mu \nu} + \sum_{\lambda \delta} D^{(0)}_{\mu \lambda} \pi_{\delta \lambda} D_{\delta \nu} \tag{##} </tex> を満たします。ここで $\pi_{\delta \lambda}(\bm{k},\omega)$ は3×3行列の自己エネルギーです。それぞれの項は $(\bm{k},\omega)$ の関数です。しかしながら、一様媒質ではすべての行列量は、 <tex> D^{(0)}_{\mu \nu} &= \left( \delta_{\mu \nu} - \dfrac{k_\mu k_\nu}{k^2} \right)D^{(0)} \\ D_{\mu \nu} &= \left( \delta_{\mu \nu} - \dfrac{k_\mu k_\nu}{k^2} \right)D \\ \pi_{\mu \nu} &= \delta_{\mu \nu} \pi^{(1)} + \dfrac{k_\mu k_\nu}{k^2} \pi^{(2)} \tag{##} </tex> と書けます。 $D^{(0)},D,\pi^{(1)},\pi^{(2)}$ はスカラー量です。 ここで、行列積部分を抜き出すと、 <tex> \sum_{\lambda \delta} &(\delta_{\mu \lambda} - \hat{k}_\mu \hat{k}_\lambda) (\delta_{\delta \lambda} \pi^{(1)} + \hat{k}_\delta \hat{k}_\lambda \pi^{(2)}) (\delta_{\delta \nu} - \hat{k}_\delta \hat{k}_\nu) \\ &= (\delta_{\mu \nu} - \hat{k}_\mu \hat{k}_\nu)\pi^{(1)} \tag{##} </tex> よって、フォトングリーン関数にはスカラーのダイソン方程式があって、 <tex> D &= \dfrac{D^{(0)}}{1-D^{(0)} \pi^{(1)}} \\ D &= \dfrac{4 \pi [\delta_{\mu \nu} - k_\mu k_\nu /k^2]}{\omega^2-\omega^2_{\bm{k}}-4 \pi \pi^{(1)}} \tag{##} </tex> つまり、フォトン自己エネルギーでは横成分はその縦成分 $\hat{k}_\delta \hat{k}_\lambda \pi^{(2)}$ には依存しません。実際の媒質では、一様と言うよりは周期的ですがもう少し複雑になります。その時には式 $(26)$ から始めて、実際に成分 $D_{\mu \nu}$ を求めて計算します。 誘電関数が $\varepsilon$ の一様媒質で、式 $(8)$ のベクトルポテンシャルの方を考えます。時間の二階微分が $\varepsilon$ 倍されます。これはグリーン関数に $\omega^2$ の寄与をするので、正しいグリーン関数は、 <tex> D_{\mu \nu} = \dfrac{4 \pi [\delta_{\mu \nu} - k_\mu k_\nu /k^2]}{\varepsilon \omega^2 - \omega_{\bm{k}}^2 + i \delta} \tag{##} </tex> です。これをダイソン方程式に入れて $\varepsilon$ を求めると、 <tex> \varepsilon = 1 - \dfrac{4 \pi}{\omega^2}\pi^{(1)}(\bm{k},\omega) \tag{##} </tex> しかし、これが何らかの結晶だと誘電率はテンソルになり、この議論は成立しません。 結晶中では、 <tex> \lim_{\bm{k} \to \bm{0}} \varepsilon_{\mu \nu}(\bm{k},\omega) \to \delta_{\mu \nu} \left[ 1 - \dfrac{4 \pi}{\omega^2} \pi^{(1)} (\bm{k},\omega) \right] \tag{##} </tex> となります。 おまけ =================== 縦とか横とかよく分からなかった方の為に補足しておきます。 ダイアド積、もしくは行列 $k_\mu k_\nu /k^2$ は任意のベクトル $V_\nu$ に作用することで、 <tex> \dfrac{k_\mu k_\nu}{k^2} V_{\nu} = (\bm{k}/k \cdot \bm{V}) (\bm{k}/k) = \dfrac{| \bm{k} \rangle \langle \bm{k} |}{k^2} \tag{##} </tex> となります。 これは、ベクトル $\bm{V}$ に含まれる $\bm{k}$ 軸方向の成分です。これを縦と呼んでいます。 当然、これを $\bm{V}$ から引いた残りのものは横成分となります。 