物理のかぎしっぽ 査読/準静過程(トミー著)/2

熱さまシート

メッセージ

執筆お疲れ様です。このペースでばしばし熱力学を進めてください!

さて、査読です。

1. 表題は、準静的過程では?

2. リード文に重大な誤りがあるように思います。準静的過程では、あくまで「変化中」の状態は記述できないと思います。状態A1からA2への熱力学的準静的変化があったとして、確かに、その二つの状態の間を「変化」したわけですが、途中のどこでその過程を見てみても、常に「平衡状態に釣り合っている」というのが準静的過程です。物理で、何かが変化中といえば、変数の時間微分項が零ではないという意味ですね。時間微分項の入った基礎方程式は出てきますか?

3. 「有限の変化を起こすのに無限大の時間がかかる変化」このメッセージが赤字になっているのは、大変良いと思います。準静的過程の心ですね。

4. しかし、その次の絵の下「このピストンを非常にゆっくり引っ張れば,容器内の気体を熱平衡状態に保ったまま膨張させることができます」は不正確だと思います。たとえどんなにゆっくりでも、有限時間内に平衡状態を保ったまま膨張させることは出来ないと思います。私ならむしろ、準静的過程というものは、現実には決して実現できない変化方法なのだということを強調すると思います。トミーさんは、どう思いますか?

5. 「何か一つでも (イコール)で繋ぐことができる値が存在する」これも、時間項を含む微分方程式で基礎方程式を記述すれば等式を書けますよね。「等式を書きたいから準静的過程を仮定する」のでありません。状態量の比較だけで話を済ませられるから、準静的過程を考えると簡単なんだと思います。

6. 最後のコラムの内容について質問です。これは、平衡状態にある系が、不連続的にジャンプしても良いということですか?こういう場合にも、準静的過程という言葉が使えるとは知りませんでした。

