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記事ソース/流体力学における最小作用の原理

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記事ソースの内容

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流体力学における最小作用の原理(提案)
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本記事では, 流体力学, より一般的には, 流体や弾性体を含む連続体力学の基礎方程式であるコーシーの運動方程式(Cauchy's Equation)について, 従来は力のつり合いから直接与えられてきたものを, 最小作用の原理あるいは変分原理の枠組みの中で導出する具体的な方法を提案したいと思います.

1.コーシーの運動方程式
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コーシーの運動方程式というのは, 任意の連続体において運動量の輸送を記述する基本的な式です. この方程式は, 質点に関するニュートンの運動方程式における質点を、広がりのある流体要素に拡張したものであるとみなすことができます. 流体要素はある体積を持ち, 変形しながら流れていきます. そして, 流体要素の各点は周囲からの応力を受けますので, その項(接触力の項)がニュートンの運動方程式に加わることになります. まずは両方程式をじっと見比べてみてください.

1.1 ニュートンの運動方程式
------------------------------

<tex>
m\frac{d\bm{u}}{dt} = \bm{F} \tag{1.1}
</tex>

ここで, 質点の質量、速度をそれぞれ $m$ , $\bm{u}$ , 時間を $t$ , 外力を $\bm{F}$ としています.

1.2 コーシーの運動方程式
----------------------------------

<tex>
\int_V \rho dV  \frac{D\bm{u}}{Dt}  = \oint_{S=\partial V} dS \bm{n}\mathrm{P}+ \int_V \rho dV \tilde{\bm{F}} \tag{1.2}
</tex>

ここで、流体要素の体積, 表面積, 密度, 速度をそれぞれ $V$ , $S$ , $\rho$ , $\bm{u}$ , 表面から外に向かう法線ベクトル, そこではたらく応力をそれぞれ, $\bm{n}$ , $\mathrm{P}$ , 単位質量あたりにはたらく外力(体積力)を $\tilde{\bm{F}}$ としています(後述しますが, ここではすべての物理量を場の量として扱います).

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2.ニュートンの運動方程式の導出
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まず、ニュートンの運動方程式の導出のポイントだけ復習してみましょう。議論の展開上, 何が変数であり, 何がそうでないかが重要になってくるため, 以降しばらく, 変数を極力省略せずに書きます.

2.1 作用
------------------------
作用 $S$ は以下で定義されます.

<tex>
S \left[ \bm{x} \right] = \int dt m \tilde{\mathcal{L}} \left( \bm{x}(t), \frac{d \bm{x}(t)}{dt} \right) = \int dt m \left( \frac{1}{2} \left( \frac{d \bm{x}(t)}{dt} \right)^{2} - \tilde{U}(\bm{x}(t)) \right) \tag{2.1}
</tex>

ここで, $\tilde{\mathcal{L}}$ はラグランジアン密度であり, 質点の位置ベクトル, 単位質量あたりのポテンシャルエネルギーをそれぞれ $\bm{x}(t)$ , $\tilde{U}(\bm{x}(t))$ としています. 作用 $S$ は, $\bm{x}$ の汎関数です.

ラグランジアン密度 $\tilde{\mathcal{L}}$ を書きだすと, 

<tex>
\tilde{\mathcal{L}} \left( \bm{x}(t) , \frac{ d \bm{x}(t)}{dt} \right) \equiv \frac{1}{2} \left( \frac{d \bm{x}(t)}{dt} \right) ^{2} - \tilde{U} ( \bm{x}(t)) \tag{2.2}
</tex>

です。

2.2 最小作用の原理
------------------------
$\bm{x}$ による変分  $\delta \bm{x}(t) \equiv \bm{x}^{\prime}(t) - \bm{x}(t)$  を行い, 部分積分を行い, 全微分の項を境界条件により除いて整理すると, 

<tex>
\delta S \left[ \bm{x} \right] = \int dt m \left( -\frac{d^{2}\bm{x}(t)}{dt^{2}}+\tilde{F}(\bm{x}(t)) \right) \cdot \delta\bm{x}(t) \tag{2.3}
</tex>

となります. ここで, $\delta$ と $\frac{d}{dt}$ が可換であること, $\tilde{\bm{F}}(\bm{x}(t))\equiv -\frac{\partial \tilde{U}(\bm{x}(t))}{\partial \bm{x}(t)}$ であることを用いました. こうして, 最小作用の原理からニュートンの運動方程式が求まります. 

<tex>
m\frac{d^{2}\bm{x}}{dt^{2}} = \bm{F} \tag{2.4}
</tex>

なお, (2.3)の変分で以下のラグランジュ方程式を導けば、そこからもニュートンの運動方程式が得られます.

<tex>
\frac{ \partial \tilde{\mathcal{L}} \left( \bm{x}(t) , \frac{ d \bm{x}(t)}{dt} \right) }{ \partial \bm{x}(t) } -\frac{d}{dt} \frac{ \partial \tilde{\mathcal{L}} \left( \bm{x}(t) , \frac{ d \bm{x}(t)}{dt} \right) }{ \partial \left( \frac{d \bm{x}(t)}{dt} \right) } = \bm{0} \tag{2.5}
</tex>

3.流体力学への拡張のための道具(オイラー表現, 位置関数)
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本記事では, オイラー表現, すなわちすべての物理量を位置 $\bm{y}$ と 時間 $t$ の場の量として取り扱うことにします。速度場, 密度場, 応力(の場)をそれぞれ, $\bm{u}(\bm{y},t)$ ,  $\rho(\bm{y},t)$ ,  $\mathrm{P}(\bm{y},t)$ ( $\mathrm{P}$ はテンソル場です。)と表すことにします。

