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解曲線 (direction field/slope field)
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微分方程式を解く上で非常に重要になってくるコンセプトとして、解曲線を提案しておきます。
何が良いの?代数的に解ければ良くない?と聞かれると回答に窮してしまいそうですが、
英語では direction field あるいは slope field と呼ばれる解曲線を見れば、
解の情報をある種の流れのようにして視覚化できる、と言えば何とか回答になりそうです。
ここではその解曲線について少し見ていきたいと思います。

質点の落下運動
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説明するのが下手なので、いきなり例を入れて説明します。
ニュートンの第二法則は質量 $m$ の物体が力 $\bm{F}$ を受けるとき、
その物体にはある加速度 $\bm{a}$ が与えられる、という主張でした。
よって
</text>
m/bm{a}=\bm{F}
</text>
ここで、質点の落下運動を考えてみましょう。
折角ですから、高校までは考慮しなかった空気抵抗を考えましょう。
質量 $m$ を持つ質点が加速度 $a$ を得るとき、
質点には、下方向に働く重力 $mg$ と
上方向に働く空気抵抗 $kv$ が存在します ( $k$ : 空気抵抗係数) 。
従って、ニュートンの第二法則から
</text>
ma=mg-kv
</text>
少し書き換えて
</text>
dv/dt=g-k/mv
</text>
としましょう。
見慣れた表現ですが、 $m=2$ 、 $g=9.8$ 、 $k=0.784$ としてみると
</text>
dv/dt=9.8-0.392v
</text>
まで書き換えられます。
ここで、あるランダムな時刻 $t$ に質点が $v=50 \unit{m}$
だけの速度を持っていたとすると、
</text>
dv/dt=-9.8
</text>
となり、このとき速度は負の勾配を持つことが分かります。
適当に $dv/dt$ が0になる速度 $v$ を探してみると、 $v=25$ が見つかりました。
 $dv/dt$ が0になるので、つまり、  $v=25$ では勾配が0です。
 $v$ と $t$ との関係をグラフ化すると

graph

例えば、 $v=50 \unit{m}$ では $dv/dt=-9.8$ の傾きがありました。
時間依存性はないので、 $v=50$ ではずっと $dv/dt=-9.8$ のはずですが、
同様に別の速度でも調べ続けると

graph

さらに調べると

graph


グラフをよく見ると、時間が経つにつれて質点の速度が $v=25$ に
近づいています。
つまり、 $v=25$ より大きい速度があればそれは減少するし、
 $v=25$ より小さい速度があればそれは増加して、
最終的には $v=25$ に近づく、ということです。
なるほど!自由落下する物体は途中まで加速するけど、
あるところから一定の速度になって落下するとか高校の先生言ってたな!
と感じていただければ幸いです。

簡単な例
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簡単な例として
</text>
dy/dx=x
</text>
や
</text>
dy/dx=y(5-y)
</text>
を描いてみてください。
 $x$ と $y$ の関係を調べるわけですが、 $(x, y)$ を適当にとって
 $dy/dx$ の値を調べます。
計算した結果、 $dy/dx$ が正なら、その点では $dy/dx$ が右上がりに、
 $dy/dx$ が負なら、その点では $dy/dx$ が右下がりになっているということです。
ヒントを残しておくと、 $dy/dx=x$ は $y=x^2$ に似た形をしていて、
 $dy/dx=y(5-y)$ は0から離れる流れと5に収束する流れが存在しているはずです。
これらを描いてみると解の流れという感覚が少し理解できると思います。

あとがき
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このように、解が持つある種の流れを表現できるのが
解曲線を描く意味と (個人的に) 感じております。
この考えは後々、ロジスティック方程式などを代表とする
自励系の解の安定性などを議論する際に登場します。
最終的に必要なくなってくる考えでもありますが、
覚えておいて損はないということで。

@@reference:tutorial.math.lamar.edu/Classes/DE/DirectionFields.aspx@@

@@author:とり@@
@@accept:執筆中@@
@@category:常微分方程式@@

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