UNIX系OSの大切な概念に,パーミッション(アクセス権限)というものがあります.これはファイルの「所有者」,「グループ」,「その他」という三つの属性のユーザごとに,「読み込み」,「書き込み」,「実行」をそれぞれ別々に指定するというものです.このように細かな設定ができることが,セキュリティの強化に一役かっています. パーミッションを変更するためのコマンドが,chmod(change mode)です. パーミッションの表記法 最初に,パーミッションの表記法を知っておく必要があります.パーミッションはつぎのようにアルファベット1文字で表されます. 意味 シンボル 読み込み r 書き込み w 実行 x 権限なし - ファイルリストを表示するコマンドlsに「-l」オプションを付けて $ ls -l とすると,つぎのようにパーミッション情報が最初の10文字に表示されます. -rw-r--r-- 1 foo foo 8245 Sep 3 23:05 chmod.html -rw-r--r-- 1 foo foo 6832 Sep 3 22:39 compress.html -rw-r--r-- 1 foo foo 6276 Aug 10 00:25 file.html lrwxrwxrwx 1 foo foo 13 Sep 4 00:08 index.html -> ../index.html -rw-r--r-- 1 foo foo 3436 Aug 10 00:25 nkf.html drwxr-xr-x 2 foo foo 4096 Sep 3 23:58 src/ ここで先頭の1文字はファイルの種類,続く9文字は3文字ごとに「所有者」,「グループ」,「その他」のユーザ別パーミッションを表しています.ファイルの種類とは「ファイル」,「ディレクトリ」,「シンボリックリンク」の3種類で,その表記は 意味 シンボル ファイル - ディレクトリ d シンボリックリンク l となっています.たとえば,上の出力の一行目のファイルchmod.htmlは ファイルの種類 所有者 グループ その他 - ファイル rw- 読み込み,書き込み可能 r-- 読み込み可能 r-- 読み込み可能 というパーミッションだと分かります.同様に一番下の行のsrcというやつは ファイルの種類 所有者 グループ その他 d ディレクトリ rwx 読み込み,書き込み,実行可能 r-x 読み込み,実行可能 r-x 読み込み,実行可能 であると読み取ることができます.ディレクトリにおいて「実行可能」とは,「そのディレクトリに移動できる」を意味します. 数値での表記 パーミッションは数値で表すこともできます. CGIを設置したことがある人なら,「なになにのパーミッションは755にしてください」などの説明を読んだことがあるでしょう.この3桁の数字がパーミッションを表しています. 読み込み,書き込み,実行には以下の数値が割り当てられています. 意味 シンボル 数値 読み込み r 4 書き込み w 2 実行 x 1 権限なし - 0 数値で表記する場合は,各ユーザごとにこれらの数値を足し合わせます.たとえば所有者の権限が rw- なら,4+2+0 で 6 となり,そして3桁の数字の3桁目が 6 と確定されます.2桁目はグループのパーミッション, 1桁目はその他のパーミッションです.したがって, 所有者 グループ その他 rw- 読み込み,書き込み可能 r-- 読み込み可能 r-- 読み込み可能 は 所有者 グループ その他 rw- = 4+2+0 = 6 読み込み,書き込み可能 r-- = 4+0+0 = 4 読み込み可能 r-- = 4+0+0 = 4 読み込み可能 すなわち 644 という数値表記になります. パーミッションの変更 数値による操作 あるファイルのパーミッションを644に変更する場合,chmod コマンドは $ chmod 644 ファイル名 のように使います.数値の部分でお好みのパーミッションを指定します. $ chmod 644 ファイル名1 ファイル名2 のように複数のファイルを一度に指定することもできます. シンボルによる操作 また,数値の代わりにシンボルを使うこともできます.ユーザのシンボルは 意味 シンボル 所有者 u グループ g その他 o となっています.たとえば所有者(u)に実行権限(x)を付加する(+)場合は $ chmod u+x ファイル名 などとし,所有者(u)に実行権限(x)を付加し,かつグループ(g)とその他(o)ユーザには全ての権限(rwx)を与えない(-)ようにするには $ chmod u+x,go-rwx ファイル名 などとします. 再帰的に適用 chmodコマンドに「-R」オプションを付けると,あるディレクトリ(サブディレクトリ含む)にあるすべてのファイル,ディレクトリ,シンボリックリンクを対象に操作することができます.たとえば $ chmod -R 700 ディレクトリ名 などのように使います. Windowsとの連携例 Windowsにはパーミッションという概念がありません.ですから,Windowsのファイルシステムはパーミッションの情報を保持できません.いったんFATやNTFSなどのファイルシステムに Linuxでつくったファイルやディレクトリを保存してしまうと,再びLinux側に移してもパーミッション情報が失われ,すべて775になってしまいます. すべてのファイルに実行権限が付くことになり,これでは困ります.パーミッションの再設定を行うわけですが,一つずつchmodコマンドを打っていたのでは大変です.カレントディレクトリ以下のすべてのファイルのパーミッションを644に変更するには,つぎのようにfindと組み合わせてchmodを使います. $ find ./ -type f | xargs chmod 644 これは,まず「find ./ -type f」でカレントディレクトリ以下のファイル名をすべて探し,その結果をパイプで「xargs」に渡して検索結果の一覧を作成し,「chmod 644」に渡して変更を適用させています.「chmod -R」を使わずに「-type f」でファイルに限定しているのは,「chmod -R」ではディレクトリまで644にしてしまい,そのディレクトリに移動できなくなるからです. また,ファイルが少ない場合や拡張子が限定されている場合は $ chmod 644 *.png *.html などのようにワイルドカードを利用するといいでしょう.