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=====================
偏微分方程式を解く
=====================
量子力学の主役「シュレディンガー方程式」をはじめ,物理で...
この方程式の解き方をなんとかマスターしようということで,...
1次元波動方程式の例題
------------------------
いまから解いてみるのは1次元波動方程式
.. _eq1:
<tex>
\frac{\partial^2u(x,t)}{\partial t^2} = c^2\frac{\partial...
</tex>
です.ここで $c$ は波の速さで,正の定数です.
偏微分方程式を完全に解くには境界条件と初期条件が必要です...
.. _eq2:
境界条件 : $\qquad u(0,t)=u(1,t)=0 \tag{2}$
.. _eq3:
初期条件 : $\frac{\partial u(x,0)}{\partial t}=0 ,\quad ...
を課しておきます.波動方程式という名前は凄そうですが,た...
$u(x,t)$ が波の関数で,これに境界条件と初期条件を付け加え...
この波がどんな運動をしているのかを知ることができます.
つまり「解く」というのは `式(1)`_ を $u(x,t)=$ の形にする...
ところで,波の運動というのがイマイチわかりません. $u(x,t...
$u(x,t)=$ という形になっていたら, $x$ と $t$ を代入する...
つまり波がいつ(時間 $t$ ),どこで(位置 $x$ )どんな高...
そうすると,たとえば初期状態から $x=3.5$ メートルの場所で...
$x=-10.2$ メートルの場所で $5.9$ 秒後の波の高さは $2.1$ ...
これらを全部ひっくるめてあるのが波動方程式で,様々な条件...
での波を導き出す操作が波動方程式を解く,ということになり...
まずは変数分離
-----------------
$x$ と $t$ の2つの変数がある偏微分方程式では難しいので,...
変数を分離するには, $u(x,t)$ の解として
<tex>
u(x,t)=f(x)g(t)
</tex>
を代入するのが定石です.実際に波動方程式に代入すると
<tex>
\frac{\partial^2 f(x)g(t)}{\partial t^2}=c^2\frac{\partia...
</tex>
となります.左辺は $t$ で偏微分してあるので $x$ の関数は...
だから $x$ の関数である $f(x)$ を偏微分から出しておきます.
<tex>
f(x)\frac{\partial^2 g(t)}{\partial t^2}=c^2\frac{\partia...
</tex>
同様に右辺は $g(t)$ を偏微分から出しておきます.
<tex>
f(x)\frac{\partial^2 g(t)}{\partial t^2}=c^2g(t)\frac{\pa...
</tex>
左辺は $t$ の関数,右辺は $x$ の関数にまとめたいので,
両辺を $f(x)g(t)$ で割ります.ついでに $c^2$ も移動すると
<tex>
\frac{1}{c^2g(t)}\frac{\partial^2 g(t)}{\partial t^2}=\fr...
</tex>
となります.さて,この式は何を意味しるんでしょうか? 左側...
両辺がイコールで結ばれているので「 $t$ だけ変化しても, $...
そんなことが起きるのは両辺が定数のときだけです.
定数なら $x$ だけ変わろうが $t$ だけ変わろうが, $x$ と $...
そこで,この両辺を
<tex>
\frac{1}{c^2g(t)}\frac{\partial^2 g(t)}{\partial t^2}
=\frac{1}{f(x)}\frac{\partial^2 f(x)}{\partial x^2}=\lambda
</tex>
というふうに定数 $\lambda$ と等しいとします(この定数は変...
するとこの式は,つぎのように簡単に2つに分けることができま...
.. _eq4:
<tex>
\frac{1}{c^2g(t)}\frac{\partial^2 g(t)}{\partial t^2}=\la...
</tex>
.. _eq5:
<tex>
\frac{1}{f(x)}\frac{\partial^2 f(x)}{\partial x^2}=\lambd...
</tex>
この2式はそれぞれ変数が一つなのでもはや偏微分方程式でなく...
変数分離定数 $\lambda$ を導入することによって,
偏微分方程式を二つの常微分方程式に分けることができたので...
分離した常微分方程式を解く
-----------------------------
二つの常微分方程式に分けることができたので,今度はそれら...
まずは $x$ に関する微分方程 `式(5)`_ を解きましょう. `式...
<tex>
\frac{d^2 f(x)}{d x^2}=\lambda f(x)
</tex>
です.これに解として $f(x)=e^{ax}$ を代入すると
.. _eq6:
<tex>
\frac{d^2e^{ax}}{d x^2}=\lambda e^{ax} \tag{6}
</tex>
になります.そして
<tex>
\frac{d^2e^{ax}}{dx^2} =\frac{d}{dx}\frac{de^{ax}}{dx} =\...
