物理のかぎしっぽ 記事ソース/交流電流の輸送

記事ソース/交流電流の輸送

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記事ソースの内容

===================================================================================
交流電流の輸送
===================================================================================
交流電流のいいところは、変圧が可能で長い送電線の大きな抵抗内を
輸送するとき、昇圧してやればジュール熱の損失を減らす事ができる
って聞いたことありませんか?私は、抵抗にかかる電
圧を上げるって言う事は、オームの法則から電流の増加を引き起こし、結局電力損失を
増大させてしまうのではないかということが疑問でした。
この記事では、簡単な回路方程式を解いてみてどんな仕組みで、
電力損失が減るのか考える事にします。
必要な知識は、複素電流を知っていることと、相互インダクタンスを知っている
ことです。この記事の「(1)の時」、「(2)の時」はまとまっていないので、
変圧比と変流比の話(式 $(11)$ )までいったら、
飛ばして「二つの変圧器をもつ回路とその回路方程式」に行った方が良いかもしれません(^_^;)


(この記事は2009年8月5日に書き直しをしました。
修正前の記事には間違いがあった事をお詫びします。
計算はあっていたのですが、
電源の内部抵抗を考えなかった為に、
結果がおかしかったのです。
本文中の(1)の場合と(2)の場合のうち、
(2)の場合しか書いていなかったということです。)

一つの変圧器をもつ回路とその回路方程式
========================================

.. image:: chromel-alterCurrentTrans1-01-t.png

上図のような回路を考えます。
左の回路を回路1、右を回路2とします。
変圧器と言うのは、巻き数の違う二つのコイルに
共通の鉄芯を挿入して、相互インダクタンスを持つようにしたものです。
自己インダクタンス $L_1$ を持つコイルの巻き数を $N_1$ とし、 
同じく $L_2$ を持つコイルの巻き数を $N_2$ とします。
また、二つのコイルを貫く磁束に漏れは無いものとし [*]_ 、相互インダクタンスは、  
$M$ とします。このとき、 $L_1=L_0 N_1^2$ 、 $L_2=L_0 N_2^2$ 、 $M=L_0 N_1N_2$ と
なります。 $L_0$ は、巻き数の二乗あたりのインダクタンスですが、
ただの比例係数として考えてしまってもかまいません。
特に有用な式として、 $M^2 = L_1 L_2$ があります。

.. [*] 実際には結合係数 $k=\frac{M}{\sqrt{L_1L_2}} \ , \ 0<k<1$ として、磁束の漏れを表します。現実のトランスは wikipedia_ によると、 $k=0.995$ 程度と1に非常に近いので、磁束に漏れはないと考えてよいと思われます。


キルヒホッフの法則より、それぞれの回路を一周したときの電圧降下はゼロだから、
<tex>
E(t)=L_1 \frac{dI_1}{dt}+R_1I_1+M\frac{dI_2}{dt} \tag{##}
</tex>
<tex>
0=M\frac{dI_1}{dt}+L_2\frac{dI_2}{dt}+R_2I_2 \tag{##}
</tex>
となります。

ここで $E(t)$ は電源電圧です。

今何がしたいかというと、 $E(t)$ を正弦波として与えた時の電流 $I_1 \ ,\  I_2$ を求めて、
抵抗 $R_1 \ ,\ R_2$ での消費電力やそれぞれの回路での電力などを調べたいわけです。

回路方程式の特解
==================

交流電流は複素表現をすると、 $E=E(t)= E_0 e^{i \omega t}$ と書けます。
すると微分方程式の特解は、 $I_1=I_{10}e^{i \omega t}$ 、 
$I_2=I_{20}e^{i \omega t}$ と表現できます [*]_ 。ここで注意してほしいのは、 
$I_{10},I_{20}$ は複素数であって、波の位相がずれることを表現可能なことです。
つまり、 $A,\phi$ を実数として、
<tex>
I_1 &= Ae^{i (\omega t +\phi)} \\
&= (Ae^{i \phi})e^{i \omega t} \\
&= I_{10} e^{i \omega t} 
</tex>
のように、任意の正弦波応答を表せるということです。

.. [*] 真面目に微分方程式を解くと大抵の初期条件では減衰項(一般解)というものがでてきます。これは解が初期条件を満たすためのつじつま合わせのようなもので十分時間がたつと消えてしまいます。本質的で重要なのは $E$ に対する応答の定常解(特解)です。定常解とは、十分時間が経ったときの回路の応答になります。このような解の形を仮定することで特解のみを簡単に求めることができます。


