物理のかぎしっぽ 記事ソース/任意方向の1/2スピンの回転と実現方法 の変更点

 #rst2hooktail_source
 ============================================================
 任意方向の1/2スピンの回転と実現方法
 ============================================================
 
 この記事は有名サイト『EMANの物理学』さんの スピノールの記事_ に感銘を受け書いた記事です。
 理論的な内容はあまりなく、EMANさんの理論が上手くできていると言うことを確認する感じです。
 任意方向軸 $(x,y,z) = (\sin \theta \cos \phi, \sin \theta \sin \phi, \cos \theta)$ のスピンの有限角度 $\alpha$ 回転を
 扱います。ちなみにこの場合の $\alpha$ の正の方向は、その方向に右ねじを回して進む方向が、 $x,y,z$ 軸の正の方向と一致するように決めます。
 扱います。ちなみにこの場合の $\alpha$ の正の方向は、その方向に右ねじを回して進む方向が、 $x,y,z$ 軸の正の方向と一致するように決めます。(2020.6.14追記:回転演算子がなぜこれでいいのか、 証明した記事_ を作りました。)
 
 EMANさんの結果
 ==================================
 
 EMANさんの記事では、一般方向の有限角回転の演算子が書いてあります。
 それは、結果を要約して示すと、
 
 <tex>
 U(\alpha) = \exp \left( -\dfrac{i}{2} \bm{\alpha} \cdot \bm{\sigma} \right) \tag{##}
 </tex>
 
 ここで、 $U(\alpha)$ は2×2のユニタリー行列、 
 
 <tex>
 \bm{\alpha} = \left( \alpha \sin \theta \cos \phi, \alpha \sin \theta \sin \phi, \alpha \cos \theta \right) \tag{##}
 </tex>
 
 は、長さ $\alpha$ が回転角であり、向き $\dfrac{\bm{\alpha}}{\alpha}$ が回転軸となるベクトル、シグマはパウリ行列であり、
 
 <tex>
 \bm{\sigma} &= \left( \sigma_x, \sigma_y, \sigma_z \right) \\
 \sigma_x &= 
 \begin{pmatrix}
 0 & 1 \\
 1 & 0
 \end{pmatrix}, \ \ \ 
 \sigma_y = 
 \begin{pmatrix}
 0 & -i \\
 i & 0
 \end{pmatrix}, \ \ \ 
 \sigma_z = 
 \begin{pmatrix}
 1 & 0 \\
 0 & -1
 \end{pmatrix} \tag{##}
 </tex>
 
 なので、内積は2×2行列であり、
 
 <tex>
 \bm{\alpha} \cdot \bm{\sigma} =
 \begin{pmatrix}
 \alpha \cos \theta & \alpha \sin \theta e^{- i \phi} \\
 \alpha \sin \theta e^{i \phi} & - \alpha \cos \theta 
 \end{pmatrix} 
 \equiv \alpha \sigma_n \tag{##}
 </tex>
 
 となります。
 
 EMANさんの記事には、$z$ 軸方向の回転行列 $U(\alpha)$ が書いてあります。
 それは、 $\theta = 0$ 、 $\phi$ :任意の時であり、
 
 <tex>
 U(\alpha) = \begin{pmatrix}
 e^{-i\alpha/2} & 0 \\
 0 & e^{i\alpha/2} 
  \end{pmatrix} \tag{##}
 </tex>
 
 これを包含する回転行列 $U(\theta,\phi;\alpha)$ を作るのがこの記事です。
 
 望む計算の実行
 ===========================================
 
 ここで、一つ準備をします。
 
 <tex>
 \sigma_n^2 = I \tag{##}
 </tex>
 
 つまり、 $\sigma_n$ の二乗は単位行列です。
 後は、式 $(1)$ の計算を具体的に実行するのみで、
 結果は、
 
 <tex>
 U(\theta,\phi;\alpha) &= \exp \left( -\dfrac{i}{2} \bm{\alpha} \cdot \bm{\sigma} \right) \\ 
 &= \exp \left( -\dfrac{i}{2} \alpha \sigma_n \right) \\ 
 &= I -\dfrac{i}{1!} \left( \dfrac{\alpha}{2}\right) \sigma_n -\dfrac{1}{2!} \left( \dfrac{\alpha}{2}\right)^2I + \dfrac{i}{3!} \left( \dfrac{\alpha}{2}\right)^3 \sigma_n \cdots \\
 &= \cos \left( \dfrac{\alpha}{2} \right)I - i \sin \left( \dfrac{\alpha}{2} \right) \sigma_n \tag{##}
 </tex>
 
