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ベクトル解析奮闘記2
ベクトル解析奮闘記3
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大学に入ると”ベクトル解析”を習うのですが、高校でやる”ベクトル”よりも
ちょっと手ごわそうです。黒板に先生が書いた式も、難しそうだし・・・。
もしよろしかったら私と一緒にベクトル解析の基本、やってみませんか。
(続き物なので ベクトル解析奮闘記1_ からお読みいただくと嬉しいです!)
.. _ベクトル解析奮闘記1: http://www12.plala.or.jp/ksp/vectoranalysis/vecFuntou1/
自宅で復習(divの巻)
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えーっと、 ${\rm div}$ か・・・。読みは”ダイバージェンス”(divergence=放射状に広がること)。
先生が黒板に書いた式は $\vec{A}$ をベクトル関数とすると
<tex>\vec{A}=(A_x,A_y,A_z)</tex>と書けて、
<tex>{\rm div}\vec{A}=\frac{\partial A_x}{\partial x}+\frac{\partial A_y}{\partial y}+\frac{\partial A_z}{\partial z}</tex>
ですか・・・。偏微分記号 $\partial$ は少し見慣れてきました。今度は ${\rm grad}$ と逆に、ベクトルからスカラーを作っていますね。
自宅で復習(rotの巻)
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いよいよ最後、 ${\rm rot}$ 。読みは”ローテーション”( $rotation=$ 回転)。
先生が黒板に書いた式は・・・、う〜ん、
これは $\partial$ ばっかりで、 ${\rm grad}$ よりも ${\rm div}$ よりも、一層難しそうな顔をしている・・・。眺めていてもわからないので、先生が言われた”渦(うず)の事ですよ!”をヒントに、考えてみる事にしました。
ベクトル関数
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まずベクトル関数というものですが、空間の一点で決まるベクトル、つまり、空中に矢印がいっぱい浮かんでいて(下図参照)、一点(例えば点 $P$ )を指定すると長さと方向(向き)を指定した矢印が一つだけ決まる(ベクトルがたったひとつ決まる)という事のようですね。その時、ベクトルの始点はどことは決まっていないのですが、点 $P$ をずばり始点に考えるとわかりやすいかもしれません。
小川の流れをヒントに
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北から南に流れている小川があったとして、私が橋の上から南(下流)を見ていたとしましょう(下図参照)。
.. image:: yakan-vec2-fig6.png
.. image:: yakan-vec3-fig1.png
3次元ベクトルなので $x$ 軸、 $y$ 軸、 $z$ 軸方向の成分が3つあるというわけですか・・・。ここで紛らわしいのは、それぞれの各成分( $A_x$ など) が、一点 $(x,y,z)$ の値で決まる、つまり $x$ , $y$ , $z$ 3つで決まるという事ですね( $A_x$ が $x$ 1個だけで決まるわけではない、と)。 $A_x$ , $A_y$ , $A_z$ それぞれは別個のスカラー関数だから、替わりに $F$ , $G$ , $H$ と書くと、
<tex>\vec{A}=(F,G,H)</tex>
の方が誤解が少ないかな(同じか・・・)。
普通のイメージでは、さらさらと渦など作らずに、東の岸付近の水も、西の岸付近の水も、平行に流れて行きますよね(もうすでに頭の中で渦が巻いている方もいらっしゃるでしょうか・・・)。さて平行なはずの水流が、一体どうなれば渦を巻くのでしょう?まず東から西の方向・向きを $x$ 軸、 北から南(水流と平行)に行く方向・向きを $y$ 軸とします。もし東から西に行くほど( $x$ 軸を正に行けば行くほど) 小川の流れが速いとすると、なんだか反時計回りに回り込んで、渦を巻きそうです。これは $x$ の増加に対応する $y$ 方向速度成分( $y$ 方向の矢印の長さ。速度を長さで表しているだけで、長さの分、南に動くとは限らないし、もちろん $y$ の値ではない。)の変化率が正という事です。水流の速度を表すベクトル関数を
<tex>
\vec{A}=(F,G)
</tex>
とすると、 $y$ 方向成分は、スカラー関数 $G$ で表されるから、
<tex>
\frac{\partial G}{\partial x}
</tex>
が正で、なおかつこの値が大きければ大きいほど渦は強そうですね(下図参照)。
量が湧き出す小箱?
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さて、先生が黒板に書いた図によるご説明では、”直方体のような図形を通過するときにどのくらい数値が増加するかを考える”とおっしゃっていましたっけ。”要するに湧き出し口ですよ!”とも言われていましたが、そこの地点を境に量(値)が増える、という意味でしょうか。
.. image:: yakan-vec3-fig2.png
でもそれだけでいいんでしょうか?