返答

  • 査読、ありがとうございます :) では、順に。1.ですが、mNejiさんからも同様のご指摘をいただきました。が、私の参考文献には「準静過程」と表記されています。よってどちらでも別に構わないと判断して、一般的な方に合わせようと思います。熱力においてはどちらが普通、用いられていますか?2.ですが、なるほど、非常にわかりやすいご指摘です。微分方程式と日本語を対応させた時に、矛盾が生じているのですね。確かに、私の意図するところは「ある状態からある状態へ変化した」ということを表すことだったのですが、「変化中」としたのがよろしくありませんでしたね。改訂します。4.ですが、これも改訂いたします。私としては熱力の視点に立って「無限大の時間をかけてピストンを引っ張れば熱平衡のまま膨張させられる」という意味で書いたつもりで、これすなわち「実現不可能」ということなのですよね。当たり前のことだと思い込みすぎて全く言葉足らずでした。熱力学視点で「準静的な変化存在する」等、そのあたりのことを書いていたのでした。申し上げたいのは、高校物理の時の物体の運動のように、本来ならば考慮しなければならない空気抵抗や摩擦力を、問題を解く時は完全無視することを自明としている部分がありますよね。その状態に私はいたと思います。「強調すべきかどうか」…強調すべきでしょうね。この熱力初歩の記事で強調しておかなければならないと思います。表現を変えます。しばしお待ちください。5.はよくわかりません。ご指摘の意味は分かります。この部分、何と書けば良いのか分からなくて苦し紛れに書いた文章でした。「熱力学を勉強する前に」の査読コメントの返答にも書かせていただきましたが、こういうことに触れている文献が読みたいです。Johさん、よろしければご教示ください。重ねてお願い申し上げます。さて、最後。6.ですが、これはここで議論をしたくて敢えて書きました。参考文献に載っていて、興味をもったので書いてみました。Johさんはどういう解釈をなさって「不連続的にジャンプ」と書かれたのですか? -- トミー 2006-08-26 (土) 01:07:11
  • おそらく、理解の仕方の違いに根ざす相違だと思いますので、私なりの考えを書きます。準静的過程によれば、ピストンをたった1mm動かすのにも無限の時間がかかるわけですから、こんなのは実現できる過程でもないし、式の上で意味が分かったところで腑に落ちる物理的過程ではありません。これを、無理に理解しようとするのは人間の感覚に反していると思います。むしろ、どうして最初の人はそんな変な概念を導入しようとしたのか、という動機を探れば、そんな無理な概念を使いたい気持ちを察することは出来るでしょう。説明するなら、そっちの説明(釈明?)が大事だと思っています。さて、準静的過程を導入したい動機は、そうすることで「状態量の差だけで系の変化を記述できる」からではないでしょうか。私なら、準静的過程とは、計算を楽するために捻り出した、非現実的な過程だと断言してしまいます。 -- Joh 2006-08-27 (日) 00:58:24
  • 5.に関してですが、以前、第一法則についてnemoさんも含めて議論になったことと同じことです。状態量の変化を閉じた系で考える場合、増減は無いわけだから、プラスマイナスゼロという式を等式の形で書けるわけです。しかし、この(等式の形に式を書きたいという)都合のために、自由エネルギーという正体不明の量を導入しました。(自由エネルギーが無ければ、不等式になるのかな?) 状態量に関する等式は巨視的な量の収支を示すものです。一方、微分方程式は局所的な増減を表わします。全然違う式なわけですが、「等式で書けるか?」といえば、どっちも等式の形に書けます。何が素晴らしいかと言えば、状態量の等式の方がずっと簡単だという点だと思います。 -- Joh 2006-08-27 (日) 01:03:09
  • 6の解釈ですが、お書きになった話は、系の時間スケールに対して十分に無視できる時間内に変化が終了している、という意味ですね。ということは、状態の変化に要した時間は零と考え(零と考えられないなら、「変化中の状態」を記述する式が必要です)、その前後は、熱力学的平衡状態にあるということです。これは、状態のジャンプではないですか? -- Joh 2006-08-27 (日) 01:05:23
  • 数学的には、不連続点が高々有限個なら良いと思うのですが、熱力学ではどういう取り扱いをするのか興味があります。似た状況で思いつくのは、一つは流体力学の衝撃波です。衝撃波の前後は一様な流体ですが、衝撃波面は不連続なジャンプ面となります。気体分子運動論では衝撃波の幅を考えますが、古典流体力学では厚さ0と仮定します。力学でも似た例があります。風車は流入流と揚力と空気抵抗が釣り合った角速度で回っていますが、流入流に擾乱があると角速度が変わります。この変化を一瞬だとするのがquasi-steady近似です。 -- Joh 2006-08-27 (日) 01:54:58
  • Johさん、今日はとっても眠いです…流体力学まで飛び出し、私の世界はどこまで広がっちゃうんだろうという感じです…明日or明後日返答します。トミーに、勉強の時間をお与えください。おやすみなさい☆zzz -- トミー 2006-08-27 (日) 01:59:39
