物理のかぎしっぽ 記事ソース/テスト0716 のバックアップの現在との差分(No.1)

 #rst2hooktail_source
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 不定期連載コラム第 1 回『特殊な一階の常微分方程式』
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 先日,かぎしっぽのメーリングリストで,池の氷の成長速度 
 (氷の厚さ) が話題になりました。
 詳細な説明はここでは致しませんが,
 氷の厚さ $u$ と時刻 $t$ との間には,ある定数 $a$ を用いて
 
 .. _eq01:  
 <tex> 
 \frac{\, \mathrm{d} \,}{\, \mathrm{d}t \,} u = \frac{\, a \,}{\, u \,} \qquad \tag{1} 
 </tex> 
 
 という関係があるというものでした。
 この `(1) 式`_ の微分方程式の解は,積分定数 $C$ を用いて,
 
 <tex> 
 u = \pm \sqrt{\mathstrut 2 a t + C \,} \qquad \tag{2} 
 </tex> 
 
 と表されます [*]_ 。
 つまり,大雑把にいえば $\sqrt{\mathstrut t \,}$ に比例します。
 
 .. [*] 
     この問題の場合は,氷の厚さですので,
     常に $0 \leq u$ かつ, $t = 0$ のとき, $u = 0$ です。
     よって, $C = 0$ となり, $0 \leq u$ と併せて, 
     $u = \sqrt{\mathstrut 2 a t \,}$ となります。
 
 この微分方程式を眺めていて,
 
 .. _eq03: 
 <tex> 
 \frac{\, \mathrm{d} \,}{\, \mathrm{d}t \,} u = a u \qquad \tag{3} 
 </tex> 
 
 の解が,積分定数 $C$ を用いて,
 
 <tex> 
 u = \pm C \mathrm{e}^{at} \qquad \tag{4} 
 </tex> 
 
 で表されることが頭に浮かんで来ました。
 この二つの微分方程式は,共に,
 
 .. _eq05: 
 <tex> 
 \frac{\, \mathrm{d} \,}{\, \mathrm{d}t \,} u = a {u}^{k} \qquad \tag{5} 
 </tex> 
 
 という形をしています [*]_ 。
 しかし,その解は,一方では平方根,もう一方は指数関数と,全く違った形をしています。
 そこで,今回は, `(5) 式`_ の形の微分方程式を解いてみたいと思います。
 
 .. [*] 
     `(5) 式`_ で $k = -1$ とおくと `(1) 式`_ になり, 
     $k = 1$ とおくと `(3) 式`_ になります。
 
 
 前提条件
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 さて, `(5) 式`_ を解く訳ですが,その前提条件を決めておきましょう。 
 $u$ は $t$ の函数ですが,ここで定義域は $0 \leq t$ とします。 
 $k$ を実数全体に拡張したいので, $0 \leq u$ とします。
 更に, $0 < t$ のとき, $0 < u$ であるとします。
 定数 $a$ も, $0 < a$ とします。これらの条件下で [*]_ 
 `(5) 式`_ を解きます。
 
 ここで,簡単の為に, ${}^{\prime}$ は $t$ による微分を表すこととします。
 即ち, `(5) 式`_ は,
 
 .. _eq06: 
 <tex> 
 {u}^{\prime} = a {u}^{k} \qquad \tag{6} 
 </tex> 
 
 となります。
 
 .. [*] 
     この条件では, $0 < t$ で右辺は常に正の値を取ります 
     ( $t = 0$ では $0$ 以上の値を取ります)。
     つまり,導関数の値が常に正または $0$ ですから,
     函数 $u$ は広義の単調増加函数です。
 
 
 
 では解いてみましょう
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 どうも、クロメルです。記事の作り方が記事ソースからに変わったようなので、
 `(6) 式`_ は, `変数分離形`_ で解く事が出来ますが,
 ここでは,ちょっと変わった解き方をしてみます。
 
 まず, $0 < t$ において, $0 < u$ であることから,
 `(6) 式`_ の両辺に ${u}^{-k}$ を掛けます。
 即ち,
 
 .. _eq07: 
 <tex> 
 {u}^{-k} {u}^{\prime} = a \qquad \tag{7} 
 </tex> 
 
 となります。
 
 
 ここで,函数 $u$ に対して, $j \neq 0$ のとき, 
 ${u}^{j}$ ( $j$ は実数) の $t$ による微分,
 即ち ${{u}^{j}}^{\prime}$ を考えます。
 これは,合成函数の微分から,
 
 .. _eq08: 
 <tex> 
 {\left({u}^{j}\right)}^{\prime} = j {{u}^{j - 1}} {u}^{\prime} \qquad \tag{8} 
 </tex> 
 