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まてよ、もしかしたら、下流の方が上流より、東から西方向(小川の流れに直交する方向)への速度があるかもしれません。もしそうなら、さっきとは丁度逆に、時計回りの渦を作りそうです。これは、”下流に行く( $y$ が増加する) ”ほど、”東西方向の流れが速くなる( $F$ が増加する)”わけですから、同様に数式で表すと
辺の長さがそれぞれ h , i , j の直方体を例に考えてみましょう(本や講義では、 $\Delta x,\Delta y,\Delta z$ を使っています)(下図参照)。
<tex>
\frac{\partial F}{\partial y}
</tex>
.. image:: yakan-vec2-fig1.png
となります(下図参照)。
もう一度自分の使い慣れた記号を使って書いてみます。直方体への, ある面 $A$ からの単位面積あたりの流入量(例えば温泉のお湯とか)を $F(x)$ とします。面 $A$ と平行な面 $B$ までの距離を $h$ ,長さ $h$ の辺に平行に $x$ 軸,同様に $i$ の辺に平行に $y$ 軸, $j$ の辺に平行に $z$ 軸をとると,
面 $B$ からの単位面積あたりの流出量は $F(x+h)$ となります(下図参照)。
.. image:: yakan-vec3-fig3.png
.. image:: yakan-vec2-fig2.png
従って、反時計回り方向の渦は、それを差し引いた分、
それぞれの面の面積は $ij$ だから、直方体を通る事による正味増加量は、それぞれ面積をかけて引き算すると、
<tex>
&ijF(x+h)-ijF(x)
\\
\\
&=ij\{F(x+h)-F(x) \}
\\
\\
&=hij\frac{F(x+h)-F(x)}{h}</tex>
良く見ると最後の式の $hij$ は直方体の体積、その右は $h$ を $0$ に近づけた時、 $F(x)$ の導関数(微分して得られる関数)の定義式になっているから
$hij$ を体積 $V$ 、 $F$ は $x,y,z$ 3変数の関数だけど、 $h$ を $0$ に近づけた場合( $h$ を非常に短い辺と考えて)、 $x$ に対してだけの微分(偏微分)になるから $\partial$ を使って、右辺は
<tex>V\frac{\partial F}{\partial x}</tex>
と書けますね。
<tex>\frac{\partial G}{\partial x}-\frac{\partial F}{\partial y}</tex>
が正で、値が大きければ大きいほど、強くおこりそうです。
実際にはあと対向する二組の面があるから、同様に( $x$ と同様に $y$ の場合、 $z$ の場合をそれぞれ考えて)
渦の方向・向き
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ところでこの渦、どの方向に向いていると表現したらいいのでしょうか? $x$ 軸方向?それとも $y$ 軸方向でしょうか?
でも、見る間にぐるぐる回っているので、いずれの方向で表すのも難しそうです。むしろ渦の真中に、水面と垂直に棒を立てて目印とし、”棒を軸とした周りの渦である”とした方がわかりやすそうですね。渦の強さは棒の長さで表せば、遠目に見ても一目瞭然です(下図参照)。
.. image:: yakan-vec3-fig4.png
$y$ の場合(以下に図と式)
.. image:: yakan-vec2-fig4.png
$x$ , $y$ と来たので、棒の方向は $z$ 軸になります。つまり $z$ 軸方向の渦(これ以降、回転)はさきほどの式
<tex>
&hjG(y+i)-hjG(y)
\\
\\
&=hj\{G(y+i)-G(y) \}
\\
\\
&=hij\frac{G(y+i)-G(y)}{i}</tex>
同様に $i$ を $0$ に近づけた極限を考えて、
<tex>V\frac{\partial G}{\partial y}</tex>
$z$ の場合(以下に図と式)
.. image:: yakan-vec2-fig5.png
\frac{\partial G}{\partial x}-\frac{\partial F}{\partial y}
</tex>
と考えられます。ここで小川のイメージから離れますが、ベクトル関数を2次元(平面)から3次元(空間)に拡張して $\vec{A}=(F,G,H)$ と置き、 $x$ 軸方向の回転についても、順に変数を入れ替えて、
<tex>
&hiH(z+j)-hiH(z)
\\
\\
&=hi\{H(z+j)-H(z) \}
\\
\\
&=hij\frac{H(z+j)-H(z)}{j}</tex>
同様に $j$ を $0$ に近づけた極限を考えて、
<tex>V\frac{\partial H}{\partial z}</tex>
となります。
\frac{\partial H}{\partial y}-\frac{\partial G}{\partial z}
</tex>
$y$ 軸方向の回転についても、順に変数を入れ替えて、
<tex>
\frac{\partial F}{\partial z}-\frac{\partial H}{\partial x}
</tex>
とできます。これらはそれぞれ方向の違う量なので、単純に足し算はできず、それぞれ回転の $x$ 方向成分、 $y$ 方向成分、 $z$ 方向成分として下記のように列記するしかありません。
<tex>
\left(\frac{\partial H}{\partial y}-\frac{\partial G}{\partial z},\frac{\partial F}{\partial z}-\frac{\partial H}{\partial x},\frac{\partial G}{\partial x}-\frac{\partial F}{\partial y}\right)
</tex>