  • 横からすいません。準静的過程ですが実際にも可能なのではないでしょうか?例えば気体を膨張させるときですが拡散スピードよりもゆっくりならば準静的過程とみなしてもよいではないでしょうか?それとももっともっと厳密にはどうかということでしょうか? -- nemo 2006-08-27 (日) 02:07:22
  • >nemoさん、御指摘の通りです。気体は平衡状態に驚くほど早く達しますから(スターリンエンジンが好例です) 、実質的に準静的過程だと見なせると思います。ただし、それは考えている時間スケールに比べて、気体分子の相互作用が十分に早く行われるという観測事実に基づくものだと思います。厳密に、準静的過程とは違うと思うのですがどうなんでしょう?私もはっきりと理解したいと思っています。 -- Joh 2006-08-27 (日) 02:39:06
  • 私は有限の変化を起こすのに無限大の時間がかかる変化という定義をみたことがなかった(無限小という言葉なら見たようなことがある気がするので同じか?)のでわかりかねます。久保演習では変化を十分ゆっくり行わせることによって"近似的に"実現可能とあるのでやはり不可能なのでしょうか・・・(>_<)調べてみます。 -- nemo 2006-08-27 (日) 03:05:25
  • 返答できるとこだけとりあえず返答します。準静的過程は、実現不可能だと思います。「準静的過程とみなしてよい」とか「近似的に準静的であるとする」とか、どの教科書にも書いてあることから判断して、また、確かにマクロ的観点から見ても気体を膨張させる時、どんなにゆっくり膨張させたとしても非常に小さな変化が現実世界では起こってしまうであろう(でもそれは無視できるほどに小さい)ということから「準静的過程を近似的に考える」のだから、やはり準静的過程は実現不可能だと私は思います。今から出掛けなければならないので、とりあえず今はこれだけで。では。 -- トミー 2006-08-27 (日) 14:15:09
  • 今日は頭がスッキリです。>Johさん、まずコラムの話です。私がこの記事を書き上げた時は、「状態の変化に要した時間は零と考え」たのではなくて、「零と見なせるくらい小さいけれど決して零ではない」と認識していました。そして、「変化中の時間→平衡状態になる→変化中の時間→平衡状態になる…」というのを繰り返した時、変化中の時間をガバッと寄せ集めると平衡状態のときの時間に比べてはるかに小さい時間だから、全体として「ずっと平衡状態にあったと近似しよう」という意味なのだと、参考文献を読んでいたときには思っていました。しかし、「零でないとすると変化中を表す式が必要です」というJohさんのご指摘を見てよくわからなくなりました。Johさんの「ジャンプ」という考え方の方が正しい気がしてきました。まだ私の中で消化できていないので、また意見が変わるかもしれませんが…。流体力学における衝撃波のように、熱力でも「ジャンプ」を扱うことができるという話を、どこかで確認する手立てはないものでしょうか?明日から学会で、またしばらく放置してしまうかと思います。せっかく熱を入れて査読してくださっているのにごめんなさいm(_ _)m -- トミー 2006-08-28 (月) 22:24:16
  • 私の思ってる考えを図にしてので、このページに添付します。熱を入れて査読という言い方は、恥ずかしいのでやめて下さい。準静的過程でいきましょう(笑) -- Joh 2006-08-28 (月) 23:11:40
  • あ、02って方見てくださいね。じゃあ学会頑張ってください。 -- Joh 2006-08-28 (月) 23:15:09
  • 決して「熱」力学に引っ掛けたわけではないですよ(笑)Mozartという名前がJohさんらしくて素敵です。とりあえず今日はこれで。おやすみなさい☆zzz -- トミー 2006-08-28 (月) 23:24:44
  • Johさん、遅くなりましたが返信です。Mozart、今じっくり見せていただきました。一つ気になったことが…最後の図に到達する時、傾きを限りなく0に近づけますよね。そうすると状態1と状態2の間の段差も限りなく0に近付き、結局ずっと準静的過程にあるということになるのではないかと思うのです。いかがでしょうか?ご教示ください! -- トミー 2006-09-01 (金) 14:58:12
  • すいません、追加します。上で言いたかったのは、段差が0に近づくならば状態のジャンプは起きていないことになるのではないか、ということです。 -- トミー 2006-09-01 (金) 22:49:41
  • はい。私は、下段の、右図と左図は数学的には異なる場合だと思っています。右段は、傾き→0で、無限の時間をかければ、状態が変化できるような極限です。下左段は、有限時間内で起こるジャンプです。これは私の考えを絵にしただけのもので、私も準静的過程とは何なのか知りたいと思ってるんです。一緒に勉強させて下さい。トミーさんはどう思いますか? -- Joh 2006-09-01 (金) 23:57:20
  • 私が記事内に挙げた参考文献の著者は、Johさんの下左の図も準静的過程だ、と書いているわけですよね。私は、やはり準静的過程というのは「示量変数の時間変化が非常にゆっくりしているために、操作の途中でも系はいつでも平衡状態にあるとみなせるような極限的な操作」だと思うので、この著者の準静的過程に対する認識は誤っているように思えてなりません。 -- トミー 2006-09-02 (土) 22:38:42