 つまり、 $\theta^\prime,\phi^\prime$ 方向を向いたスピノール
 <tex>
 \chi &= \begin{pmatrix}
  \cos \dfrac{\theta^\prime}{2} e^{-i\phi^\prime/2} \\
  \sin \dfrac{\theta^\prime}{2} e^{i\phi^\prime/2}
  \end{pmatrix} \\
  &= \cos \dfrac{\theta^\prime}{2} e^{-i\phi^\prime/2} | \uparrow \rangle + \sin \dfrac{\theta^\prime}{2} e^{i\phi^\prime/2} | \downarrow \rangle \tag{##}
 </tex>
 を回転軸 $\theta,\phi$ として、角度 $\alpha$ だけ回転する時には、回転後のスピノールを $\chi^\prime$ として、次のような計算をします。
 
 <tex>
 \chi^\prime &= U(\theta,\phi;\alpha) \chi \\
 &= \left( \cos \left( \dfrac{\alpha}{2} \right)I - i \sin \left( \dfrac{\alpha}{2} \right) \sigma_n \right) \chi \\
 &=
 \begin{pmatrix}
  \cos \dfrac{\alpha}{2} -i \sin \dfrac{\alpha}{2} \cos \theta & -i \sin \dfrac{\alpha}{2} \sin \theta e^{-i\phi} \\
  -i \sin \dfrac{\alpha}{2} \sin \theta e^{i\phi} & \cos \dfrac{\alpha}{2} +i \sin \dfrac{\alpha}{2} \cos \theta
 \end{pmatrix}\chi \tag{##}
 </tex>
 
 具体例の計算(EMANさんの結果)
 =================================
 
 ここできちんとEMANさんの結果、式 $(5)$ と一致することを確認します。
 それは $\theta = 0$ 、 $\phi$ :任意でしたから、
 
 <tex>
 U(0,\phi;\alpha)
 &= \left( \cos \left( \dfrac{\alpha}{2} \right)I - i \sin \left( \dfrac{\alpha}{2} \right) \sigma_n \right) \\
 &=
 \begin{pmatrix}
  \cos \dfrac{\alpha}{2} -i \sin \dfrac{\alpha}{2} \cos 0 & -i \sin \dfrac{\alpha}{2} \sin 0 e^{-i\phi} \\
  -i \sin \dfrac{\alpha}{2} \sin 0 e^{i\phi} & \cos \dfrac{\alpha}{2} +i \sin \dfrac{\alpha}{2} \cos 0
 \end{pmatrix} \\
 &=
 \begin{pmatrix}
  e^{-i\alpha/2} & 0 \\
  0 & e^{i\alpha/2}
 \end{pmatrix} \tag{##}
 </tex>
 
 OKです。一致しました。
 
 具体例の計算(変化しないはずの回転の結果)
 =================================================
 
 
 また、 $\sigma_n$ の固有ベクトル(スピノール)が、上記の $\chi$ で、その固有値は $1$ です
 から、 $ \theta = \theta^\prime $ かつ $ \phi = \phi^\prime $ の時 $\chi_1$ と書くと、 $\sigma_n \chi_1 = \chi_1$ ですから、
 
 <tex>
 U(\theta,\phi;\alpha) \chi_1 &= \left( \cos \left( \dfrac{\alpha}{2} \right) I - i \sin \left( \dfrac{\alpha}{2} \right) \sigma_n \right) \chi_1 \\
 &= \left( \cos \dfrac{\alpha}{2} - i \sin \dfrac{\alpha}{2} \right) \chi_1 \\
 &= e^{-i \alpha /2} \chi_1 \tag{##}
 </tex>
  
