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ベクトル解析奮闘記3
ベクトル解析奮闘記1
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大学に入ると”ベクトル解析”を習うのですが、高校でやる”ベクトル”よりも
ちょっと手ごわそうです。黒板に先生が書いた式も、難しそうだし・・・。
もしよろしかったら私と一緒にベクトル解析の基本、やってみませんか。
はじめに
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講義などで初めてベクトル解析を習った時、“難しい”、“わけわからん”と思った経験がありませんか?実は私もその一人です。いまだに詳しくはわかりませんが、これまで私が悩んだ過程をここにご紹介して、もしご参考になればと思います。
(続き物なので ベクトル解析奮闘記1_ からお読みいただくと嬉しいです!)
.. _ベクトル解析奮闘記1: http://www12.plala.or.jp/ksp/vectoranalysis/vecFuntou1/
自宅で復習(rotの巻)
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いよいよ最後、 ${\rm rot}$ 。読みは”ローテーション”( $rotation=$ 回転)。
先生が黒板に書いた式は・・・、う〜ん、
これは $\partial$ ばっかりで、 ${\rm grad}$ よりも ${\rm div}$ よりも、一層難しそうな顔をしている・・・。眺めていてもわからないので、先生が言われた”渦(うず)の事ですよ!”をヒントに、考えてみる事にしました。
小川の流れをヒントに
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北から南に流れている小川があったとして、私が橋の上から南(下流)を見ていたとしましょう(下図参照)。
.. image:: yakan-vec3-fig1.png
普通のイメージでは、さらさらと渦など作らずに、東の岸付近の水も、西の岸付近の水も、平行に流れて行きますよね(もうすでに頭の中で渦が巻いている方もいらっしゃるでしょうか・・・)。さて平行なはずの水流が、一体どうなれば渦を巻くのでしょう?まず東から西の方向・向きを $x$ 軸、 北から南(水流と平行)に行く方向・向きを $y$ 軸とします。もし東から西に行くほど( $x$ 軸を正に行けば行くほど) 小川の流れが速いとすると、なんだか反時計回りに回り込んで、渦を巻きそうです。これは $x$ の増加に対応する $y$ 方向速度成分( $y$ 方向の矢印の長さ。速度を長さで表しているだけで、長さの分、南に動くとは限らないし、もちろん $y$ の値ではない。)の変化率が正という事です。水流の速度を表すベクトル関数を
初講義前日
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ベクトル解析って、ベクトルを使って問題解いたりするのでしょうか?ベクトルなら高校の数学で習ったし、要するに大きさと、方向(向き)を持つ概念ですよね?矢印作図して足し算したり、引き算したり、大きさを実数倍したり、特に始点を原点
<tex>
\vec{A}=(F,G)
(0,0)
</tex>
とすると、 $y$ 方向成分は、スカラー関数 $G$ で表されるから、
<tex>
\frac{\partial G}{\partial x}
</tex>
が正で、なおかつこの値が大きければ大きいほど渦は強そうですね(下図参照)。
にすれば終点の座標 $(x,y)$ でベクトルを表せちゃいます。作図しなくても、そういう風に成分表示すれば足し算、引き算も簡単です。内積だってわかります。成分で書くと $(a,b)\cdot(c,d)=ac+bd$ とすればいいのです。簡単、なはずです。
たいした事ないですよ、きっと。実は明日ベクトル解析の初講義なんですが、予習なんてしないで寝ちゃおっと・・・。
.. image:: yakan-vec3-fig2.png
翌日初講義終了。ところが!
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わー、なんなんだこれは!
わからん、全くわからん!だいたい三角関数の ${\rm sin,cos}$ じゃあるまいし、なんで
ベクトルやるのに3,4文字英単語( ${\rm grad}$ (グラジエント)、 ${\rm div}$ (ダイバージェンス)、 ${\rm rot}$ (ローテーション))や、おまけに偏微分記号まで出てくるんでしょう!もちろん ${\rm sin,cos}$ は私でもわかります、直角三角形の辺の比ですよね?(絵を書いてみればすぐわかります。)偏微分だって、他の変数(例えば $x$ で微分する場合、それ以外の $y,z$ など)を定数と見て、微分する事でしょ?それも知ってるんだがなあ。いずれにせよこれは家に帰ってよく復習しないと。電磁気学はこれ使うって言うし・・・。
でもそれだけでいいんでしょうか?