</tex>
より `式(6)`_ は
<tex>
a^2e^{ax}=\lambda e^{ax} \qquad \therefore\ (a^2-\lambda)...
</tex>
となります.ここで $e^{ax}=0$ とすればこの方程式を満たし...
だってそうすると $f(x)=0$ となって意味がないでしょう.と...
.. eq7:
<tex>
a^2-\lambda=0 \tag{7}
</tex>
となりますね.この式から $a$ を決定します.
ここで注意が必要です. $\lambda$ はまだどんな値かさっぱり...
$\lambda$ が正,ゼロ,負の三つの場合で場合分けして考えな...
λ が正の場合
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
`式(7)`_ より
<tex>
a^2=\lambda
</tex>
ですね.いまは $\lambda$ が正の場合を考えているので,その...
<tex>
a=\pm\sqrt{\lambda}
</tex>
です. $e^{ax}$ を解として代入したのですから,解は
<tex>
e^{\sqrt{\lambda}x} ,\quad e^{-\sqrt{\lambda}x}
</tex>
の二つです.一般解はこれらの線形結合で書けて
<tex>
f(x) = Ae^{\sqrt{\lambda}x} + Be^{-\sqrt{\lambda}x}
</tex>
となります( $A, B$ は任意定数).ここで境界条件 $u(0,t)=...
いまは $u(x,t)=f(x)g(t)$ としてるから $f(0)=f(1)=0$ です...
<tex>
f(0) &= A+B=0\\
f(1) &= Ae^{\sqrt{\lambda}}+Be^{-\sqrt{\lambda}}=0
</tex>
です.これから定数 $A, B$ を求めてみます. $e$ のなんとか...
これらを満たすのは $A=B=0$ のときのみです.これらを $f(x)...
やっぱり $f(x)=0$ となってしまいます.これを「恒等的にゼ...
せっかくさっき $f(x)=0$ になる解を避けたのに,これでは意...
したがって $\lambda$ が正のときは恒等的にゼロでない解,
つまり非自明解は存在しません.他の場合を調べましょう.
λ がゼロの場合
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
$\lambda=0$ なら `式(6)`_ は
<tex>
\frac{d^2f(x)}{dx^2}=0
</tex>
となります.つまり $x$ で2階微分してゼロになるものが $f(x...
2階微分でゼロになる式はたくさんありますが,一般解は
<tex>
f(x)=Ax+B
</tex>
と書けますよね(実際に $x$ で2階微分してみてください.ゼ...
境界条件 $f(0)=f(1)=0$ を適用すると
<tex>
f(0) &= B=0\\
f(1) &= A+B=0
</tex>
です.これらを満たすのは $A=B=0$ のときなので,またしても...
他の場合を調べます.といっても残りは $\lambda$ が負の場合...
λ が負の場合
^^^^^^^^^^^^^^^^^^
$a^2-\lambda=0$ より
<tex>
a^2=\lambda
</tex>
です.ここで $\lambda$ は負なのでそのままルートを付けては...
$a^2$ は $\lambda$ に等しいから負の値なので,2乗して負に...
虚数単位 $i$ をルートの前につけておきます. $\lambda$ は...
<tex>
a=\pm i\sqrt{\vert\lambda\vert}
</tex>
です. $e^{ax}$ を解として代入したんですから,解は
<tex>
e^{i\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x} ,\quad e^{-i\sqrt{\vert\...
</tex>
の2つです.一般解はこれらの線形結合で,
<tex>
f(x)=Ae^{i\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x}+Be^{-i\sqrt{\vert\...
</tex>
と表されます. $e$ の肩に虚数単位 $i$ が乗っていますね....
<tex>
e^{i\sqrt{\vert\lambda\vert}x} &= \cos(\sqrt{\vert\lambd...
e^{-i\sqrt{\vert\lambda\vert}x} &= \cos(\sqrt{\vert\lambd...
</tex>
より
<tex>
f(x)
&= A\left\{\cos(\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x)+i\sin(\sqrt...
+B\left\{\cos(\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x)-i\sin(\sqr...
&=(A+B)\cos(\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x)+i(A-B)\sin(\sqr...
</tex>
となって,ここで $A+B=C,\, i(A-B)=D$ と新しい定数に置き換...
<tex>
f(x)=C\cos(\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x)+D\sin(\sqrt{\vert...
