============================================================ 球殻のつくる重力ポテンシャル ============================================================ 球殻や球体のつくる重力ポテンシャルを求めます。 球殻の作るポテンシャル ======================= 半径 $r$ 、密度 $\rho$ の球対称な厚さ $dr$ の薄い球殻を考えます。球殻の中心(かつこれを原点とします)を $O$ 、位置 $Q$ にある微小な 質量 $d m$ によって、ある離れた位置 $P$ にできるポテンシャル $d \psi$ を求めます。下図のよ うに、 $OP=R$ 、 $OQ=r$ 、 $PQ=R^\prime$ とし、 $\angle POQ = \theta$ と置きます。 .. image:: chromel-gravityOfSphere-01.png 球対称な場合なので、極座標を用います。位置 $Q$ にある微小な質量 $\d m$ は、 dm= \rho \ dr \ rd\theta \ r \sin \theta \ d \phi なので、位置 $P$ にできるポテンシャルは、 d \psi = -G \frac{dm}{R^\prime} = -G \frac{\rho \ dr \ rd\theta \ r \sin \theta \ d \phi}{R^\prime} \tag{1} 一方余弦定理より、 {R^\prime}^2 = r^2 + R^2 -2rR \cos \theta 両辺を微分して R^\prime d R^\prime = rR \sin \theta d \theta \tag{2} で式 $ (1) $ から $\theta$ を消去すれば、 d \psi = -G \frac{\rho r \ dr \ d \phi \ d R^\prime}{R} となります。 Pが球殻の外部にある時 ======================= ポテンシャルを積分するわけですが、球殻の作る積分なので $ r $ 方向の積分をしないことに 注意してください。 $\theta$ が $0 \to \pi$ と変化する時、 $R^\prime$ は $R-r \to R+r$ と変化するから、 \int d \psi &=\int^{\pi}_0 d \theta \int^{2\pi}_0 d \phi (-G \frac{\rho r^2 \sin \theta \ dr}{R^\prime}) \\ &= -2\pi \int^{R+r}_{R-r} d R^\prime \ G \frac{\rho r \ dr}{R} \\ &=-G \ 2r \ \frac{2\pi r \rho \ dr}{R} \\ &=-G \frac{4\pi r^2 \rho \ dr}{R} \\ &=-G\frac{d M}{R} 二つ目の等号は、式 $(2)$ を用いました。 よって、球の外部では球殻と同じ微小質量 $dM$ が球の中心にある時できるポテンシャルと同じように振舞います。 $r$ で積分してやれば半径 $a$ の球体がつくるポテンシャルになります。 \psi = -\int_{r=0}^{r=a} G\frac{4\pi r^2 \rho \ dr}{R} = -\frac{GM}{R} $M = \frac{4 \pi a^3 \rho}{3}$ としました。よって、ここに質点 $m$ をおいた時、質点が受ける力は、 F = -m\frac{d \psi}{dR}= - \frac{GmM}{R^2} となります。 Pが球殻の内部にある時 ======================= $\theta$ が $0 \to \pi$ と変化する時、 $R^\prime$ は $r-R \to r+R$ と変化するから、 \int d \psi &=\int^{\pi}_0 d \theta \int^{2\pi}_0 d \phi (-G \frac{\rho r^2 \sin \theta \ dr}{R^\prime}) \\ &=-2\pi \int^{r+R}_{r-R} d R^\prime \ G \frac{\rho r\ dr}{R} \\ &=-G \ 2R \ \frac{2\pi r \rho}{R} \\ &=-G \frac{4\pi r^2 \rho}{r} \\ &=-G\frac{d M}{r} ここでもやはり二つ目の等号は、式 $(2)$ を用いました。 よって作られるポテンシャルは、 $R$ によらず一定になります。 $r$ で積分してやれば半径 $a$ の球体がつくるポテンシャルになります。 \psi &= -\int_{r=0}^{r=R} G\frac{4 \pi \rho r^2 }{R}dr - \int_{r=R}^{r=a} G\frac{4 \pi \rho r^2 }{r} dr \\ &= [ -G\frac{ 4 \pi r^3 \rho}{3R} ]^R_0 - [ -G \frac{4 \pi r^2 \rho}{2}]^a_R \\ &= -G\frac{ 4 \pi R^2 \rho}{3} + \frac{3}{2} \ G\frac{ 4 \pi R^2 \rho}{3} - \frac{3}{2} \ G\frac{4 \pi a^2 \rho}{3} \\ &= \frac{1}{2} \ G\frac{ 4 \pi R^2 \rho}{3} - \frac{3}{2} \ G\frac{ 4 \pi a^2 \rho}{3} \\ &= \frac{1}{2} \ \frac{G M R^2 }{a^3} - \frac{3}{2} \ \frac{G M}{a} 一行目の右辺、第一項は半径 $R$ よりも内側の部分が作るポテンシャルで、無限遠でゼロになっています。 同じく第二項は、半径 $R$ よりも、外側の部分が作るポテンシャルの影響で、球殻の外側に対する 内側のポテンシャルを表していて、その外側のポテンシャルをゼロとしています。 結果、無限遠点をポテンシャルの基準点としゼロとしたポテンシャルが計算されています。 注意していただきたいのは、球殻の内側のポテンシャルは $R$ によりませんが、 球殻が外側にポテンシャルをつくるように、ちゃんと内側にも影響を与えていて、 球殻内部はポテンシャルが低くなっているということです。 ここに質点 $m$ をおいた時、質点が受ける力は、 F =-m\frac{d \psi}{dR}= -\frac{GmMR}{a^3} です。 このポテンシャルは今回は重力と言いましたが、逆二乗則に従う力なら符号の違いはあれど、同じポテンシャルを作ります。つまり、電荷の作るポテンシャルも同じ形をしています。 最後に受ける力、ポテンシャルをまとめたグラフを載せて終わります。 .. image:: chromel-gravityOfSphere-03.png \psi = \begin{cases} \frac{1}{2} \ \frac{G M R^2 }{a^3} - \frac{3}{2} \ \frac{G M}{a} & \ (0 .. image:: chromel-gravityOfSphere-02.png F = \begin{cases} -\frac{GmMR}{a^3} & \ (0 @@author:クロメル@@ @@accept:2007-01-20@@ @@category:力学@@ @@id:gravitySphere@@