=============================
もう一度ベクトル
=============================
1. 概念の導入
-------------------------------------------------
物理を含む自然科学には様々な量が出てきます。質量や、速さ、気圧などは日常生活
でも耳にしているのではないでしょうか?その中でも大きさ(負も含)だけを持つものを
スカラーと言います。例えば物理の諸量で言えば
質量、電荷、〜定数、〜(ベクトル)の大きさ、〜エネルギーの量、等に出てきます。で
もスカラーだけでは表せない量が物理では出てきます。その代表格が位置、速度、加速
度、力です。なぜスカラーだけでは表せないかというと、後者の量は"向き"を指定して
あげないと何を表しているのやらわからないからです。そして、向きと量を両方あわせ
持つ量をベクトルと言います。
まず位置について考えて見ましょう。以下の図を見ていただくとOから見たPの位置が
ただ単に” $5[m]$ ”では場所はわかりませんよね?”東”に” $3[m]$ ”、”北”に
” $4[m]$ ”と表記しないとわかりません(正確に言うと一意的でない)。ここで気付か
れた方もいるでしょうか?前者と後者の違いは向き付きの量であるか否かと言うこと
です。つまり平面内で位置を表すには必ず二組の向きと量が必要なのです。
.. image:: yassan-RestudyVector-fig01.png
この地図に「建物の7階」と言う表記を加えたらもう1つ向きつきの量が必要となること
が容易に予想できると思います。今度は三組の向きと量が必要です。ここでなんとなく
予想したくなります。n次元の位置を表すにはn組の量が必要なんです。
.. image:: yassan-RestudyVector-fig02.png
では速度について考えてみますとやはり向きがかなり重要になりますよね。京都からいく
ら速く移動することが出来ても、東京に行くのに九州方面に向かうのはかなり無意味(地
球を一周すれば別ですが…)になってしまいます。
.. image:: yassan-RestudyVector-fig03.png
加速度はちょっとイメージしづらいので力で考えて見ましょう。いきなり「 $3[N]$
と $3[N]$ の力が働くと物体はどうなる?」といった問が無意味なことは以上の文章
を読んでくれば簡単に予想できると思います。そうです、向きの指定が足りないんです。
以下の図を見ればこの後物体がどちらに動くのかは力の働く向きによって全然違ってくる
ことが予想できると思います。
.. image:: yassan-RestudyVector-fig04.png
高校の数学のテキストを見てみると「ベクトルとは有向線分である」と書いてあります。こ
こで言う「有向」とは「方向が有る」と言うことです。つまり向きつきの線分と言うことです
ね。線分が決まれば同時に長さ(≒スカラー)も与えられたことになるので僕の主張ともず
れていません。またベクトル(vector)の原義はvehicleで輸送、車両、運搬といった意味
です。この意味だと位置を表すイメージに一番近いかと思います。この考え方は後々和
の順序が交換可能なことに関連してきます。
2. 表記の導入
----------------------------------------------------------
これより下で $\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}$ と言う文字が出てきたらそれはその文字
の定義のことを言っています。
では、具体的な表記について触れてみましょう。ここはいわゆる書き方のお約束なので気
楽に読んでください。ベクトルの名前は基本的に矢印1つに付き1つつけます。つまり平行
移動して重なれば(向きと大きさが一致)それは同じベクトルと考えるのです。
先ず、高校までには点AからBに向かう矢印を $\overrightarrow{\rm AB}$ などと書きまし
た。しかし大学以降は、基本的にボールド(太字ですね)で表します。例えば「点OからAに向かう
ベクトルを $\bm{a}$ とします。」などと書きます。物理では一般的に $(x,y,z)$ の位置ベク
トル(その点を一般的に表すベクトル)を $\bm{r}$ で表すこと [*]_ が多いようです。
具体的に表記すると次のようになります。
\bm{r}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix}
ここで $\sqrt[]{\mathstrut x^2+y^2+z^2}$ をベクトルの絶対値と言います。つまり
このベクトルの長さですね。その由来は次図の通りです。
.. image:: yassan-RestudyVector-fig05.png
r
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
|\bm{r}|
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
\sqrt[]{\mathstrut x^2+y^2+z^2}
とボールドでない文字はそのベクトルの絶対値を表すことが多いです。
また、ベクトルの応用の分野では図形的な解釈と具体的な成分を設定した代数的な解釈
と両方の考察をする二面性を持つ分野です。ある証明は初等幾何を用いて(スカラー量の
みの取り扱いで済みます)鮮やかに解いたり、またある証明は各成分から条件を取り出し
て代数的な手法で行ったり、それらを組み合わせたりして行います。ですから今はどち
らの考察をしているのか見失わないように式を追うことが重要になります。
.. [*]
多分この理由は $\bm{x}$ で表すと何となく $y$ と $z$ に不公平だからだと思い