</tex>
になります.境界条件 $f(0)=0$ を適用すると
<tex>
f(0)=C\cos(0)+D\sin(0)=C\cdot1+D\cdot0=C=0
</tex>
です.したがって $C=0$ ということが分かったので
<tex>
f(x)=D\sin(\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x)
</tex>
と書けます.さらに上式に境界条件 $f(1)=0$ を適用すると
<tex>
f(1)=D\sin(\sqrt{\vert\lambda\vert}\cdot1)=D\sin(\sqrt{\v...
</tex>
ですね. $D$ がゼロなら常に $f(x)=0$ ですから,
解をもつためには $D\ne 0$ でないといけません.したがって,
<tex>
\sin(\sqrt{\vert\lambda\vert}) = 0
</tex>
です. $\sin x$ は周期関数で, $x=\pi, 2\pi, 3\pi, \dots$...
<tex>
\sqrt{\vert\lambda _n\vert} = n\pi ,\quad (n=1,2,3,\dots)
</tex>
がいえます.ここで $\lambda$ を $\lambda_n$ としているの...
それぞれの $n$ に対応した定数 $\lambda$ がいくつもあるこ...
$\sqrt{\vert\lambda _n\vert}$ が分かったので $f(x)=D\sin(...
<tex>
f(x)=D\sin(n\pi x) ,\quad (n=1,2,3,\dots)
</tex>
となりますが, $\lambda$ を $\lambda_n$ にしたのと同様に,
それぞれの $n$ に対応する $f(x)$ と $D$ も多数存在するの...
.. _eq8:
<tex>
f_n(x)=D_n\sin(n\pi x) ,\quad (n=1,2,3,\dots) \tag{8}
</tex>
と書いておきます.やれやれ,ちょっと疲れましたがやっと境...
もう1つの常微分方程式を解く
-------------------------------
最初に変数分離したとき,二つの常微分方程式に分かれました.
そのうち一つはさっき考えたので,今度はもう一方の常微分方...
.. _eq9:
<tex>
\frac{d^2 g(t)}{dt^2}=\lambda c^2g(t) \tag{9}
</tex>
です. `式(5)`_ が境界条件を満たす解を先ほど求めたので,...
<tex>
\sqrt{\vert\lambda _n\vert} = n\pi ,\quad (n=1,2,3,\dots)
</tex>
の両辺を2乗すると
<tex>
\vert\lambda _n\vert=n^2\pi^2 ,\quad (n=1,2,3,\dots)
</tex>
で, $\lambda$ は負だったので
<tex>
\lambda _n=-n^2\pi^2 ,\quad (n=1,2,3,\dots)
</tex>
です.これを `式(9)`_ に代入すると
<tex>
\frac{d^2 g(t)}{dt^2}=-(cn\pi)^2g(t)
</tex>
となります.解として $e^{bt}$ を代入すると
<tex>
\frac{d^2 e^{bt}}{dt^2}=-(cn\pi)^2e^{bt} \qquad \therefor...
</tex>
ここで $c, n, \pi$ はいずれも正ですから
<tex>
b=\pm icn\pi
</tex>
です.したがって解(特解)は
<tex>
e^{icn\pi t} ,\quad e^{-icn\pi t}
</tex>
の2つで,一般解はこれらの線型結合で
<tex>
g(t)=Ee^{icn\pi t}+Fe^{-icn\pi t}
</tex>
と書けます.例によってオイラーの公式で展開して整理すると
<tex>
g(t)=(E+F)\cos(cn\pi t)+i(E-F)\sin(cn\pi t)
</tex>
さらに $E+F=G,\, i(E-F)=H$ と置くと
.. _eq10:
<tex>
g_n(t)=G_n\cos(cn\pi t)+H_n \sin(cn\pi t) ,\quad (n=1,2,3...
</tex>
となります.
2つの常微分方程式を合わせる
-----------------------------
さて,境界条件を考えることで変数分離した常微分方程式のそ...
<tex>
f_n(x) &= D_n\sin(n\pi x) ,\quad (n=1,2,3,\dots)\\
g_n(t) &= G_n\cos(cn\pi t)+H_n \sin(cn\pi t) ,\quad (n=1,...
</tex>
です. $f(x)$ と $g(t)$ はもともと波動方程 `式(1)`_ を変...
に $u(x,t)=f(x)g(t)$ とおいたものでした.したがって
<tex>
u_n(x,t)
&= f_n(x)g_n(t)\\
&= D_n\sin(n\pi x)\left\{G_n\cos(cn\pi t)+H_n \sin(cn\pi...
