物理のかぎしっぽ 記事ソース/電位差を生じたレール上を動く金属棒と特殊相対論 のバックアップ差分(No.7)

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 電位差を生じたレール上を動く金属棒と特殊相対論
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 .. image :: chromel-railAndRod-01-t.png
 
 上の図のようなレールと金属棒からなる系を考えます。
 電池の電圧を $V$ 、回路を流れる電流を $I$ 、
 レールの間隔を $L$ 、そのレールの間に掛かる上向きの磁束密度 $\bm{B}$ 
 棒の質量を $m$ 、抵抗を $R$ 、左向きの速度を $v$ とします。
 この系がどんな振る舞いをするか、いろいろな立場で考えます。
 
 特殊相対論以前の考え方
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 これからしたいことは、棒の運動速度 $v$ を時間 $t$ で表すことです。
 
 すると、回路の方程式は $B  \equiv |\bm{B}|$ として、
 
 <tex>
 V - BLv= R I \tag{##}
 </tex>
 
 です。この式は(起電力)=(抵抗損失)となっています。
 右辺はいいですね?抵抗損失は(抵抗)×(電流)なので、 $RI$ です。
 起電力の方は、 $V$ だけでなく、金属棒が磁束密度中を動くことによって、
 生じる起電力 $BLv$ が加わっています。符号のチェックは、
 棒が速く動く( $v$ が大きくなる)と、起電力がゼロに近づいていく
 ので、これでOKです。
 
 また、棒の運動方程式は、重力加速度 $g$ 、動摩擦係数を $\mu$ として、
 
 <tex>
 m \dot{v}= BLI - \mu mg \tag{##}
 </tex>
 
 です。磁束密度 $B$ 中を電流 $I$ が流れると、長さ $L$ それぞれに
 比例した力が生じるというものです。今回の場合、力は左に働きます。
 それは、ローレンツ力 $\bm{F}=q(\bm{v} \times \bm{B})$ の関係から、
 確認できます。
 
 さて、式 $(1)$ と式 $(2)$ を見てみると、
 時間依存する未知量は棒の速度 $v$ と電流 $I$ だと分かります。
 解くには $I$ を消去するのが簡単そうです。やってみましょう。
 式 $(2)$ より、
 
 <tex>
 I = \dfrac{m (\dot{v}+ \mu g)}{BL} \tag{##}
 </tex>
 
 となります。
 これを式 $(1)$ に代入して、
 
 <tex>
 \dfrac{m R}{BL}\dot{v}= V - B L v - \dfrac{R \mu m g}{BL} \tag{##}
 </tex>
 
 ここで、 $V-\dfrac{R \mu mg}{BL} \geq 0$ と仮定します [*]_ 。 $\dot{v}=0$ の時、
 つまり棒は終端速度 $v=\dfrac{V}{BL} \left(1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right)$ を持つことがわかります。
 いつまでたっても、 $v \leq \dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right)$ であることを注意しておきます。
 
 .. [*] この仮定が成り立たない時は、棒を駆動する電力が摩擦力を下回る時ですので、自明な解 $v=0 , I=\dfrac{V}{R}$ となりま  す。ちなみにこの時、式 $(2)$ は摩擦力を $M$ として、 $m \dot{v}= BLI - M =0$ となります。
 
 さて、これは変数分離形ですね。( $v$ の関数)=( $t$ の関数)の形にします。
 
 <tex>
 \dfrac{1}{BL}\dfrac{\dfrac{dv}{dt}}{\dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right)-v}=\dfrac{BL}{mR} \tag{##}
 </tex>
 
 初期条件として $t=0$ で、棒は静止している、つまり、 $v=0$ とします。
 不定積分として一時的に積分定数を持ち出すこともできますが、
 ここは、定積分で求めることにします。
 
 <tex>
 \int_0^v \dfrac{1}{BL}\dfrac{dv}{\dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right)-v}= \int_0^t \dfrac{BL}{mR}dt \tag{##}
 </tex>
 