ます。多分点までの距離を $r$ で表すことが多い関係で「ええい、これのボールドをベク
トルにしてしまえぃっ!」っていう感じだと思います。
3. 和、差
------------------------------
先ず和ですね。図形的解釈から解説しましょう。そうすると以下の図のようになり、平
行四辺形が表れることになります。ここで注意して見てもらいたいのはベクトルの和がど
ちらを先に和をとっても結果が変わらないことです。ここでベクトルを平行移動して一致
すれば同じベクトルとみなすということが効いてきます。
.. image:: yassan-RestudyVector-fig06.png
では代数的側面を見てみましょう。具代的に表記を与えると以下の式になります。
\bm{a}+\bm{b}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{pmatrix}
+
\begin{pmatrix}
b_x \\
b_y \\
b_z
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
\begin{pmatrix}
a_x+b_x \\
a_y+b_y \\
a_z+b_z
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
b_x+a_x \\
b_y+a_y \\
b_z+a_z
\end{pmatrix}
=
\bm{b}+\bm{a}
つまり成分ごと足してあげればいいんです。成分同士が可換(和の順序が交換可能)なのでベクトルの和
も可換になります。
ここでvectorの原義で書いた”運搬”と言う原義に納得していただけるのではないでしょ
うか。ゴールがどこかには興味があるが運んだ道筋には興味はない(保存力に似ている点
が興味深い)といった解釈でしょう。
最後に差に触れます。代数的な考え方の方の差は成分ごとの差に変わるだけなので納得行
くと思いますが、図形的側面の差は捉えづらいので解説しておきたいと思います。以下の
図で $\bm{c}=\bm{a}-\bm{b}$ のとき、移項して $\bm{c}+\bm{b}=\bm{a}$ となる $\bm{c}$ を考
えてあげるとあっさり解決すると思います。
ここでは $\bm{c}$ は $B$ から $A$ に向かうベクトルになっていることが要注意です。
.. image:: yassan-RestudyVector-fig07.png
4. 定数倍
----------------------------
ベクトルには向きと大きさ(スカラー)が必要です。ここでスポットが当たるのがその大き
さになります。例えば以下の式が定数倍の定義になります。図形的側面から考えますと矢印
を伸ばす度合いと考えられるでしょう。定数に $-1$ を採用したものを平行で逆に向かう矢印
とします。そうすれば定数が負の場合は $-\bm{a}$ をまた定数倍してあげればいいからです。
では代数的側面に移りましょう。具体的な表記では定数が各成分にかかります。二次元のデ
カルト座標で考えると相似拡大(または縮小)されているところが視覚的に読み取れるかと思
います。
k\bm{a}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
k
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
\begin{pmatrix}
ka_x \\
ka_y \\
ka_z
\end{pmatrix}
単位ベクトル
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
数学でも物理でもよく単位ベクトルなる絶対値が $1$ のベクトルをよく作ります。なぜかと言うと
何らかの操作で得られたベクトルが、向きはあっているけど大きさが全然違うと言うことが起こり
えるからです。そこで大きさを $1$ に規格化し、好きな大きさ倍することで自分の欲しいベクトル
を得られるからです。大きさが $1$ のベクトルを作るには自分の長さで割ってあげます。したがって
適当な $\bm{a}$ に平行な単位ベクトル $\bm{n_\bm{a}}$ は
\bm{n_\bm{a}}
=
&\frac{\bm{a}}{|\bm{a}|} \\
=
&\frac{1}{\sqrt[]{\mathstrut a_x^2+a_y^2+a_z^2}}
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{pmatrix}
とかけます。つまり定数倍の $k$ が $\frac{1}{\sqrt[]{\mathstrut a_x^2+a_y^2+a_z^2}}$
となっていると言うことです。
5.続、表記の導入
-----------------------------------------------------------
再び表記をいくつか導入します。何故この場所で新たに導入するかと言うと和と定数倍を
定義したあとでないと考えられないからです。
外積と言うものを定義するために必ず単位規定ベクトルなるものの考え方が必要なのです。
\bm{r}
=
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix}
=
x\begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
0
\end{pmatrix}
+
y\begin{pmatrix}
0 \\
1 \\
0
\end{pmatrix}
+
z\begin{pmatrix}
0 \\
0 \\
1
\end{pmatrix}
と変形出来ることに納得していただけるでしょうか?