式 $(1)$ 、式 $(2)$ は、微分演算を $i\omega$ に変えることができ、代数的操作で
解くことが可能になります。
こうして、式 $(1)$ 、式 $(2)$ を書き換えると、
<tex>
E=i \omega L_1 I_1 + R_1I_1 + i \omega M I_2 \tag{##}
</tex>
<tex>
0=i \omega M I_1 + i \omega L_2 I_2 +R_2 I_2 \tag{##}
</tex>
となります。

整理するために行列で書くと、
<tex>
\begin{pmatrix}
i \omega L_1 + R_1 & i \omega M \\
i \omega M & i \omega L_2 +R_2 
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
I_1 \\
I_2
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
E \\
0
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

こうしてこれは連立方程式となって、 $I$ を求めるわけです。
逆行列を求めて計算します。

逆行列は、この行列を $A$ と置くと、

<tex>
\begin{pmatrix}
I_1 \\
I_2
\end{pmatrix}
=
\frac{1}{\Delta}
\begin{pmatrix}
i \omega L_2 + R_2 & -i \omega M \\
-i \omega M & i \omega L_1 + R_1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
E_0e^{i \omega t} \\
0
\end{pmatrix}  \tag{##}
</tex>

<tex>
\det A = \Delta &= (i \omega L_1+R_1)(i \omega L_2+R_2)-(i \omega M)^2 \\
&= i \omega (L_1 R_2 +L_2 R_2 )+R_1R_2  \tag{##}
</tex>

ここで、さっき書いたように
二つのコイルを貫く磁束に漏れはないものとしました( $M^2=L_1L_2$ が成り立つ)。

これで必要な情報(この方程式の特解)が求められました。

<tex>
I_1 = \frac{R_2 +i \omega L_2}{i \omega(L_1 R_2 + L_2 R_1) + R_1R_2 }E \tag{##}
</tex>
<tex>
I_2=\frac{-i \omega M}{i \omega(L_1 R_2 + L_2 R_1) + R_1R_2}E \tag{##}
</tex>
です。

解の検証
==========


よって、コイルの両端にできる電圧 $V_{coil1} , V_{coil2}$ の比(変圧比)を計算をすると、

<tex>
\frac{V_{coil1}}{V_{coil2}} &= \frac{i \omega L_1 I_1 + i\omega M I_2}
{i \omega M I_1+i\omega L_2 I_2} \\
&= \frac{L_0 N_1(N_1I_1+N_2I_2)}{L_0 N_2(N_1I_1+N_2I_2)} \\
&= \frac{N_1}{N_2} \tag{##}
</tex>

となり、巻き数比( $\frac{N_1}{N_2}$ )は、変圧比に等しいことが分かります。
これは、磁束に漏れがない理想的な時に限り厳密に成り立ちます。

以下、 $\omega L_2 > \omega M> \omega L_1 > R_2 > R_1 $ とします。

電流 $I_1$ と $I_2$ に注目してみましょう。この二つの比を変流比といいます。

<tex>
\frac{I_1}{I_2} &=\frac{ E \Delta}{E \Delta}\frac{R_2 + i \omega L_2}{- \omega M} \\
&\fallingdotseq -\frac{L_2}{M} \\
&= -\frac{N_2}{N_1} \tag{##}
</tex>

おおよそ( $R_2$ が $\omega L_2$ に比べて無視できる時)変流比は、巻き数比の逆数に等しいです。

よって、大まかに言って、エネルギーが保存されます。
<tex>
V_1 I_1 &\fallingdotseq \frac{N_1}{N_2}V_2 \times(-\frac{N_2}{N_1}I_2) \\ 
&= -V_2 I_2 \tag{##}
</tex>

以下、二つの場合の場合分けします。

(1) $L_2R_1>L_1R_2$ の時
(2) $L_2R_1<L_1R_2$ の時

(1)の時
===================

まず、コイルの両端に掛かる電圧 $V_{coil1},V_{coil2}$ を考えます。
電圧には、一次側の電流 $I_1$ のほかに、二次側の電流 $I_2$ も関係することに注意してください。
<tex>
V_{coil1} &= L_1 I_1 + M I_2  \\
&= \frac{i \omega L_1 (i \omega L_2 + R_2)E }{i \omega(L_1 R_2 + L_2 R_1) + R_1 R_2 } 
+ \frac{-(i \omega M)^2E}{i \omega(L_1 R_2 + L_2 R_1) + R_1 R_2 } \\
&= \frac{i \omega L_1 R_2 }{i \omega(L_1 R_2 + L_2 R_1) + R_1 R_2 } \\
&\fallingdotseq \frac{L_1 R_2E}{L_2 R_1} \\
&= \frac{N_1^2 R_2E}{N_2^2 R_1} \tag{##}
</tex>

