物理のかぎしっぽ 記事ソース/天然原子炉 のバックアップソース(No.3)
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天然原子炉
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原子力と自然、ひょっとしたら、これら二つからは相反する印象を受けるかもしれません。原子力エネルギーは自然法則に反した悪のエネルギーなんて話も…… [*]_ 。もちろん、原子力のエネルギーは自然法則に反してはいません。原子力エネルギーの源である核分裂反応は、放射性物質がある程度あつまれば自然に起こる現象です。
昔々、 `アフリカのガボン共和国オクロ地区 <http://maps.google.com/?ie=UTF8&z=7&ll=-1.043643,11.557617&spn=7.738204,8.503418&t=h&om=1>`_ のウラン鉱山では、なんと原子炉の化石が発見されています。
ウラン鉱床のウランが自然と核分裂反応を起こし「天然原子炉」として存在していたのです。
この記事では、そんな天然原子炉の仕組みにスポットを当ててみます。

.. [*] http://homepage2.nifty.com/eman/columns/joshiki.html


原子炉のおおまかな原理
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天然原子炉の前に、原子炉というものの原理を超おおまかに説明します。世の中にはいろいろ法則というものがありますが、原子炉に関して重要なのは「ある元素が核分裂という反応をすると、エネルギーが出る」という法則です。ある元素とは、たとえばウラン(元素記号 U)やプルトニウム(元素記号 Pu)などが有名です。これらの元素が分裂すると、自然の法則に従ってエネルギーが放出されます。

原子炉の超おおまかな説明としては以上ですが、キーワードとして「臨界量」、「放射性同位体」、「半減期」の説明を続けます。また、この記事では核分裂する元素としてウランのみを扱います。

臨界量
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核分裂反応のためには、「中性子がウランに飛び込んでくる」というキッカケが必要です。下図のようなイメージです。

.. image:: NaturalReactor-1.png

核分裂すると、また新しく中性子が飛び出します。その飛び出た中性子は、今度は別のウランに核分裂反応のキッカケを与えます。このように、キッカケをキッカケとしてどんどん核分裂反応が進んで行きます。これを連鎖反応と言います。連鎖反応が続くだけの核分裂燃料(ウランやプルトニウム等)の量を臨界量と言います。

放射性同位体
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ウランやプルトニウムには、核分裂反応を起こすものと起こさないものとがあります。元素としては同じなのですが、中身が(内部の中性子の量が)ちょっと違っているのです。ウランは山から掘ってくることができますが、そのなかで核分裂反応を起こすもの、つまり原子炉の燃料になるものとならないものがあります。核分裂反応を起こすものを ${}^{235}\rm{U}$ (ウランにひゃくさんじゅうご)、核分裂反応を起こさないものを ${}^{238}\rm{U}$ (ウランにひゃくさんじゅうはち)と言います [*]_ 。山からとれたウランはほとんど(99.25%)が ${}^{238}\rm{U}$ で、核分裂反応を起こす ${}^{235}\rm{U}$ はたったの 0.072% しか存在しません。

.. image:: NaturalReactor-2.png

.. [*] 本当はもう少したくさん種類がありますが、この記事の範囲ではこれだけ知っていれば十分です。

半減期
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なぜ天然に原子炉が存在していたのか
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核分裂反応が自然に起こっていた理由、それは ${}^{238}\rm{U}$ と ${}^{235}\rm{U} との半減期の差にあります。すなわち、核分裂反応を起こす ${}^{235}\rm{U} は半減期が短いため、過去に遡るほど現在よりも存在比が大きかったのです。

ちょっと計算してみましょう
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20億年前の ${}^{235}\rm{U}$ と ${}^{238}\rm{U}$ の存在比を、簡単な半減期計算で推定してみます。

.. csv-table::
   '', '', ''

<tex>
N = N_0\left(\frac{1}{2}\right)^{t/T}
</tex>

$N=0.072$ , $T=7\times10^8$, $t=20\times10^8$ を代入すると
<tex>
0.072 &= N_0\left(\frac{1}{2}\right)^{20/7}\\
N_0   &= \frac{0.072}{\left(\frac{1}{2}\right)^{20/7}}\\
      &= 0.522
</tex>

$N=99.25$ , $T=45\times10^8$, $t=20\times10^8$ を代入すると
<tex>
99.25 &= N_0\left(\frac{1}{2}\right)^{20/45}\\
N_0   &= \frac{99.25}{\left(\frac{1}{2}\right)^{20/45}}\\
      &= 135
</tex>

したがって、20億年前の ${}^{235}\rm{U}$ の存在比は
<tex>
\frac{0.52}{0.522+134}\times100 = 0.38\%
</tex>


@@reference: sta-atm.jst.go.jp:8080/04020110_1.html@@
@@author:崎間@@
@@accept:執筆中@@
@@category:エネルギーのもんだい@@
@@id: NaturalReactor@@
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