ここでこの式に出てきたベクトルをそれぞれ
\begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
0
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}\bm{i}
\ \ \ \
\begin{pmatrix}
0 \\
1 \\
0
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}\bm{j}
\ \ \ \
\begin{pmatrix}
0 \\
0 \\
1
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}\bm{k}
とよく書き、それぞれを単位規定ベクトルといいます。この「単位」とは、基準となるものとい
った意味の「単位」ですね。確かに各ベクトルの絶対値は三平方で計算するまでもなく $1$
になることがわかります。これでその成分の計算を簡単にしているわけです。
図にするとこんな感じでしょうか
この単位ベクトルは直行している(と言うかそうなるよう設定した)ので正規直交系、又は
正規直交基と言います。このベクトルを僕は「向き決定ベクトル」と呼んでいます。
つまり正規直交系の各ベクトルで向きさえ指定してしまえば定数倍することで長さを指定するこ
とが出来たり、定数を負にすることにより真後ろに向けたり、定数を $0$ にすることでその
成分をなくすことが出来たりするからです。まさに「向き」と「大きさ」を併せ持つベクトル
に特徴的な概念ではないですか!
この表記ですと $\bm{r}$ が
\bm{r}
=
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
x\bm{i}+y\bm{j}+z\bm{k}
といった感じで表せます。
.. [*]
ここで導入した単位ベクトルについて $\bm{i}=\bm{e}_x,\bm{j}=\bm{e}_y,\bm{k}=\bm{e}_z$
と表すこともあります。
6.内積と外積
-----------------------------------------------
和と差に関する概念は理解できたでしょうか?では実数の四則演算での積の概念にあたるも
のを解説します。本当のことを言うと商の概念は出てきませんので、積についてだけ考えれば
いい事になります。
そもそもベクトルとベクトルってどうやってかけるんでしょう?和と差は成分ごとに和と差を
取ればよかったので比較的納得しやすいんです。問題は積です。成分同士をかけるにしたって
そのペアは複数考えられますよね?ここで積に関しては注意深く定義を読まなければなりません。
内積
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
では先ず内積から。この定義は、図形的な見方では次図になります。
つまり $|\bm{a}||\bm{b}|\cos{\theta}$ となるスカラーになります。この性質から内積をスカラー積と
呼ぶこともあります何故このような図形量を内積としたかには物理と密接な関係があり、以下
(10.物理的な応用)で述べます。
内積の代数的定義を表現すると
\bm{a}\cdot\bm{b}
=
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{pmatrix}
\cdot
\begin{pmatrix}
b_x \\
b_y \\
b_z
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
a_xb_x+a_yb_y+a_zb_z
となります。
これはかなりあっさりしてますが、こう定義されているので仕方ありません。ご利益は後でわ
かるのです。
また代表的な関係を以下にあげると
&\bm{a}\cdot\bm{a}
=
a_xa_x+a_ya_y+a_za_z
=
a_x^2+a_y^2+a_z^2
=
|\bm{a}|^2 \\
&\bm{i}\cdot\bm{i}=|\bm{i}|^2=1 \ \ \
\bm{j}\cdot\bm{j}=|\bm{j}|^2=1 \ \ \
\bm{k}\cdot\bm{k}=|\bm{k}|^2=1 \\
&\bm{i}\cdot\bm{j}=\bm{j}\cdot\bm{k}=\bm{k}\cdot\bm{i}=0
外積
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
それでは外積に入ります。
外積の図形的定義は次図のようになります。
つまり $\bm{a}$ と $\bm{b}$ に共に垂直で大きさが $|\bm{a}||\bm{b}|\cos{\theta}$ となる
ベクトル量になります。そのせいもありこちらはスカラー積に対応してベクトル積と言います。
代数的な定義としては
\bm{a}\times\bm{b}
=
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{pmatrix}
\times
\begin{pmatrix}
b_x \\
b_y \\
b_z
\end{pmatrix}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
\begin{pmatrix}
a_yb_z-a_zb_y \\
a_zb_x-a_xb_z \\
a_xb_y-a_yb_z
\end{pmatrix}
&=
(a_yb_z-a_zb_y)\bm{i}+(a_zb_x-a_xb_z)\bm{j}+(a_xb_y-a_yb_z)\bm{k}
こちらも代表的な関係を挙げると
&\bm{a}\times\bm{b}
=
-\bm{b}\times\bm{a} \\
&\bm{a}\times\bm{a}
