============================================================ 単純な図形を不変にする滑らかな流れの生成法 ============================================================ この記事では、便利なベクトル場を生成する手法を論じます。 大雑把な話ですが、なかなか興味深いと思います。 いきなりの本題 ================= 二次元平面上に2つの連続な陰関数 f_1(x,y) = c_1 \\ f_2(x,y) = c_2 \tag{##} があるとします。 これは簡単に解釈すると、それぞれ境界で囲まれたある有界な領域から離れるにしたがって、 値を増す関数が左辺で、その等高線を指定するのが右辺の定数値です。 もちろん離れるにしたがって負に増大する場合はありますが、ここでは考えません。 その場合は全体にマイナスを掛ければいいからです。 ここで、関数 $f_i(x,y) - c_i$ は、それがゼロになる集合で仕切られる 領域の内側と外側では、必ず正のみか、負のみになり、混じることはありません。 なぜなら、混じっているなら、その領域間に境界が存在するはずだからです。 ここで、 $c_1,c_2$ を固定して、動くパラメータ $C$ を考えます。 下を考えてみましょう。 (f_1(x,y) - c_1)(f_2(x,y) - c_2) = C \tag{##} これって、 $C=0$ の時は左辺の積の因子 $f_1(x,y) - c_1$ (これをゼロにする曲線を $\Gamma_1$ とする)か $f_2(x,y) - c_2$ (同じく $\Gamma_2$ とする)がゼロになっている時で、つまり、式 $(1)$ の和集合 $\Gamma = (\Gamma_1 \cup \Gamma_2)$ です。 面白いのはここからです。 $C$ を正負に動かしてみると、 $\Gamma$ に滑らかに沿った 曲線群になります。ここで、 $\Gamma_1$ から近い $\Gamma_2$ の点を みると、 $C$ が正になった時、 $f_1(x,y) - c_1$ が小さいの で、 $\Gamma_2$ からはある程度離れた点でもある点で、式 $(2)$ を満たした点の集合を作ります。 一方、 $\Gamma_1$ から大きく離れると、 $\Gamma_2$ はほとんど元の図形から動きません。 具体例 ========= 5つほど、上げておきます。(数式可視化ソフトのdesmosを使うといいです) (1)双曲線 |x||y| = C \tag{##} (2)四直線に沿う曲線群 (|x|-1)(|y|-1) = C \tag{##} カッシーニの卵型( $\ell = a$ ではレムニスケート) ((x-a)^2+y^2)((x+a)^2+y^2)=\ell^4 \tag{##} 非対称なカッシーニの卵型 ((x-2)^2+y^2)((x+2)^2+y^2-1)= C \tag{##} 便利なツールとして ========================== これベクトル場で良い感じのを取ってくるのに使えますね。 手計算ではなかなか複雑ですが、数値計算なら有効な手法かと思います。 つまり、曲線の法線ベクトルを求める手法である外微分 (これは一形式なので、それからベクトル場にしたもの)をとったり、 それに直交した曲線に沿うベクトルを容易に得ます。(単純な計算とは言っていない) 法線ベクトル場 $X$ は、 $\psi = (f_1(x,y) - c_1)(f_2(x,y) - c_2)$ として、 X = \dfrac{\partial \psi}{\partial x}\dfrac{\partial}{\partial x} + \dfrac{\partial \psi}{\partial y}\dfrac{\partial}{\partial y} \tag{##} 接線ベクトル場 $Y$ は、 Y = -\dfrac{\partial \psi}{\partial y}\dfrac{\partial}{\partial x} + \dfrac{\partial \psi}{\partial x}\dfrac{\partial}{\partial y} \tag{##} となります。どうです?なかなか便利そうな手法ではありませんか? 今日はここまで。お疲れさまでした。 @@author:クロメル@@ @@accept:2021-04-17@@ @@category:微分・位相幾何学@@ @@id:getNewFlow@@