=============================== 積分変換 =============================== 積分変換という手法の、超入門です。 積分変換 --------------------------------- ある関数 $f(t)$ を、 $g(\alpha)$ に変換することを考えます。変換の仕方なんて、いくらでもあるわけですが、特に次のように積分を利用するものを積分変換と呼びます。 g(\alpha )=\int _{a}^{b} f(t) K(\alpha, t)dt \tag{1} 積分する前に、なんだか知らない関数 $K(\alpha, t)$ を掛けるというのがポイントです。この $K$ を *核* と呼びます。積分区間は、核によって適当に定められるのが普通です。 いくつかの例 ----------------------------------- 例えば $K(\alpha, t)=e^{i\alpha t}$ だと、フーリエ変換というものになります。 g(\alpha )=\int _{-\infty}^{\infty} f(t) e^{i\alpha t} dt \tag{2} もし $K(\alpha, t)=e^{-\alpha t}$ だと、これも有名なラプラス変換というものになります。 g(\alpha )=\int _{0}^{\infty} f(t) e^{-\alpha t} dt \tag{3} 電気信号などの理論に出てくるMellin変換というのは、 $K(\alpha, t)=t^{\alpha -1}$ の場合です。 g(\alpha )=\int _{0}^{\infty} f(t) t^{\alpha -1} dt \tag{4} 積分変換の気持ち ----------------------------------------------------------- 核の種類によって、ものすごい種類の積分変換があって、専門家でない人は、自分に関係ないものを覚える必要はありません。 しかし、一般に積分変換を行うと、何が便利なのか、ということを理解しておくのは大事です。例えば、ラプラス変換は、大抵の理工系の大学で、いつかは習うものですが、ラプラス変換を行うと、微積分が、掛け算や割り算に変わってしまうのでした。微分方程式をラプラス変換しておいて、掛け算や割り算でそれを解き、ラプラス逆変換をしてやれば、魔法のように答えが出てしまうわけです。  ラプラス変換によって、微積分の世界から、一瞬、掛け算割り算の世界に移動し、計算を済ませてから、また元の世界に戻ってきたという感じです。 .. image:: Joh-Integ.gif 私が小さい頃、もう題名は忘れてしまいましたが、「宇宙刑事なんとか」とかいうようなテレビ番組があり、そこでは悪者と戦うとき、何故か超空間にワープして戦っていました。その空間では、宇宙刑事のパワーが何倍にもなる、というナレーションが毎回入るのが印象的でした。 [*]_ 積分変換というのは、宇宙刑事がしていたこととまさに同じです。自分が戦いやすい世界に敵をひきずり込んでおき、やっつけておいてから、また元の世界に戻るための、数学的ワープが積分変換です。  どんな世界に引きずり込みたいかは、使う人次第ですが、積分変換とは,一般に、そんなもんだと思っておいて下さい。 .. [*] その空間では、宇宙刑事のパワーではなくて、悪者の方のパワーが何倍にもなるのではないか、という御指摘を頂いております。そのテレビ番組の筋はよく覚えていませんが、悪者のパワーが増すような空間で戦うのは得策ではありません。みなさんは、自分が計算しやすい空間に敵を引きずり込むようにして下さい。 @@author: Joh@@ @@accept: 2005-08-01@@ @@category: 物理数学@@ @@id:integralTrans@@