=
\bm{0} \\
&\bm{i}\times\bm{j}=\bm{k} \ \ \
\bm{j}\times\bm{k}=\bm{i} \ \ \
\bm{k}\times\bm{i}=\bm{j}
7. ここまでの応用
------------------------------------
ここでは実戦的な関係。また、物理で使う上でも常識としておいて欲しい事柄を挙げます。
原点以外からの変位ベクトル
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
つまり、「点 $A$ から $B$ へのベクトルをどう表現すればいいか」という内容です。
ベクトルの和のところを思い出してみましょう。2つの表記が混在していますが点
の移動を追いやすくするため矢印表記を用いて解説しますと
&\overrightarrow{\rm OB}=\overrightarrow{\rm OA}+\overrightarrow{\rm AB} \\
\Longleftrightarrow
&\overrightarrow{\rm AB}=\overrightarrow{\rm OB}-\overrightarrow{\rm OA}
=
\bm{B}-\bm{A}
となりますこの結果は覚えておきましょう。
絶対値の公式
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
先ずこの公式を天下り的に紹介しますと
|\overrightarrow{\rm AB}|^2=|\bm{B}-\bm{A}|^2=|\bm{B}|^2-2\bm{B}\cdot\bm{A}+|\bm{A}|^2
となります。二項展開に非常に似ているので覚えるのもそれほど苦にはならないかと思います。
この公式の利用例を紹介しておきましょう。証明は余弦定理を用いて行います。余力があれば実
行してみましょう
どうしても $A$ から $B$ の距離を測りたいときに $|\bm{A}|$ と $|\bm{B}|$ 、 $\theta$
しかわかっていないことがあります。もし具体的に $\bm{A}$ と $\bm{B}$ がわかれば内積を
計算するなどして上記の3量は求まることを確認してください。このときに $A$ から $B$ の
距離を上記の3量で表す公式があります。方程式として変形したいので答えが求まったフリを
して $k(k\geq0)$ などと置いておきましょう
&|\overrightarrow{\rm AB}|=k \\
\Longleftrightarrow
&|\overrightarrow{\rm AB}|^2=k^2 (\because k\geq0)\\
\Longleftrightarrow
&|\overrightarrow{\rm OB}-\overrightarrow{\rm OA}|^2=k^2 \\
\Longleftrightarrow
&|\bm{B}-\bm{A}|^2=k^2 \\
\Longleftrightarrow
&|\bm{B}|^2-2\bm{B}\cdot\bm{A}+|\bm{A}|^2=k^2
4行目から5行目の変形が該当する公式です。以上の左辺は計算できるので左辺の値の平方根
をとれば具体的に値が求まります。
直行条件
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
2つのベクトルが直交する条件ってどう表しましょう?というのがこのセクションのテーマです。
内積に2つのベクトルの角度の表記があったので $\theta=\pi/2$ の条件を入れてあげれば良いので
はないでしょうか?また $|\bm{A}||\bm{B}|\cos{\theta}$ に上記の条件を代入すると(内積)=0
となるので代数的な側面においても同様な条件を適用して
\bm{A}\cdot\bm{B}=A_xB_x+A_yB_y+A_zB_z=0
と言う条件を考えればよいことになります。
ベクトル方程式
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
空間上の点がある規則(直線上、平面上、円上、球上にあるetc)をベクトルで表現しようと言う主旨のものです。
今一度"方程式"の用語の意味を確認しておきましょう。方程式とは「"ある"変数について成り立っている
等式」のことを言います。これは僕なりに解釈するといわゆる「関係式」という解釈が一番感覚的に
納得しやすいと思います。そのベクトルが満たさなければならない条件をベクトル
に含まれる量を用いて関係式を立ててあげればいいのです。
直線の方程式
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
先ず直線のベクトル方程式を考えて見ましょう。図形的に考えると以下の通り
ここでの表現を数式を用いて表すと適当な実数を $k$ 一般の位置ベクトルを $\bm{r}$ として
&\bm{r}=\bm{r_0}+k\bm{a}\ \ \ \ (\bm{a}\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}\overrightarrow{\rm OA}) \\
\Longleftrightarrow
&\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
x_0 \\
y_0 \\
z_0
\end{pmatrix}
+
k
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{pmatrix}
各成分を比較して
\left\{ \begin{array}{ll}
&x=x_0+ka_x \\
&y=y_0+ka_y \\
&z=z_0+ka_z
\end{array} \right.
