Illustratorで数式を使いたいとき,簡単な数式なら, IllustratorでTeXフォント の方法のように,フォントの設定のみで表現可能です.しかし,分数や積分記号など複雑な場合は難しいので, TeXで書いた数式をepsに変換してIllustratorに取り込めばきれいにできます.例として のような画像をつくってみたいと思います. TeXで数式を書く 最初にTeXで数式をつくっておきます.後でアウトライン化するために,大きいサイズで書きます. \documentclass[30pt]{jsarticle} \pagestyle{empty} \begin{document} \[ i\hbar\frac{\partial\psi}{\partial t} =-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2\psi}{\partial x^2}+V(x,t)\psi \] \end{document} フォントサイズ30ptの設定をするにはjsarticleクラスが必要です.このTeXソースを通常の方法でコンパイルしておきます.ちなみにこれは1次元のシュレーディンガー方程式です. epsファイルをつくる TeXで書いた数式をepsに変換するにはつぎのコマンドで行います. dvips -Ppdf -E eq -o eq.eps アウトライン化 さらに,epsをアウトライン化するにはつぎのコマンドを打ちます. Windowsでは gswin32c -q -sDEVICE=epswrite -sOutputFile=eq_outline.eps -dNOPAUSE -dBATCH -dSAFER eq.eps Linuxでは eps2eps eq.eps eq_outline.eps です.アウトライン化する際,文字が小さいとビットマップになってしまいます.今のように30ptでTeX文書をつくっておけば大丈夫です.アウトライン化した後,バウンディングボックスがおかしくなるので,気になる場合はアウトライン化する前のepsファイルの%%BoundingBox:の行と置き換えます. バッチファイル これらの処理をWindows上で一括して行うには,バッチファイルをつくるといいです.たとえば tex2eps_outline.bat という名前のテキストファイルをつくっておいて,それに以下を書き込みます. dvips -Ppdf -E eq -o eq.eps gswin32c -q -sDEVICE=epswrite -sOutputFile=eq_outline.eps -dNOPAUSE -dBATCH -dSAFER eq.eps つくったバッチファイルはTeXソースと同じフォルダに置いておきます. 後はこのファイルをダブルクリックすれば, eq.epsとeq_outline.epsというファイルができあがります. ここでつくったファイルを以下に置いておきます. * tex2eps_outline.bat * eq.eps * eq_outline.eps Illustratorに配置 「ファイル」メニュー→「新規」で新規書類をつくっておき,「ファイル」メニュー→「配置」からepsファイルを読み込みます.このとき「リンク」にチェックが入っていればリンク画像に,チェックを外せば埋め込み画像になります. epsに変換しただけのファイルを読み込んだ場合,フォントデータの配置として読み込まれます. アウトラインを取ったepsファイルの場合は,ベクタデータとして読み込まれます. ここではベクタデータとして読み込んだものを使います. 画像の加工 ここからはIllustratorの機能を使った,簡単な画像加工の方法を紹介します.まず,先ほど読み込んだベクタデータは,レイヤー1内のグループとして取り込まれています. レイヤー1をレイヤーパレット内の「新規レイヤーを作成」アイコンにドラッグして,レイヤーごとコピーします. レイヤーパレットの目のアイコンをクリックして,コピーしたレイヤーを非表示にしておきます. レイヤー1を選択して,「効果」メニュー→「ぼかし」→「ガウス」をデフォルトの設定で適用します. 適当に色を変えます. 色を濃くするため,このレイヤーをコピーして二重にします. ぼかしたレイヤーを非表示にし,最初にコピーした,効果を加えていないレイヤーを表示させます. 選択ツールで選択して,塗りを白にします. すべてのレイヤーを表示させれば 完成です. これは一例でしたが,TeXの数式をベクタデータで処理することによって,工夫しだいでいろいろできそうです.グラフや説明図に数式を書きこむ際にも便利です. 参考 * 日本語TeX情報: TeXの数式をDTPソフトに