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まてよ、もしかしたら、下流の方が上流より、東から西方向(小川の流れに直交する方向)への速度があるかもしれません。もしそうなら、さっきとは丁度逆に、時計回りの渦を作りそうです。これは、”下流に行く( $y$ が増加する) ”ほど、”東西方向の流れが速くなる( $F$ が増加する)”わけですから、同様に数式で表すと
自宅で復習(gradの巻)
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ここであきらめたり、あせってもしょうがないのでまずゆっくり順番に考えてみました。
" ${\rm grad}$ "はえーっと" ${\rm gradient}$ (傾き)"の略ですか・・・。たしか先生が黒板に書いた式は
<tex>
\frac{\partial F}{\partial y}
{\rm grad}f=(\frac{\partial f}{\partial x}, \frac{\partial f}{\partial y},\frac{\partial f}{\partial z})
</tex>
となります(下図参照)。
.. image:: yakan-vec3-fig3.png
従って、反時計回り方向の渦は、それを差し引いた分、
<tex>\frac{\partial G}{\partial x}-\frac{\partial F}{\partial y}</tex>
が正で、値が大きければ大きいほど、強くおこりそうです。
渦の方向・向き
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ところでこの渦、どの方向に向いていると表現したらいいのでしょうか? $x$ 軸方向?それとも $y$ 軸方向でしょうか?
でも、見る間にぐるぐる回っているので、いずれの方向で表すのも難しそうです。むしろ渦の真中に、水面と垂直に棒を立てて目印とし、”棒を軸とした周りの渦である”とした方がわかりやすそうですね。渦の強さは棒の長さで表せば、遠目に見ても一目瞭然です(下図参照)。
.. image:: yakan-vec3-fig4.png
$x$ , $y$ と来たので、棒の方向は $z$ 軸になります。つまり $z$ 軸方向の渦(これ以降、回転)はさきほどの式
だったなー。
う〜ん、 ${\rm grad}$ ももちろん、 $\partial$ がいかにも難しそう・・・。でも冷静に見ると、これは値が三つ組みになってるから、スカラー(ベクトルのように方向を持たないただの数値)関数 $f$ から3次元のベクトルを一つ作ったようですね(どんなベクトルかはまだわかりませんが)。とりあえず、わかりやすくするために $z$ を省いて2次元で考えると
<tex>
\frac{\partial G}{\partial x}-\frac{\partial F}{\partial y}
{\rm grad} f=(\frac{\partial f}{\partial x}, \frac{\partial f}{\partial y})
</tex>
と考えられます。ここで小川のイメージから離れますが、ベクトル関数を2次元(平面)から3次元(空間)に拡張して $\vec{A}=(F,G,H)$ と置き、 $x$ 軸方向の回転についても、順に変数を入れ替えて、
あれっ、こうやってみると、 $x$ の変化に対する $f$ の変化率と、 $y$ の変化に対する $f$ の変化率を $x,y$ 成分に持つベクトルのようですね。例えば $f$ を具体的に考えると
<tex>
\frac{\partial H}{\partial y}-\frac{\partial G}{\partial z}
f=3x+4y
</tex>
$y$ 軸方向の回転についても、順に変数を入れ替えて、
なら
<tex>
\frac{\partial F}{\partial z}-\frac{\partial H}{\partial x}
\frac{\partial f}{\partial x}=3
</tex>
とできます。これらはそれぞれ方向の違う量なので、単純に足し算はできず、それぞれ回転の $x$ 方向成分、 $y$ 方向成分、 $z$ 方向成分として下記のように列記するしかありません。
( $4y$ は定数扱いで $0$ になる)
<tex>
\left(\frac{\partial H}{\partial y}-\frac{\partial G}{\partial z},\frac{\partial F}{\partial z}-\frac{\partial H}{\partial x},\frac{\partial G}{\partial x}-\frac{\partial F}{\partial y}\right)
\frac{\partial f}{\partial y}=4
</tex>
これはスカラー関数の三つ組みとも言えますが、それぞれを $x,y,z$ 成分に持つ、3次元ベクトルとも考えられますね。このベクトルの事を $\vec{A}$ の回転(またはローテーション)、記号では、 ${\rm rot}\vec{A}$ と呼ぶようです。つまり回転軸は、より回転の強い軸方向に近く向いているわけです。なお普通は、 $\vec{A}=(A_x,A_y,A_z)$ という風に表記するので
( $3x$ は定数扱いで $0$ になる)だから
<tex>
{\rm rot}\vec{A}=\left(\frac{\partial A_z}{\partial y}-\frac{\partial A_y}{\partial z},\frac{\partial A_x}{\partial z}-\frac{\partial A_z}{\partial x},\frac{\partial A_y}{\partial x}-\frac{\partial A_x}{\partial y}\right)
{\rm grad}f=(3,4)
</tex>
という形になります(目が回りそう・・・)。
となるわけですか・・・。
一体このベクトルは何者でしょうか?