上式の $k$ はパラメタなので消去( $k$ について解いて三式を $=$ で結ぶ)すると
\frac{a_x}{x-x_0}=\frac{a_y}{y-y_0}=\frac{a_z}{z-z_0}(=k)
とした上式が正式な三次元の直線の方程式です。この $x$ と $y$ についての等式だけを変形すると
&a_x(y-y_0)=a_y(x-x_0) \\
\Longleftrightarrow
&a_xy-a_yx-a_xy_0+a_yx_0=0 \\
\Longleftrightarrow
&y=\frac{a_y}{a_x}x+\frac{a_xy_0-a_yx_0}{a_x}
となり
&a(x-x_0)=b(y-y_0) \\
&ax+by+c=0 \\
&y=ax+b
という二次元の直線の方程式と一致することが見て取れるかと思います。具体的には三次元の
直線の方程式を二次元の座標に射影させた直線とも見ることが出来ます。
平面の方程式
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1. 型1 平面上の2ベクトルがわかっている場合
平面上に乗っている2ベクトルが既知の場合を考えます
平行でない2ベクトル $\bm{a}$ , $\bm{b}$ の各定数倍の和(数学的には線形結合
とか一次結合と言います): $k\bm{a}+l\bm{b}$ がそのベクトルの乗っかっている平面全てを
表せるという事です。
上図のように平面上のあらゆる点が $k\bm{a}+l\bm{b}$ で表せることが理解できたでしょうか?
因みに上図は $\bm{a}$ , $\bm{b}$ を基底とした斜交座標と言います。上図から「平行でない」
をことわった理由がわかったでしょうか?斜交座標では基底が平行だとどちらを定数倍しても
基底方向の直線しか表せず、平面を表現できないために平行でない場合を前提に議論をします。
平面上の任意のベクトルを $\bm{r}$ とすると上記の2ベクトルの線形結合で表せるので
&\bm{r}=\bm{r_0}+k\bm{a}+l\bm{b} \\
\Longleftrightarrow
&\bm{r}-\bm{r_0}=k\bm{a}+l\bm{b}
ここで計算を簡単にするため $\bm{r}-\bm{r_0}\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}\bm{r}^\prime$ を
考えます
&\begin{pmatrix}
x^\prime \\
y^\prime \\
z^\prime
\end{pmatrix}
=
k
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{pmatrix}
+
l
\begin{pmatrix}
b_x \\
b_y \\
b_z
\end{pmatrix} \\
\Longleftrightarrow
&\left\{ \begin{array}{ll}
x^\prime=ka_x+lb_x \\
y^\prime=ka_y+lb_y \\
z^\prime=ka_z+lb_z
\end{array} \right.
とかけました。今回はパラメーターが二つあるのでうまく消去するのは難しいですので
ここで計算はストップしておきましょう。
2. 型2 平面に垂直なベクトルがわかっている場合
平面に垂直なベクトルがわかっている場合を考えます
以上のようにその平面に乗っている2ベクトルがわかればよいのですが、たいていの
問題ではその平面に垂直なベクトル(法線ベクトル)を考えて計算します。なぜなら1つの
平面と一対一に対応するのはその平面に垂直なベクトルだからです。ためしに紙にペンの
背中をつけてグリグリ立体的にまわしてみますと一対一に対応していることが見て取れるか
と思います。また、物理的にその点での物理的状態を考える際にも法線を使うことが関係し
ています。
具体的に計算をするのですが、上図から $\bm{r}^\prime$ と $\bm{n}$ の内積を取れば
即解決します。具体的に書きますと
&\begin{pmatrix}
x^\prime \\
y^\prime \\
z^\prime
\end{pmatrix}
\cdot
\begin{pmatrix}
n_x \\
n_y \\
n_z
\end{pmatrix}=0 \\
\Longleftrightarrow
&n_xx^\prime+n_yy^\prime+n_zz^\prime=0 \\
\Longleftrightarrow
&n_x(x-x_0)+n_y(y-y_0)+n_z(z-z_0)=0 \\
\Longleftrightarrow
&n_xx+n_yy+n_zz-(n_xx_0+n_yy_0+n_zz_0)=0
ということで一般化しますと
&ax+by+cz+d=0 \\
\rm{or} \\
&a(x-x_0)+b(y-y_0)+c(z-z_0)=0
は法線ベクトルが
\begin{pmatrix}
a \\
b \\
c
\end{pmatrix}
の適当な定点(〜式であれば $(x_0,y_0,z_0)$ )を通る平面の方程式の一般形であること
がわかると思います。型1のような与えられ方をしていてもその2ベクトルの外積から
法線ベクトルを求めればすぐに公式どおりの計算に持ち込めるはずです。また、この法線
ベクトルは単位法線ベクトルである必要性はありません。なぜなら法線ベクトルを
、 $\bm{a}$ その大きさを $|\bm{a}|\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}k$ とし、法線
ベクトルに平行な単位法線ベクトルを $\bm{n}$ とすると
&\bm{a}=k\bm{n} \\
\Longleftrightarrow
&\begin{pmatrix}
a \\
b \\
c
\end{pmatrix}
=k
\begin{pmatrix}
n_x \\
n_y \\
n_z
\end{pmatrix} \\
\Longleftrightarrow
&\left\{ \begin{array}{ll}
a=kn_x \\
b=kn_y \\
c=kn_z
\end{array} \right.
