#rst2hooktail_source ================================== 分数で表現した中国の剰余定理 ================================== 整数論の分野では当然のことのように分数は使われていないが,以外に分数による表現が分かりやすいことが あります.その例として,中国の剰余定理やガロア拡大体を分数式で説明します. 中国の剰余定理とは ================================== 簡単のため 整数 $a$ を正の整数 $b$ で割った剰余 $a \bmod b$ を $|a|_{b} (0 \leq |a|_{b} < b)$ で 表わします. $|a|_{3} = b$, $|a|_{5} = c$ である $|a|_{15}$ は,中国の剰余定理を用いて <tex> |a|_{15} = | 10 b + 6 c |_{15} </tex> で求められます.この 10 と 6 を詳しく書くと, $10 = 5 \times |3|_{3}^{-1}$, $6 = 3 \times |5|_{5}^{-1}$ です.ここで $|3|_{3}^{-1}$ は $|3 x|_{3} = 1$ となる $x$ (3 を法とする逆元)を意味します.また, $|a|_{3} = b$, $|a|_{5} = c$, $|a|_{7} = d$ である $|a|_{15}$ ( $3 \times 5 \times 7 = 105$ )は <tex> |a|_{105} = | 70 b + 21 c + 15 d|_{105} \\ 70 = 5 \times 7 \times |3|_{35}^{-1} \\ 21 = 3 \times 7 \times |5|_{21}^{-1} \\ 15 = 3 \times 5 \times |7|_{15}^{-1} \\ </tex> です. $m$, $n$ が互いに素であれば <tex> m x + n y = 1 </tex> となる整数 $x$, $y$ が存在するという有名な性質を使って,上記の式を導いてみましょう. 分数による表現 ================================== 以下では,有理数 $r$ の整数部を $\Gamma r$, 小数部 $\Delta r$ ( $0 \leq \Delta r < 1$ ) で 表わします.例えば <tex> \Gamma \left(-\frac{8}{3} \reight) = -3, ~~~~\Delta \left(-\frac{8}{3} \reight) = \frac{1}{3} </tex> です.