<tex>
V_{coil2} &= \frac{N_2}{N_1}V_{coil1} \\
&\fallingdotseq \frac{N_1 R_2 E}{N_2 R_1} \tag{##}
</tex>

なんと、コイル $L_2$ の巻き数を $L_1$ の巻き数より
大きくしていくと、コイル $ L_1 $ に掛かる電圧は、 $\frac{N_1^2}{N_2^2}$ 
で、コイル $L_2$ に掛かる電圧は、 $\frac{N_1}{N_2}$ で小さくなっていきます。
また、電流によってコイル磁束の大部分、つまり、 $\frac{(i \omega)^2L_1 L_2}{\Delta}$ と $\frac{(i \omega M)^2}{\Delta}  $
は、打ち消しあっていて、その残り、つまり、 $\frac{i \omega L_1 R_2 }{\Delta}$ が実際にコイル $L_1$ に掛かる電圧となっています。

次に、電流 $I_2$ を考えます。

<tex>
I_2 &= \frac{-i \omega M}{i \omega(R_2 L_1+ R_1 L_2)+R_1R_2}E \\
&\fallingdotseq  -\frac{M}{R_1 L_2}E \\
&= \frac{-L_0 N_1 N_2}{R_1 L_0 N_2^2}E \\
&= (\frac{-N_1}{N_2})\frac{E}{R_1} \tag{##}
</tex>
よって、コイル $L_2$ の巻き数 $N_2$ の方を大きくしてやると、回路2の電流は
減少することがわかります。 $I_2$ に $R_2$ を掛けてやると電圧 $V_{R2}$ ですから、
<tex>
V_{R2} &= -(\frac{N_1}{N_2})\frac{R_2E}{R_1} \tag{##}
</tex>
これもやはり巻き数 $N_2$ の増加に対して、減少することがわかります。

抵抗 $R_2$ での平均消費電力 $P_2$ は、
<tex>
P_2 &= R_2I_2^2 \\
&= R_2 \frac{M^2}{R_1^2L_2^2}E^2 \\
&= \frac{R_2 L_0^2 N_1^2 N_2^2}{R_1^2 L_0^2 N_2^4}E^2 \\
&= (\frac{N_1^2}{N_2^2})\frac{R_2E^2}{R_1^2} \tag{##}
</tex>
となり、やはり減少します。

一方、電流 $I_1$ はどうなるでしょうか?
<tex>
I_1 &= \frac{R+i \omega L_2}{i \omega(L_1 R_2 + L_2 R_1) + R_1R_2 }E \\
&\fallingdotseq \frac{L_2E}{L_2 R_1} \\
&= \frac{E}{R_1} \tag{##}
</tex>
電流 $I_1$ は、 $L_2$ が十分に大きい時( $L_1 R_2 < L_2 R_1$ の時)、
コイルの巻き数には関係せず一定です。

最後にまとめておくと、
(1)の時( $L_2R_1>L_1R_2$ の時)

<tex>
V_{coil1} \fallingdotseq \frac{N_1^2 R_2E}{N_2^2 R_1}
</tex>

<tex>
V_{coil2} \fallingdotseq \frac{N_1 R_2 E}{N_2 R_1} 
</tex>

<tex>
I_1 \fallingdotseq  \frac{E}{R_1} 
</tex>

<tex>
I_2 \fallingdotseq (\frac{-N_1}{N_2})\frac{E}{R_1}
</tex>

となります。

(2)の時
===================

(2) $L_2R_1<L_1R_2$ の時です。
電源の内部抵抗 $R_1$ が十分に小さい時とお考えください。
同様に、種々の量を列挙していきます。

<tex>
V_{coil1} &= \frac{i \omega L_1(i \omega L_2 + R_2)E-(i \omega M)^2E}{i\omega(L_1 R_2 + L_2 R_1)+ R_1 R_2} \\
&\fallingdotseq \frac{i \omega L_1 R_2E}{i \omega L_1 R_2} \\
&=E \tag{##}
</tex>