今の場合、変数 $(x,y)$ の変化に対する $f$ の変化率を表記する時に、 $x$ 方向に対する変化率は $3$ 、 $y$ 方向に対する変化率は $4$ 、ということなのですが、どちらか $0$ なら、片方だけ(数値1個)で表されるのでしょうけど、実際はそうとは限らないし、 $x$ 方向と $y$ 方向じゃ違う方向の大きさですから、 $3+4=7$ と足し算するわけにもいきません。もし $(1,100)$ なら、ほとんど $y$ 方向と考えていいけど、 $x$ 方向も完全に無視はできないし、それぞれの方向の大きさに応じた合成方向・・・というわけですか。この数値の場合と、一般的な場合をグラフに書くと以下のようになりますね。
一体、何の役に?
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さて、この”回転”、何に使うのでしょうか?ベクトル解析全体が、電磁気学っぽいですが、棒の周りの”回転”というと、例えば、電線に電流を流した際に、周りにできる磁界ベクトルなどを表すのに使えるそうです。磁界ベクトルを $\vec{H}$ 、 電流密度ベクトルを $\vec{i}$ とすると、
.. image:: yakan-grad-fig1.png
.. image:: yakan-grad-fig2.png
なるほど、それで $x$ 方向と $y$ 方向の変化率をそれぞれ $x$ 方向と $y$ 方向の成分としたベクトル
<tex>
{\rm rot}\vec{H}=\vec{i}
{\rm grad} f=(\frac{\partial f}{\partial x}, \frac{\partial f}{\partial y})
</tex>
を考えれば、まとめて表記できるわけですね。 $x$ 方向の変化率を
<tex>
(\frac{\partial f}{\partial x},0)
</tex>
$y$ 方向の変化率を
<tex>
(0,\frac{\partial f}{\partial y})
</tex>
と、それぞれ自体ベクトルと考えると、
<tex>
(\frac{\partial f}{\partial x},0)+(0,\frac{\partial f}{\partial y} )=(\frac{\partial f}{\partial x},\frac{\partial f}{\partial y})={\rm grad} f
</tex>
ですから、 ${\rm grad} f$ は $x$ の変化率と $y$ の変化率を方向も含めて合成した、一番変化率の高い(坂で言えば勾配のきつい)方向を向いてるベクトルなんですね。だから ${\rm grad}$ (勾配)というのか・・・。ふー、やっとわかった気がします。( $z$ を増やして3次元で考えても同じ事ですね)
となる・・・、そうですよ。
勾配がきつい方向ということは、矢印を逆にすれば、ボールが転がり落ちてくる方向になります(下図)。
みなさん、これからもベクトル解析、電磁気学頑張って下さいね。応援してます!(^-^)
(私も頑張ります(>_<))
.. image:: yakan-grad-fig3.png
(続き物なので ベクトル解析奮闘記1_ , ベクトル解析奮闘記2_ もお読みいただくと嬉しいです!)
(続き物なので ベクトル解析奮闘記2_ , ベクトル解析奮闘記3_ もお読みいただくと嬉しいです!)
.. _ベクトル解析奮闘記1: http://www12.plala.or.jp/ksp/vectoranalysis/vecFuntou1/
.. _ベクトル解析奮闘記2: http://www12.plala.or.jp/ksp/vectoranalysis/vecFuntou2/
.. _ベクトル解析奮闘記3: http://www12.plala.or.jp/ksp/vectoranalysis/vecFuntou3/
@@reference:水本久夫,ベクトル解析の基礎,培風館,2001, ,4781908764@@
@@reference:一石 賢,道具としての物理数学,日本実業出版社,2002, ,4534034903@@
@@reference:谷口雅彦,なっとくするベクトル解析,講談社,2004, ,4061545515@@
@@author:やかん@@
@@information:イラスト:崎間@@
@@accept:2005-10-27@@
@@accept:2005-09-21@@
@@category: ベクトル解析@@
@@id: vecFuntou3@@
@@id: vecFuntou1@@