物理量は流体要素と共に流れていくわけですから, オイラー表現では, 物理量の時間微分はラグランジュ微分(Lagrangian derivative) $\frac{D}{Dt} \equiv \frac{\partial}{\partial t} + \bm{u}(\bm{y},t) \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}}$ で与えられることになります。なお, 筆者は本稿でよく $\frac{\partial}{\partial \bm{y}}$ の記法を用いますが, これはより一般的記法ではナブラ $\nabla$ のことですので, 適宜読み替えてください。

さて、ここで、筆者が「位置関数(position function)」と名付けた新規の場の量を導入します。それは単にその位置を返す関数です。

<tex>
\bm{x}:(\bm{y},t) \longmapsto \bm{y} \tag{3.1}
</tex>

位置関数 $\bm{x}(\bm{y},t)$ の時間微分を取ってみます。

<tex>
\frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} &= \frac{\partial \bm{x}(\bm{y},t)}{\partial t}+\left( \bm{u}(\bm{y},t) \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right) \bm{x}(\bm{y},t) \\
&= \frac{\partial \bm{y}}{\partial t} + \left( \bm{u}(\bm{y},t) \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right) \bm{y} \\
&= \bm{u}(\bm{y},t) \tag{3.2}
</tex>

となり, この意味で位置関数は「位置」としてwell-defined(矛盾なく定まっているもの)であり, オイラー表現における「位置」の役割を果たしていることが分かります.

位置関数の変分は $\delta{\bm{x}}(\bm{y},t) \equiv \bm{x}^{\prime}(\bm{y},t) - \bm{x}(\bm{y},t)$ であり, 位置関数の変分 $\delta$ と時間微分 $\frac{D}{Dt}$ は可換になります. これで準備が整いました.

4.コーシーの運動方程式の導出
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では, いよいよ流体力学の場合を考えます。戦略としては、質点の場合を「包含」するような形で作用を拡張します. それは次のような形になります. 

4.1 作用
------------------------

<tex>
S \left[ \bm{x} \right] &= \int dt \int_{V} dV(\bm{y},t) \rho (\bm{y},t) \tilde{\mathcal{L}} \left( \bm{x}(\bm{y},t), \frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \right) \\
&= \int dt \int_{V} dV(\bm{y},t) \rho (\bm{y},t) \left( \frac{1}{2} \left( \frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \right)^{2} +\frac{1}{\rho(\bm{y},t)}\frac{\partial \mathrm{P}(\bm{y},t)}{\partial \bm{y}} \cdot \bm{x}(\bm{y},t) - \tilde{U}(\bm{x}(\bm{y},t)) \right) \tag{4.1}
</tex>

ここで, $\frac{\partial \mathrm{P}}{\partial \bm{y}}$ は, 適当な直交座標系をとって成分で書けば以下になります. 

<tex>
 \frac{\partial \mathrm{P}}{\partial \bm{y}} = \nabla \mathrm{P} =
 \begin{bmatrix}
     \frac{\partial \mathrm{P} _{11}}{\partial y_{1}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{21}}{\partial y_{2}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{31}}{\partial y_{3}} \\
      \frac{\partial \mathrm{P} _{12}}{\partial y_{1}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{22}}{\partial y_{2}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{32}}{\partial y_{3}} \\
     \frac{\partial \mathrm{P} _{13}}{\partial y_{1}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{23}}{\partial y_{2}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{33}}{\partial y_{3}}
   \end{bmatrix} \tag{4.2}
</tex>

ラグランジアン密度 $\tilde{\mathcal{L}}$ を書きだすと, 

<tex>
\tilde{\mathcal{L}} \left( \bm{x}(\bm{y},t),\frac{D\bm{x}(\bm{y} ,t)}{Dt} \right) \equiv \frac{1}{2} \left( \frac{ D \bm{x} ( \bm{y},t)}{Dt} \right) ^{2} + \frac{1}{\rho (\bm{y},t)} \frac{\partial \mathrm{P}(\bm{y},t)}{\partial \bm{y}} \cdot \bm{x}(\bm{y},t) - \tilde{U} ( \bm{x}(\bm{y} ,t)) \tag{4.3}
</tex>

です。

さて, ここで, 上記の作用(4.1)あるいはラグランジアン密度(4.3)で, 変数 $\bm{y}$ がなくなる(つまり流体要素の広がりがなくなる)と, 流体(連続体)の位置関数が質点の位置ベクトルになると共に $\frac{D}{Dt}$ は $\frac{d}{dt}$ になり, 応力はそもそもないのでゼロになると考えれば, 質点の場合の作用(2.1)あるいはラグランジアン密度(2.2)に対応するようになります. このため, 質点の場合を包含するためには, 流体要素を質点にシュリンクさせたときに応力を含む項が位置ベクトルの関数として残ってはならないので, 応力は陽に位置関数の関数であることはできず, $(\bm{y},t)$ の関数であるとすることが重要な意味を持ちます.

