=========================== エネルギー問題のだいいっぽ =========================== 夜を昼間のように明るくし,世界各国は高速なネットワークで結ばれ情報が飛び交い, そして私たちの活動が地球全体の気象に影響を及ぼすまでに,人類は発展してきました. 人類の進歩は,エネルギーの生産,そしてエネルギー消費量の増大なしには成されませんでした. そのエネルギーとは何なのか,なくなってしまったらどうなるのか, 現在のエネルギー事情はどうなっていて,どのように変化するのか,私たちは知る必要があります. 三つのきっかけ ----------------- 現在に至る長い歴史の中で,文明の一つの指標である人口の推移を見ますと, それが爆発的に増加する三つの時期があります.それは 1. 火の発見 2. 太陽エネルギーの固定 3. 蓄積された太陽エネルギーの解放 とう現象に対応します. 火の発見 ^^^^^^^^^^^^^^^ 火を用いることで 太陽エネルギーの固定 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^ 太陽エネルギーの固定とは,農耕と牧畜に代表される農耕革命にあたります. 蓄積された太陽エネルギーの解放 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^ 太陽エネルギーの解放は,化石燃料資源の利用が本格的になった産業革命に対応しています. 現在,さらに原子力エネルギー(核分裂炉の利用)が加わり,人類にこれまでにない繁栄と快適さをもたらした. 現在のエネルギー事情 ------------------------ 石炭,石油,天然ガスに代表される化石燃料は当然ながら有限であり,将来枯渇することは避けられない. またこれらの化石燃料は $\mathrm{CO_2},\, \mahtrm{CH_4}$ などのガスによる近年の地球温暖化, SO2ガスによる酸性雨などに代表される環境問題に大きな負の影響を与えています. この事から,環境に適合した新しいエネルギー資源の確保は, 我々が現在直面し早急に解決をせまられている重要な課題となっています. 現在は化石燃料に頼らないエネルギー源として核分裂炉による原子力発電が利用されており, 日本の総発電量の約30%を占めるまでになっています.(1) しかし、これ自身にも、スリーマイル島、チェルノブイリにおける事故で 明らかになった安全性の問題やプルトニウムなど核燃料廃棄物の処理問題など難しい問題がある。 従って、原子力発電の安全性・信頼性の向上に向けて一層の研究開発が必要とされている。 今後、人類の長期にわたる繁栄を担保する究極のエネルギー源の条件として、 資源や安全性に有利であることはもちろん地球環境の保全の観点からも有利であることが必要である。 核融合エネルギー -------------------- これらの条件を満たし、基幹エネルギー源になりうるものとして、現在、核融合エネルギーに期待が寄せられている。 もしも、(D,T) 反応による核融合炉が実現すれば、 そのエネルギー量は人類が今後消費するであろうエネルギー量の数百億年分に相当すると推測される(2)。 さらに(D,D)反応による核融合炉が実現すれば燃料となる重水素は海水中にほぼ無限の量が含まれているため、 人類は燃料の安定供給が可能となり、エネルギーの量の問題から解放される。 また、核分裂炉とは異なり、臨界による炉心の暴走事故の問題や死の灰も生じないので、 核分裂炉よりも安全上優れていると言える。このような観点から、 核融合反応エネルギーの利用は、このエネルギー問題を解決するひとつの切り札と言える。 現在、核融合炉研究開発は大きな転換期を迎え、 ITER(国際熱核融合実験炉)の設計から建設に向けた準備段階にある(3)。 第三段階核融合炉研究開発基本計画によれば、実験炉が順調に建設・運転されたとして、 実用炉の実現は21世紀半ば以降と想定されている(4)。 これらの核融合炉研究開発の着実な進展を実現するために、核融合炉構造材料の研究は不可欠である。 核融合炉内では、炉心に冷却材がつまっている核分裂炉とは違って、 プラズマ中での核融合反応によって発生する14MeV中性子がほとんど減衰されることなく炉心構造材にぶつかる。 構造物内部で減衰されるものの、このように非常に高いエネルギーを持つ 中性子による材料の照射損傷は炉心構造材料にとって重要な問題である。 特に、運転中の原子が次々と弾き出されているダイナミックな状況における材料挙動を理解することは、 炉心構造物の設計や寿命評価などの観点から非常に重要である。 また、高エネルギー粒子照射下での動的な材料挙動を知ることは、 今後、軽水炉の長寿命化や高速増殖炉の安全性向上にも大いに役立つこととなる。 @@author:崎間@@ @@accept:@@