&= \sin(n\pi x)\left\{D_nG_n\cos(cn\pi t)+D_nH_n\sin(cn\...
</tex>
です.ここで $D_nG_n=A_n,\, D_nH_n=B_n$ とおきます
( $A$ と $B$ は最初の方で使いましたが,ここでは新しい定...
さらに $cn\pi=\omega_n$ とおきます.すると
.. _eq11:
<tex>
u_n(x,t)=\sin(n\pi x) \left\{A_n\cos(\omega_n t)+B_n\sin(...
</tex>
となります.これは波動方程 `式(1)`_ の境界条件の `式(2)`_...
初期条件を考える
--------------------
境界条件を満たす解が分かりましたから,あとは初期条件を満...
$u_n(x,t)$ はいろいろな $n$ に対する解がたくさんあります...
重ね合わせの原理よりそれらすべてを足したもの(線型結合)...
.. _eq12:
<tex>
u(x,t)
&= \sum_{n=1}^{\infty}u_n(x,t)\\
&= \sum_{n=1}^{\infty}\sin(n\pi x)\left\{A_n\cos(\omega_...
</tex>
です.初期条件 $\frac{\partial u(x,0)}{\partial t}=0$ を...
まず $u(x,t)$ を $t$ で偏微分しておきましょう.
<tex>
\frac{\partial u(x,t)}{\partial t}
&= \frac{\partial}{\partial t}\sum_{n=1}^{\infty} \sin(n...
&= \frac{\partial}{\partial t}\sum_{n=1}^{\infty} \left\...
&= \sum_{n=1}^{\infty}\{A_n\sin(n\pi x) \{-\omega_n\sin(...
</tex>
そして上式に $\frac{\partial u(x,0)}{\partial t}=0$ を適...
<tex>
\frac{\partial u(x,0)}{\partial t}
&= \sum_{n=1}^{\infty}\{A_n\sin(n\pi x) \{-\omega_n\sin(...
&= \sum_{n=1}^{\infty}\{A_n\sin(n\pi x)\cdot 0+B_n\sin(n...
&= \sum_{n=1}^{\infty}B_n\omega_n\sin(n\pi x)=0
</tex>
となります.また,もう一つの初期条件 $u(x,0)=x(1-x)$ より
<tex>
u(x,0)
&= \sum_{n=1}^{\infty}\sin(n\pi x)\{A_n\cos(\omega_n\cdo...
&= \sum_{n=1}^{\infty}\sin(n\pi x)\{A_n\cdot 1+0\}\\
&= \sum_{n=1}^{\infty}A_n\sin(n\pi x)=x(1-x)
</tex>
です.まとめると
<tex>
\frac{\partial u(x,0)}{\partial t} &= \sum_{n=1}^{\infty}...
u(x,0) &= \sum_{n=1}^{\infty}A_n\sin(n\pi x)=x(1-x),\quad...
</tex>
となります( $x$ の範囲 ( $0<x<1$ ) はもともとの波動方程...
これはフーリエ正弦級数の形をしています.したがって `式(12...
には $\frac{\partial u(x,0)}{\partial t}$ は 0 の半区間で...
は $x(1-x)$ の半区間でのフーリエ正弦級数でなければならな...
<tex>
B_n &= \frac{2}{1}\int_{0}^{1}0\cdot\sin(n\pi x)\ dx\\
A_n &= \frac{2}{1}\int_{0}^{1}x(1-x)\sin(n\pi x)\ dx
</tex>
となり,
<tex>
A_n=\frac{2}{n\pi}\{\cos(n\pi)+1\} ,\quad B_n=0
</tex>
が得られます.こうして係数 $A_n$ と $B_n$ が決まったので,
これらを `式(12)`_ に代入すれば境界条件と初期条件を満たす...
<tex>
u(x,t)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{2}{n\pi}\sin(n\pi x)\{\co...
</tex>
が得られます.これでようやく解けました.お疲れさまです.
.. _`偏微分方程式を解く(PDF版)`: partial.pdf
.. _式(1): #eq1
.. _式(2): #eq2
.. _式(3): #eq3
.. _式(4): #eq4
.. _式(5): #eq5
.. _式(6): #eq6
.. _式(7): #eq7
.. _式(8): #eq8
.. _式(9): #eq9
.. _式(10): #eq10
.. _式(11): #eq11
.. _式(12): #eq12
@@author:崎間@@
@@accept:2003-02-09@@
@@category:物理数学@@
@@id:partial@@
終了行:
#rst2hooktail_source
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偏微分方程式を解く
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量子力学の主役「シュレディンガー方程式」をはじめ,物理で...