 なるほど、回転軸の方を向いたスピノール $\chi_1$ の回転では、
 変化しないはずだと思いましたが、回転角 $\alpha$ の大きさに依存して、
 全体の位相が変わっていくようです。
 
 具体例の計算(アダマールゲート)
 =============================================
 
 以前、量子コンピュータ関連の講義を聞いた時に、
 アダマールゲートというものを習いました。
 それは、
 
 <tex>
 H &= \dfrac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix}
  1 & 1 \\
  1 & -1
 \end{pmatrix} \tag{##}
 </tex>
 
 であり、 $\theta=\dfrac{\pi}{4},\phi=0,\alpha=\pi$ に相当する回転なのだそうです。
 
 では、これは $U(\dfrac{\pi}{4},0;\pi)$ で再現できるでしょうか?
 
 計算してみると、
 
 <tex>
 U(\dfrac{\pi}{4},0;\pi) &= \dfrac{-i}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix}
  1 & 1 \\
  1 & -1
 \end{pmatrix} \tag{##}
 </tex>
 
 全体の位相 $-i$ を除いて一致しました。
 実はこれを再現したくて今回の計算を始めたのです。
 
 実際に回転ってどうやるの?
 ====================================
 
 さて、今回はスピンの回転でしたが、実際に回転して見ろと言われても、
 はて?どうしたものか?と言う方もいらっしゃることと思います。
 実は、磁場 $\bm{B}$ を掛けると回転できます。
 
 磁場 $\bm{B}$ とスピン $\dfrac{\hbar}{2} \bm{\sigma}$ の結合を表すハミルトニアン $H$ は、
 2×2行列となり、
 
 <tex>
 H &= \dfrac{ge}{m} \dfrac{\hbar}{2} \bm{\sigma} \cdot \bm{B} \\
 &= \dfrac{g\hbar e}{2 m} \bm{\sigma} \cdot \bm{B} \tag{##}
 </tex>
 
 ここで、 $g$ はランデのg因子と言い、およそ大きさが2くらいの無次元数です。
 系の時間発展は、波動関数(スピノール)を $\chi \to \psi(t)$ と書き換えて(つまり二行一列の行列)、
 
 <tex>
 \psi(t) &= \exp \left( - \dfrac{iHt}{\hbar} \right) \psi(0) \\
 &= \exp \left( - \dfrac{ige}{2m} \bm{\sigma} \cdot \bm{B} t \right) \psi(0) \\
 &= \exp \left( - \dfrac{ige|\bm{B}|t}{2m} \sigma_n \right) \psi(0)
  \tag{##}
 </tex>
 
 式 $(7)$ の二行目と比較して、
 
 <tex>
 U(\theta,\phi;\alpha) = \exp \left( - \dfrac{i \alpha}{2} \sigma_n \right) 
 \tag{##}
 </tex> 
 
 でしたから、一秒間に $\alpha = \dfrac{ge|\bm{B}|}{m}$ ラジアンずつ回転すると分かります。
 良く言われることですが $ \alpha = 2 \pi$ の回転でスピノールは元に戻らず、
 位相因子 $e^{-i\pi}=-1$ が掛かるのが、式 $(13)$ の二乗の結果からも分かります。
 
 それでは今日はこの辺で。お疲れ様でした。
 
 .. _証明した記事: http://hooktail.sub.jp/quantum/spinRotation2/
 .. _スピノールの記事: http://eman-physics.net/quantum/spinor.html
 
 @@author:クロメル@@
 @@accept:2018-03-18@@
 @@category:量子力学@@
 @@id:spinRotation@@
 
トップ   編集 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Modified by 物理のかぎプロジェクト PukiWiki 1.4.6 Copyright © 2001-2005 PukiWiki Developers Team. License is GPL.
Based on "PukiWiki" 1.3 by yu-ji Powered by PHP 5.2.17 HTML convert time to 0.014 sec.