となります。ここで直線の方程式に代入してみますと
&ax+by+cz+d=0 \\
\Longleftrightarrow
&kn_xx+kn_yy+kn_zz+d=0 \\
\Longleftrightarrow
&n_xx+n_yy+n_zz+d=0
となり全ての $k$ が約分されるので単位ベクトルでもそうでなくても向きさえあっていれば
全く同値な式が導けます。
球面の方程式
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
球面であるとはどういうことでしょうか?「ある定点までの距離が一定」と言った事実からベクトル $\bm{r}$
が満たすべき条件は球の中心を $A(\bm{a})$ 、半径を $r$ として
&|\bm{r}-\bm{a}|=r \\
\Longleftrightarrow
&|\bm{r}-\bm{a}|^2=r^2 \\
\Longleftrightarrow
&\left|\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix}
-
\begin{pmatrix}
a \\
b \\
c
\end{pmatrix}\right|^2=r^2 \\
\Longleftrightarrow
&\left|\begin{pmatrix}
x-a \\
y-b \\
z-c
\end{pmatrix}\right|^2=r^2 \\
\Longleftrightarrow
&(x-a)^2+(y-b)^2+(z-c)^2=r^2
円の方程式はと言うと二次元の円であれば $z=c=0$ として
(x-a)^2+(y-b)^2=r^2
と表せます。立体的に傾いた円であれば球の方程式と平面の方程式の共通部分の解集合として
与えられるので2つの方程式を連立してあげればよいのではないでしょうか
円錐の方程式
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以上のことから円錐の方程式も比較的容易にわかるのでぜひ挑戦してみましょう
因みに一般系は
\frac{ax+by+cz}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}\sqrt{a^2+b^2+c^2}}
=
Const
となります。
hint
1. 角度の概念が出てきます
2. 表記を睨んで見ましょう
内積の公式の追加とと外積の機械的計算
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
内積外積の計算を機械化しましょう
\bm{a}\cdot\bm{b}
&=
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{pmatrix}
\cdot
\begin{pmatrix}
b_x \\
b_y \\
b_z
\end{pmatrix} \\
&=
(a_x\bm{i}+a_y\bm{j}+a_z\bm{k})\cdot(b_x\bm{i}+b_y\bm{j}+b_z\bm{k}) \\
&=
a_xb_x\bm{i}\cdot\bm{i}+a_xb_y\bm{i}\cdot\bm{j}+a_xb_z\bm{i}\cdot\bm{k}+
a_yb_x\bm{j}\cdot\bm{i}+a_yb_y\bm{j}\cdot\bm{j}+a_yb_z\bm{j}\cdot\bm{k}+
a_zb_x\bm{k}\cdot\bm{i}+a_zb_y\bm{k}\cdot\bm{j}+a_zb_z\bm{k}\cdot\bm{k} \\
&=
a_xb_x+a_yb_y+a_zb_z
\bm{a}\times\bm{b}
&=
\begin{pmatrix}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{pmatrix}
\times
\begin{pmatrix}
b_x \\
b_y \\
b_z
\end{pmatrix} \\
&=
(a_x\bm{i}+a_y\bm{j}+a_z\bm{k})\times(b_x\bm{i}+b_y\bm{j}+b_z\bm{k}) \\
&=
a_xb_x\bm{i}\times\bm{i}+a_xb_y\bm{i}\times\bm{j}+a_xb_z\bm{i}\times\bm{k}+
a_yb_x\bm{j}\times\bm{i}+a_yb_y\bm{j}\times\bm{j}+a_yb_z\bm{j}\times\bm{k}+
a_zb_x\bm{k}\times\bm{i}+a_zb_y\bm{k}\times\bm{j}+a_zb_z\bm{k}\times\bm{k} \\
&=
a_xb_y\bm{k}-a_xb_z\bm{j}-a_yb_x\bm{k}+a_yb_z\bm{i}+a_zb_x\bm{j}-a_zb_y\bm{i} \\
&=
(a_yb_z-a_zb_y)\bm{i}+(a_zb_x-a_xb_z)\bm{j}+(a_xb_y-a_yb_x)\bm{k}
といったように分配法則を使うと最小限の暗記量から計算結果(特に外積)を暗算が可能なレベルに
落とす事ができるようになりました。
この計算のルールから覚えておくべき(導けるべき)公式を以下に挙げます
&\bm{r}
\stackrel{\mathrm{def}}{\equiv}
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix} \\
&\bm{i}\cdot\bm{r}=x \ \ \
\bm{j}\cdot\bm{r}=y \ \ \
\bm{k}\cdot\bm{r}=z
行間は自分で埋めてください。この公式の意味するところは、ベクトルと単位ベクトルの内積