この方程式の解き方をなんとかマスターしようということで,...
1次元波動方程式の例題
------------------------
いまから解いてみるのは1次元波動方程式
.. _eq1:
<tex>
\frac{\partial^2u(x,t)}{\partial t^2} = c^2\frac{\partial...
</tex>
です.ここで $c$ は波の速さで,正の定数です.
偏微分方程式を完全に解くには境界条件と初期条件が必要です...
.. _eq2:
境界条件 : $\qquad u(0,t)=u(1,t)=0 \tag{2}$
.. _eq3:
初期条件 : $\frac{\partial u(x,0)}{\partial t}=0 ,\quad ...
を課しておきます.波動方程式という名前は凄そうですが,た...
$u(x,t)$ が波の関数で,これに境界条件と初期条件を付け加え...
この波がどんな運動をしているのかを知ることができます.
つまり「解く」というのは `式(1)`_ を $u(x,t)=$ の形にする...
ところで,波の運動というのがイマイチわかりません. $u(x,t...
$u(x,t)=$ という形になっていたら, $x$ と $t$ を代入する...
つまり波がいつ(時間 $t$ ),どこで(位置 $x$ )どんな高...
そうすると,たとえば初期状態から $x=3.5$ メートルの場所で...
$x=-10.2$ メートルの場所で $5.9$ 秒後の波の高さは $2.1$ ...
これらを全部ひっくるめてあるのが波動方程式で,様々な条件...
での波を導き出す操作が波動方程式を解く,ということになり...
まずは変数分離
-----------------
$x$ と $t$ の2つの変数がある偏微分方程式では難しいので,...
変数を分離するには, $u(x,t)$ の解として
<tex>
u(x,t)=f(x)g(t)
</tex>
を代入するのが定石です.実際に波動方程式に代入すると
<tex>
\frac{\partial^2 f(x)g(t)}{\partial t^2}=c^2\frac{\partia...
</tex>
となります.左辺は $t$ で偏微分してあるので $x$ の関数は...
だから $x$ の関数である $f(x)$ を偏微分から出しておきます.
<tex>
f(x)\frac{\partial^2 g(t)}{\partial t^2}=c^2\frac{\partia...
</tex>
同様に右辺は $g(t)$ を偏微分から出しておきます.
<tex>
f(x)\frac{\partial^2 g(t)}{\partial t^2}=c^2g(t)\frac{\pa...
</tex>
左辺は $t$ の関数,右辺は $x$ の関数にまとめたいので,
両辺を $f(x)g(t)$ で割ります.ついでに $c^2$ も移動すると
<tex>
\frac{1}{c^2g(t)}\frac{\partial^2 g(t)}{\partial t^2}=\fr...
</tex>
となります.さて,この式は何を意味しるんでしょうか? 左側...
両辺がイコールで結ばれているので「 $t$ だけ変化しても, $...
そんなことが起きるのは両辺が定数のときだけです.
定数なら $x$ だけ変わろうが $t$ だけ変わろうが, $x$ と $...
そこで,この両辺を
<tex>
\frac{1}{c^2g(t)}\frac{\partial^2 g(t)}{\partial t^2}
=\frac{1}{f(x)}\frac{\partial^2 f(x)}{\partial x^2}=\lambda
</tex>
というふうに定数 $\lambda$ と等しいとします(この定数は変...
するとこの式は,つぎのように簡単に2つに分けることができま...
.. _eq4:
<tex>
\frac{1}{c^2g(t)}\frac{\partial^2 g(t)}{\partial t^2}=\la...
</tex>
.. _eq5:
<tex>
\frac{1}{f(x)}\frac{\partial^2 f(x)}{\partial x^2}=\lambd...
</tex>
この2式はそれぞれ変数が一つなのでもはや偏微分方程式でなく...
変数分離定数 $\lambda$ を導入することによって,
偏微分方程式を二つの常微分方程式に分けることができたので...
分離した常微分方程式を解く
-----------------------------
二つの常微分方程式に分けることができたので,今度はそれら...
まずは $x$ に関する微分方程 `式(5)`_ を解きましょう. `式...
<tex>
\frac{d^2 f(x)}{d x^2}=\lambda f(x)
</tex>
です.これに解として $f(x)=e^{ax}$ を代入すると
.. _eq6:
<tex>
\frac{d^2e^{ax}}{d x^2}=\lambda e^{ax} \tag{6}
</tex>
になります.そして
<tex>
\frac{d^2e^{ax}}{dx^2} =\frac{d}{dx}\frac{de^{ax}}{dx} =\...