<tex>
V_{coil2} &= \frac{N_2}{N_1}V_{coil1} \\
&\fallingdotseq \frac{N_2 E}{N_1} \tag{##}
</tex>

<tex>
I_1 &= \frac{i \omega L_2 +R_2}{i \omega(L_1R_2 +L_2R_1)+R_1R_2}E \\
&\fallingdotseq \frac{L_2}{L_1 R_2}E \\
&= \frac{N_2^2}{N_1^2 R_2}E \tag{##}
</tex>

<tex>
I_2 &= \frac{-i \omega M}{i \omega(L_1R_2+L_2R_1)+R_1R_2}E \\
&\fallingdotseq  \frac{-M}{R_2 L_1}E \\
&= -\frac{L_0 N_1 N_2}{R_2 L_0 N_1^2}E \\
&= -(\frac{N_2}{N_1})\frac{E}{R_2} \tag{##}
</tex>


<tex>
V_{R2} &= R_2I_2 \\
&\fallingdotseq - \frac{N_2}{N_1}E \tag{##}
</tex>

<tex>
P_2 &= R_2 I_2^2 \\
&= \frac{N_2^2}{N_1^2} \frac{E^2}{R_2} \tag{##}
</tex>

すみません。種々の量のただの列挙になってしまい、
話をまとめられる力を持っていませんが、(1)の時も(2)の時も
式 $(10)$ と $(11)$ はなりたっていることに注意してください。

この話にはまだ続きがあります。
変圧器を二段にした時、計算がきれいになります。
ぜひ続きをご覧ください。

二つの変圧器をもつ回路とその回路方程式
========================================

.. image:: chromel-alterCurrentTrans2-01-t.png

上図のような回路を考えます。
左の回路を回路1、真ん中を回路2、右を回路3とします。

記事の前半と同じく自己インダクタンス $L_1$ を持つコイルの巻き数を $N_1$ とし、 
同じく $L_2$ を持つコイルの巻き数を $N_2$ とします。
また、二つのコイルを貫く磁束に漏れは無いものとし、相互インダクタンスは、  
$M$ とします。

今回も定常解のみを考えることにします。
キルヒホッフの法則より、それぞれの回路を一周したときの電圧変化はゼロだから、
<tex>
\begin{pmatrix}
i \omega L_1 + R_1 & i \omega M & 0  \\
i \omega M & 2i \omega L_2 +R_2 & i \omega M \\
0 & i \omega M & i \omega L_1 + R_3 
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
I_1 \\
I_2 \\
I_3 
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
E(t) \\
0 \\
0
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>


ここで $E(t)= E_0 e^{i \omega t}$ は電源電圧です。

今何がしたいかというと、 $E(t)$ を正弦波として与えた時の電流 $I_1 \ ,\  I_2 \ , \ I_3$ を求めて、
抵抗 $R_1 \ ,\ R_2\ , R_3$ での消費電力やそれぞれの回路での電力などを調べたいわけです。
よって、式 $(1)$ を余因子行列を使って逆行列を求めて $I$ についてとくと、

<tex>\frac{1}{\det A}
\begin{pmatrix}
(2i \omega L_2+R_2)(i \omega L_1 + R_3) - (i \omega M)^2 & ? & ?  \\
- i \omega M (i \omega L_1 + R_3) & ? & ? \\
(i\omega M)^2 & ? & ? 
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
E \\
0 \\
0 
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
I_1 \\
I_2 \\
I_3
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

ただし、
<tex>
\det A &= (i \omega L_1 + R_1)(2i \omega L_2 + R_2)(i \omega L_1 + R_3)\ -(i \omega M)^2(i \omega L_1 R_1) \ - (i \omega M)^2 (i \omega L_1 R_3) \\
&= (i \omega)^3 L_0 N_1^2 \times 2L_0N_2^2 \times L_0 N_1^2 
\ - (i \omega )^3 L_0^2(N_1N_2)^2 L_0 N_1^2 \times 2 \\
&+ 2(i \omega)^2 L_1L_2 (R_1 + R_3) \ + (i \omega)L_1^2R_2 
\ + i \omega L_1 R_2 (R_1+ R_3) \ + 2 i \omega L_2 R_1 R_3
\ +R_1R_2R_3 \\
&= 2(i \omega)^2 L_1L_2 (R_1 + R_3) \ + (i \omega)L_1^2R_2 
\ + i \omega L_1 R_2 (R_1+ R_3) \ + 2 i \omega L_2 R_1 R_3
\ +R_1R_2R_3  \tag{##}
</tex>

