物理のかぎしっぽ 執筆中/宇宙項(CO著)/記事ソース

執筆中/宇宙項(CO著)/記事ソース

これはrst2hooktailの記事ソース保存・変換用です(詳細).

コンバート

最近コンバートされた結果: HTMLPDFTeX

公開・更新メニュー ▼▲

記事ソースの内容

=======================================
宇宙項
=======================================

この記事では、アインシュタインが「生涯の過ち」と語ったといわれる「宇宙項」について紹介してみたいと思います。


-------------------------
相対性理論
-------------------------


.. image:: e1.jpg


1905年、アインシュタインが特殊相対性理論を発表しました。
2005年には「奇跡の年」から100年目の節目ということで、世界中で様々なイベントが行われていましたね。
特殊相対性理論の発表から十年後、アインシュタインは新しい重力理論である一般相対性理論を発表しました。
一般相対性理論(以下、一般相対論)は、水星の近日点移動や遠くの星からくる光が太陽の重力場によって曲げられる現象などから、その正しさが確認されています。

一般相対論では、重力場を記述する方程式は次のように書けます。

<tex>
G_{\mu\nu} = R_{\mu\nu} - \frac{1}{2} g_{\mu\nu} R = \frac{8\pi G}{c^4} T_{\mu\nu} \tag{#def(eq1)}
</tex>

この方程式はアインシュタイン方程式と呼ばれています。アインシュタイン方程式は、宇宙の幾何学(時空)=物質の分布 という方程式になっています。

--------------------------
宇宙への適用
--------------------------

さて、アインシュタインはその一般相対論を宇宙そのものに適用してみることにしました。
理論を宇宙そのものに適用するためにはいくつかの仮定をおく必要が出てきます。
アインシュタインは「宇宙は静的である。」(膨張も収縮もしない)ということを信じていたので、それも仮定として取り入れることにしました。
そのために本来は必要のないはずだった *宇宙項* というものを方程式の中に導入します。これはもちろん、数学的には許される操作でした。
( $\Lambda$ の入っている項が宇宙項で、 $\Lambda$ は宇宙定数と呼ばれます。) [*]_

<tex>
R_{\mu\nu} - \frac{1}{2} g_{\mu\nu} R + \Lambda g_{\mu\nu} = 8 \pi G T_{\mu\nu} \tag{#def(eq2)}
</tex>

逆に言えば、この宇宙項というものを導入しないと静的な宇宙を実現することが困難だったのです。

.. [*] アインシュタイン方程式は 宇宙の幾何学(時空)=物質の分布 という方程式になっていると書きました。アインシュタインは式(#ref(eq2)) にあるように左辺に宇宙項を導入しました。これはつまり時空に対する補正項となります。一方、右辺に導入した場合には物質場の自由度として解釈されます。現在では後者の立場として解釈されており、この記事もその立場に基づくものです。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最大の過ち
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

しかし 1920年代後半に ハッブルの法則_ が発見され、 **宇宙は静的ではない、膨張している** ことがわかりました。
宇宙を静的に保つ必要がなくなれば、宇宙項を導入した正当な理由もなくなってしまいます。

アインシュタインはこの発見を聞き *「宇宙項を方程式の中に入れたのは人生最大の過ちであった。」* と語ったという逸話もあります。
宇宙項はその存在を捨て去られることとなったのです。

ここまでは有名な話だと思います。

.. _ハッブルの法則: http://spaceinfo.jaxa.jp/note/kagaku/j/kag101_hubble.html



---------------------------
宇宙項の復活劇
---------------------------

さて、天文学が進展してくると今度は「 *宇宙が膨張していることは確からしい。ではその膨張率は一定なのか?* 」という問題がでてきました。
これは言い換えれば「宇宙は一定の速さで膨張しつづけるのか。それとも加速(または減速)しながら膨張しているのか。」ということになります。
結果から言えば *現在の宇宙は加速膨張しているらしい* ということがわかっています。

現在の宇宙が加速膨張しているという結果は比較的最近になって分かってきました。
具体的には1998年頃に発表された、遠方で起こった超新星爆発の観測結果によります。
この結果は、WMAP衛星の観測した宇宙背景放射が出した宇宙論パラメータの値などとも一致しています。

さて、ところが宇宙が加速膨張しているとなると宇宙論的には困ったことになります。 *何が宇宙膨張を加速させているのか* がわからないからです。
もし宇宙がビッグバンによって始まり、そのせいで膨張しているのだとすれば、減速こそすれ加速する理由がないからです。

ここで復活してくるのが宇宙項です。宇宙膨張の様子を記述する方程式に、フリードマン方程式というものがあります。
これは (#ref(eq2)) 式からある仮定の下に導かれます。

<tex>
\dot{R}=\frac{8\pi GR^2}{3}(\rho+\frac{\Lambda c^2}{8\pi G})-kc^2 \tag{#def(eq3)}
</tex>

この式によれば、宇宙が加速膨張するためには宇宙定数を含む項の存在が必要になります。 [*]_

アインシュタインが静的宇宙を表すために無理矢理とりいれた宇宙項が、今度は観測されている結果から必要とされるようになったのです。

.. [*] 詳しくは参考文献を参照してください。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
宇宙項はなんなのさ?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

さて、この宇宙定数を含む項ですが何を表すのでしょうか?
実はいまのところよく分かっていません。
この項に $c^2$ をかけるとエネルギー密度の次元になります。
したがってこの項は *何らかのエネルギー密度をあらわす* と解釈するのが現在の主流となっています。
量子論との関係から''真空のエネルギー密度''だと解釈する流れもありますが、現在のところはよく分かっていません。
このエネルギーのことを天文学者は *ダークエネルギー* と呼んでいます。
いかにも怪しげな名前ですね。 [*]_


さて、なんだかよくわからないダークエネルギーですが、これはさらにやっかいな問題をもっています。
現在の宇宙にあるすべてのエネルギーを、ダークエネルギー、物質が持つエネルギー、光(放射)が持つエネルギーとして分類してみます。
すると、ダークエネルギーが7割、物質のもつエネルギーが3割、放射のエネルギーはほとんど無視できるくらい、という結果が出てくるのです。
つまりこの宇宙に満ちているエネルギーのほとんどは、正体不明なのです。

うーん、天文学(ここで紹介したのは宇宙論ですが)は大変なことになっていますねぇ。


.. image:: e2.jpg


アインシュタインはこの状況をみて天国で笑っているのでしょうか。



.. [*] アメリカのエネルギー省がこのダークエネルギーをなんとか利用しようと研究している、という噂もあります。


@@author: CO@@
@@accept: 執筆中@@
@@reference: 二間瀬敏史, なっとくする宇宙論, 講談社, 1998, 161-170, 4061545140@@
@@reference: Mark H.Jones and Robert J.A.Lambourne, An Introduction to Galaxies and Cosmology, CAMBRIDGE, 2003, 213-255, 0521546230@@
@@reference: 須藤靖, 一般相対論入門, 日本評論社, 2005, 67-70,4535784221@@

添付ファイル: fileein1.jpg 42件 [詳細] fileeinstein_tongue.jpg 47件 [詳細] filee1.jpg 50件 [詳細] filee2.jpg 37件 [詳細]
トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Modified by 物理のかぎプロジェクト PukiWiki 1.4.6 Copyright © 2001-2005 PukiWiki Developers Team. License is GPL.
Based on "PukiWiki" 1.3 by yu-ji Powered by PHP 5.3.29 HTML convert time to 0.012 sec.