物理のかぎしっぽ 記事ソース/続・自転車について のバックアップの現在との差分(No.5)

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 続・自転車について
 続・自転車と坂道
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 今回は 前の記事_ に続いて、すこし数式を交えながら、
 自転車の効率のよい乗り方について、考えてみましょう。
 
 エッセンス
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 さて、自転車をこぐ時、足にかかる力 $F$ 、足の速度 $v$ でこぐとしましょう。
 単位時間当たりの疲れ具合(仕事率)は、 $P=Fv$ となるものと思われます。
 ここで、 $t$ 秒間こぎ続けると、消費する仕事 $W$ は $W = Pt = Fvt$ です。そして、
 進む距離 $L$ は足が一回転したときの足の動く距離と自転車の車輪が一回転する距離の比を、 $\alpha$ 
 とすると、 $L = \alpha v t$ となります。
 ちなみにこの時自転車を加速する力は、 $Fv=\alpha v (F/\alpha)= P(const.)$ となることを仮定します。
 すると、おやおや?単位距離を移動する時の仕事量(効率) $K$ が $K = \dfrac{Fvt}{\alpha v t} = \dfrac{P(const.)t}{\alpha v t} $ となりますから、足の回転速度 $v$ が速いほど、同じ仕事をした際に、移動する距離(効率)が大きくなる事が分かります。
 ちなみにこの時自転車を加速する力は、 $Fv=\alpha v (F/\alpha)= P(\mathrm{const.})$ となることを仮定します。
 すると、おやおや?単位距離を移動する時の仕事量(効率) $K$ が $K = \dfrac{Fvt}{\alpha v t} = \dfrac{P(\mathrm{const.})t}{\alpha v t} $ となりますから、足の回転速度 $v$ が速いほど、同じ仕事をした際に、移動する距離(効率)が大きくなる事が分かります。
 これは、坂道を勢いをつけて上る時と、静止した状態から坂道を上る時の疲れ方の差を説明できることになります。
 もちろん、勢いをつけて上る方が疲れません。と、ここまでが、この記事のエッセンスです。
 
 K.I.氏の不満
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 と、友人であるK.I.氏に、学校帰り思いつきでこの様なメールを送ったら、
 ある程度勢いがついたら $F=0$ でも平坦な道ならどこまでも進むよね?と言われました。
 なるほど、車輪の転がり摩擦、空気抵抗等を考慮して、もうすこし議論を発展させてみましょう。
 なるほど、車輪の転がり摩擦、坂による効果等を考慮して、もうすこし議論を発展させてみましょう。
 
 (1)速度に比例する力が抵抗になる時
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 減速力を速度に比例する $\eta v$ としましょう。
 自転車の運動方程式は、
 これは簡単です。速度に比例する抵抗を受けるなら、
 仕事率は $P \propto v$ ですね?
 そして、単位距離を移動するには $ 1/\alpha v $ 秒かかりますから、
 単位距離を移動する時の仕事率は、 $ P/\alpha v \propto \mathrm{const.} $ 
 よって、どんな速さで走ってもおおよその疲れ具合は変わりません。
 
 <tex>
 m \dot{v} = F/\alpha - \eta v \tag{##}
 </tex>
 
 ただし、 $\dot{v} = \dfrac{\mathrm{d} v}{\mathrm{d} t } $ を表します。
 よって、この時、 $t$ 秒間に進むのに使う仕事 $Fvt$ は、
 
 <tex>
 Fvt = F/\alpha \cdot \alpha vt =  m \dot{v} \cdot \alpha vt + \alpha \eta v^2 t \tag{##}
 </tex>
 
 自転車が終端速度 $v_{max}$ になるとき、 $\dot{v} = 0$ なので、
 
 <tex>
 Fv_{max}t = \alpha \eta v_{max}^2 t \tag{##}
 </tex>
 
 一方、この時自転車の移動距離は $v_{max} t $ 、よって、
 単位距離当たりのエネルギー消費 $K$ は、
 
 <tex>
 K = \alpha \eta v_{max}^2 t / v_{max} t = \alpha \eta v_{max} \tag{##}
 </tex>
 
 となります。速度に比例する抵抗が働いてる場合、ゆっくり走った方が得です。
 
 (2)坂道を上る時
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 一方、上りの坂道では、自重に比例した力が働きます。それを、
  $B = m g \sin \theta $ とします。
 
 まず、運動方程式から書きます。
 
 <tex>
 m \dot{v} = F/\alpha -B \tag{##}
 m \alpha \dot{v} = F/\alpha - B \tag{##}
 </tex>
 
 ここで、坂道は十分急で、上の式の右辺は、負の値だとします。
 この解を求めてみましょう。
 
 <tex>
 \dot{v} = \dfrac{1}{m}(F/\alpha -B) \tag{##}
 \dot{v} = \dfrac{1}{\alpha m}(F/\alpha -B) \tag{##}
 </tex>
 
 この式を $t$ で積分して
 
 <tex>
 v = v_0 + \dfrac{1}{m}(F/\alpha -B)t \tag{##}
 v = v_0 + \dfrac{1}{m \alpha}(F/\alpha -B)t \tag{##}
 </tex>
 
 さらに $t$ で積分して、
 
 <tex>
 L = v_0 t + \dfrac{1}{2m}(F/\alpha -B)t^2 \tag{##}
 L = v_0 t + \dfrac{1}{2m \alpha }(F/\alpha -B)t^2 \tag{##}
 </tex>
 
 となります。ここで、エッセンスでの仮定を用います。
 つまり、 $P = Fv = const.$ です。すると、 $t$ 秒間の仕事 $W$ は、
 定数の時間積分より、ただの積 $W=Pt$ となります。
 よって、単位移動距離 $L$ 当たりの仕事の消費量 $K$ は、
 よって、単位移動距離 $ \alpha L$ 当たりの仕事の消費量 $K$ は、
 
 <tex>
 K = \dfrac{Pt}{L} = \dfrac{P}{v_0 + t(F/\alpha - B)/2m } \tag{##}
 K = \dfrac{Pt}{\alpha L} = \dfrac{P}{\alpha v_0 + (F/ \alpha - B )t/2m } \tag{##}
 </tex>
 
 この消費量は初期速度 $v_0$ が大きいほど小さく、 $B$ が大きいほど(坂がきついほど)
 大きいことが分かります。
 
 よって、直観的に坂道は助走して走った方が疲れないことと一致することが分かりました。
 
 今日は、ここまで。お疲れ様でした。いかがでした?K.I.氏?
 
 .. _前の記事: http://hooktail.sub.jp/mechanics/bicycle
 
 @@author:クロメル@@
 @@accept:2011-10-10@@
 @@category:力学@@
 @@id:zokuBicycle@@
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