物理のかぎしっぽ 記事ソース/行列Aと逆行列A^{-1}の積を入れ替えるとどうなるか? の変更点

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 行列Aと逆行列A^{-1}の積を入れ替えるとどうなるか?
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 今回の話は短いです。気楽にお読みください。
 
 逆行列は左から掛けても右から掛けても同じ?
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 n次の正則な(つまり、逆行列を持つ)行列 $ A $ とその逆行列 $ A^{-1} $ の積は定義から、
 
 <tex>
 A^{-1}A=I  \tag{##}
 </tex>
 
 です。 $I$ はn次の単位行列です。
 ここで、私が気になったのは、
 
 <tex>
 AA^{-1}=?  \tag{##}
 </tex>
 
 の値はどうなるかです。ここで、左からの逆行列を $L$ 
 右からの逆行列を $R$ とします [*]_ 。
 
 .. [*] ここで注意しておくと $A$ が正則な時、列基本変形(右から掛ける変形)のみ、
  もしくは、行基本変形(左から掛ける変形)のみで単位行列に変形できる
  (詳しくは参考文献の第2章[4,4]参照。)ので、 $L$ が存在するなら $A$ は正則となり $R$ も存在するし、 $R$ が存在するならやはり $A$ が正則となり $L$ も存在します。と、いいたいところですが、この引用には一つ難点があります。それは、[4,4]の証明の中で、基本変形行列とその逆行列の可換性が仮定されていることです。基本変形行列には、逆行列が存在することは仮定しなければなりません。もっといい証明法をご存知の方は是非クロメルまでメールを送ってください (^^; 。
  (詳しくは参考文献の第2章[4,4]参照。)ので、 $L$ が存在するなら $A$ は正則となり $R$ も存在するし、 $R$ が
  存在するならやはり $A$ が正則となり $L$ も存在します。と、いいたいところですが、この引用には一つ難点があります。
  それは、[4,4]の証明の中で、基本変形行列とその逆行列の可換性が仮定されていることです。基本変形行列には、
  逆行列が存在することは仮定しなければなりません。もっといい証明法をご存知の方は是非クロメルまでメールを送って
  ください (^^; 。
 
 
 
 つまり、
 
 <tex>
 LA=AR=I
 </tex>
 
 です。すると、
 
 <tex>
 L=LI=L(AR)=LAR=(LA)R=IR=R
 </tex>
 
 となり、結局、 $L=R$ が結論されます。
 よって、これを $A^{-1}$ と呼べるわけです。
 
 直交行列での実例
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 例えば、 $A^{-1}A=I$ となるように作られた、
 
 <tex>
 A = \begin{pmatrix}
 \dfrac{1}{\sqrt{2}} & \dfrac{1}{\sqrt{3}} & \dfrac{1}{\sqrt{6}} \\
 0 & \dfrac{1}{\sqrt{3}} & -\dfrac{2}{\sqrt{6}} \\
 -\dfrac{1}{\sqrt{2}} & \dfrac{1}{\sqrt{3}} & \dfrac{1}{\sqrt{6}} 
 \end{pmatrix}  \tag{##}
 </tex>
 
 という直交行列に対し、
 
 <tex>
 AA^{-1} &=
 \begin{pmatrix}
 \dfrac{1}{\sqrt{2}} & \dfrac{1}{\sqrt{3}} & \dfrac{1}{\sqrt{6}} \\
 0 & \dfrac{1}{\sqrt{3}} & -\dfrac{2}{\sqrt{6}} \\
 -\dfrac{1}{\sqrt{2}} & \dfrac{1}{\sqrt{3}} & \dfrac{1}{\sqrt{6}} 
 \end{pmatrix}
 \begin{pmatrix}
 \dfrac{1}{\sqrt{2}} & 0 & -\dfrac{1}{\sqrt{2}} \\
 \dfrac{1}{\sqrt{3}} & \dfrac{1}{\sqrt{3}} & \dfrac{1}{\sqrt{3}} \\
 \dfrac{1}{\sqrt{6}} & -\dfrac{2}{\sqrt{6}} & \dfrac{1}{\sqrt{6}} 
 \end{pmatrix} \\
 &= \begin{pmatrix}
 \dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{6} & \dfrac{1}{3} - \dfrac{2}{6} & -\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{6} \\
 \dfrac{1}{3} - \dfrac{2}{6} & \dfrac{1}{3} + \dfrac{4}{6} & \dfrac{1}{3} - \dfrac{2}{6} \\
 -\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{6} & \dfrac{1}{3} - \dfrac{2}{6} & \dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{6}
 \end{pmatrix} \\
 &=\begin{pmatrix}
 1 & 0 & 0 \\
 0 & 1 & 0 \\
 0 & 0 & 1
 \end{pmatrix}\\
 &=I \tag{##}
 </tex>
 
 と確かに $AA^{-1} =I$ が成立しています。
 これは、私は理屈では分かるのですが、
 とても不思議だと思っています。
 
 それでは、今日はこの辺で。
 
 @@reference: 齋藤正彦,線型代数入門,東京大学出版会,1966,p52,4130620010@@
 
 @@author:クロメル@@
 @@accept:2012-07-24@@
 @@category:物理数学@@
 @@id:comAA-1@@
 
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