物理のかぎしっぽ 記事ソース/Lagrange形式の力学

記事ソース/Lagrange形式の力学

これはrst2hooktailの記事ソース保存・変換用です(詳細).

コンバート

最近コンバートされた結果: HTMLPDFTeX

公開・更新メニュー ▼▲

記事ソースの内容

====================
Lagrange形式の力学
====================

これまで,Lagrange形式の力学の定式化を見てきました.ここからは,それを多様体の言葉を
使って再定式化をしようと目論んでみましょう.基本的なアイディアはこれまで通りですが,
変分原理を使って座標不変な運動方程式を出す過程を数学的にもっときっちりやってみよう
という試みです.

ある質点系の運動を $n$ 次元微分可能多様体 $M$ の上で記述することを考えてみます.これまで使ってきた
言葉を使うと,配位空間を多様体 $M$ とするということです.
そのとき,ラグランジアン $L$ は多様体 $M$ の接バンドル $TM$ から
実数 $\mathbb{R}$ への写像として定式化されます.
<tex>
L:TM\to \mathbb{R}
</tex>

このように書くと非常に抽象的になってしまいますが, $TM$ の局所座標系 $(q_1,\dots,q_n,v_1,\dots,v_n)$ 
( $(q_1,\dots,q_n)$ は多様体 $M$ 上の局所座標で $(v_1,\dots,v_n)$ はそこから自然に誘導される $T_qM$ の座標です)
を取ることにすれば,これまでやってきたような書き方でラグランジアンを $L(q,v)$ と書くことができます.

さて,ここで実数の区間 $[t_1,t_2]$ から多様体 $M$ への滑らかな写像 $q:[t_1,t_2]\to M$ を考えます.
このような写像を $M$ 上の道といいます.

この $M$ 上の道一つを決めるごとに考えている質点系の運動の候補が一つ定まります.ただし,現実の運動を表す道は
たくさんある道のなかのただ一つしかありません.その道を見つけようというのが,Lagrange力学の立場でした.

作用積分 $S$ をラグランジアン $L:TM\to \mathbb{R}$ を用いて次のように定義します.
<tex>
S[q(-)] = \int_{t_1}^{t_2} L(q(t),\dot{q}(t)) \mathrm{d} t
</tex>
作用積分を $S[q(-)]$ と書いたのは, $M$ 上の道 $q:[t_1,t_2]\to M$ を一つきめるごとに作用の値 $S\in\mathbb{R}$ が
一つ定まることを顕に示すためです.このことをはっきりさせるために,作用 $S[q(-)]$ を作用汎函数ということがあります.

ここで変分原理を用いたいのですが,変分原理とはどのようなものだったのかを思い出しておきましょう.

.. important::

 変分原理とは,道 $q:[t_1,t_2]\to M$ の端点を固定した条件のもとで,作用 $S[q(-)]$ が停留点を取るとき,その運動 $q:[t_1,t_2]\to M$ が実現すると要請する原理です.

しかし,多様体の上で道をわずかにずらすということを,そのまま正確に数学的に表現するのは結構難しいので
次のような方法を使いましょう.

両端を固定した道 $q(t)$ の1-パラメーター・ファミリー $q(t,\varepsilon)$ を考えます.つまり,

1. $q:[t_1,t_2]\times\mathbb{R}\to M,(t,\varepsilon)\mapsto q(t,\varepsilon)$ という各 $\varepsilon\in\mathbb{R}$ ごとに
定まる道を考えます.ただし,この道は $\varepsilon$ について滑らかに変化するとします.

2.道の端点は $\varepsilon$ によらずに固定されているとします:
<tex>
q(t_1,\varepsilon)=q_1,q(t_2,\varepsilon)=q_2\;\;(q_1,q_2:\mbox{fixed})
</tex>

3.特に $\varepsilon=0$ のときの道を $q(t):=q(t,0)$ と定義します.

さて,ここで変分原理より $M$ 上の道 $q(t)$ が現実の運動を表すための条件を数式で表現すると,
<tex>
\left.{\mathrm{d}\over \mathrm{d}\varepsilon}\right|_{\varepsilon=0}S[q(-,\varepsilon)]=0
</tex>
が $q(t)$ の任意の1-パラメータ・ファミリー $q(t,\varepsilon)$ について成り立つ,ということになります.
さて,この段階までは多様体(すなわち配位空間) $M$ に全く局所座標を入れずに議論してきました.このことから,
変分原理によって定まる運動を表す道は座標系によらないことが分かります.

