物理のかぎしっぽ 記事ソース/遠隔作用・近接作用

記事ソース/遠隔作用・近接作用

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記事ソースの内容

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遠隔作用・近接作用
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遠隔作用・近接作用という考えは、物理学の発展と共に生じてきました。ここでは、
遠隔作用・近接作用とはどのようなものなのか、またそれらはどのようにし
て生まれたのか、について説明します。

遠隔作用の考え方
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『遠隔作用の力』とは、離れた物体間に、直接作用する力のことを言います。

この考え方は、ニュートンが自ら考えついた万有引力について思考し
た結果生まれたものです。ここで惑星と太陽間に作用する引力の法則の式を見てみましょう。


<tex>
F=G\frac{mM}{r^2} \tag{1}
</tex>

ここで $F$ は惑星と太陽間に作用する引力、 $G$ 
は比例定数、 $m$ は惑星の質量、
$M$ は太陽の質量、 $r$ 
は惑星と太陽の距離を表します。ニュートンは(1)式
の、特に比例定数 $G$ に注目しました。

実は、この比例定数 $G=6.67 \times 10^{-11}\ \mathrm{m^3/kg \cdot s^2}$ は惑星の種類
にも太陽にも関係しない自然定数なのです。ということはこれは、

「自然界に実在するあらゆる物体間には、それらの物体が質量をもつ限り、(1)式の引力が
作用する」

ことを意味すると、ニュートンは考えたのです。この力のことを『万有引力』といいます。
しかし、ここで問題が生じました。(1)式は、2個の粒子の間の距離の2乗に反比例する力
であることを表していますね。つまりこの力がはたらく時、粒子は接触していないのです。
何もない空間内において距離をもつ2個の物体間に、どうしてこのような力がはたらくのか、
ニュートンは当初わかりませんでした。

そこで彼は、この力の原因を他に考えることはせずに、ありのままを受け止めることに
しました。つまり(1)式の力は、離れた物体の間に直接作用するのだ、そういうものなのだ、と
考えることにしたのです。

ニュートンがこのような考え方をした理由について、興味深い話があります。彼は惑星の運動を突き詰めていくにつれて、人間の
力を大きく超えた者、つまり“神”の存在を信じずにはいられなくなっていました。幾何学を熟知した知性的な作用者が、惑星の
運動を創り上げたのだ、と彼は考えていたようです。しかし、そのことと人間が万有引力を科学的に捕らえられないということと
は話が別である、とも考えていました。神は幾何学を行う存在なのだから、幾何学をもってすれば必ず万有引力が作用する原因が
わかる、ということですね。ところが残念なことに、いくらかんがえてもその答えは出ません。そこで「物体間の力は接触によって
のみ生じる」と考えられていた時代に、敢えて『遠隔作用の力』を持ち込んだのです。万有引力を、それは神の力だ、とか、
精霊の意志だ、などといって片付けてしまうのは、ニュートンには耐えられないことだったのでしょう。彼にとってその「神の力」
とは、科学によって解き明かされなければならないものだったのですから。ニュートンの強烈な信仰心が、万有引力のみならずニュ
ートン力学ほとんど全ての構築の原動力となっていたのだとしたら、現代社会を生きる私達にとっては、それはとてもおもしろい歴
史的事実となりますね。

かくして『遠隔作用』の考え方は生まれ、ニュートンが発表した当時は常識離れしたものだったのが、
それから100年もすると物理学者の間では常識となってしまいました。

近接作用の考え方
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では、近接作用の考え方とはどのようなものなのでしょうか。

『近接作用の力』とは、何らかの“場”を仲立ちとして生じ、作用する力のことを言います。

この考え方は、クーロンが「クーロンの法則」という法則を得たことがきっかけで生まれました。それは、帯電粒子間に
作用するクーロン力に関する法則です。その式を見てみましょう。

<tex>
F=\frac{1}{4 \pi \varepsilon_{0} }\frac{qQ}{R^2} \tag{2}
</tex>

ここで $F$ は2個の点電荷間に作用する力、つまりクーロン力、 $\varepsilon_{0}$ は真空の誘電率、 $q$ , $Q$ は2個
の点電荷の電荷量、 $R$ は2個の点電荷間の距離をそれぞれ表します。

このクーロンの法則が発見された時代は、ニュートン力学が最も盛んな時代でした。そのため当時のほとんどの物理学者が、(2)式の
クーロン力もまた万有引力と同じ「遠隔作用の力」だと考えたのです。

しかし、そうは考えなかった人物がいました。ファラデーです。ファラデーは、帯電体の周りの空間はゆがんでいて、そのゆがみが
場を通して伝わり、他の帯電体に力を及ぼす、と考えたのです。少しイメージをしてみましょう。

今、目の前にトランポリンがあるとします。その上に重たくて大きなボールを置いたとします。するとトランポリンは下に凹みますね。
その凹みの近くに、今度は軽くて小さなボールを置いたとします。するとその小さなボールは大きなボールに吸い寄せられるかのように
凹みに向かって転がっていくのがわかるかと思います。これはまるで、この二つのボールの間には引力が作用しているみたいですね。

つまり、大きなボールによって生じたトランポリンのゆがみが伝わり、その結果小さなボールとの間に力が作用するということになり
ます。このような考え方を、「近接作用の考え方」というのです。

ファラデーもまたこのようなイメージで電荷間に作用する力を理解した、と考えられています。しかしながらクーロン力が「遠隔作用
の力」だという意見と「近接作用の力」だという意見、一体どちらが正しいのでしょうか。

正しいのは「近接作用の力」でした。1888年、ヘルツによって実験的に電磁波が発見されたのです。空間に電荷が存在することで生じる
電場と磁荷が存在することで生じる磁場が波となって伝播していくものを電磁波といいます。もしクーロン力が遠隔作用の力であるのな
らば電場も磁場も存在しないことになり、電磁波は存在しないことになります。しかし電磁波は発見されました。
それはまぎれもなく存在しています [*]_ 。このことから「クーロン力は近接作用の力である」という考えが正しいことが明らかになっ
たのです。

.. [*] 私達がテレビ・ラジオ・携帯電話などを使うことができるのもまた、電磁波が存在しているからです。私達は日常的に電磁波の存在を知っているのですね。

万有引力とクーロン力の立場
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一度は遠隔作用の力であると考えられてしまった万有引力でしたが、クーロン力を始めとする電磁気学の近接作用の考え方の成功に
伴って、「万有引力もまた近接作用によるものである」と考え直されるようになりました。この立場に基づいて形成された重力の理論が
一般相対性理論です。アインシュタインは一般相対性理論において、重力とは「縦・横・高さの三次元の空間と、時間軸という一つの
次元の時間を合わせた四次元の時空のゆがみがもたらす現象」であると考えました。「時空のゆがみ」という部分は、近接作用の考え方
そのものですね。現在私達が重力(万有引力)“場”・電“場”・磁“場”と言い表すのは、これらが全て近接作用によるものと考えてい
ることの証なのです。


@@author:トミー@@
@@accept:2005-10-27@@
@@category:ようこそ,物理の世界へ@@
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