4.2 最小作用の原理
------------------------
$\bm{x}$ による変分を行い, 部分積分を行い, 全微分の項を境界条件により除いて整理すると, 

<tex>
\delta S \left[ \bm{x} \right] &= \int dt \left( -\int_{V} dV(\bm{y},t) \rho(\bm{y},t)\frac{D^{2}\bm{x}(\bm{y},t)}{Dt^{2}} + \int_{V} dV(\bm{y},t) \frac{\partial \mathrm{P}(\bm{y},t)}{\partial \bm{y}}+ \int_{V} dV(\bm{y},t) \rho(\bm{y},t)\tilde{F}(\bm{x}(\bm{y},t)) \right) \cdot \delta \bm{x}(\bm{y},t) \\
&= \int dt \left( -\int_{V} dV(\bm{y},t) \rho(\bm{y},t)\frac{D^{2}\bm{x}(\bm{y},t)}{Dt^{2}} + \oint_{S=\partial V} dS(\bm{y},t) \bm{n}(\bm{y},t) \mathrm{P}(\bm{y},t) + \int_{V} dV(\bm{y},t) \rho(\bm{y},t)\tilde{F}(\bm{x}(\bm{y},t)) \right) \cdot \delta \bm{x}(\bm{y},t) 
\tag{4.4}
</tex>

となります. ここで, ガウスの定理 $\int_{V} dV(\bm{y},t) \frac{\partial \mathrm{P}(\bm{y},t)}{\partial \bm{y}} = \oint_{S=\partial V} dS(\bm{y},t) \bm{n}(\bm{y},t) \mathrm{P}(\bm{y},t)$ および $\tilde{\bm{F}}(\bm{x}(\bm{y},t))\equiv -\frac{\partial \tilde{U} (\bm{x}(\bm{y},t))}{\partial \bm{x}(\bm{y},t)}$ であることを用いました. こうして, 最小作用の原理からコーシーの運動方程式が得られます. 

<tex>
\int_V \rho dV  \frac{D^{2}\bm{x}}{Dt^{2}}  = \oint_{S=\partial V} dS \bm{n}\mathrm{P}+ \int_V \rho dV \tilde{\bm{F}} \tag{4.5}
</tex>

ここで, $\bm{n}\mathrm{P}$ は, 適当な直交座標系をとって成分で書けば以下になります. 

<tex>
 \bm{n}\mathrm{P} =
 \begin{bmatrix}
     \frac{\partial \mathrm{P} _{11}}{\partial n_{1}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{21}}{\partial n_{2}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{31}}{\partial n_{3}} \\
      \frac{\partial \mathrm{P} _{12}}{\partial n_{1}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{22}}{\partial n_{2}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{32}}{\partial n_{3}} \\
     \frac{\partial \mathrm{P} _{13}}{\partial n_{1}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{23}}{\partial n_{2}} + \frac{\partial \mathrm{P} _{33}}{\partial n_{3}}
   \end{bmatrix} \tag{4.6}
</tex>

ここで, $\bm{n}\mathrm{P}$ は $\bm{P(\bm{n})}$ とも表し, 応力ベクトルと言います。

なお, (4.4)の変分で以下のラグランジュ方程式を導けば、そこからもコーシーの運動方程式が得られます.

<tex>
\frac{ \partial \tilde{\mathcal{L}} \left( \bm{x}(\bm{y},t) , \frac{ D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \right) }{ \partial \bm{x}(\bm{y},t) } -\frac{D}{Dt} \frac{ \partial \tilde{\mathcal{L}} \left( \bm{x}(\bm{y},t) , \frac{ D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \right) }{ \partial \left( \frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \right) } = \bm{0} \tag{4.7}
</tex>

5.最終結果には位置関数は陽には登場しなくてもよい
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コーシーの運動方程式は, 式(1.2)という形以外に, 式(4.4)でガウスの定理を使う前の式から, $\nabla \equiv \frac{\partial}{\partial \bm{y}}$ を用いると、

<tex>
\rho \frac{ D \bm{u}}{Dt} = \nabla \mathrm{P}+ \rho \tilde{\bm{F}} \tag{5.1}
</tex>

という形でも表せます. いずれにしても, $\tilde{F}(\bm{x}(\bm{y},t))$ を 単に $\tilde{F}(\bm{y},t)$ と捉えれば, 導出結果には位置関数は陽には現れなくてよいことになります. もちろん, いまや位置関数で表してもよいわけです。

<tex>
\rho \frac{ D^{2} \bm{x}}{Dt^{2}} = \nabla \mathrm{P}+ \rho \tilde{\bm{F}} \tag{5.2}
</tex>

従来, 位置関数という発想が登場しなかったのは, コーシーの運動方程式から出発して議論してきており, 位置関数は陽に現れなくて済んでいたからだったのかもしれません. しかし, たとえば流体力学をハミルトン形式で記述する場合には本質的に位置関数が必要になります.

6.流体力学をハミルトン形式の力学で記述した場合
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位置関数 $\bm{x}(\bm{y},t)$ を正準変数にとり, 正準運動量 $\bm{\pi}(\bm{y},t)$ を以下で定義します.

<tex>
\bm{\pi}(\bm{y},t) &\equiv \frac{ \partial \tilde{ \mathcal{L}} \left( \bm{x} (\bm{y},t), \frac{D \bm{x} (\bm{y},t)}{Dt} \right) }{\partial \left( \frac{D \bm{x} (\bm{y},t)}{Dt} \right)} \\
&= \frac{D \bm{x} (\bm{y},t)}{Dt} \tag{6.1}
</tex>

するとハミルトニアン密度は, 

<tex>
\tilde{\mathcal{H}}(\bm{\pi}(\bm{y},t), \bm{x}(\bm{y},t)) &\equiv \left( \frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \right) \cdot \bm{\pi}(\bm{y},t) - \tilde{\mathcal{L}} \left( \bm{x}(\bm{y},t), \frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \right) \\
&= \frac{1}{2} \left( \frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \right)^{2} -\frac{1}{\rho(\bm{y},t)}\frac{\partial \mathrm{P}(\bm{y},t)}{\partial \bm{y}} \cdot \bm{x}(\bm{y},t) +\tilde{U}(\bm{x}(\bm{y},t)) \tag{6.2}
</tex>

となり, 次のハミルトン方程式(Hamilton's equations)が成り立つことが容易に確認できます.

