物理のかぎしっぽ 記事ソース/運動の法則 の変更点

 #rst2hooktail_source
 ===============================
 運動の法則
 ===============================
 
  万有引力という重力理論を打ち立てたニュートンの,もう一つの大きな仕事は,
 運動の法則を確立したことです(むしろ運動の法則から万有引力が導かれました).
 ニュートンはケプラーの持っていた神秘性も,ガリレオが捨て切れずにいた古い考えのカケラをも払拭し,
 いわゆる「ニュートン力学」という現代にも脈々と受け継がれる金字塔をつくりあげました.
 まず,ケプラー,ガリレオにはなく,ニュートンにあった考えをみてみます.
 
 
 ケプラーとガリレオの盲点
 -------------------------------
 
  ケプラーの場合は,
 
 - 力の正確な概念を持たなかった
 
 が大きな穴でした.惑星運動を記述するケプラーの3法則を見つけ,
 その運動の源は太陽にあるとまで帰結しています.
 が,彼の神秘主義ゆえ最後まで運動の源は神秘のベールに包まれたままでした.
 
  一方,ガリレオの場合は
 
 - 垂直方向と水平方向の運動を別々に考えていた
 
 という点に古い考えの断片がみられます.
 水平方向(地球の円周方向)の運動には慣性の法則を見いだしたガリレオですが,
 垂直方向の運動,すなわち物体の落下運動は水平方向とまったく別ものであるとしています.
 ここには「物体が下へ落ちるのは物体が本来下へあるものだから」
 とするアリストテレス流の考えが見え隠れしています.
 
  ニュートンはこれらの解決策として「力」と「慣性系」のはっきりとした定義を導入しています.
 そしてそれを扱う数学として,変化の相で運動をとらえる「微分法」を生み出しました.
 ただ,ニュートンが実際に扱った微分法は現在僕たちが使用しているものではなく,
 流率法と呼ばれる難解な幾何学的微分法でした.
 
 
 ニュートンの運動の法則
 -------------------------------
 
  さて,ニュートンの定めた「運動の法則」は,つぎの三つから成ります.
 
 1. 外から力が作用しなければ,物体は静止したままか,等速直線運動をする.
 
 2. 物体に力が作用すると,力の方向に加速度を生じる.
    加速度はその物体が受ける力に比例し,物体の質量に逆比例する.
 
 3. すべての作用に対して,等しく,かつ反対向きの反作用が常に存在する.
 
 1番目は「慣性の法則」,2番目は「運動方程式」,3番目は「作用・反作用の法則」と呼ばれます.
 これらをもう少し詳しくみてみましょう.
 
 第1法則:慣性の法則
 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
 - 外から力が作用しなければ,物体は静止したままか,等速直線運動をする.
 
  この法則の運動は,ガリレオの言う水平運動(すなわち円運動)ではなく,直線運動とされています.
 そして物体に力が加えられなければやがて運動は止まってしまう,という古い考えを取り除いています.
 逆に,このような法則が成り立つ「系」を「慣性系」といいます.
 
  ところで,物理を勉強する上で一番最初につまずくのはこの慣性の法則かもしれません.
 僕たちが目にする運動では,力を加えないものは減衰してやがて止まってしまいます.
 ずっと等速直線運動はどしないではないか,と思います.
 でもそれは,摩擦力や空気抵抗などなどの,運動を止めさせようとする力が加わっているからです.
 運動を止めさせる力を取り除いた場合,慣性の法則が成り立つという事実を認めることが,物理の理解への第一歩です.
 と同時に,この法則を見いだしたニュートンの非凡さが伺えます.
 
 第2法則:運動方程式
 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
 - 物体に力が作用すると,力の方向に加速度を生じる.
   加速度はその物体が受ける力に比例し,物体の質量に逆比例する.
 
  運動方程式こそが,力学と数学を結びつける強力な橋であり,
 この発見がニュートンの最大の業績であるといえます
 (ニュートンは実際には加速度という言葉を用いず,
 運動量の時間変化というもので力との関係を理解していました).
 
  さらにこの法則は質量とはどんなものかという意味も含んでいます.
 物体に力を加え,その物体の運動の変化を妨げるものを質量(正確には慣性質量)としています.
 運動方程式のおかげで,僕たちは物体の運動を予測することができます.
 
 第3法則:作用・反作用の法則
 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
 - すべての作用に対して,等しく,かつ反対向きの反作用が常に存在する.
 
  これはとても素朴で,きわめて重要な法則です.
 もしこの法則が成り立たないのであれば,世界はむちゃくちゃになってしまいます.
 作用・反作用の法則は運動量保存則につながります.
 
 
 ニュートン力学,そして現代
 -------------------------------
 
  この章では,占星術から物理学という学問が生まれはじめた16世紀ごろから,
 ニュートンの力学体系が整備されるまで約200年間の歴史の大まかな流れをみてきました.
 いかがだったでしょうか.とりあえずニュートン力学の誕生までこぎつけましたので,
 ここで章を変えて慣性の法則,運動方程式については次章で詳しく解説を書く予定です.
 
  僕たちは先人の試行錯誤と努力の上に立ち,世界を理解することができます.
 はじめに書きましたが,物理で最初に習う分野は力学です.
 物が落ちる運動や投射の運動の練習問題を,公式を駆使して解いているだけでは実に無味乾燥な気がします.
 ですが,その基本法則の確立に至る過程は実に多くの人々の人生が絡み合い,生きいきとしたロマンが溢れています.
 
  そして現在もなお,世界の,宇宙の基本原理を求める人類の挑戦は続いています.
 続く章では数式を用いて力学の基本を学んで行く予定です.
 数式に振り回されると目的を見失ってしまいがちですが,
 物理学の本質である「世界を理解したい」という目的を心にとめておけば,
 きっと少しは楽しく勉強できるのではないかと思います.
 
 
 @@author:崎間@@
 @@accept:2004-06-09@@
 @@category:力学@@
 @@id:lowOfMotion@@
トップ   編集 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Modified by 物理のかぎプロジェクト PukiWiki 1.4.6 Copyright © 2001-2005 PukiWiki Developers Team. License is GPL.
Based on "PukiWiki" 1.3 by yu-ji Powered by PHP 5.3.29 HTML convert time to 0.002 sec.