</tex>
より `式(6)`_ は
<tex>
a^2e^{ax}=\lambda e^{ax} \qquad \therefore\ (a^2-\lambda)...
</tex>
となります.ここで $e^{ax}=0$ とすればこの方程式を満たし...
だってそうすると $f(x)=0$ となって意味がないでしょう.と...
.. eq7:
<tex>
a^2-\lambda=0 \tag{7}
</tex>
となりますね.この式から $a$ を決定します.
ここで注意が必要です. $\lambda$ はまだどんな値かさっぱり...
$\lambda$ が正,ゼロ,負の三つの場合で場合分けして考えな...
λ が正の場合
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
`式(7)`_ より
<tex>
a^2=\lambda
</tex>
ですね.いまは $\lambda$ が正の場合を考えているので,その...
<tex>
a=\pm\sqrt{\lambda}
</tex>
です. $e^{ax}$ を解として代入したのですから,解は
<tex>
e^{\sqrt{\lambda}x} ,\quad e^{-\sqrt{\lambda}x}
</tex>
の二つです.一般解はこれらの線形結合で書けて
<tex>
f(x) = Ae^{\sqrt{\lambda}x} + Be^{-\sqrt{\lambda}x}
</tex>
となります( $A, B$ は任意定数).ここで境界条件 $u(0,t)=...
いまは $u(x,t)=f(x)g(t)$ としてるから $f(0)=f(1)=0$ です...
<tex>
f(0) &= A+B=0\\
f(1) &= Ae^{\sqrt{\lambda}}+Be^{-\sqrt{\lambda}}=0
</tex>
です.これから定数 $A, B$ を求めてみます. $e$ のなんとか...
これらを満たすのは $A=B=0$ のときのみです.これらを $f(x)...
やっぱり $f(x)=0$ となってしまいます.これを「恒等的にゼ...
せっかくさっき $f(x)=0$ になる解を避けたのに,これでは意...
したがって $\lambda$ が正のときは恒等的にゼロでない解,
つまり非自明解は存在しません.他の場合を調べましょう.
λ がゼロの場合
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
$\lambda=0$ なら `式(6)`_ は
<tex>
\frac{d^2f(x)}{dx^2}=0
</tex>
となります.つまり $x$ で2階微分してゼロになるものが $f(x...
2階微分でゼロになる式はたくさんありますが,一般解は
<tex>
f(x)=Ax+B
</tex>
と書けますよね(実際に $x$ で2階微分してみてください.ゼ...
境界条件 $f(0)=f(1)=0$ を適用すると
<tex>
f(0) &= B=0\\
f(1) &= A+B=0
</tex>
です.これらを満たすのは $A=B=0$ のときなので,またしても...
他の場合を調べます.といっても残りは $\lambda$ が負の場合...
λ が負の場合
^^^^^^^^^^^^^^^^^^
$a^2-\lambda=0$ より
<tex>
a^2=\lambda
</tex>
です.ここで $\lambda$ は負なのでそのままルートを付けては...
$a^2$ は $\lambda$ に等しいから負の値なので,2乗して負に...
虚数単位 $i$ をルートの前につけておきます. $\lambda$ は...
<tex>
a=\pm i\sqrt{\vert\lambda\vert}
</tex>
です. $e^{ax}$ を解として代入したんですから,解は
<tex>
e^{i\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x} ,\quad e^{-i\sqrt{\vert\...
</tex>
の2つです.一般解はこれらの線形結合で,
<tex>
f(x)=Ae^{i\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x}+Be^{-i\sqrt{\vert\...
</tex>
と表されます. $e$ の肩に虚数単位 $i$ が乗っていますね....
<tex>
e^{i\sqrt{\vert\lambda\vert}x} &= \cos(\sqrt{\vert\lambd...
e^{-i\sqrt{\vert\lambda\vert}x} &= \cos(\sqrt{\vert\lambd...
</tex>
より
<tex>
f(x)
&= A\left\{\cos(\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x)+i\sin(\sqrt...
+B\left\{\cos(\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x)-i\sin(\sqr...
&=(A+B)\cos(\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x)+i(A-B)\sin(\sqr...
</tex>
となって,ここで $A+B=C,\, i(A-B)=D$ と新しい定数に置き換...
<tex>
f(x)=C\cos(\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x)+D\sin(\sqrt{\vert...