を計算するとその単位ベクトル方向の成分が取り出せるということです。
8. まとめ
----------------------------
1. ベクトルとは向きつきの量である
2. 図形的考察と代数的考察の双方の視点
3. 内積と外積の相違とその図形的意味と、代数的定義
4. 種々の応用
1. ベクトルは向きつきの量である
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
ベクトルには向きがあります。ですから足すときには"各成分ごと"足さなければなりません。
そんな理由もあってスカラーとベクトルは強調して区別されるのです。また、一次元のベクトルを
スカラーと見ることも出来ます。
2. 図形的考察と代数的考察双方の始点
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
ベクトルは平面的な考察に"向き"をつけることで機械的な代数計算を取り込むことによって
より広域の問題を解決が出来るようにしようとしたものです。ですから定義の部分には必ずと言って
いいほど図形的な考察が含まれています。どちらの視点なのか、あるいは両方が混在しているのか
と言ったことを意識化しておく必要があります。
3. 内積と外積の相違とその図形的意味と、代数的定義
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
内積はその大きさを表すと $|\bm{A}||\bm{B}|\cos{\theta}$ 一方、外積はベクトルですが
その大きさを計算すると $|\bm{A}||\bm{B}|\sin{\theta}$ となるベクトルです。
この $\sin{\theta},\cos{\theta}$ と言う相補的な量であることは良く覚えておいてください
4. 種々の応用
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
ここで紹介した公式はいずれも基本的(円錐は除く)なものです。1つでも覚えていないものが
あればこの機械に覚えてしまうことを強くお勧めします
9. 物理的な応用
---------------------------------------------
物理的な量、議論ではどのようにベクトルが出てくるのかを解説します。
内積の応用
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
仕事
~~~~~~~~
内積が物理的に使われるときには主に"仕事"の概念です。内積の図を見たときにピンときた
人も結構居るのではないでしょうか
仕事の定義はと言うと「力とその力と同じ方向への移動量との積」でしたね。
角度の決め方を $\bm{F}$ と $\bm{r}$ との成す角と厳密に決めれば次図のようになり
W=&|\bm{F}||\bm{r}|\cos{\theta} \\
=&\bm{F}\cdot\bm{r}
と表せるので代数的な定義を用いて簡単に書き表せるのです。よく不親切な物理の参考書には
角度の取り方を明記せずに $Fx\cos{\theta}$ と書いてありますが、このように $\cos{\theta}$
となるのは角度の取り方を上記のように約束したときだけです。
正射影ベクトル
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
よく、ベクトルをあるベクトル(基準となるベクトル)に正射影することがあるのでその公式
も紹介しておきましょう。先ず次図を見てください
この図から正射影させたベクトルが $\bm{a}$ に平行なことは予想できるので $k\bm{a}$ と
表せることが予想できます。また、ベクトルの大きさが簡単に反映できるように $\bm{a}$
方向の単位ベクトルを作ります。 $\frac{\bm{a}}{|\bm{a}|}$ とすると単位ベクトルの完成です。
このベクトルに正射影した分の大きさをかけてあげればよいのですが、その量は
|\bm{r}|\cos{\theta}
=&\frac{|\bm{r}||\bm{a}|\cos{\theta}}{|\bm{a}|} \\
=&\frac{\bm{r}\cdot\bm{a}}{|\bm{a}|}
となるので正射影ベクトルはこの量倍の単位ベクトルになるので
\frac{\bm{r}\cdot\bm{a}}{|\bm{a}|^2}\ \ \bm{a}
と書けます
外積の応用
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
外積は主に力のモーメントやローレンツ力で出てきます。
力のモーメント
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
先ず次図を見てください
小学校で習うテコの図ですね。ここである点周りの力のモーメント $\tau$ は反時計回りを正として
\tau=f_1d_1-f_2d_2
とかけます。大抵はモーメントのつりあい(つまり回らない条件)を考えるので
&\tau=0 \\
\Longleftrightarrow
&f_1d_1-f_2d_2=0 \\
\Longleftrightarrow
&f_1d_1=f_2d_2
の〜式の方が感覚的には理解しやすいかもしれません。小学校で習ったテコの問題では
力が万有引力に依るものだけだったので
&f_1d_1=f_2d_2 \\
\Longleftrightarrow
&(m_1g)d_1=(m_2g)d_2 \\
\Longleftrightarrow
&m_1d_1=m_2d_2
として質支点始点からの距離をかけたものを比べていたのでした。そして、重力に
よる力のみ、かつ、釣り合っている状態のみを考察していたので力が棒に垂直に
かかっているときのみを考察していました。しかし力が棒に傾いて働いたらどうでしょう?
