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=============================== うなり =============================== 高校の物理で波動の分野を勉強したとき、うなりという現象についても学んだと思います。 ここでは音波を例にとって説明します。実際にうなりを聴くこともできます。 ------------------------------- うなりとは ------------------------------- うなりとは、音の高さがわずかに異なる二つの音が鳴っているとき、各々の基音の周波数の差に相当する周期で音の強弱が聞こえる現象です。 このとき二つの音は、ひとつの音の強弱が変化しているように聞こえます。 二つの音の高さがある程度まで離れると、両者は一つの音の強弱ではなく別の二音として聞こえます。 二つの音波の振動数がそれぞれ $f+\delta$ と $f - \delta$ で、振幅と位相は等しいとします。このとき、この二つの音波の重ね合わせは、 <tex> s(t) = A \sin \left( 2\pi\left(f-\delta\right) t \right) + A \sin \left( 2 \pi \left(f+\delta\right) t\right) \tag{#def(eq1)} </tex> となります。 (#ref(eq1))式を三角関数の加法定理を用いて展開、整理します。 <tex> s(t) & = A \left( \sin ( 2\pi f t ) \cos ( 2\pi \delta t ) - \cos ( 2\pi f t ) \sin ( 2\pi \delta t ) + \sin ( 2\pi f t ) \cos ( 2\pi \delta t ) + \cos ( 2\pi f t ) \sin ( 2\pi \delta t ) \right)\\ & = \left[ 2 A \cos ( 2 \pi \delta t ) \right] \sin ( 2 \pi f t )\\ & = A_{\rm beat} \sin (2\pi f t) \tag{#def(eq2)} </tex> ここで $A_{\rm beat} = 2 A \cos ( 2 \pi \delta t )$ とおきました。 例えば $f_1 = 400 \ \rm{Hz}$ の音と $f_2 = 410 \ {\rm Hz}$ の同じ強さの音が鳴っているとき、一秒間に 10 回の強弱を繰り返して聞こえることになります。 このようすを図に描くと、次のようになります。赤線が式 (#ref(eq2)) の $A_{\rm beat}$ 、青線が (#ref(eq2)) 全体をプロットしたものになります。 .. image:: co-beating01.png 振幅 $A_{\rm beat}$ の振動数は $\delta = 5 \ {\rm Hz}$ なのに、なぜ 10 回の強弱が聞こえるのか不思議に思うかもしれません。 上のグラフを良く見てください。「強弱」とは、振幅が最大になる点とゼロになる点の繰り返しのことです。 最大・ゼロ・最大・ゼロ・・・ は 0.1 秒周期で繰り返していますね。すなわち $10 \ {\rm Hz}$ なのです。 これは、我々の耳が振幅を聴くのではなく音の大きさ(振幅の二乗)を感じていることにも関係します。 この強弱の繰り返しの振動数 $|f_2 - f_1|$ をうなりの振動数 (beating frequency) といいます。 -------------------------------- うなりを聴いてみよう -------------------------------- 数式の上では分かった気がしますが、うなりとは実際にはどのように聞こえるのでしょう? 次のアプレットでは、実際に二つの周波数の音を合成して聴くことができます。 まず振動数を調整します。それから、スピーカの音量に注意して、「Play」ボタンを押してみましょう。 .. raw:: html <applet archive="beating.jar" code="BeatingApplet.class" width="400" height="250"></applet> -------------------------------- 発展 -------------------------------- ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ AM ラジオ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ いま、音波を例にとってうなりを解説しました。 うなりと同様な現象は、対象が波であれば起こります。 例えば AM ラジオは、数百-千数百キロヘルツという高周波の電磁波に、音波(数十ヘルツ-数十キロヘルツ)を電気信号化してのせています。 周波数 $f$ の音を送りたい場合、送り出す電波は次のような式で表すことができます。[*]_ <tex> E(t) = A \left( 1 + m \cos ( 2 \pi f t ) \right) \cos \left( 2\pi F t \right) \tag{#def(am1)} </tex> .. [*] AM モノラル 放送の場合。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 弦楽器の調弦 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 弦楽器を正確に調弦するために、うなりが利用されることがあります。 二つの弦で同じ音を出したとき、周波数が微妙にずれているとうなりが生じるので、うなりが消えるように調節していくわけです。 @@author: CO@@ @@accept: 執筆中@@ @@category: 波と振動@@ @@id: howling@@