</tex>
になります.境界条件 $f(0)=0$ を適用すると
<tex>
f(0)=C\cos(0)+D\sin(0)=C\cdot1+D\cdot0=C=0
</tex>
です.したがって $C=0$ ということが分かったので
<tex>
f(x)=D\sin(\sqrt{\vert\lambda\vert}\,x)
</tex>
と書けます.さらに上式に境界条件 $f(1)=0$ を適用すると
<tex>
f(1)=D\sin(\sqrt{\vert\lambda\vert}\cdot1)=D\sin(\sqrt{\v...
</tex>
ですね. $D$ がゼロなら常に $f(x)=0$ ですから,
解をもつためには $D\ne 0$ でないといけません.したがって,
<tex>
\sin(\sqrt{\vert\lambda\vert}) = 0
</tex>
です. $\sin x$ は周期関数で, $x=\pi, 2\pi, 3\pi, \dots$...
<tex>
\sqrt{\vert\lambda _n\vert} = n\pi ,\quad (n=1,2,3,\dots)
</tex>
がいえます.ここで $\lambda$ を $\lambda_n$ としているの...
それぞれの $n$ に対応した定数 $\lambda$ がいくつもあるこ...
$\sqrt{\vert\lambda _n\vert}$ が分かったので $f(x)=D\sin(...
<tex>
f(x)=D\sin(n\pi x) ,\quad (n=1,2,3,\dots)
</tex>
となりますが, $\lambda$ を $\lambda_n$ にしたのと同様に,
それぞれの $n$ に対応する $f(x)$ と $D$ も多数存在するの...
.. _eq8:
<tex>
f_n(x)=D_n\sin(n\pi x) ,\quad (n=1,2,3,\dots) \tag{8}
</tex>
と書いておきます.やれやれ,ちょっと疲れましたがやっと境...
もう1つの常微分方程式を解く
-------------------------------
最初に変数分離したとき,二つの常微分方程式に分かれました.
そのうち一つはさっき考えたので,今度はもう一方の常微分方...
.. _eq9:
<tex>
\frac{d^2 g(t)}{dt^2}=\lambda c^2g(t) \tag{9}
</tex>
です. `式(5)`_ が境界条件を満たす解を先ほど求めたので,...
<tex>
\sqrt{\vert\lambda _n\vert} = n\pi ,\quad (n=1,2,3,\dots)
</tex>
の両辺を2乗すると
<tex>
\vert\lambda _n\vert=n^2\pi^2 ,\quad (n=1,2,3,\dots)
</tex>
で, $\lambda$ は負だったので
<tex>
\lambda _n=-n^2\pi^2 ,\quad (n=1,2,3,\dots)
</tex>
です.これを `式(9)`_ に代入すると
<tex>
\frac{d^2 g(t)}{dt^2}=-(cn\pi)^2g(t)
</tex>
となります.解として $e^{bt}$ を代入すると
<tex>
\frac{d^2 e^{bt}}{dt^2}=-(cn\pi)^2e^{bt} \qquad \therefor...
</tex>
ここで $c, n, \pi$ はいずれも正ですから
<tex>
b=\pm icn\pi
</tex>
です.したがって解(特解)は
<tex>
e^{icn\pi t} ,\quad e^{-icn\pi t}
</tex>
の2つで,一般解はこれらの線型結合で
<tex>
g(t)=Ee^{icn\pi t}+Fe^{-icn\pi t}
</tex>
と書けます.例によってオイラーの公式で展開して整理すると
<tex>
g(t)=(E+F)\cos(cn\pi t)+i(E-F)\sin(cn\pi t)
</tex>
さらに $E+F=G,\, i(E-F)=H$ と置くと
.. _eq10:
<tex>
g_n(t)=G_n\cos(cn\pi t)+H_n \sin(cn\pi t) ,\quad (n=1,2,3...
</tex>
となります.
2つの常微分方程式を合わせる
-----------------------------
さて,境界条件を考えることで変数分離した常微分方程式のそ...
<tex>
f_n(x) &= D_n\sin(n\pi x) ,\quad (n=1,2,3,\dots)\\
g_n(t) &= G_n\cos(cn\pi t)+H_n \sin(cn\pi t) ,\quad (n=1,...
</tex>
です. $f(x)$ と $g(t)$ はもともと波動方程 `式(1)`_ を変...
に $u(x,t)=f(x)g(t)$ とおいたものでした.したがって
<tex>
u_n(x,t)
&= f_n(x)g_n(t)\\
&= D_n\sin(n\pi x)\left\{G_n\cos(cn\pi t)+H_n \sin(cn\pi...
