======================= 角速度 ======================= 角速度はある座標の原点から見たときの単位動径距離あたりの速度の回転成分の事です。 従って次元は時間分の1(SI単位系[sec^{-1}])です。 ------------------------------------ 1.オイラー角を利用した角速度の導出 ------------------------------------ ここでは質点の角速度を求める事を考えます。その方法とは次の方法が考えられます。 [もとめる方法] {1}時刻tの質点の位置q(t)がある一つの軸上にのるような座標q"を極座標変数q_{r},{theta},φを用いて表す。 これは動径方向以外はゼロになるはずです。極座標変数で表すのは動径成分と回転成分を分離させる狙いがあります。 {2}時刻t+δtの質点の位置q(t+δt)をある一つの軸上に乗るような座標q""で時刻t+δtの質点の位置と時刻tの質点の位置を極座標 変数を用いて表す。 {3}{2}で求めた式を用いて時間微分を行い質点の座標q""上での速度成分を求める。 求まった速度の回転成分の単位動径距離あたりの値が角速度というわけです。 {1} ここでは一貫してオイラー角を利用して座標変換を行います。 まず時刻tにおける質点の位置qを直交直線座標で表したものを極座標変数で表現すると次のようになります。 q_{x}=q_{r}sin{theta}cosφ (1) q_{y}=q_{r}sin{theta}sinφ (2) q_{z}=q_{r}cos{theta} (3) 次に時刻tにおける質点の位置がq_{z"}軸上になるような座標変換を実行します。これはオイラー角を利用してq_{z}軸周りにφだけ回転し、 次にq_{y'}軸周りに{theta}だけ回転させてやれば良いわけです。結果はq_{z"}成分がq_{r}でそれ以外はゼロになる事は 図を書けば計算しなくても分かります。しかし本当に考えたとおりになっているのかオイラー角の計算に慣れるためにも計算してみましょう。 計算する方法は次のとおりです。計算は各自でやってみてください。ここではその方法のみを示しておきます。 {計算方法} [1]z軸周りにφだけ回転 [ cosφ, sinφ , 0 ; q'= -sinφ , cosφ , 0 ; q (4) 0 , 0 , 1 ] [2]y'軸周りに{theta}だけ回転            [cos{theta}, 0 , -sin{theta}; q"= 0 , 1 , 0 ; q' sin{theta}, 0 , cos{theta} ] [cos{theta}, 0 , -sin{theta} ; [ cosφ , 0 , -sinφ;  = 0 , 1 , 0 ; -sinφ , cosφ, 0 ; q [ ∵ (4)] sin{theta}, 0 , cos{theta} ]   0 , 0 , 1 ]                          [cos{theta}cosφ,cos{theta}sinφ,-sin{theta}; q"= -sinφ , cosφ , 0 ; q sin{theta}cosφ,sin{theta}sinφ, cos{theta}] (5) [3](5)式に(1),(2),(3)式を代入                   [q_{x"};  [ 0 ;        q"= q_{y"}; = 0 ;        q_{z"}]   q_{r} ] (6) [1],[2],[3]の計算を実行すれば予測された結果である(6)式が得られます。 これでq"はq_{z"}軸上に質点が時刻tにあるような座標系になることが確かめられました。 {2} 次に時刻t+δtに質点がq_{z""}軸上に乗るような座標q""を極座標変数を用いて書き表します。この座標変換は qをq_{z}を中心に{φ+δφ},q_{y"'}軸を中心に{theta+δtheta}だけ回転させることにあたります。 ここに書いている{δφ},{δtheta}は微小な大きさの角です。この変換は(5)式をtheta→theta+δtheta, φ→φ+δφ,q"→q""と書き換えた式から求まります。その事は{0}と同じ理由から分かります。         [cos{theta+δtheta}cos{φ+δφ},cos{theta+δtheta}sin{φ+δφ},-sin{theta+δtheta}; q""= -sin{φ+δφ} , cos{φ+δφ} , 0 ; q sin{theta+δtheta}cos{φ+δφ},sin{theta+δtheta}sin{φ+δφ}, cos{theta+δtheta}] (5)' ここで三角関数の          sinψ≒ψ     cosψ≒1 {ψ<<1} (7) という近似を用いると cos{ψ+δψ}=cosψcos{δψ} + sinψsin{-δψ} =cosψ + δψsinψ (8) sin{ψ+δψ}=sinψcos{δψ} - sin{-δψ}cosψ               =sinψ - δψcosψ (9) が得られます。(5)'式に(8)(9)にそれぞれ{theta+δtheta},{φ+δφ}を代入したものを放り込む事によって [-sin{theta}cosφ,-sin{theta}sinφ,-cos{theta} ; q""=q"+{δtheta} 0 , 0 , 0 ; q cos{theta}cosφ,cos{theta}sinφ, -sin{theta}] [-cos{theta}sinφ, cos{theta}cosφ , 0 ; + {δφ} -cosφ ,  -sinφ    , 0 ; q -sin{theta}sinφ, sin{theta}cosφ, 0 ] となることが分かります。更に(1),(2),(3)を代入すると [q_{r}δ{theta}   ; q""=q"- q_{r}sin{theta}δφ   ; 0 ] (10) を得ます。こうして時刻tの位置qを座標q""上で極座標を用いて表す事ができました。 {3} 時刻tに質点はq"_{z"}上あり、時刻t+δtにq""_{z""}上にあるので。このときの座標q""から見た時の速度vは微分の定義から      q""(t+δt) -q""(t) v = lim ----------------- δt→0   δt [ 0 ; [ δ{theta}/δt ; = lim 0 ; + lim q_{r} sin{theta}δφ/δt ; δt→0 {q(t+δt)-q(t)}/δt] δt→0 0 ]  = [ {theta}- ; sin{theta}φ- ; q_{r}- ] (11)          だと分かります。z""軸方向上に質点があるのでこの軸は動径方向にあたります。従って動径方向成分を除いた成分が 回転にかかわる速度になるわけです。つまりはじめに書いた角速度の定義より座標q""上では角速度ωは極座標変数を用いると          [ {theta}- ;   ω= sin{theta}φ- ; 0 ] (12) と表されます。