ここからの計算は前とほとんど同じです.式の見かけを簡単にするために $\eta(t)={\partial q \over \partial \varepsilon}(t,0)$ 
と置きます.今考えている道の性質(2)から $\eta(t_1)=\eta(t_2)=0$ が成り立つことに注意します.
さらに,ここからは具体的に運動を表す方程式がほしいので多様体 $M$ の接バンドル $TM$ に局所座標 $(q_1,\dots,q_n,v_1,\dots,v_n)$ 
をとりましょう.このとき,
<tex>
\left.{\mathrm{d}\over \mathrm{d}\varepsilon}\right|_{\varepsilon=0}S[q(-,\varepsilon)]&=
\left.{\mathrm{d}\over \mathrm{d}\varepsilon}\right|_{\varepsilon=0}
\int_{t_1}^{t_2}L(q(t,\varepsilon),\dot{q}(t,\varepsilon))\mathrm{d}t\\
&=\int_{t_1}^{t_2}\sum_{k=1}^{n}\left[ \left({\partial L\over\partial q_k}(q(t,0),\dot{q}(t,0))\right)
{\partial q_k\over\partial\varepsilon}(t,0)+\left({\partial L\over \partial v_k}(q(t,0),\dot{q}(t,0))\right)
{\partial \dot{q}_k\over \partial \varepsilon}(t,0) \right]\mathrm{d}t\\
&=\int_{t_1}^{t_2}\sum_{k=1}^{n}\left[ \left({\partial L\over\partial q_k}(q(t),\dot{q}(t))\right)\eta_k(t)
+\left({\partial L\over \partial v_k}(q(t),\dot{q}(t))\right)\dot{\eta}_k(t) \right]\mathrm{d}t\\
&=\sum_{k=1}^{n}\left[\left({\partial L\over \partial v_k}(q(t),\dot{q}(t))\right)\eta_k(t)\right]_{t_1}^{t_2}
+\int_{t_1}^{t_2}\sum_{k=1}^{n}\left({\partial L\over\partial q_k}(q(t),\dot{q}(t))-{\mathrm{d}\over \mathrm{d}t}
{\partial L\over \partial v_k}(q(t),\dot{q}(t))\right)\eta_k(t)\mathrm{d}t\\
&=\int_{t_1}^{t_2}\sum_{k=1}^{n}\left({\partial L\over\partial q_k}(q(t),\dot{q}(t))-{\mathrm{d}\over \mathrm{d}t}
{\partial L\over \partial v_k}(q(t),\dot{q}(t))\right)\eta_k(t)\mathrm{d}t
</tex>
を得ます.さまざまな1-パラメーター・ファミリーについて
<tex>
\left.{\mathrm{d}\over \mathrm{d}\varepsilon}\right|_{\varepsilon=0}S[q(-,\varepsilon)]=0
</tex>
が成り立つということは,任意の連続函数 $\eta(t)$ について
<tex>
\int_{t_1}^{t_2}\sum_{k=1}^{n}\left({\partial L\over\partial q_k}(q(t),\dot{q}(t))-{\mathrm{d}\over \mathrm{d}t}
{\partial L\over \partial v_k}(q(t),\dot{q}(t))\right)\eta_k(t)\mathrm{d}t=0
</tex>
が成り立つということですから,Lagrangeの運動方程式
<tex>
{\partial L\over\partial q_k}(q(t),\dot{q}(t))-{\mathrm{d}\over \mathrm{d}t}
{\partial L\over \partial v_k}(q(t),\dot{q}(t))=0\quad(k=1,\dots,n)
</tex>
を得ます.

@@author:佑弥@@
@@category:解析力学@@
トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Modified by 物理のかぎプロジェクト PukiWiki 1.4.6 Copyright © 2001-2005 PukiWiki Developers Team. License is GPL.
Based on "PukiWiki" 1.3 by yu-ji Powered by PHP 5.3.29 HTML convert time to 0.009 sec.