Illustratorで数式を使いたいとき,簡単な数式なら, IllustratorでTeXフォント の方法のように,フォントの設定のみで表現可能です.しかし,分数や積分記号など複雑な場合は難しいので, TeXで書いた数式をepsに変換してIllustratorに取り込めばきれいにできます.例として #ref(fig1.png,nolink) のような画像をつくってみたいと思います. * TeXで数式を書く [#k1034196] 最初にTeXで数式をつくっておきます.後でアウトライン化するために,大きいサイズで書きます. \documentclass[30pt]{jsarticle} \pagestyle{empty} \begin{document} \[ i\hbar\frac{\partial\psi}{\partial t} = -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2\psi}{\partial x^2}+V(x,t)\psi \] \end{document} フォントサイズ30ptの設定をするにはjsarticleクラスが必要です.このTeXソースを通常の方法でコンパイルしておきます.ちなみにこれは1次元のシュレーディンガー方程式です. * epsファイルをつくる [#ha114321] TeXで書いた数式をepsに変換するにはつぎのコマンドで行います. dvips -Ppdf -E eq -o eq.eps ** アウトライン化 [#ib4cd3d8] さらに,epsをアウトライン化するにはつぎのコマンドを打ちます. Windowsでは gswin32c -q -sDEVICE=epswrite -sOutputFile=eq_outline.eps -dNOPAUSE -dBATCH -dSAFER eq.eps Linuxでは eps2eps eq.eps eq_outline.eps です.アウトライン化する際,文字が小さいとビットマップになってしまいます.今のように30ptでTeX文書をつくっておけば大丈夫です.アウトライン化した後,バウンディングボックスがおかしくなるので,気になる場合はアウトライン化する前のepsファイルの%%BoundingBox:の行と置き換えます. ** バッチファイル [#f10b3941] これらの処理をWindows上で一括して行うには,バッチファイルをつくるといいです.たとえば tex2eps_outline.bat という名前のテキストファイルをつくっておいて,それに以下を書き込みます. dvips -Ppdf -E eq -o eq.eps gswin32c -q -sDEVICE=epswrite -sOutputFile=eq_outline.eps -dNOPAUSE -dBATCH -dSAFER eq.eps つくったバッチファイルはTeXソースと同じフォルダに置いておきます. #ref(fig2.png,nolink) 後はこのファイルをダブルクリックすれば, eq.epsとeq_outline.epsというファイルができあがります. #ref(fig3.png,nolink) ここでつくったファイルを以下に置いておきます. - &ref(tex2eps_outline.bat); - &ref(eq.eps); - &ref(eq_outline.eps); * Illustratorに配置 [#l21eccce] 「ファイル」メニュー→「新規」で新規書類をつくっておき,「ファイル」メニュー→「配置」からepsファイルを読み込みます.このとき「リンク」にチェックが入っていればリンク画像に,チェックを外せば埋め込み画像になります. #ref(fig4.png,nolink) epsに変換しただけのファイルを読み込んだ場合,フォントデータの配置として読み込まれます. #ref(fig5.png,nolink) アウトラインを取ったepsファイルの場合は,ベクタデータとして読み込まれます. #ref(fig6.png,nolink) ここではベクタデータとして読み込んだものを使います. * 画像の加工 [#f1bdb818] ここからはIllustratorの機能を使った,簡単な画像加工の方法を紹介します.まず,先ほど読み込んだベクタデータは,レイヤー1内のグループとして取り込まれています. &ref(fig7.png,nolink); &ref(fig8.png,nolink); レイヤー1をレイヤーパレット内の「新規レイヤーを作成」アイコンにドラッグして,レイヤーごとコピーします. #ref(fig9.png,nolink) レイヤーパレットの目のアイコンをクリックして,コピーしたレイヤーを非表示にしておきます. #ref(fig10.png,nolink) レイヤー1を選択して,「効果」メニュー→「ぼかし」→「ガウス」をデフォルトの設定で適用します. #ref(fig11.png,nolink) 適当に色を変えます. #ref(fig12.png,nolink) 色を濃くするため,このレイヤーをコピーして二重にします. &ref(fig13.png,nolink); &ref(fig14.png,nolink); ぼかしたレイヤーを非表示にし,最初にコピーした,効果を加えていないレイヤーを表示させます. #ref(fig15.png,nolink) 選択ツールで選択して,塗りを白にします. &ref(fig16.png,nolink); &ref(fig17.png,nolink); すべてのレイヤーを表示させれば #ref(fig19.png,nolink) 完成です. #ref(fig1.png,nolink) これは一例でしたが,TeXの数式をベクタデータで処理することによって,工夫しだいでいろいろできそうです.グラフや説明図に数式を書きこむ際にも便利です. * 参考 [#s8f86619] - [[TeXの数式をDTPソフトに:http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/texwiki/?TeX%E3%81%AE%E6%95%B0%E5%BC%8F%E3%82%92DTP%E3%82%BD%E3%83%95%E3%83%88%E3%81%AB]]