============================================================ 電力の複素電流表示 ============================================================ これから書くことは非常に簡単なことですが、結構重宝すると思います。 豆知識としてどうぞ。 複素電流を用いた有効電力の表現 =============================== あるインピーダンスで消費される電力の時間平均 は複素電流ではどう書かれるかを調べます。 インピーダンスにかかる電圧を V=V_{comp} e^{i \omega t}=V_{0} e^{i (\omega t + \phi_1 )} 電流を I=I_{comp} e^{i \omega t}=I_{0} e^{i(\omega t + \phi_2)} とします。 $V_0 , I_0 , \phi_1 \phi_2$ は実数です。 そして、 $V_{comp},I_{comp}$ は複素数です。 それぞれの式の最後の変形は極座標をとったことになります。 ここで、電力 $P$ を求めます。ただし、 $Re()$ は実数部を表します。 P &= Re(V) \times Re(I) \\ &= V_0 \frac{e^{i (\omega t + \phi_1)}+e^{-i (\omega t + \phi_1)}}{2} \times I_0 \frac{e^{i (\omega t + \phi_2)}+e^{-i (\omega t + \phi_2)}}{2} \\ &= \frac{V_0 I_0}{4} (e^{i (2 \omega t + \phi_1 +\phi_2)} +e^{i(\phi_1-\phi_2)} +e^{-i(\phi_1-\phi_2)}+e^{-i (2 \omega t + \phi_1 +\phi_2)}) $t$ を含む項は、周期的に正負を繰り返す項なので、 時間平均をとると(上付きのバーをつけて表します。)ゼロになります。 よって今考えたいのは平均消費電力 [*]_ であり、 \bar{P}= \frac{V_0 I_0}{4}(e^{i(\phi_1-\phi_2)} +e^{-i(\phi_1-\phi_2)}) です。これは抵抗で消費される(ジュール熱に変わる)電力を表わし、 負の抵抗はないので、絶対に正の値をとります。 .. [*] 正式には有効電力といいます。この平均消費電力の定義は、交流の周期 $T$ として、 $\bar{P}= \frac{1}{T} \int_0^T P dt$ です。 ここで、 V_0 I_0 e^{i(\phi_1-\phi_2)} &= V_0 e^{i (\omega t + \phi_1)} I_0 e^{-i(\omega t + \phi_2)} \\ &= VI^\ast が成り立ちます。 アスタリスク(星マーク)は、複素共役のことです。平均消費電力は簡単に書けて \bar{P} &= \frac{1}{4}(VI^\ast + V^\ast I) \\ &= \frac{1}{4} 2 Re(V^\ast I) \\ &= \frac{1}{2} Re(V^\ast I) \ or \ \frac{1}{2} Re(V I^\ast) \tag{##} となります。 無効電力、そして瞬間電力 ===================================== 回路について考えるときには、時々刻々と周期的に変化する成分も含めての電力を 考えたいときもあります。普通それを電力といいいますが、それが瞬間の値であることを 強調するには瞬間電力といえばいいでしょうか。 先ほど出てきた $P$ のことです。 有効電力と対になる言葉として無効電力がありますが、 これはさっきとは逆に周期的に変化する平均してゼロになる成分のことです。 瞬間電力は、有効電力と無効電力の和のことです。 V_0 I_0 e^{i (2 \omega t + \phi_1 +\phi_2)} &= V_0 e^{i (\omega t + \phi_1) }I_0 e^{i (\omega t + \phi_2) } \\ &= VI を利用すれば無効電力 $P^\prime$ を表現できて、 P^\prime &= \frac{V_0 I_0}{4} (e^{i (2 \omega t + \phi_1 +\phi_2)}+ e^{-i (2 \omega t + \phi_1 + \phi_2)}) \\ &= \frac{1}{2} Re(VI) \tag{##} よって有効電力と無効電力の和は、 P &= \bar{P} + P^\prime \\ &= \frac{1}{2} (Re(V^\ast I) +Re(VI)) \\ &= \frac{1}{2} Re((V^\ast +V)I) \\ &= \frac{1}{2} Re(2Re(V)I) \\ &= Re(V) \times Re(I) \tag{##} 確かに瞬間電力の定義が出てきますね。 よくある間違いがあります。 P \neq Re(VI) ですので、気を付けてください。 まとめて式(1)〜(3)は覚えておくと、いいことがあると思います。 @@author:クロメル@@ @@accept:2007-05-31@@ @@category:電磁気学@@ @@id:power@@