物理のかぎしっぽ 記事ソース/共役部分群と正規部分群

記事ソース/共役部分群と正規部分群

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記事ソースの内容

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共役部分群と正規部分群
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この記事では、今まで元に対して取ってきた共役 $gag^{-1}$ という関係を、 $gHg^{-1}$ のように群に拡張することを勉強します。 固定部分群_ 、 軌道_ 、 中心化群_ など、ここまでに勉強してきたことが全て出てきますので、ごっちゃにならないように、復習しながら少しずつ理解していくようにして下さい。


共役部分群
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群 $G$ の部分群 $H$ に対し、 $G$ のある元 $g$ を使って、 $gHg^{-1}$ と表わせる部分群を **Hの共役部分群** と呼びます。いままで、主に元にだけ考えていた、共役を取るという操作を、群にまで拡張したわけです。

<tex>
H_{conj.}=\{ g|gHg^{-1}=H, \ g \in G , \ H \subset G \}
</tex>



例1
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
4次の対称群 $S_{4}$ に対し、 $(1 \ 2 \ 3)$ を生成元とする巡回部分群 $H=\{(1 \ 2\ 3), (1 \ 3 \ 2), e \}$ を考えます。この部分群 $H$ に対し、 $S_{4}$ の元 $(1 \ 4)$ によって生成される共役部分群を定義に従って求めてみます。

<tex>
(1 \ 4)e(1 \ 4)^{-1}=(1 \ 4)e(1 \ 4) = e
</tex>


<tex>
(1 \ 4)(1 \ 2 \ 3)(1 \ 4)^{-1}&=(1 \ 4)(1 \ 2 \ 3)(1 \ 4)= (4 \ 2 \ 3)
</tex>

<tex>
(1 \ 4)(1 \ 3 \ 2)(1 \ 4)^{-1}&=(1 \ 4)(1 \ 2 \ 3)(1 \ 4)= (2 \ 4 \ 3)
</tex>


よって、 $H$ の $(1 \ 4)$ による共役部分群は $\{e,(4 \ 2 \ 3),(2 \ 4 \ 3) \}$ だと分かります。

<tex>
(1 \ 4)H(1 \ 4)^{-1}= \{e,(4 \ 2 \ 3),(2 \ 4 \ 3) \}
</tex>


正規化群
---------------------------------------------
群 $G$ が、 $G$ の部分群全てからなる集合 $M=\{H_{1},H_{2},... \} $ (つまり、 $M$ の個々の元は $G$ の部分群!)に対する共役作用を考えるとき、 $M$ のある元 $H$ の軌道は、 $H$ と共役な部分群の全体になります。

このとき、 $H$ の固定部分群になっている $G$ の部分群を、 **Hの正規化群** と呼びます。 $H$ の正規化群 $N(H)$ は次式で表わせるでしょう。

<tex>
N(H)=\{g|gHg^{-1}=H \}
</tex>

正規化群の元は、群 $G$ の元です。 $M$ や $H$ と混乱しないようにして下さい。

中心化群の定義は、元 $a$ に関して共役を考え、 $ga=ag$ を満たすような元 $g$ の集合ということでした。正規化群は、中心化群の拡張になっていて、元 $a$ の代わりに部分群 $H$ を考えているわけです。


中心化群では、群 $G$ 、中心化群 $C_{a}$ 、共役類 $C(a)$ の位数に間に $|G|=|C_{a}||C(a)|$ なる関係がありましたが( 中心化群_ 参照)、同じ関係が正規化群に関しても言えます。 

<tex>
|G|=|N(H)||C(H)|
</tex>

これは『群の位数は、ある部分群の正規化群の位数と、その部分群の共役類の位数(その部分群に共役な部分群が何個あるか)の積に等しい』という主張です。





正規部分群
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群 $G$ の部分群 $H$ で、特に、群 $G$ の全ての元 $g$ に対して $gHg^{-1}=H$ がなりたつものを **正規部分群** (または **不変部分群** )と言います。いままで様々な部分群を勉強してきましたが、正規部分群は非常に大事な概念です。


<tex>
gHg^{-1}=H
</tex>

.. [*] 単位元 $e$ と、群 $G$ 自身が正規部分群であるのは明らかです。


.. [*] 正規部分群の定義を $gH=Hg$ と書き直せば、『左剰余類と右剰余類が常に一致する部分群を正規部分群と呼ぶ』と言い直すことも出来るでしょう。可換群では、左剰余類と右剰余類は常に一致しまから、 *可換群においては、任意の部分集合は正規部分群になります* 。


.. [*] 正規部分群に群が作用するときは、可換になるということでしたが、一般に非可換な群の中にも、可換な部分群があるというのは、ちょっと意外で、なかなか感動的な結果であります。また、正規の名に相応しく、正規部分群は非常に扱いやすい性質を持つ部分群です。群論の創始者ともいえるガロア( $\text{Evariste Galois (1811-1832)}$ )が $1832$ 年、正規部分群の重要性に気づき、非可換単純群( 組成列と単純群_ で後述)の最小位数が $60$ であることを証明した際に、正規部分群による類別を $proper \ decomposition$ と呼んだのが正規部分群の初登場です。(現在は、正規部分群を $normail \ subgroup$ と呼びます。)



『群 $H$ が群 $G$ の正規部分群である』ことを、 次のような記号で書く場合があります。奇妙な記号ですが、知っておくと良いでしょう。専用な記号を持っているくらいに正規部分群は大事な概念なのです。


<tex>
H \triangleleft G, \  \  \  G \triangleright H 
</tex>


練習問題1
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
四次の対称群 $S_{4}$ の部分群で $\{e, (1 \ 2)(3 \ 4), (1 \ 3)(2 \ 4), (1 \ 4)(2 \ 3) \}$ は正規部分群になっていることを確認してください。


練習問題2
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
前問の集合は、四次の交代群 $A_{4}$ の中でも正規部分群になっていることを確認してください。


練習問題3
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
三次の交代群 $A_{3}$ は、三次の対称群 $S_{3}$ の正規部分群になっていることを確認してください。

.. [*] 一般に、交代群は対称群の正規部分群になります。


練習問題4
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
正四面体群 $P(4)$ には、以下の3種類の回転操作に対応する元がありました。

1. 頂点と、向かい合う面の中心を結んだ線を軸として回す回転方法。
2. ねじれの位置にある、向かい合った辺の中点同士を結んだ線を軸として回す方法。
3. 回さない。(単位元)

このうち、2番目のタイプの回転に対応する元に、単位元を足したものは部分群になりますが、この部分群が正規部分群になることを確認してください。



.. _三次方程式の解の公式: http://www12.plala.or.jp/ksp/algebra/CubicEquation/
.. _中心化群: http://www12.plala.or.jp/ksp/algebra/CenteredGroup/
.. _固定部分群: http://www12.plala.or.jp/ksp/algebra/Isometricgroup/
.. _軌道: http://www12.plala.or.jp/ksp/algebra/GroupOrbit/
.. _組成列と単純群: http://www12.plala.or.jp/ksp/algebra/GroupSeries/


@@author:Joh@@
@@accept: 2006-04-23@@
@@category: 代数学@@
@@id: NormalSubgroup@@
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