============================================================ 調和振動子とラグランジュの運動方程式 ============================================================ ラグランジュの運動方程式_ の簡単な適用例として,調和振動子の運動を考えてみます. 調和振動子 ========== バネに取り付けられたおもりが振動するような運動を,調和振動子といいます. 自然界にはこのような運動が多くみられるため, 物理の問題でも調和振動子が多く登場しています. ここでラグランジュの運動方程式を考えるのは, つぎの図のような,水平面上の調和振動子です. .. image:: harmonicAndLagrange-1.png 図のように座標軸等を取り,おもりの質量を $m$ とします. ニュートンの運動方程式はすぐに分かって, m\frac{d^2x}{dt^2}= -kx となります.このあらかじめ分かっている方程式を わざわざラグランジュの方程式から導いてみる,ということをします. ラグランジアン ============== ラグランジアンを書き出します. 解析力学のお偉いさん,ラグランジアン $L$ とは, $T$ を運動エネルギー, $U$ をポテンシャルエネルギーとして L = T-U なる量のことでした.ティーまいなすユーです. いまは単純な調和振動子の運動を考えていますから, 運動エネルギー,ポテンシャルエネルギーはすぐに分かって T = \frac{1}{2}m\dot{x}^2, \quad U=\frac{1}{2}kx^2 と書けます.ここで $\dot{x}$ とは $x$ の時間微分,すなわち速度のことです. したがってラグランジアン $L$ は L = T-U = \frac{1}{2}m\dot{x}^2-\frac{1}{2}kx^2 となります.位置 $x$ と,その時間微分 $\dot{x}$ は, 独立した変数として取り扱うことに注意しておきます. ラグランジュの運動方程式 ======================== さて,ラグランジアンが分かったので, いよいよ ラグランジュの運動方程式_ を考えましょう. ラグランジュの運動方程式は \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{x}}\right) - \frac{\partial L}{\partial x} = 0 \tag{1} というものでしたから,さきほどのラグランジアンを この方程式に代入して計算します. 計算すると,ニュートンの運動方程式と同じ形になるはずです. いっぺんにやると難しそうなので,左側第1項から順々に計算してみます. 第1項を計算 ----------- ラグランジアンを $\dot{x}$ で偏微分します. $x$ の項は消えます.さらにそれを時間微分します. \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{x}}\right) &= \frac{d}{dt}\left\{ \frac{\partial}{\partial \dot{x}} \left(\frac{1}{2}m\dot{x}^2-\frac{1}{2}kx^2\right) \right\}\\ &= \frac{d}{dt}(m\dot{x}-0)\\ &= m\ddot{x} \tag{2} 第2項を計算 ----------- ラグランジアンを $x$ で偏微分します. $\dot{x}$ の項は消えます. \frac{\partial L}{\partial x} &= \frac{\partial}{\partial x} \left(\frac{1}{2}m\dot{x}^2-\frac{1}{2}kx^2\right)\\ &= -kx \tag{3} ラグランジュの運動方程式を計算 ------------------------------ 各項が計算できたので,ラグランジュの方程式 \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{x}}\right) - \frac{\partial L}{\partial x} = 0 \tag{1} を整理します.式(1)に式(2),(3)を代入すると m\ddot{x}-(-kx) = 0 となります.移項して m\ddot{x} = -kx であり,さらに $\ddot{x}$ を微分の形で表すと m\frac{d^2x}{dt^2} = -kx です.これは,最初にみたニュートンの運動方程式です. 今回は,1次元の調和振動子を例にとって ラグランジュの運動方程式のアプローチを練習してみました. しかしこれだけでは,計算が繁雑になっただけでなんのメリットもありません. つぎはこれと同様のアプローチで,ニュートンの運動方程式を直接記述するのが難しい, 極座標の運動を記述してみましょう. .. _ラグランジュの運動方程式: http://www12.plala.or.jp/ksp/analytic/equationOfLagrange/ @@author: 崎間@@ @@accept: 204-10-28@@ @@category: 解析力学@@ @@id:harmonicAndLagrange@@