==================== 三角関数の微分2 ==================== 三角関数の微分1_ でイメージをとらえたので,今度は解析的に公式を導いてみます.それには導関数の定義 \frac{df(x)}{dx} =\lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h} を使います.この定義から素直に考えるだけです. sin関数の導関数 ----------------- 導関数の定義において, $f(x)$ を $\sin(x)$ に置き換えると \frac{d}{dx}\sin(x) =\lim_{h\to 0}\frac{\sin(x+h)-\sin(x)}{h} です.ここからどうしたらいいでしょうか. 三角関数に慣れている人なら,つぎの公式が思い浮かぶでしょう. \sin A-\sin B=2\cos\frac{A+B}{2}\sin\frac{A-B}{2} 三角関数同士の足し算を積にする関係式です.微分積分の計算では, 三角関数の足し算を積に変えたり,その逆をしてみるとうまくいくことが多いです. というわけで積の形に変形してみます. \sin(x+h)-\sin(x) &= 2\cos\frac{(x+h)+(x)}{2}\sin\frac{(x+h)-(x)}{2}\\ &= 2\cos\frac{2x+h}{2}\sin\frac{h}{2}\\ &= 2\cos\left(x+\frac{h}{2}\right)\sin\frac{h}{2} したがって,導関数の定義の式は \frac{d}{dx}\sin(x) =\lim_{h\to 0}\frac{2\cos\left(x+\dfrac{h}{2}\right)\sin\dfrac{h}{2}}{h} となり,分子が積の形になりました.分母分子を2で割ると \frac{d}{dx}\sin(x) &= \lim_{h\to 0} \frac{\cos\left(x+\dfrac{h}{2}\right)\sin\dfrac{h}{2}}{\dfrac{h}{2}}\\ &= \lim_{h\to 0}\cos\left(x+\dfrac{h}{2}\right) \frac{\sin\dfrac{h}{2}}{\dfrac{h}{2}}\\ &= \lim_{h\to 0}\cos\left(x+\dfrac{h}{2}\right) \cdot \lim_{h\to 0}\frac{\sin\dfrac{h}{2}}{\dfrac{h}{2}} ここで $h\to 0$ の極限にもって行けば導関数が得られます. $h\to 0$ のとき $\dfrac{h}{2}\to 0$ になるのはいいですよね. 分子がゼロになるのだから分数全体でもゼロです.ですから \lim_{h\to 0}\cos\left(x+\dfrac{h}{2}\right)=\cos(x) です. $\sin$ の方の極限ですが, \lim_{h\to 0}\frac{\sin\dfrac{h}{2}}{\dfrac{h}{2}}=1 となるのは良いでしょうか. この証明ははさみうちの方法で行いますが,ここでは公式として使います.以上より \frac{d}{dx}\sin(x) &= \lim_{h\to 0}\cos\left(x+\dfrac{h}{2}\right) \cdot \lim_{h\to 0}\frac{\sin\dfrac{h}{2}}{\dfrac{h}{2}}\\ &= \cos(x)\cdot 1\\ &= \cos(x) となり, $\sin(x)$ の導関数が $\cos(x)$ であることが導かれました. cos関数の導関数 ------------------- $\cos$ 関数の導関数も同様の方法で導くことができます. \frac{d}{dx}\cos(x) &= \lim_{h\to 0}\frac{\cos(x+h)-\cos(x)}{h}\\ &= \lim_{h\to 0} \frac{-2\sin\left(x+\dfrac{h}{2}\right)\sin\dfrac{h}{2}}{h}\\ &= \lim_{h\to 0} \frac{-\sin\left(x+\dfrac{h}{2}\right)\sin\dfrac{h}{2}}{\dfrac{h}{2}}\\ &= -\sin(x)\cdot 1\\ &= -\sin(x) したがって, $\cos(x)$ の導関数が $-\sin(x)$ であることが導かれました. 2階微分したらどうなる? ------------------------- 三角関数の導関数は重要な性質をもちます.それは,2階微分すると関数の形は変わらず, 符号だけ反転するという性質です.つまり, \frac{d^2}{dx^2}\sin(x) &= \frac{d}{dx}\cos(x)=-\sin(x)\\ \frac{d^2}{dx^2}\cos(x) &= \frac{d}{dx}\{-\sin(x)\}=-\cos(x) ということです.実数の範囲では,このような性質をもつ関数は三角関数だけです. この性質により,三角関数は単振動の方程式 \frac{d^2 x}{dt^2}=-\omega^2 x の解になっています.上式に $x=\sin(\omega t),\, x=\cos(\omega t)$ を 代入して計算すると両辺が等しくなるので,確かに解(特解)になっていることが確認できます. .. _三角関数の微分1: ../trifuncDiff1/ @@author: 崎間@@ @@accept: 2004-07-26@@ @@category: 物理数学@@ @@id:trifuncDiff2@@