ここで、 $\omega$ が十分大きいものとして $\omega L_2 > \omega M > \omega L_1 > R_1,R_2,R_3$ としておきます。
そして、
<tex>
\det A \fallingdotseq (i \omega)^2 L_1L_2 (R_1 + R_3) \tag{##}
</tex>
と近似します。

すると、
<tex>
I_1 &= \frac{(2i \omega L_2+R_2)(i \omega L_1 + R_3) - (i \omega M)^2}{\det A}E \\
&= \frac{- \omega^2 L_1 L_2 + 2i\omega L_2R_3 + i \omega L_1 R_2+ R_2R_3}{\det A}E \\
&\fallingdotseq \frac{(i \omega)^2 L_1 L_2}{(i \omega)^2 L_1L_2 (R_1+ R_3)}E \\
&=\frac{E}{R_1+R_3} \tag{##}
</tex>

<tex>
I_2 &= \frac{-(i \omega M)(i\omega L_1 + R_3)}{\det A}E \\
&\fallingdotseq \frac{-(i \omega )^2 L_1 M}{i \omega M^2(R_1+R_3)}E \\
&= -\frac{N_1}{N_2(R_1+ R_3)}E \tag{##}
</tex>

<tex>
I_3 &= \frac{(i\omega M)^2}{\det A}E \\
&\fallingdotseq \frac{(i \omega M)^2}{(i \omega M)^2(R_1+ R_3)}E \\
&= \frac{E}{R_1 + R_3} \tag{##}
</tex>

回路2において、電流は、巻き数比 $\frac{N_2}{N_1}$ の逆数になっています。
この電流の減少が、電流を輸送する時の送電線(抵抗 $R_2$ )でのロスを減らしているようです。
実際に回路2の抵抗で消費される電力を計算すると、
<tex>
R_2 I_2^2 \fallingdotseq \frac{N_1^2 R_2 E^2}{N_2^2(R_1+R_3)^2} \tag{##}
</tex>
となって、確かに消費電力は巻数比の(逆数の)2乗で減少します。

この時、抵抗にかかる電圧は $R_2 I_2 \varpropto \frac{N_1}{N_2}$ ですから、コイル2の巻き数を上げれば(昇圧すれば)、
抵抗の両端にかかる電圧は減っていきます。(そんなバカな!)

それでは、コイルの両端の電圧、 $V_{coil1}, V_{coil2-1},V_{coil2-2},V_{coil3}$ を計算してみましょう。
ただし $coil2-1, coil2-2$ は、それぞれ、回路2の左側のコイルと右側のコイルを表すものとします。

<tex>
V_{coil1} &= i \omega L_1 I_1 + i\omega M I_2 \\
&= \frac{ \{ (2i\omega L_2 +R_2)(i \omega + R_1)-(i \omega M)^2 \}(i \omega L_1)- (i \omega M)^2(i \omega L_1 R_3) }{\det A}E \\
&= \frac{ 2(i \omega)^3 L_1^2 L_2 -2(i \omega)^3M^2L_1 + 2(i \omega)^2L_1L_2R_3 -(i \omega M)^2R_3 +(i \omega L_1)^2R_2+ i \omega L_1 R_2 R_3}{\det A}E \\
&\fallingdotseq \frac{ (i \omega)^2 L_1 L_2 R_3 }{(i \omega)^2 L_1L_2(R_1+R_3)}E \\
&= \frac{R_3 E}{R_1+R_3} \tag{##}
</tex>

<tex>
V_{coil2-1} &= \frac{N_2}{N_1}V_{coil1} \\
&\fallingdotseq \frac{N_2 R_3 E}{N_1(R_1+R_3)} \tag{##}
</tex>

<tex>
V_{coil2-2} &= i \omega L_2 I_2 + i \omega M I_3 \\
&= \frac{E}{\det A} \{ i \omega L_2 (- i \omega M) (i \omega L_1 + R_3) + (i \omega M)^3 \} \\
&\fallingdotseq \frac{- (i \omega)^2 M L_2 R_3}{(i \omega)^2 M^2(R_1+R_3)}E \\
&= \frac{-N_2 R_3 E}{N_1(R_1+R_3)} \tag{##}
</tex>