<tex>
\frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} &= \frac{\partial \tilde{\mathcal{H}}(\bm{\pi}(\bm{y},t), \bm{x}(\bm{y},t))}{\partial \bm{\pi}(\bm{y},t)}  \tag{6.3}\\
\frac{D \bm{\pi}(\bm{y},t)}{Dt}&= -\frac{\partial \tilde{\mathcal{H}}(\bm{\pi}(\bm{y},t), \bm{x}(\bm{y},t))}{\partial \bm{x}(\bm{y},t)}  \tag{6.4}
</tex>

また, ハミルトン方程式により, 

<tex>
\frac{D \tilde{\mathcal{H}}(\bm{\pi}(\bm{y},t), \bm{x}(\bm{y},t))}{Dt}
&=\frac{\partial \tilde{\mathcal{H}}(\bm{\pi}(\bm{y},t), \bm{x}(\bm{y},t))}{\partial \bm{\pi}(\bm{y},t)} \cdot \frac{D \bm{\pi}(\bm{y},t)}{Dt}+\frac{\partial \tilde{\mathcal{H}}(\bm{\pi}(\bm{y},t), \bm{x}(\bm{y},t))}{\partial \bm{x}(\bm{y},t)}  \cdot \frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \\
&=\frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \cdot \frac{D \bm{\pi}(\bm{y},t)}{Dt}- \frac{D \bm{\pi}(\bm{y},t)}{Dt} \cdot \frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \\
&=0  \tag{6.5}
</tex>

が成り立ち, 8.で説明するエネルギー保存則の別証を与えます. 

7.ナヴィエ・ストークス方程式との関係 構成方程式との独立性
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等方的なニュートン流体の場合, 応力は次の形になります。

<tex>
\mathrm{P}_{ij} = -p \delta_{ij} + \lambda \delta_{ij} \frac{ \partial u_{k}}{\partial y_{k}} + \mu \left( \frac{\partial u_{i}}{\partial y_{j}} + \frac{\partial u_{j}}{\partial y_{i}} \right) \tag{7.1}
</tex>

ここで, $\delta_{ij}$ ,  $p$ ,  $\mu$ ,  $\lambda$ はそれぞれクロネッカーのデルタ, 圧力, 粘性率, 第2粘性率です.

式(7.1)をコーシーの運動方程式(5.1)に代入すると, 以下のナヴィエ・ストークス方程式(Navier-Stokes Equation)が得られます. 

<tex>
\rho \frac{D \bm{u}}{Dt} = -\nabla p + (\lambda + \mu ) \nabla (\nabla \cdot \bm{u}) + \mu \nabla ^{2} \bm{u} +\rho \tilde{\bm{F}} \tag{7.2}
</tex>

式(7.1)のように応力の具体的な形を与える式を構成方程式(Constitution Equation)と呼びますが, 上述のように, 応力は陽に位置関数の関数ではないため(等方的なニュートン流体の応力(7.1)も位置関数を陽には含んでいません.), 構成方程式は最小作用の原理によるコーシーの運動方程式の導出過程には影響せず, 最小作用の原理とは独立になっています. 


8.質量保存則とエネルギー保存則
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いま無重力空間に見かけ上同じ二つのボールがあったとします。一つは鉄製で一つは発泡スチロール製です。これらを同じ外力で押せば, ボールの質量に応じてニュートンの方程式(1.1)に従った加速度で運動をします(これは質点の話で, 厳密にはボールは弾性体や剛体でしょうから以下の連続体の枠組みに入れるべきですが)。質量が連続的に広がった連続体(流体)でも事態は基本的には同じであり, ある質量場に対して外力の場が働けば各点の質量に応じた加速度で流体が運動していき, 新たに配置された質量場に対して外力の場が働けば各点の質量に応じた加速度で流体が運動していき…, ということが続いていきます。この運動がコーシーの運動方程式(1.2)に従います。

コーシーの運動方程式(1.2)では,  $\tilde{\bm{F}}(\bm{x}(\bm{y},t))$ は与えられるとして, 質量場 $dm(\bm{y},t)=\rho (\bm{y},t)dV(\bm{y},t)$ と応力場 $\mathrm{P}(\bm{y},t)$ が分かっていれば, すべての位置と時間 $(\bm{y},t)$ について速度場 $\bm{u}(\bm{y},t)$ が決定され、流体の運動の状態が完全に決定されます。しかし, そのためには質量場 $\rho (\bm{y},t)dV(\bm{y},t)$ あるいは応力場 $\mathrm{P}(\bm{y},t)$ はコーシーの運動方程式とは別に決定しなければなりません。このうち質量場 $\rho (\bm{y},t)dV(\bm{y},t)$ については質量保存の法則により決定できます. 質量保存則は次の形で表せます.

<tex>
\frac{D}{Dt} ( \rho dV ) &= \frac{D \rho}{Dt} dV + \rho \frac{D(dV)}{Dt} \\
  &= \frac{D \rho}{Dt} dV + \rho (\nabla \cdot \bm{u}) dV  \\  
  &= \left( \frac{\partial \rho}{\partial t} + \nabla \cdot (\rho \bm{u}) \right) dV \\
  &= 0 \tag{8.1}
</tex>

ここで, 二番目の等式で $\frac{D(dV)}{Dt}= (\nabla \cdot \bm{u}) dV$ であること( $dV$ も場の量 $dV=dV(\bm{y},t)$ であることに注意してください), 四番目の等式で連続の式(Equation of Continuity) $\frac{\partial \rho}{\partial t} + \nabla \cdot (\rho \bm{u})=0$ を用いています. 

