物理のかぎしっぽ 記事ソース/うなり のバックアップソース(No.43)
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うなり
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高校の物理で波動の分野を勉強したとき、うなりという現象についても学んだと思います。
ここでは音波を例にとって説明します。実際にうなりを聴くこともできます。

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うなりとは
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うなりとは、音の高さがわずかに異なる二つの音が鳴っているとき、各々の基音の周波数の差に相当する周期で音の強弱が聞こえる現象です。
このとき二つの音は、ひとつの音の強弱が変化しているように聞こえます。
二つの音の高さがある程度まで離れると、両者は一つの音の強弱ではなく別の二音として聞こえます。


二つの音波の振動数がそれぞれ $f_1$ と $f_2$ で、振幅と位相は等しいとします。このとき、この二つの音波の重ね合わせは、
<tex>
s(t) = A \sin ( 2\pi f_1 t) + A \sin ( 2\pi f_2 t)
\tag{#def(eq1)}
</tex>
となります。

(#ref(eq1))式を三角関数の 和積の公式_ を用いて展開、整理します。

<tex>
s(t) & = 2A \cos \left( 2\pi \frac{f_1-f_2}{2} t \right)
            \sin \left( 2\pi \frac{f_1+f_2}{2} t \right)\\
     & = 2A \cos \left( 2\pi \frac{f_{\rm beat}}{2} t\right)
            \sin \left( 2\pi \bar{f} t \right)
\tag{#def(eq2)}
</tex>

ここで $|f_1 - f_2| \equiv f_{\rm beat}$ 、 $(f_1+f_2)/2 \equiv \bar{f}$ とおきました。
$f_{\rm beat}$ は $\cos$ の中身なので、 $f_{\rm beat}$ の正負によって $s(t)$ の値が変わることはありません。
したがって、ここでは $f_1$ と $f_2$ の差の絶対値を $f_{\rm beat}$ と置きました。

この (#ref(eq2)) 式は $f_{\rm beat} \ll \bar{f}$ であるとき、振動数 $f_2$ の波の振幅が振動数 $f_1$ で変調していると見ることができます。

$f_1 = 400 \ {\rm Hz}$ 、 $f_2 = 410 \ {\rm Hz}$ として (#ref(eq2)) 式のグラフを描くと次のようになります。

.. image:: co-beating01.png

青線が $\bar{f} = 400 \ {\rm Hz} + 410 \ {\rm Hz} = 405 \ {\rm Hz}$ の振動を表し、
赤線が $\frac{f_{\rm beat}}{2} = \frac{|400 \ {\rm Hz} - 410 \ {\rm Hz}|}{2} = 5 \ {\rm Hz}$ の振動を表しています。


さて、我々が音の大きさを感じるときには $s(t)$ を直接に感じているわけではありません。
振幅の二乗に比例して音の大きさを感じます。
したがって $s^2(t)$ を計算してやります。

<tex>
s^2(t) & = 4 A^2 \cos^2 \left( 2\pi \frac{f_{\rm beat}}{2} t \right)
                 \sin^2 \left( 2 \pi \bar{f} t \right)\\
       & = 2 A^2 \left( 1 + \cos (2\pi f_{\rm beat} t )\right) 
                 \sin^2 (2 \pi \bar{f} t) \tag{#def(eq3)}
</tex>

一行目から二行目への変形で 半角の公式_ を用いました。




.. _和積の公式: http://www12.plala.or.jp/ksp/mathInPhys/trigF1/index.html#id8

.. _半角の公式: http://www12.plala.or.jp/ksp/mathInPhys/trigF1/index.html#id6

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うなりを聴いてみよう
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数式の上では分かった気がしますが、うなりとは実際にはどのように聞こえるのでしょう?

次のアプレットでは、実際に二つの周波数の音を合成して聴くことができます。

まず振動数を調整します。それから、スピーカの音量に注意して、「Play」ボタンを押してみましょう。

.. raw:: html

  <applet archive="beating.jar" code="BeatingApplet.class" width="400" height="250"></applet>

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発展
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AM ラジオ
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いま、音波を例にとってうなりを解説しました。
うなりと同様な現象は、対象が波であれば起こります。

例えば AM ラジオは、数百-千数百キロヘルツという高周波の電磁波に、音波(数十ヘルツ-数十キロヘルツ)を電気信号化してのせています。

周波数 $f$ の音を送りたい場合、送り出す電波は次のような式で表すことができます。[*]_

<tex>
E(t) = A \left( 1 + m \cos ( 2 \pi f t ) \right) \cos \left( 2\pi F t \right) \tag{#def(am1)}
</tex>




.. [*] AM モノラル 放送の場合。


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弦楽器の調弦
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弦楽器を正確に調弦するために、うなりが利用されることがあります。

二つの弦で同じ音を出したとき、周波数が微妙にずれているとうなりが生じるので、うなりが消えるように調節していくわけです。


@@author: CO@@
@@accept: 執筆中@@
@@category: 波と振動@@
@@id: howling@@
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