<tex>
V_{coil3} &= \frac{N_1}{N_2}V_{coil2-2} \\
&\fallingdotseq \frac{-R_3E}{R_1+R_3} \tag{##}
</tex>

よって、近似的には回路1と回路3のコイルにかかる電圧は、コイルの巻き数を変えても変化しません。
その一方で、回路2のコイルにかかる電圧は、コイル2の巻き数を増やす(昇圧する)と増加し、コイル1や3の巻き数を上げる
(減圧する)と減少することが分かります。

これで、しくみが分かりました。
変圧器を用いて送電線の部分を昇圧すれば、
抵抗にかかる電圧が巻数比(の逆数) $\frac{N_1}{N_2}$ に比例して小さくなっていくのに対して、
コイル2-1,2-2の両端にかかる電圧は増えていくのです。
コイル2-1,2-2にかかる電圧の符号は反対ですので、これらが打ち消しあっていたのです。

エネルギーの流れ
============================

最後に回路方程式からエネルギーの流れを計算しておきます。
電流はどんなでも構いません。

<tex>
E = L_1 \frac{dI_1}{dt} + R_1 I_1 + M \frac{dI_2}{dt} \tag{##}
</tex>

<tex>
0 = M \frac{dI_1}{dt} + 2 L_2 \frac{dI_2}{dt} + R_2 I_2 + M \frac{dI_3}{dt} \tag{##}
</tex>

<tex>
0 = M \frac{dI_2}{dt} + L_3 \frac{dI_3}{dt} + R_3 I_3 \tag{##}
</tex>

式 $(37)$ に $I_1$ をかけて、 $t$ で一周期分の積分をとります。
すると、
<tex>
\int EI_1 dt 
&= L_1 \int I_1 \frac{dI_1}{dt}dt + R_1 \int I_1^2 dt + M \int I_1 \frac{dI_2}{dt} dt \\
&= \frac{1}{2}L_1 I_1^2 + R_1 \int I_1^2 dt + M \int I_1 \frac{dI_2}{dt} dt \tag{##}
</tex>

次に式 $(38)$ に $I_2$ をかけて、同様に $t$ で一周期分積分します。
<tex>
0&= M \int \frac{dI_1}{dt} I_2 dt + L_2 I_2^2 + R_2 \int I_2^2 dt + M \int I_2 \frac{dI_3}{dt} dt \tag{##}
</tex>

同様に、今度は式 $(39)$ に $I_3$ をかけて $t$ で積分します。
<tex>
0&= M \int \frac{dI_2}{dt} I_3 + R_3 \int I_3^2 dt + \frac{1}{2}L_3I_3^2 \tag{##}
</tex>

最後に式 $(40)$ 〜 $(42)$ を辺々足します。この時、 

<tex>
\int \left( \dfrac{dI_1}{dt} I_2 + I_1 \dfrac{dI_2}{dt} \right) dt 
&= \int \dfrac{d}{dt}(I_1I_2) dt \\
&= I_1 I_2 + C^\prime \tag{##}
</tex>

ここで、 $C^\prime$ は積分定数です。
すると、
<tex>
\int EI_1 dt + C = \frac{1}{2}(L_1 I_1^2+ 2 L_2 I_2^2 +L_3 I_3^2) +M I_1 I_2 + M I_2 I_3 +\int (R_1 I_1^2 + R_2 I_2^2 + R_3 I_3^2) dt \tag{##}
</tex>

ここで、 $C$ を真面目に計算すると、

<tex>
C = \frac{1}{2}(L_1 I_1^2(0)+ 2 L_2 I_2^2(0) +L_3 I_3^2(0)) +M I_1(0) I_2(0) + M I_2(0) I_3(0) \tag{##}
</tex>

左辺は電源 $E$ が供給するエネルギーと時刻 $t=0$ に於いて流れていた電流がコイルに持っているエネルギー、右辺はそれぞれの要素で蓄積・消費される電力です。
こうして、エネルギーの流れがどうなっているかが分かりました。

それでは、長くなりましたが今日はこの辺で。

.. _wikipedia: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%90%E5%90%88%E4%BF%82%E6%95%B0

@@author: クロメル@@
@@accept: 2009-08-05@@
@@category: 電磁気学@@
@@id:alterCurrentTransport@@
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