さて, 系の単位質量あたりのエネルギー(エネルギー密度) $\tilde{E}$ は次のように表せます。

<tex>
\tilde{E}\left( \bm{x}(\bm{y},t),\frac{D\bm{x}(\bm{y} ,t)}{Dt} \right)
\equiv \frac{1}{2} \left( \frac{D \bm{x}(\bm{y},t)}{Dt} \right)^{2} -\frac{1}{\rho(\bm{y},t)}\frac{\partial \mathrm{P}(\bm{y},t)}{\partial \bm{y}} \cdot \bm{x}(\bm{y},t) +\tilde{U}(\bm{x}(\bm{y},t)) \tag{8.2}
</tex>

エネルギー密度 $\tilde{E}$ について, 以下が成り立ちます。

<tex>
\frac{D \tilde{E}}{Dt} &= \frac{\partial \tilde{E}}{\partial \bm{x}} \cdot \frac{D \bm{x}}{Dt} + \frac{\partial \tilde{E}}{\partial \left( \frac{D \bm{x}}{Dt} \right)} \cdot \frac{D}{Dt} \left( \frac{D \bm{x}}{Dt} \right)\\
&= \left( -\frac{1}{\rho}\frac{\partial \mathrm{P}}{\partial \bm{y}} + \frac{\partial \tilde{U}}{\partial \bm{x}} \right) \cdot \frac{D \bm{x}}{Dt} + \frac{D \bm{x}}{Dt} \cdot \left( \frac{D^{2} \bm{x}}{Dt^{2}} \right)\\
&= \left( -\frac{1}{\rho}\frac{\partial \mathrm{P}}{\partial \bm{y}} -\tilde{\bm{F}} + \frac{D^{2} \bm{x}}{Dt^{2}} \right) \cdot \frac{D \bm{x}}{Dt}\\
&=0 \tag{8.3}
</tex>

ここで, 四番目の等式でコーシーの運動方程式 $\frac{D^{2} \bm{x}}{Dt^{2}} = \frac{1}{\rho} \frac{\partial \mathrm{P}}{\partial \bm{y}} + \tilde{\bm{F}}$ (式(5.2)と同じ)を用いています。

系全体のエネルギー $E$ は, 

<tex>
E &\equiv \int_{V} \rho dV \tilde{E} \\
  &= \int_{V} \rho dV \left( \frac{1}{2} \left( \frac{D \bm{x}}{Dt} \right)^{2} -\frac{1}{\rho}\frac{\partial \mathrm{P}}{\partial \bm{y}} \cdot \bm{x} +\tilde{U} \right)  
\tag{8.4}
</tex>

となりますが, 式(8.1)と式(8.3)から次のエネルギー保存則が示されます。

<tex>
\frac{DE}{Dt} &= \int_{V} \left( \frac{D (\rho dV)}{Dt}\tilde{E}+ \rho dV \frac{D \tilde{E}}{Dt} \right) \\
&= \int_{V} \left( 0 \cdot \tilde{E}+ \rho dV \cdot 0 \right) \\
&= 0
\tag{8.5}
</tex>

ナヴィエ・ストークス方程式(7.2)の場合には, $\rho$ ,  $p$ ,  $\bm{u}$ の都合5つの量がすべての $(\bm{y},t)$ で決定されれば流体の状態が完全に決定されます。そのためには, コーシーの運動方程式と質量保存則(8.1)とエネルギー保存則(8.5)の式があれば十分です。
しかしより一般の流体, たとえば非極性的な応力(nonpolar stress)の流体といった場合には, 応力テンソル自体には $\mathrm{P}_{ij}=\mathrm{P}_{ji}$ といった性質しかないため, その6個の独立成分を決定する方程式系が必要になります。

伝統的な流体力学では, もっとも一般的な形では, 変形速度テンソル $\mathrm{X}_{ij} \equiv \frac{1}{2} \left( \frac{\partial u_{i}}{\partial y_{j}}+\frac{\partial u_{j}}{\partial y_{i}} \right)$ を用いて以下の式(8.6)から応力テンソル $\mathrm{P}_{ij}$ の関数形を決定する必要があります。

<tex>
\mathrm{P}_{ij} (\mathrm{X}_{kl}+d \mathrm{X}_{kl})= e^{d \mathrm{X}_{pq}\frac{\partial}{\partial \mathrm{X}_{pq}}} \mathrm{P}_{ij} (\mathrm{X}_{kl}) \tag{8.6}
</tex>

ただし,  $\mathrm{X}_{ij}=0$ のとき,  $\mathrm{P}_{ij}(0)=-p\delta_{ij}$ です。ナヴィエ・ストークス方程式の構成方程式(7.1)は式(8.6)で一次の微分項まで考え $\mathrm{X}_{ij}=0$ としたものに対応しています。

応力の関数形の決定にあたっては、その一つの条件としてエネルギー保存則(8.5)を用いることができます。また, ナヴィエ・ストークス方程式のような構成方程式がすでにあるならばそれを用いることができます。

しかし一体, 応力とはそもそも何なのでしょうか? 次節ではそのことをもう一度考え直し, 新しい形での応力を提示します。そして応力が位置関数を陽に含んでいないということも確認します。