  • 「音波の振動周期よりもはるかに短い時間内に気体内が熱平衡に達している」とありますが、周期と平衡状態に達するまでの時間を比較するのではなく、その平衡状態遷移間の時間が無限大であるものを「準静的過程」というのではないのか??と著者に対して思うわけです。Johさんはどう思われますか?これを準静的過程だとする解釈を助ける唯一の考え方は、やはり流体力学の衝撃波でしょうか?私の手元に流体力学の文献が全くないので、なんとも言えないのですが…。 -- トミー 2006-09-02 (土) 22:51:36
  • 私の論点が分かっていただけたようで良かったです。「いつでも状態は平衡状態であり、かつ状態の変化を表わしている」という点では、二つとも条件は満たしますね。でも、左下型の変化では、ジワリジワリ変化するというイメージは当てはまりません。今頃言い訳をしますが、私は熱力学は全然素人ですよ。でも、今まで、準静的過程っていうのは、右下図のことだけを指すのかと思ってました。 -- Joh 2006-09-02 (土) 22:56:24
  • あと、自分の専門分野からですが、オートジャイロのローターの回転数は、飛行速度に応じて回転数が変わるんですけど、そのローターの運動を記述するのに、回転数が一瞬で平衡状態にまでジャンプする(つまり変化状態を考えない)のを、quasi-steady と呼んでます。準静的って訳していいんだろうか。 -- Joh 2006-09-02 (土) 22:58:40
  • う〜ん…。まさにその「オートジャイロのローターの回転数」の「変化状態を考えない」場合が今回の場合に当てはまっている気がしますね。私の参考文献を信用するならば、変化状態を考えない場合も準静的過程とする、という結論になりますよね。quasi-steadyは、直訳すると「まるで安定しているかのような」で良いですか?ならば学問的単語に置き換えると「準静的」かな、と思います。とりあえず私は、記事からこの部分を削除するか、「こういう場合も準静的過程と見なして良いようだ」と言い切ってしまうか、悩んでいます。Johさんのご意見、お聞かせ願えますか。 -- トミー 2006-09-03 (日) 23:58:01
  • やっぱり「ローターの回転数」の場合と同様に扱って良いのか、疑問を持ち始めてきました。有名なサイトのこの部分を読んだからです。http://homepage2.nifty.com/eman/thermo/irreversible.html 下のほうに「可逆過程と準静的過程」と項目がありますよね。なんと「状態のジャンプ」が出てきています。準静的過程は可逆過程である、というのは有名な話ですよね。では今回の音波の場合は可逆過程でしょうか?なんとかしてジャンプ後の状態をジャンプ前の状態に戻すこっとができるか、と問われれば、それは無理なんですよね?だからやはりこの参考文献の著者は間違っているのではないかと思えてきました。「ローターの回転数」のような考え方は、熱力には持ち込んではいけないのではないでしょうか。-- トミー 2006-09-04 (月) 00:14:40
  • ローターの回転数は可逆です。衝撃波は可逆じゃないですね。衝撃波を持ち出したのは、こないだの図のように、平衡状態から平衡状態に飛び移るという図が共通だからという連想です。ただ、熱力では横軸が時間軸ですよね。衝撃波で同じ図を描くなら横軸は位置の座標軸です。ですから、数学的に(変数の物理的意味を考えないなら)似てる部分はあると思うのですが、時間発展について可逆かどうかといえば不可逆です。あくまで、理解のための連想ですよ。恐らく、準静的について、きちんとした定義があるはずです。調べましょう。私は昔、原島鮮の熱力学とキッテルの熱力学で勉強しましたが、いま手元にありません。ReissのThermodynamicsを見てみます。 -- Joh 2006-09-04 (月) 00:46:33
  • 「きちんとした定義」というのは熱力学における準静的過程の定義のことですよね?でしたら私は既にいくつかの本で調べましたが、「有限の変化を起こすのに無限の時間がかかる」というのと「示量変数の時間変化が非常にゆっくりしているために、操作の途中でも系はいつでも平衡状態にあるとみなせるような極限的な操作」というのがいずれの本にも明記されていました。 -- トミー 2006-09-04 (月) 00:56:07
  • ということは、やはりジャンプ型の変化は、準静的過程に含まれませんね。(最初、思っていた通りです。) その定義だと、Mozart2の右下図だけですね♪ -- Joh 2006-09-04 (月) 00:58:54
  • 結論は、やはりそうなりますか…。この著者は何を意図してこの部分を書いたのだろう…と思います。でも私一人では、「これ何か変やけど、私の理解力がないからやわ」と思って深く考えることは無かったと思うので、Johさんと議論できて良かったです!ちゃんと「この部分は間違いである」と確認できました :) とりあえず、記事からはこの部分は削除します。 -- トミー 2006-09-04 (月) 01:05:27

 

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