物理のかぎしっぽ 記事ソース/NONAME

記事ソース/NONAME

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記事ソースの内容

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NONAME
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私は夏の陽射しを浴びながら 真昼の月に背を向けて
棕櫚竹の林へ入っていった
此処には忘れられた時間がふんだんにあり
望めば幾らでも 取り返しがついた

引きだし(1)グリーンピースを残した遠足のお弁当
引きだし(2)はじめてもらったラブレター
引きだし(3)にきびをクレアラシルで治した夜
引きだし(4)好きといえない午後
引きだし(5)NONAME

鍵の合わない引きだしで 命の選択をしたものだった
もう私に怖れはなく 悲しみが破けることもない

神様に選択を迫られることもなければ
グリーンピースを憎むこともない

誰かには忘れ去られずに 好きな人には好きと言って生きている


種を蒔いたら 花が咲くように 私の基盤にも成り立ちがある
優しさだけじゃやってけねぇけど 救いのないものはもっと嫌なもんだぜ
左右の耳は口論していた

私は頭を振りながら引きだしをしまい
頑丈な鍵のついた「NONAME」という重い箱を見据えた
陽の光に晒したら 粉々になりそうだった

「壊れたものがいっぱい入っているんだわ」


人は歴史を紡ぎながら悲しみを癒す
ひとりでも歩いてはゆける
汚れてしまった人生を助けるのは自分自身だ


私には立派なしっぽがあった

@@author:きり@@
@@accept:2020-01-04@@
@@category:現代詩
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