9.応力の新しい形の提示
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本記事で目標としていたのは, 質点に関するニュートンの運動方程式を流体要素(より正確には連続体)に関するものに拡張することでした。そのような観点で見た場合に応力とは何なのでしょうか? 本稿では, 物理量はすべて場の量として扱っていますが, ニュートンの力学と変わらずに, 連続体の運動の状態も, すべての位置 $\bm{y}$ と時刻 $t$ での質量場 $dm(\bm{y},t)=\rho(\bm{y},t)dV(\bm{y},t)$ と速度場 $\bm{u}(\bm{y},t)$ を決定できれば決定します。8.節冒頭の説明からそれが分かります。そこに応力は登場しません。登場する必要はないのです。なぜなら, 応力とは, 近接した位置の質量場と速度場の関係の名に過ぎないからです。実際, 応力は以下に示すように質量場と速度場だけでexplicitに表せます。

流れの場があったときに、質量場と速度場でできる運動量(的な量)の時間微分による力(的な量)の近接した位置での差から応力を定義できます。すなわち,

<tex>
 dS \bm{n}\mathrm{P} &\equiv d \left( \frac{D(\rho dV\bm{u})}{Dt} \right) \\
&=  d \left( \rho dV \frac{D\bm{u}}{Dt} \right) \\
&=  d \left( \rho dV \frac{D^{2}\bm{x}}{Dt^{2}} \right) \tag{9.1}
</tex>

位置の変位 $d\bm{y}$ による変位(つまりはテイラー展開)を適当な直交座標系をとって明示すれば,

<tex>
 dS \bm{n}\mathrm{P} &= \left(  e^{d \bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}}} -1 \right)  \left( \rho dV \frac{D\bm{u}}{Dt} \right)  \\
&=\sum^{\infty}_{k=1}\frac{1}{k!} \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right)^{k} \left( \rho dV \frac{D\bm{u}}{Dt} \right) \\
&= \left( \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right) + \frac{1}{2} \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right)^{2} + \frac{1}{6} \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right)^{3} + \frac{1}{24} \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right)^{4} + \cdots \right)  \left( \rho dV \frac{D\bm{u}}{Dt} \right) \\ \tag{9.2}
</tex>

となります。ここで, 面積要素ベクトル $dS \bm{n}$ と変位ベクトル $d\bm{y}$ は平行です。また, ここでは著者独自の指数関数を用いた表記でテイラー展開を $df=f(\bm{y}+d\bm{y})-f(\bm{y})= \left( e^{d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}}}-1 \right) f(\bm{y})$ と示しています。ここではもっとも一般的な連続体を想定するため近似はせずあえて高次の項を残しています. 式(9.1)を応力ベクトル $\bm{P(\bm{n})}=\bm{n}\mathrm{P}$ の定義としてみなせば, 

<tex>
\bm{P(\bm{n})}&\equiv \displaystyle \frac{d \left( \rho dV \displaystyle \frac{D \bm{u}}{Dt} \right) }{dS} \\
             &= \displaystyle \frac{ \displaystyle \sum^{\infty}_{k=1}\frac{1}{k!} \biggl( dy \bm{n} \cdot \nabla \biggr)^{k} \left( \rho dV \frac{D\bm{u}}{Dt} \right) }{dS}\\ \tag{9.3}
</tex>

となります(以下の図を参照ください)。 

.. image:: suzukiyasuo-definitionofstress-01.png

(ここで, 少し立ち入った注意をしますと, 式(9.2)の位置の変位 $d\bm{y}$ による変位(テイラー展開)を考えるにあたっては, ある時点における空間的な変位分だけを考えれば充分です. ですから, 位置の変位 $d\bm{y}$ の時間に対する変位分 $ \frac{ D(d \bm{y})}{Dt} dt = (d \bm{y} \cdot \nabla ) \bm{u} dt$ は関与しません。そのため, 微分演算子も空間勾配 $\frac{\partial}{\partial \bm{y}} = \nabla$ のみになっています。たとえば,  $ d \bm{y} \cdot \displaystyle \frac{\partial}{\partial \bm{y}}$ に対して,  $d\ \displaystyle \left( (d \bm{y} \cdot \nabla ) \bm{u} dt \right) \cdot \displaystyle \frac{\partial}{\partial \left( (d \bm{y} \cdot \nabla ) \bm{u} dt \right) }$ を考える必要はありません。また, これに対応して, 式(9.2)左辺の $d \bm{n} dS= d \bm{S}$ についても同様に,  $d \bm{S}$ の時間に対する変位分 $\frac{D(d \bm{S})}{Dt}  dt = -(d \bm{S} \times \nabla ) \times \bm{u} dt $ は関与しません。なお,  $dV = d \bm{y} \cdot d \bm{S}$ であることから,  $\frac{D(dV)}{Dt}= (\nabla \cdot \bm{u}) dV$ となっています。)

式(9.1)で与える応力の定義は, 応力テンソルを対称テンソルに限定しません。つまり, 非極性的な応力の流体のみならず、一般の流体, 一般の連続体の応力の定義を与えるものになっています。


式(9.1)から,  $d \left( \rho dV \frac{D \bm{u} }{Dt}\right) = d \biggl( \rho dV \biggr) \frac{D \bm{u} }{Dt} + \rho dV d \left( \frac{D \bm{u} }{Dt}\right)$ であるので, 流体が一瞬で凍結すれば質量場と速度場の勾配は共にゼロであることから, 応力はゼロになることなども分かります。