 と、このように実行すると、
 
 <tex>
 \log \left| \dfrac{\dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right)-v}{\dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right) } \right| = - \dfrac{B^2L^2}{mR}t \tag{##}
 </tex>
 
 ここで、対数関数の引数の絶対値を外すのに少し考えなければなりません。
 先ほど、 $v \leq \dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right) $ を満たすことを注意しました。
 どうやら、
 
 <tex>
 \log \left( \dfrac{\dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right) - v}{\dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right)} \right) = - \dfrac{B^2L^2}{mR}t \tag{##}
 </tex>
 
 ということでよいようです。
 さて、この両辺を指数関数の肩に乗せましょう。
 すると、
 
 <tex>
 \dfrac{\dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right)-v}{\dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right)}=e^{-\dfrac{B^2L^2}{mR}t} \tag{##}
 </tex>
 
 となります。これを $v$ について解いてやれば、
 
 <tex>
 v = \dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right) \left( 1 - e^{-\dfrac{B^2L^2}{mR}t} \right) \tag{##}
 </tex>
 
 .. image :: chromel-railAndRod-02-t.png
 
 確認のため、いろいろチェックしてみます。
 
 まず、 $t=0$ の時に $v=0$ 、いいですね。
 
 そして、十分時間がたつと、終端速度 $\dfrac{V}{BL} \left( 1-\dfrac{R \mu mg}{VBL} \right)$ にいくのも予想した通りです。
 
 また、一番最初の棒が運動していない時、 $I_0 \equiv I(t=0) = \dfrac{V}{R}$ と置くと、
 
 <tex>
 m \dot{v} = \left( \dfrac{BLV}{R} - \mu mg \right)e^{-\dfrac{B^2L^2}{mR}t} \tag{##}
 </tex>
 
 より、
 
 <tex>
 m \dot{v}(t=0) = BLI_0 - \mu mg \tag{##}
 </tex> 
 
 となり、式 $(2)$ と比較すれば、正しい結果であることが分かります。
 一応、 $I$ も確認しておくと、
 
 <tex>
 I &= \dfrac{m \dot{v} + \mu mg}{BL} \\
   &= \left( \dfrac{V}{R} - \dfrac{\mu mg}{BL} \right) e^{-\dfrac{B^2L^2}{mR}t} + \dfrac{\mu mg}{BL} \tag{##}
 </tex>
 
 .. image :: chromel-railAndRod-03-t.png
 
 と、このようになりました。
 
 特殊相対論の見方
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 ここで定性的な話になりますが、見方を変えてみましょう。
 慣性系を二つ考えます。一つは今まで考えてきた系( $x$ 系)です。
 もう一つは、棒の終端速度 $\bm{v}$ に一致する運動をする系( $x^\prime $ 系)です。
 参考文献に挙げた佐藤勝彦先生の本によると、
 非相対論的極限では、 $x$ 系の電場 $\bm{E}$ 、磁束密度 $\bm{B}$ 、磁場 $\bm{H}$ 、電束密度 $\bm{D}$ 
 とし、 $x^\prime$ 系の
 電場 $\bm{E}^\prime$ 、磁束密度 $\bm{B}^\prime$ 、磁場 $\bm{H}^\prime$ 、電束密度 $\bm{D}^\prime$ とすると、
 
 <tex>
 \bm{E}^\prime = \bm{E} + \bm{v} \times \bm{B} \tag{##}
 </tex>
 
 <tex>
 \bm{H}^\prime = \bm{H} - \bm{v} \times \bm{D} \tag{##}
 </tex>
 
 となります。電位差の付いたレールが作り出す電束密度は、
 
 
 @@reference: 川村清,「岩波基礎物理シリーズ3」電磁気学, 岩波書店, 1994, p175-p186, 4000079239@@
 @@reference: 佐藤勝彦,「岩波基礎物理シリーズ9」相対性理論, 岩波書店, 1996, p39, 4000079298@@
 
 @@author:クロメル@@
 @@accept:2012-06-10@@
 @@category:電磁気学@@
 @@id:railAndRod@@
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