次図を見てください
力が傾いてかかっている状態ではかかっている力の棒に垂直な成分のみが回転因子
になるので図のように $\theta$ をとると力のモーメント $\tau$ は
\tau
&=df\sin{(\pi-\theta)} \\
&=df\sin{\theta}
とかけます。ここで支点からの変位ベクトルと力ベクトル、またそのベクトルの成す角を
それぞれ $\bm{d},\bm{f},\theta$ とし、
&d=|\bm{d}| \\
&f=|\bm{f}|
とすれば
\tau=|\bm{d}||\bm{f}|\sin{\theta}
とかけます。ここで外積を導入したときと同様に $\bm{d},\bm{f}$ の順にみぎねじをまわした
時にねじが進む方向に $|\bm{\tau}|=\tau$ となる大きさのモーメントベクトルを導入して
あげると $\bm{d},\bm{f}$ によるモーメントベクトル $\bm{\tau}$ は
\bm{\tau}=\bm{d}\times\bm{f}
と機械的にかけます。つまりモーメントの式は
\bm{\tau}
&=\bm{\tau_1}+\bm{\tau_2} \\
&=\bm{d_1}\times\bm{f_1}+\bm{d_2}\times\bm{f_2}
とかけることになります。確かに外積には向きが付いているので逆回転はベクトルが逆を向くだけで
回転方向とベクトルの向きが一対一に対応します。したがってモーメントの釣り合いを見る際にただ
単に和を取れば反時計回りは負になるので、そういった向きに頭を悩ませることなく式が立てられる
のです。また全てのモーメントベクトルがゼロベクトル $\bm{0}$ になったとき回転しないという
条件が各回転軸周りについて考察せずともベクトルの和として機械的に計算できるというかなり大き
なメリットが手に入りました。
ローレンツ力
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ここまでの議論である程度感づいた方もいらっしゃると思います。まさにローレンツ力が外積の
十八番なのです。磁場中を動いている電子にはローレンツ力が働きその向きはフレミング左手則に、
大きさは電荷を $q$ 速さを $v$ 磁束密度を $B$ とすると $qvB$ でしたね。次図をご覧ください。
モーメントのときと同様、速度ベクトルが磁束密度ベクトルの向きと直交しないときは互いの
ベクトルの成す角を $\theta$ としたとき上図から
f
&=qvB\sin{(\pi-\theta)} \\
&=qvB\sin{\theta}
とかけます。モーメントのベクトルの導入と全く同様にして
&v=|\bm{v}| \\
&B=|\bm{B}|
とすれば
f
&=qvB\sin{\theta} \\
&=q|\bm{v}||\bm{B}|\sin{\theta}
として同様の議論を繰り返すと
\bm{f}=q(\bm{v}\times\bm{B})
と定義できます。ここで向きが心配になりますが、かける順番を間違えなければこのままで
大丈夫です。(確認してみましょう)因みに、[(右ねじの法則orフレミングの法則)&外積
表示のローレンツ力の定義式]から外積の定義を思い出せます。そちらの公式になれて
いるのであれば、そこからでも外積の定義(特に向き)が思い出せます。そういった公式から
定義を逆算することも出来るのです。
10. ホントに本当にまとめとあとがき
---------------------------------------------
以上に文章を読まれてきていかがだったでしょう?「ベクトルって物理のためにできたのかな」
とすら思いませんか?特に内積・外積は「美しい!!」言う他ありません。これから学ぶ各分野で
ベクトルが出てきた際に、内積・外積が出てきます。そのときになぜこの量を導入したのか
を視覚的にイメージしてみると、無味乾燥な式の羅列が僕たちにその意味を語りかけてきて
くれると思います。出来うる限り、ドラマチックに様々な解釈でベクトルを解説することに
努めてきました。ベクトルに関する様々な視点が得られれば幸いです。
@@author: やっさん@@
@@accept: 執筆中@@