式(9.1)や(9.2)は適当な直交座標系の成分で書けば,  $dS n_{j} \mathrm{P}_{ji} = d \left( \rho dV \frac{D u_{i}}{Dt} \right)$ や $\frac{1}{2}\epsilon _{jkl} dy_{k} \wedge dy_{l} \mathrm{P}_{ji} = \left(  e^{dy_{j} \cdot \frac{\partial}{\partial y_{j}}} -1 \right)  \left( \rho dy_{1}\wedge dy_{2} \wedge dy_{3} \left( \frac{\partial  u_{i}}{\partial t}+u_{j} \frac{\partial u_{i}}{\partial y_{j}} \right) \right)  $ ( ここで, $\epsilon_{jkl}$ はレビ・チビタ記号です )などと表せます。

さて, ここで筆者が初めて示した応力の定義式(9.1)あるいは(9.2)というのは, 応力が位置関数を陽に含まないことを素朴に前提していた上記議論を裏付ける直接的証明を与えています。また, 本定義で定義される応力はあきらかに速度勾配テンソルの関数つまりは変形速度テンソルの関数であるため, 従来の応力と整合するものとなっています。たとえば流体が等方的なニュートン流体の条件を満たすならば, ナヴィエ・ストークス方程式の応力が得られ, 本稿の定式化がナヴィエ・ストークス方程式も包摂していることが分かります。

しかし, 応力というものは, ものの流れを先に立てて考えれば, その結果的な力であり, またある意味では見かけ上の力であるに過ぎないのです。ですから, 式(9.1)あるいは(9.2)を使えば, 流体の基礎方程式であるコーシーの運動方程式(1.2)は,

<tex>
\int_V \rho dV  \frac{D\bm{u}}{Dt}  = \oint_{S=\partial V} d \left( \rho dV \frac{D\bm{u}}{Dt} \right)+ \int_V \rho dV \tilde{\bm{F}} \tag{9.4}
</tex>

あるいは

<tex>
\int_V \rho dV  \frac{D\bm{u}}{Dt}  &= \oint_{S=\partial V}\left( e^{d \bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}}} -1 \right)  \left( \rho dV \frac{D\bm{u}}{Dt} \right)+ \int_V \rho dV \tilde{\bm{F}} \\
&= \oint_{S=\partial V}\sum^{\infty}_{k=1}\frac{1}{k!} \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right)^{k} \left( \rho dV \frac{D\bm{u}}{Dt} \right) + \int_V \rho dV \tilde{\bm{F}} \\
&= \oint_{S=\partial V}\left( \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right) + \frac{1}{2} \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right)^{2} + \frac{1}{6} \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right)^{3} + \frac{1}{24} \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right)^{4} + \cdots \right)  \left( \rho dV \frac{D\bm{u}}{Dt} \right)+ \int_V \rho dV \tilde{\bm{F}} \\ \tag{9.5}
</tex>

という形で表すことができ, ここにはもう応力は要りません。もし原因力と結果力という言い方をするならば, 外力の場 $\tilde{\bm{F}}$ という原因力によって質量場 $\rho dV$ と速度場 $\bm{u}$ が決定されるので, それらの結果的な力(的な量)としてあえて応力というものを定義することもできる, というだけです。

ところで, 式(9.4)あるいは(9.5)では, 粘性はどこへ消えてしまったのかと思うかもしれません。心配ありません。粘性とはもとをたどれば慣性に起因しているから, 質量場 $\rho dV$ のところに「いる」のです。

流体(より一般的には連続体)で決定すべきは質量場 $\rho dV$ と速度場 $\bm{u}$ だけであるので, 実は質量保存の式(8.1)とコーシーの運動方程式(9.4)あるいは(9.5)だけがあれば決定されてしまいます。そのため, 流体力学の基礎方程式を改めて記すならば, 次の式にまとめられます。

<tex>
\left\{ \begin{array}{ll}
&\displaystyle \frac{D}{Dt} ( \rho dV )=0 \\
\\
&\displaystyle \int_V \rho dV  \frac{D\bm{u}}{Dt}=\oint_{S=\partial V}\sum^{\infty}_{k=1}\frac{1}{k!} \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right)^{k} \left( \rho dV \frac{D\bm{u}}{Dt} \right) + \int_V \rho dV \tilde{\bm{F}} \\
\end{array} \right.
\tag{9.6}
</tex>

ここに流体の運動の状態を決定するのに必要十分な情報があることに注意してください。ナヴィエ・ストークス方程式などでは, ある意味で余計なパラメータを導入して応力を近似しているため、流体の状態の決定に必要な方程式が余計に増えてしまっているのです。


最後に, 本記事で質点に関するニュートンの運動方程式を包含する目的で導入した位置関数との関連について述べます。ここでは「位置場(position field)」と呼んだ方が適切かもしれませんので位置場と呼ぶことにします(加速度場も速度場もあるので位置場もあってよいでしょう!). 連続体はすべての位置と時刻での質量場と位置場を決定すれば決定される, と表現でき, 式(9.4)あるいは(9.5)によって以下のように質点の運動を包含しつつそれが拡張された形での議論が可能になります。

<tex>
\left\{ \begin{array}{ll}
&\displaystyle \frac{D}{Dt} ( \rho dV )=0 \\
\\
&\displaystyle \int_V \rho dV  \frac{D^{2}\bm{x}}{Dt^{2}}=\oint_{S=\partial V}\sum^{\infty}_{k=1}\frac{1}{k!} \left(d\bm{y} \cdot \frac{\partial}{\partial \bm{y}} \right)^{k} \left( \rho dV \frac{D^{2}\bm{x}}{Dt^{2}} \right) + \int_V \rho dV \tilde{\bm{F}} \\
\end{array} \right.
\tag{9.7}
</tex>