グリーン関数の解釈 ========================= それを踏まえて、グリーン関数 $D_{\mu \nu}$ の意味を考えておきましょう。 $| \mu \rangle ,| \nu \rangle$ などは基本ベクトルです。つまり、 $x,y,z$ 方向を向いた単位ベクトルです。グリーン関数の定義である式 $(13)$ を再び書いておくと、 <tex> D_{\mu \nu}(\bm{k},t-t^\prime) = -i \sum_\lambda \langle | T A_\mu(\bm{k},\lambda,t) A_\nu(-\bm{k},\lambda,t^\prime) |\rangle \tag{##} </tex> 他のグリーン関数とやっていることは基本的には同じです。 $t>t^\prime$ として、全ハミルトニアン $H$ の基底状態 $t=0$ を $t^\prime$ まで時間発展させ、波数 $\bm{k}$ のフォトンを作り出す、もしくは、 $-\bm{k}$ を消す。そこからさらに $t$ まで時間発展させ、 $| e^{-iH(t-t^\prime)} A_\nu(-\bm{k}) e^{-iH t^\prime} | \rangle$ となる。もう一方で、同じく基底状態を $t$ まで時間発展させてから 波数 $\bm{k}$ のフォトンを作り出す、もしくは、 $-\bm{k}$ を消す。すると、 $|A_\mu(-\bm{k}) e^{-iHt} | \rangle$ となる。後者の中にある前者との共通の状態の確率振幅がグリーン関数です。 この時、フォトンがベクトルとしての量であるために偏光を持ち、グリーン関数には添え字が付きます。 この「おまけ」の議論から、恒等演算子を $\hat{I}$ とすると、 <tex> \hat{I} - \dfrac{| \bm{k} \rangle \langle \bm{k} |}{k^2} \tag{##} </tex> は $\bm{k}$ に直交する二次元空間(偏光面)への射影演算子であることが分かります。 これを $\langle \mu |$ と $| \nu \rangle$ で挟みます。すると、 <tex> &\langle \mu | \hat{I} - \dfrac{| \bm{k} \rangle \langle \bm{k} |}{k^2} | \nu \rangle \\ &= \delta_{\mu \nu} - (k_\mu k_\nu/k^2) \tag{##} </tex> となり、これはまさに $D_{\mu \nu}$ や $D^{(0)}_{\mu \nu}$ のテンソル部分です。 つまり、スカラーだった時のボゾンのグリーン関数 $\dfrac{4 \pi}{\omega^2 - \omega^2_{\bm{k}} + i \delta}$ に $|\nu \rangle$ の方向を持たせ、偏光面に射影する。そして、その射影によって生じる $| \mu \rangle$ の成分量を掛けたものがフォトングリーン関数と言う事になります。 つまり、この式 $(36)$ は何らかの(必ずしも偏光面にはない)ベクトル量 $\bm{V}$ に掛かることを想定していて、まずそのベクトルを $| \nu \rangle (\nu = x,y,z)$ 方向へ分解し、それぞれの $x,y,z$ 成分が偏光する(波数ベクトル方向を除く)ことでどれだけ $|\mu \rangle$ へ寄与するかを表しているのだと思います。 .. image :: chromel-studyGreen07-01.png ただし、これは等方媒質中の話です。一般には誘電関数 $\varepsilon$ がテンソル $\varepsilon_{\mu \nu}$ に変わり、それぞれの成分を式 $(30)$ に入れて計算すると言う事のようです。 時間順序が逆の場合は、 $t$ と $t^\prime$ 、 $\mu$ と $\nu$ が入れ替わった状態で同様の確率振幅になっています。その際、ボゾンゆえ符号は変わりません。 これで一連のグリーン関数の記事は終わりです。お疲れ様でした。 .. _目次: http://hooktail.sub.jp/quantum/studyGreenIndex/ .. _ウィックの定理: http://hooktail.sub.jp/quantum/studyGreen04/ .. _ダイソン方程式と自己エネルギー: http://hooktail.sub.jp/quantum/studyGreen06/ @@reference: Gerald D.Mahan, Many-Particle Physics Third Edition (Physics of Solids and Liquids), Springer, 2010, Chap2, 1441933395@@ @@author:クロメル@@ @@accept:2020-05-16@@ @@category:量子力学@@ @@id:studyGreen07@@ |