 が成り立ちます。
 
 ここで `(8) 式`_ を $j \neq 0$ に注意して整理しますと,
 
 .. _eq09: 
 <tex> 
 \frac{\,{\left({u}^{j}\right)}^{\prime}\,}{j} = {{u}^{j - 1}} {u}^{\prime} 
     \qquad \tag{9} 
 </tex> 
 
 となります。 
 
 `(9) 式`_ において, $j - 1 = -k$ とおくと, $j = 1 - k$ で $k \neq 1$ ,
 
 .. _eq10: 
 <tex> 
 \frac{\,{\left({u}^{1 - k}\right)}^{\prime}\,}{1 - k} = {{u}^{-k}} {u}^{\prime} 
     \qquad \tag{10} 
 </tex> 
 
 となります。 
 
 `(10) 式`_ の右辺は, `(7) 式`_ の左辺に等しいので,
 
 <tex> 
 \frac{\,{\left({u}^{1 - k}\right)}^{\prime}\,}{1 - k} = a 
     \qquad \tag{11} 
 </tex> 
 
 即ち,
 
 .. _eq12: 
 <tex> 
 \left({u}^{1 - k}\right)}^{\prime} = a (1 - k) \qquad \tag{12} 
 </tex> 
 
 となります。
 
 ここで, `(12) 式`_ の右辺 ( $a (1 - k)$ ) は定数であることに注意して
 両辺を $t$ で積分すると,$C$ を積分定数として,
 
 <tex> 
 {u}^{1 - k} = a (1 - k) t + C \qquad \tag{13} 
 </tex> 
 
 となりますから, $0 \leq u$ より,
 この両辺の $1 - k \, \left( \mathstrut k \neq 1 \right)$ 乗根を取ると,
 
 .. _eq14: 
 <tex> 
 u = {\left( a (1 - k) t + C \right) }^{\frac{1}{\, 1 - k \, }} \qquad \tag{14} 
 </tex> 
 
 となります。
 
 一方, $k = 1$ のときは,解くべき微分方程式 ( `(6) 式`_ ) は,
 
 <tex> 
 {u}^{\prime} = a u \qquad \tag{15} 
 </tex> 
 
 即ち
 
 <tex> 
 \frac{\, {u}^{\prime} \,}{u} = a \qquad \tag{16} 
 </tex> 
 
 となりますから, $0 < u$ のとき,
 
 <tex> 
 {\left(\ln u \right)}^{\prime} = \frac{\, {u}^{\prime} \,}{u} \qquad \tag{17} 
 </tex> 
 
 より [*]_ ,
 
 ..[*] 
     $\ln x$ は,${\log}_{\mathrm{e}} x$ のことです。
     高校では $\log x$ と底を省略した場合は,底が $\mathrm{e}$ で
     ある場合 (自然対数) と $10$ である場合 (常用対数) の双方がありましたが,
     それでは紛らわしいので, $\log$ は常用対数を, $\ln$ は自然対数を,
     それぞれ表すものとされています。
 
 
 .. _eq18: 
 <tex> 
 {\left(\ln u \right)}^{\prime} = a \qquad \tag{18} 
 </tex> 
 
 となります。 `式 (18)`_ の両辺を $t$ で積分して,
 
 <tex> 
 \ln u = a t + C \qquad \tag{19} 
 </tex> 
 
 即ち,
 
 <tex> 
 u = \mathrm{e}^{a t + C} = \mathrm{e}^{C} \mathrm{e}^{at} \qquad \tag{20} 
 </tex> 
 
 となりますが, $\mathrm{e}^{C}$ は定数ですので,これを改めて $C$ と書けば,
 
 .. _eq21: 
 <tex> 
 u = C \mathrm{e}^{at} \qquad \tag{21} 
 </tex> 
 
 となります。
 
 結局, $k \neq 1$ のときは, `(14) 式`_ が, $k = 1$ のときは, `(21) 式`_ が,
 それぞれ解となります。と,いうことで,今回のコラムはこれで終わります。
 ではまた。合掌
 
 
 
 
 
 
 .. 
     % ページ内リンク 
 
 .. _(1) 式: #eq01 
 .. _(3) 式: #eq03 
 .. _(5) 式: #eq05 
 .. _(6) 式: #eq06 
 .. _(7) 式: #eq07 
 .. _(8) 式: #eq08 
 .. _(9) 式: #eq09 
 .. _(10) 式: #eq10 
 .. _(12) 式: #eq12 
 .. _(14) 式: #eq14 
 .. _(18) 式: #eq18 
 .. _(21) 式: #eq21 
 
 
 ..  
     % ページ外リンク
 
 .. _変数分離形: http://hooktail.sub.jp/mathInPhys/separatVariables/ 
 
 
 
 
 
 @@author:K.I.@@
 @@accept:2014-07-16@@
 @@category:物理数学@@
 @@id:column1@@
 
 
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