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もう一度ベクトル5(ベクトル解析への第一歩)
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.. contents::
表記の導入(ベクトル解析への第一歩)
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再び表記をいくつか導入します。
外積の代数的な定義が単位基底ベクトルなるものを考えると機械的な分配法則を使えば
すぐに導けるようになります。 [*]_
\bm{r}
=
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix}
=
x\begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
0
\end{pmatrix}
+
y\begin{pmatrix}
0 \\
1 \\
0
\end{pmatrix}
+
z\begin{pmatrix}
0 \\
0 \\
1
\end{pmatrix}
と変形出来ることに納得していただけるでしょうか?
ここでこの式に出てきたベクトルをそれぞれ
\begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
0
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}\bm{i}
\ \ \ \
\begin{pmatrix}
0 \\
1 \\
0
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}\bm{j}
\ \ \ \
\begin{pmatrix}
0 \\
0 \\
1
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}\bm{k}
とよく書き、それぞれを単位基底ベクトルといいます。 [*]_ この「単位」とは「大きさが1」とい
った意味の「単位」ですね。確かに各ベクトルの大きさは三平方で計算するまでもなく $1$
になることがわかります。これでその成分の計算を簡単にしているわけです。
図にするとこんな感じでしょうか
.. image:: yassan-RestudyVector05-fig1.png
この単位ベクトルは直行している(と言うかそうなるよう設定した)ので正規直交系、又は
正規直交基と言います。このベクトルを僕は「向き決定ベクトル」と呼んでいます。
つまり正規直交系の各ベクトルで向きさえ指定してしまえば定数倍することで長さを指定するこ
とが出来たり、定数を負にすることにより真後ろに向けたり、定数を $0$ にすることでその
成分をなくすことが出来たりするからです。
この表記ですと $\bm{r}$ が
\bm{r}
=
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
x\bm{i}+y\bm{j}+z\bm{k}
といった感じで表せます。
代表的な関係としては
&\bm{i}\cdot\bm{i}=|\bm{i}|^2=1 \ \ \
\bm{j}\cdot\bm{j}=|\bm{j}|^2=1 \ \ \
\bm{k}\cdot\bm{k}=|\bm{k}|^2=1 \\
&\bm{i}\cdot\bm{j}=\bm{j}\cdot\bm{k}=\bm{k}\cdot\bm{i}=0 \\
&\bm{i}\times\bm{j}=\bm{k} \ \ \
\bm{j}\times\bm{k}=\bm{i} \ \ \
\bm{k}\times\bm{i}=\bm{j}
が挙げられます
.. [*]
他にあげられる主な理由としては他の座標系(球座標系、円柱座標系など)で表した際に
基底の取り方が変わってしまう際に、どんな基底を用いた成分表示かを表すために
用いることが多いようです。また、 $\bm{i},\bm{j},\bm{k}$ は単独でベクトルとしても
扱います
.. [*]
ここで導入した単位ベクトルについて $\bm{i}=\bm{e}_x=\hat{\bm{x}}\ ,\ \bm{j}=\bm{e}_y=\hat{\bm{y}}\ ,\ \bm{k}=\bm{e}_z=\hat{\bm{z}}$
と表すこともあります。
内積の公式の追加とと外積の機械的計算
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内積外積の計算を機械化しましょう
\bm{a}\cdot\bm{b}
&=
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{pmatrix}
\cdot
\begin{pmatrix}
b_x \\
b_y \\
b_z
\end{pmatrix} \\
&=
(a_x\bm{i}+a_y\bm{j}+a_z\bm{k})\cdot(b_x\bm{i}+b_y\bm{j}+b_z\bm{k}) \\
&=
a_xb_x\bm{i}\cdot\bm{i}+a_xb_y\bm{i}\cdot\bm{j}+a_xb_z\bm{i}\cdot\bm{k}+
a_yb_x\bm{j}\cdot\bm{i}+a_yb_y\bm{j}\cdot\bm{j}+a_yb_z\bm{j}\cdot\bm{k}+
a_zb_x\bm{k}\cdot\bm{i}+a_zb_y\bm{k}\cdot\bm{j}+a_zb_z\bm{k}\cdot\bm{k} \\
&=
a_xb_x+a_yb_y+a_zb_z
\bm{a}\times\bm{b}
&=
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{pmatrix}
\times
\begin{pmatrix}
b_x \\
b_y \\
b_z
\end{pmatrix} \\
&=
(a_x\bm{i}+a_y\bm{j}+a_z\bm{k})\times(b_x\bm{i}+b_y\bm{j}+b_z\bm{k}) \\
&=
a_xb_x\bm{i}\times\bm{i}+a_xb_y\bm{i}\times\bm{j}+a_xb_z\bm{i}\times\bm{k}+
a_yb_x\bm{j}\times\bm{i}+a_yb_y\bm{j}\times\bm{j}+a_yb_z\bm{j}\times\bm{k}+
a_zb_x\bm{k}\times\bm{i}+a_zb_y\bm{k}\times\bm{j}+a_zb_z\bm{k}\times\bm{k} \\
&=
a_xb_y\bm{k}-a_xb_z\bm{j}-a_yb_x\bm{k}+a_yb_z\bm{i}+a_zb_x\bm{j}-a_zb_y\bm{i} \\
&=
(a_yb_z-a_zb_y)\bm{i}+(a_zb_x-a_xb_z)\bm{j}+(a_xb_y-a_yb_x)\bm{k}
といったように分配法則を使うと最小限の暗記量から計算結果(特に外積)を暗算が可能なレベルに
落とす事ができるようになりました。
この計算のルールから覚えておくべき(導けるべき)公式を以下に挙げます
&\bm{r}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix} \\
&\bm{i}\cdot\bm{r}=x \ \ \
\bm{j}\cdot\bm{r}=y \ \ \
\bm{k}\cdot\bm{r}=z
行間は自分で埋めてみてください。この公式の意味するところは、ベクトルと単位ベクトルの内積
を計算するとその単位ベクトル方向の成分が取り出せるということです。
まとめ
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以上の内容の大半は高校の数学で習っているものです。大学以降では使わない内容も多分に
含まれていますが、それは「理解している必要がない」のではなく、「その程度の使い方はマスター
している」という事実の元に話が展開されると思っていいと思います。例えば料理人で言えば
カツラ剥きのようなものでしょうか。
上記までの内容はベクトルという概念の中でも非常に具体性が高い部分で、位置ベクトル
を議論の対象にすることにより一般的な図形の"辺"とよく対応させて考えることが出来ます。
実際に物理で対象とするベクトル量は速度、加速度、力、角運動量、トルクといった直接的に
運動を眺めているだけでは視覚化しにくかったり視覚化できない量ですが、以上の量は微分の
定義やベクトルの演算規則に頼る事で方向と大きさが分かるので、それにしたがって作図
することで視覚化が可能になります。
@@author: やっさん@@
@@accept: 執筆中@@