物理のかぎしっぽ 記事ソース/ギリシャの三大作図問題2 の変更点

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 ギリシアの三大作図問題2
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 もしも $a,b$ がともに作図可能数であれば、定規とコンパスを使うことで、次のような数も作図可能数なことを確認してみてください。
 
 
 1.  $a \pm b$  (図1を見てください。 $(0,0)$ と $(0,a)$ を通る直線と、 $(0,a)$ を中心とする半径 $b$  の円の交点が $a \pm b$ になっています。)
 2.  $ab$ (図2を見てください。単位長さ $1$ と $a,b$ が与えられていれば、図のような比例関係を使うことで $ab$ が作図できます。)
 3.  $\frac{a}{b} \ (b \ne 0)$ (図3を見てください。図2を少し変えたものです。)
 
 
 
 
 
 .. figure:: Joh-Desc5.gif 
 
 	図1
 
 .. figure:: Joh-Desc2.gif 
 
 	図2
 
 
 .. figure:: Joh-Desc7.gif 
 
 	図3
 
 
 これより、作図可能数の四則演算によって得られる数は、やはり作図可能数になっていることが分かりました。四則演算に対して閉じていますから、作図可能数は体になります。
 
 .. important:: 
 
 	作図可能数の全体は体をなします。
 	
 	
 
 無理数も作図できる
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 図2,3では単位長さ $1$ が必要でした。最初、真っ白な紙の上に任意の二点描き、その二点を $(0,0),(1,0)$ とし、二点間の距離を $1$ と定めても一般性を失いません。とにかく四則演算をするには、乗法の単位元である $1$ を最初に決めなければどうにもなりませんので、このように $1$ を決め、 $1$ は作図可能数と考えます。
 
 
 ひとたび $1$ を決めると、 $1$ を足したり引いたりすることで整数が全て表せます。整数を分母分子に組み合わせれば、有理数が全て作図可能数になります。つまり有理数体は作図可能数体です。
 
 
 しかし、作図可能数は有理数にとどまりません。次の図を見れば、ある作図可能数の平方根もまた作図可能だということが分かるでしょう。(これはデカルト( $\text{Ren\'e Descartes (1596-1650)}$ )の『 幾何学_ 』(原題は $\text{"La g\'eom\'etrie"}$ )に紹介されている図です。 代数学と幾何学の邂逅_ を参照してください。) ピタゴラスの定理を何度か使えば、証明はすぐにできます。
 
 
 .. image:: Joh-Desc3.gif 
 
 
 前節の $1.$ 〜 $3.$ の四則演算と組み合わせれば、 有理数体 $Q$ に $\sqrt{a}$ ( $a$ は有理数)を添加した拡大体 $Q(\sqrt{a})$ は作図可能だと分かります。いよいよ拡大体の話につながって来ました。
 
 
 例えば、次のような数は一見非常に複雑ですが、四則演算と平方根だけを繰り返すことで作れますので、全て作図可能数だと言えます。
 
 <tex>
 & \root 4\of {\frac{2143}{22}} \\
 & \frac{1}{2 \sqrt{2}}\frac{99^{2}}{1103}\\ 
 & \frac{63}{25} \Big( \frac{17+15\sqrt{5}}{7+15\sqrt{5}} \Big) 
 </tex>
 
 いま $Q(\sqrt{a})$ は $Q$ の *二次拡大である* ことにも注意しておいて下さい。
 
 
 作図できる数の全て
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 ここまでの議論で『作図可能数から、四則演算と平方根だけを使って作った数も作図可能だ』ということが分かりました。しかし、作図可能数はこれで全てなのでしょうか?例えば、 $\log x$ や $e^{x}$ を作図してしまう秘密の方法は無いのでしょうか? 
 
 
 
 
 
 作図可能数は、定規とコンパスで作図できる図形の交点として表わされますが、私達は、許される作図法として三つのルールを決めましたから、作図できる図形の種類は直線と円だけです。すなわち、作図可能数とは、直線と円の方程式の連立方程式の解に限られると考えられます。そして、直線と円の方程式の連立方程式には、次の3通りしかありません。
 
 
 1. 直線の方程式と直線の方程式(一次連立方程式⇒一次方程式) 
 2. 直線の方程式と円の方程式(二次方程式と一次方程式の連立方程式⇒二次方程式)
 3. 円の方程式と円の方程式(二次方程式と一次方程式の連立方程式⇒二次方程式)
 
 
 .. [*] 円と円の交点を二次方程式と二次方程式の連立方程式だと早とちりしてはいけません。二つの円の方程式 $(x-a)^{2}+(y-b)^{2}={r_{1}}^{2}, (x-c)^{2}+(y-d)^{2}={r_{2}}^{2}$ の差を取ると、 $x^{2}$ と $y^{2}$ の項が両方消えて、一次式が出てきます。これは二つの円の交点を通る直線の方程式です。円と円の交点は、この直線と円の交点として与えられます。
 
 
 作図可能直線や作図可能円の方程式は、二つの作図可能点 $(a,b),(c,d)$ を結んだり、作図可能点 $(\alpha , \beta)$ を中心に作図可能距離 $r$ を半径とすることで描かれるものですから、一般に次のような式形になり、方程式の係数は全て作図可能数になります。
 
 <tex>
 (d-b)y+(c-a)x+(ad-bc)=0		\tag{1}
 </tex>
 
 <tex>
 (x- \alpha )^{2}+(y- \beta)^{2} =r^{2}	\tag{2}
 </tex>
 
 
 これらを連立して得られる一次方程式や二次方程式も、作図可能数体上の方程式です。
 一次方程式の解は、移項したり両辺を割ったりすることで、係数を四則演算した形として解を表現できますので、解も作図可能数です。二次方程式も、 二次方程式の解の公式 $x=\frac{-b \pm \sqrt{b^{2} -4ac}}{2a}$ を思い出せば、やはり係数の四則演算と平方根だけでだけで表現できますので、やはり作図可能数だと言えます。
 
 
 結局、 *作図可能数とは、 作図可能数体上の一次方程式か二次方程式の解として得られる数と、それらを四則演算したり平方根を取ることで組み合わせて作れる数だけ* だということが分かりました。
 
 
 平方根を取る操作を一回行うと、 $Q$ が $Q(\sqrt{a})$ に拡大されたように、拡大体を考えなければなりませんが、その拡大次数は $2$ です。この操作を続けていくと、作図可能数は、有理数体の $2^{n}$ 次拡大体に含まれる数であることが分かります。
 
 
 作図可能数は有理数体 $Q$ の代数的拡大体ですから、超越数である $\pi$ や $e$ も作図不能だと分かってしまいます。(ただし、これらが超越数であることを知っていればです。)
 
 
 次はいよいよ、ギリシャの三大作図問題を代数の問題に置き換え、その作図可能性を考えます( ギリシャの三大作図問題3_ に続く)。
 
 
 
 .. _代数学と幾何学の邂逅: http://www12.plala.or.jp/ksp/algebra/FundamentalTheorem/
 
 .. _ギリシャの三大作図問題3: http://www12.plala.or.jp/ksp/algebra/Greek3Probs3/
 
 .. _二次方程式の解の公式: http://www12.plala.or.jp/ksp/algebra/kainokoshiki/
 
 
 .. _幾何学: http://www.amazon.co.uk/exec/obidos/ASIN/0486600688/qid=1144102151/sr=1-1/ref=sr_1_2_1/026-3345308-7853226
 
 
 @@author:Joh@@
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 @@accept: 2006-06-24@@
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