&= \sin(n\pi x)\left\{D_nG_n\cos(cn\pi t)+D_nH_n\sin(cn\...
</tex>
です.ここで $D_nG_n=A_n,\, D_nH_n=B_n$ とおきます
( $A$ と $B$ は最初の方で使いましたが,ここでは新しい定...
さらに $cn\pi=\omega_n$ とおきます.すると
.. _eq11:
<tex>
u_n(x,t)=\sin(n\pi x) \left\{A_n\cos(\omega_n t)+B_n\sin(...
</tex>
となります.これは波動方程 `式(1)`_ の境界条件の `式(2)`_...
初期条件を考える
--------------------
境界条件を満たす解が分かりましたから,あとは初期条件を満...
$u_n(x,t)$ はいろいろな $n$ に対する解がたくさんあります...
重ね合わせの原理よりそれらすべてを足したもの(線型結合)...
.. _eq12:
<tex>
u(x,t)
&= \sum_{n=1}^{\infty}u_n(x,t)\\
&= \sum_{n=1}^{\infty}\sin(n\pi x)\left\{A_n\cos(\omega_...
</tex>
です.初期条件 $\frac{\partial u(x,0)}{\partial t}=0$ を...
まず $u(x,t)$ を $t$ で偏微分しておきましょう.
<tex>
\frac{\partial u(x,t)}{\partial t}
&= \frac{\partial}{\partial t}\sum_{n=1}^{\infty} \sin(n...
&= \frac{\partial}{\partial t}\sum_{n=1}^{\infty} \left\...
&= \sum_{n=1}^{\infty}\{A_n\sin(n\pi x) \{-\omega_n\sin(...
</tex>
そして上式に $\frac{\partial u(x,0)}{\partial t}=0$ を適...
<tex>
\frac{\partial u(x,0)}{\partial t}
&= \sum_{n=1}^{\infty}\{A_n\sin(n\pi x) \{-\omega_n\sin(...
&= \sum_{n=1}^{\infty}\{A_n\sin(n\pi x)\cdot 0+B_n\sin(n...
&= \sum_{n=1}^{\infty}B_n\omega_n\sin(n\pi x)=0
</tex>
となります.また,もう一つの初期条件 $u(x,0)=x(1-x)$ より
<tex>
u(x,0)
&= \sum_{n=1}^{\infty}\sin(n\pi x)\{A_n\cos(\omega_n\cdo...
&= \sum_{n=1}^{\infty}\sin(n\pi x)\{A_n\cdot 1+0\}\\
&= \sum_{n=1}^{\infty}A_n\sin(n\pi x)=x(1-x)
</tex>
です.まとめると
<tex>
\frac{\partial u(x,0)}{\partial t} &= \sum_{n=1}^{\infty}...
u(x,0) &= \sum_{n=1}^{\infty}A_n\sin(n\pi x)=x(1-x),\quad...
</tex>
となります( $x$ の範囲 ( $0<x<1$ ) はもともとの波動方程...
これはフーリエ正弦級数の形をしています.したがって `式(12...
には $\frac{\partial u(x,0)}{\partial t}$ は 0 の半区間で...
は $x(1-x)$ の半区間でのフーリエ正弦級数でなければならな...
<tex>
B_n &= \frac{2}{1}\int_{0}^{1}0\cdot\sin(n\pi x)\ dx\\
A_n &= \frac{2}{1}\int_{0}^{1}x(1-x)\sin(n\pi x)\ dx
</tex>
となり,
<tex>
A_n=\frac{2}{n\pi}\{\cos(n\pi)+1\} ,\quad B_n=0
</tex>
が得られます.こうして係数 $A_n$ と $B_n$ が決まったので,
これらを `式(12)`_ に代入すれば境界条件と初期条件を満たす...
<tex>
u(x,t)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{2}{n\pi}\sin(n\pi x)\{\co...
</tex>
が得られます.これでようやく解けました.お疲れさまです.
.. _`偏微分方程式を解く(PDF版)`: partial.pdf
.. _式(1): #eq1
.. _式(2): #eq2
.. _式(3): #eq3
.. _式(4): #eq4
.. _式(5): #eq5
.. _式(6): #eq6
.. _式(7): #eq7
.. _式(8): #eq8
.. _式(9): #eq9
.. _式(10): #eq10
.. _式(11): #eq11
.. _式(12): #eq12
@@author:崎間@@
@@accept:2003-02-09@@
@@category:物理数学@@
@@id:partial@@
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