物理のかぎしっぽ ポルトマンの生理的早産と私 のバックアップ(No.1)

ポルトマンの生理的早産と私

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ポルトマンの生理的早産と私
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私は文部省の高卒認定試験(以前の大検)に合格したのち、通信制の大学に入学しました。
私には難病や障害があって、通学過程は難しかったからです。
もう年齢もおよそ50の声が聞こえ、物理のかぎしっぽの皆さんより大幅に年齢オーバーですが、
寝ているだけが人生ではない!と闘病しながらでも生き甲斐を見出したい一心で、
勉学の道を志しました。専攻は文学部の日本文学科。本当は英米文学が望ましかったのですが、
通信では残念ながら得られなかったのです。

さておき、心理学や哲学は私は元来好みであるので、レポートを書くのも単位を取るのも、
わりあいと楽勝なのではないかとのんきに考えていました。ところがどっこいどうでしょう。
私は2度も単位修得試験に落ちてしまい、論文も再提出が続いたのです。
心理学の教授はまず、私の論文の書き方が良くないと、アカデミックライティングの方法を、
きっちり学ぶべしと本を二冊勧めてくれました。
10代から作詞の世界に進んで書くことには妙な自信があったワタクシ…
感性だけで突き進むようなものの書き方はめった刺しにされてしまいました。

いよいよ三度目の正直。冷たい雨の降る試験会場に私は車椅子で向かいました。
今日のためにほぼ本を丸暗記して臨んだ試験。二度の失敗をいかせるか、
過去問にも大学ノートいっぱいになるまで取り組みました。
試験問題は『ポルトマンの生理的早産について論ぜよ』でした。
私は内心ガッツポーズを取りました。この問題が出たのは実は二度目。
頭の中で キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! という顔文字が流れてゆきました。

ポルトマンの生理的早産とは、人間は生まれてすぐには立ったり座ったりできない。
動物とは違って、生後1年間、子宮外で人間の親に育てられてはじめて、
高等哺乳類が生まれたときに実現している発育状態にたどり着くというものです。
そこで人間の子どもは他の高等哺乳類のレベルに達する時間一年を省略して生まれてくるという仮説を、
ポルトマンは主張しているものを指します。

ようやく正確な答えを導き出せたワタクシ…万一の保険のために、
スクーリングで心理学を受講して単位を取ろうとしていたので、
そちらももれなくキャンセルし、授業料15000円を握りしめて、
夫と結婚祝いのディナーに向かったのでした。

単位を修得してしまうと、その後、本は開かなくなってしまいそうですが、
この心理学のテキストだけは別格です。
私に勉学とは何か、論文とは何かを叩き込んでくれた大切な科目。
先生の赤字のペンに涙涙の日々でしたが、『ようやく論文らしくなってきた』とのコメントに、
嬉しさもひとしお。当初は大学生とは思えない幼稚な文面とありましたが、
確実に積み重ねてこられたことに感謝しつつ、ポルトマンの5文字は、
私にとって忘れられない大切な一コマとなったのでした。

参考文献 
『伝えあい心理学原理』(亀谷純雄著)2006年文化書房博文社 ISBN978-4-8301-1076-4
『ゼロからはじめる心理学・入門』(金沢創ほか著)2015年有斐閣 ISBN978-4-641-15022-5
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