========================== 電束密度とは ========================== 電磁気学において、電束密度 $\textbf{D}$ という物理量があります。この記事では電束密度について解説します。 定義 ========================== 真空中で電界 $\textbf{E}$ が与えられるとき、電束密度 $\textbf{D}$ という新しい量を $\textbf{D}=\varepsilon _0 \textbf{E}$ と置くことによって、式の記述を簡単に出来る場合が多々あります。 このため、真空中においての電束密度をこのように定義します。 \textbf{D}=\varepsilon _0 \textbf{E} しかし、この電束密度 $\textbf{D}$ という量は、単なる便宜上定義された量ではありません。 今、真空中ではなく誘電体で満たされた空間を考えてみよう。 この誘電体中に電場 $\textbf{E}$ が存在するとします。このとき、物質の内部では分極 [*]_ が発生し、本来の電界(区別するために $\textbf{F}$ とします。)を打ち消す方向に電界が発生し、この分極により発生した電界は $\textbf{E}$ に比例します。 .. [*] 分極について、詳しくはまた別の機会に勉強しましょう。 そこで、その比例定数を $\chi$ と置くと、分極により発生した電界は $-\chi \textbf{E}$ と書くことが出来ます。 ここで、われわれが外部から測定できる電界 $\textbf{E}$ は、もともとの電界 $\textbf{F}$ と分極により発生した電界 $-\chi \textbf{E}$ の和として観測されるため、 \textbf{E} =\textbf{F} -\chi \textbf{E} という関係が成り立ちます。そこで、分極による影響を差し引いた誘電体内部にある元々の電界 $\textbf{F}$ は、 \textbf{F} =\textbf{E} +\chi \textbf{E} となることが分かります。そこで、電束密度を次のように定義しなおすことにします。 \textbf{D} = \varepsilon _0 \textbf{F} =\varepsilon _0 \textbf{E} + \varepsilon _0 \chi \textbf{E} 真空中では分極による影響はないため、 $\chi =0$ となり、真空中での電束密度の定義と一致することがわかります。 上式はさらに、 \textbf{D} = (1+\chi )\varepsilon _0 \textbf{E} = \varepsilon _r \varepsilon _0 \textbf{E} = \varepsilon \textbf{E} となります。ここで、 $1+\chi = \varepsilon _r$ を比誘電率と呼び、 $\varepsilon _r \varepsilon _0 =\varepsilon$ を誘電率と呼びます。( $\varepsilon _0$ は「真空中の誘電率」と区別することもあります。) さらに、 $\textbf{P} =\varepsilon _0 \chi \textbf{E}$ の事を分極と呼び、その比例定数 $\chi $ を電気感受率と呼びます。 まとめ ========================== 電束密度 $\textbf{D}$ は、電界 $\textbf{E}$ に対して、誘電体中での分極を考慮した物質内での"元々の電界"に相当するものです。 電界 $\textbf{E}$ が与えられると、電束密度は \textbf{D} = \varepsilon \textbf{E} で、 $\varepsilon$ を誘電率と呼びます。 真空中での誘電率は、 $\varepsilon = \varepsilon _0$ です。 @@author: 篠原@@ @@accept: @@ @@category: @@ @@id: @@