これはスカラー関数の三つ組みとも言えますが、それぞれを $x,y,z$ 成分に持つ、3次元ベクトルとも考えられますね。このベクトルの事を $\vec{A}$ の回転(またはローテーション)、記号では、 ${\rm rot}\vec{A}$ と呼ぶようです。つまり回転軸は、より回転の強い軸方向に近く向いているわけです。なお普通は、 $\vec{A}=(A_x,A_y,A_z)$ という風に表記するので
<tex>
{\rm rot}\vec{A}=\left(\frac{\partial A_z}{\partial y}-\frac{\partial A_y}{\partial z},\frac{\partial A_x}{\partial z}-\frac{\partial A_z}{\partial x},\frac{\partial A_y}{\partial x}-\frac{\partial A_x}{\partial y}\right)
</tex>
という形になります(目が回りそう・・・)。
結局、3方向への増加分合計は、
<tex>V\frac{\partial F}{\partial x}+V\frac{\partial G}{\partial y}+V\frac{\partial H}{\partial z}=V \left( \frac{\partial F}{\partial x}+\frac{\partial G}{\partial y}+\frac{\partial H}{\partial z} \right)</tex>
となるわけですね。右辺に体積 $V$ が掛け算されて総増加分になるという事は、その右側の偏微分が一杯あるカッコ内は、”単位体積あたりの増加分”に相当する、という事になりそうです。要するに長方形の各辺に対する変化率の極限をとり、3方向の和を考えると、数式上、掛け合わされた辺が体積を表すことになり、残りが丁度偏微分の和で表されるという事のようですね。
なるほどこれイコール ${\rm div}\vec{A}$ (ベクトル $A$ のダイバージェンス)ということですか。 $\vec{A}$ は成分が3つあるからベクトル(関数)というわけですが、単に、 $x$ 方向、 $y$ 方向、 $z$ 方向の値をそれぞれ個別に決める3つの関数の列記に過ぎない、と考えても間違いではないかもしれません。
一体、何の役に?
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さて、この”回転”、何に使うのでしょうか?ベクトル解析全体が、電磁気学っぽいですが、棒の周りの”回転”というと、例えば、電線に電流を流した際に、周りにできる磁界ベクトルなどを表すのに使えるそうです。磁界ベクトルを $\vec{H}$ 、 電流密度ベクトルを $\vec{i}$ とすると、
数字を入れるとわかりやすいかも
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例えば
<tex>F=x+2y+3z</tex>
<tex>G=4x+5y+6z</tex>
<tex>H=7x+8y+9z</tex>
とすると、
<tex>
&{\rm div} \vec{A}(F,G,H)
\\
\\
&=\frac{\partial F}{\partial x}+\frac{\partial G}{\partial y}+\frac{\partial H}{\partial z}
\\
\\
&=\frac{\partial (x+2y+3z)}{\partial x}+\frac{\partial (4x+5y+6z)}{\partial y}+\frac{\partial (7x+8y+9z)}{\partial z}
\\
\\
&=1+5+9
\\
\\
&=15</tex>
となるわけですね。う〜ん、わかったと言えばわかったような・・・。
{\rm rot}\vec{H}=\vec{i}
</tex>
果たして何の役に?
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ところでこの ${\rm div}$ の概念、一体どうゆう場面で使うのでしょうか?
先生がおっしゃるには上にも書いたように温泉の湧き出し口のようなもので(水中の一点から本当に温泉が湧いてきたら怖いですけど・・・)、小さい放射性物質から四方八方に広がる放射線、電磁気学では点電荷から周りに出る電気力線、などらしいです。教科書を見ると、 $\vec{D}$ を電束密度ベクトル、 $\rho$ を電荷密度とした時に
となる・・・、そうですよ。
<tex>{\rm div} \vec{D}= \rho</tex>
という風に使うみたいですね。
電荷があると、電束が湧き出す・・・(とたんに難しそうに見えるから不思議です)。
みなさん、これからもベクトル解析、電磁気学頑張って下さいね。応援してます!(^-^)
(私も頑張ります(>_<))
(続き物なので ベクトル解析奮闘記1_ , ベクトル解析奮闘記3_ もお読みいただくと嬉しいです!)
.. _ベクトル解析奮闘記1: http://www12.plala.or.jp/ksp/vectoranalysis/vecFuntou1/
.. _ベクトル解析奮闘記3: http://www12.plala.or.jp/ksp/vectoranalysis/vecFuntou3/
@@reference:水本久夫,ベクトル解析の基礎,培風館,2001, ,4781908764@@
@@reference:一石 賢,道具としての物理数学,日本実業出版社,2002, ,4534034903@@
@@reference:谷口雅彦,なっとくするベクトル解析,講談社,2004, ,4061545515@@
@@author:やかん@@
@@information:イラスト:崎間@@
@@accept:2005-10-12@@
@@accept:2005-10-27@@
@@category: ベクトル解析@@
@@id: vecFuntou2@@
@@id: vecFuntou3@@