ただし, 方程式(9.7)の解である位置場(位置関数) $\bm{x}(\bm{y},t)$ は式(3.1)より自明であり, その意味で方程式(9.7)の $\bm{x}(\bm{y},t)$ についてはもう解けてしまっており, しかも不思議なことにその解は質量場や外力の場に全然依っていません! この不思議の秘密はラグランジュ微分にあります。ラグランジュ微分には速度場が含まれ, そこに質量場や外力の場の影響が吸収されているわけです。ラグランジュ微分の速度場は位置場のラグランジュ微分から求められますが、そこにまた速度場が含まれ…という本節の終わりに述べる位置場(位置関数)の性質(内的開展)により, 流体の状態を知るには実質的にはやはり方程式(9.5)を解くことになり(よって質量場や外力の場を考慮することになり), 式(9.6)の $\bm{u}(\bm{y},t)$ のように解が自明ではなくなります。 

なお, 主題が拡散し過ぎてしまうのでここでは立ち入りませんが, 式(9.6)あるいは(9.7)は, 当然のことではありますが, 質点系の運動方程式において, 質点系の中にある閉じた境界を設定し, その領域についての運動を記述する式を考えた場合と整合しています。

最後に, 位置場(位置関数)のある性質(内的開展)について説明します。速度場は, 位置場(位置関数)のラグランジュ微分で表されますが, そのラグランジュ微分の中にまた速度場がありますので, それもまた位置場(位置関数)のラグランジュ微分で表され, そのラグランジュ微分の中にまた速度場があるのでそれもまた位置場(位置関数)のラグランジュ微分で表され…と, 無限に開展する構造があります。これは連続体というものの特性を表しています。

<tex>
u_i &= \frac{Dx_i}{Dt} \\

&= \left(\frac{\partial}{\partial t}+u_j\frac{\partial}{\partial y_j}\right)x_i \\

&= \left(\frac{\partial}{\partial t}+\left(\frac{\partial}{\partial t}+u_k\frac{\partial}{\partial y_k}\right)x_j\frac{\partial}{\partial y_j}\right)x_i \\

&= \left(\frac{\partial}{\partial t}+\left(\frac{\partial}{\partial t}+\left(\frac{\partial}{\partial t}+u_l\frac{\partial}{\partial y_l}\right)x_k\frac{\partial}{\partial y_k}\right)x_j\frac{\partial}{\partial y_j}\right)x_i \\

&= \left(\frac{\partial}{\partial t}+\left(\frac{\partial}{\partial t}+\left(\frac{\partial}{\partial t}+\left(\frac{\partial}{\partial t}+u_m\frac{\partial}{\partial y_m}\right)x_l\frac{\partial}{\partial y_l}\right)x_k\frac{\partial}{\partial y_k}\right)x_j\frac{\partial}{\partial y_j}\right)x_i \\

&= \left(\frac{\partial}{\partial t}+\left(\frac{\partial}{\partial t}+\left(\frac{\partial}{\partial t}+\left(\frac{\partial}{\partial t}+\left(\cdots\cdots\right)x_m\frac{\partial}{\partial y_m}\right)x_l\frac{\partial}{\partial y_l}\right)x_k\frac{\partial}{\partial y_k}\right)x_j\frac{\partial}{\partial y_j}\right)x_i \tag{9.8}
</tex>


10.おわりに
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ここに提案した議論の特長は, (i)従来の質点に関するニュートンの運動方程式を導く最小作用の原理あるいは変分原理を, 位置場(位置関数)というものを導入する事によって, 連続体の運動方程式に拡張できたこと, (ii)この定式化により, 熱力学を援用しない形で連続体としての議論を完結できたこと, (iii)応力が何であるかをその新しい形を明示的に提示することによって示し, 粘性の意味も含めて, 流体力学の基礎を直截に説明できたことにあるのではないかと思います。

本記事の内容は, 筆者鈴木康夫が二十数年(年月は重要ではありませんが)つらつらと独りで勝手に考えてきたオリジナルの理論であり, 世の中に広まっているものではありません。従来の物理学にとってどんな意味があるのかは不明です。ただ, 筆者にとっては, これによって質点に関する力学と連続体力学とが形式的に包括的でき, 従来の連続体力学の定式化に関し, 筆者が古典力学の文脈においてはどこか隔靴掻痒の感があった説明に対し, 満足のいく言葉づかいが得られた意味では重要でした。

ここから先は, 読者諸賢がこの拙い提案を批判的に吟味され, よりよい理論の構築に向けて, あるいはこれを棄却し, あるいはこれを発展させて, 自分自身の物理学を創始されることを願っています。

参考に, 以下のメモを紹介します。

本稿の変分原理の部分についてやや詳しい計算を記した英文メモ(An English Memo: Principle of Least Action in Fluid Mechanics)が こちら_ にあります.

本稿とは定式化の順序を逆に構成した, ある場所でのプレゼン資料が こちら2_ にあります.

最後に, 本稿の応力の定義の妥当性に関する説明文を こちら3_ に載せました. 


.. _こちら: https://drive.google.com/open?id=1Y-Z66AylAB2xWoicDHrQK0dAFWqzNDxT

.. _こちら2: https://drive.google.com/file/d/1Mwycd6w_-0JVy3Q2zL4FL6Me8iQq9JW_/view

.. _こちら3: https://drive.google.com/file/d/1YYetYN4ZW_uKRklngtJUMC1kASMsC2fx/view?usp=sharing


@@author: 鈴木康夫@@
@@accept: 2018-02-18@@
@@category: 流体力学@@
@@id: PrincipleofLeastActionforFluidMechanics@@

添付ファイル: filesuzukiyasuo-definitionofstress-01.png 4件 [詳細]
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