物理のかぎしっぽ 自分で調べるCのポインタ のバックアップ差分(No.13)

#rst2hooktail_source
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 自分で調べるCのポインタ
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 C言語の開発環境があれば,自分でテストプログラムを作ることにより,
 手持ちの教科書・参考書だけでポインタの性質を理解することができます.
 以下に調べ方の例を示します.例を変更して自分でいろいろ試みてください.
 本文に誤りがあったとき自信を持って訂正できます.
 
 
 簡単な例
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 まず次の例を考えましょう.結果が予想できない人は実際にプログラムを
 作って実行してください.
 
 
 例1.次のプログラムの出力は「1, 4」.
 
 <tex>
 & \#include <stdio.h>\\
 & int main(void)\\
 & {\\
 &   & int n[3]={4, 5, 6}, *p=n;\\
 &   & printf("%d, %d\n", p==\&n[0], *p);\\
 &   & return 0;\\
 & }
 </tex>
 
 問1.例1の n, p について
 
 1. p[1] の値を示せ.
 
 2. &n[1]-&n[0] の値を示せ.
 
 
 例1で実在する変数は n[0], n[1], n[2], p のみですが,「p=n;」によって
 n[i] の代わりに p[i] を使うことができます.一般に
 
 <tex>
   p[i]==*(p+i), \&p[i]==p+i
 </tex>
 
 したがって p==\&p[0], *p==p[0] であり,「p=n+1;」とすると
 したがって p==&p[0], *p==p[0] であり,「p=n+1;」とすると
 
 <tex>
   p[-1]==n[0], p[0]==n[1], p[1]==n[2]
 </tex>
 
 となります.Cで「&p[i]==p+i」と定めたのは「p+=sizeof(int);」の代わりに
 「p++;」を使いたいためであると思われます.『アドレス+整数』と
 『アドレス−アドレス』は次元(?)が違うので &n[1]-&n[0]==sizeof(int) と
 定めることもできますが [*]_ ,&n[1]!=&n[0]+(&n[1]-&n[0]) となるので,Cの
 言語仕様はそうなっていません.実際
 
 <tex>
 & \#include <stdio.h>\\
 & int main(void)\\
 & {\\
 &   & int n[3], k0=\&n[0], k1=\&n[1];\\
 &   & printf("%d, %d\n", k1-k0, \&n[1]-\&n[0]);\\
 &   & return 0;\\
 & }
 </tex>
 #include <stdio.h>\\
 int main(void)\\
 {\\
   int n[3], k0=\&n[0], k1=\&n[1];\\
   printf("%d, %d\n", k1-k0, \&n[1]-\&n[0]);\\
   return 0;\\
 }
 
 を実行すると,k1-k0==sizeof(int), &n[1]-&n[0]==1,2*(&n[1]-&n[0]==2 と
 なります.「k0=&n[0];」は警告が出るかもしれませんが,無意味な代入では
 ないのでエラーにはなりません.
 
 .. [*] Cの表現における &n[1]==n+1 && &n[1][2]!=(n+1)+2 等の不自然な式が
        なくなります.どう定めても複雑な式には歪が伴います.
 
 
 
 2次元配列とポインタの配列
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 プログラム例を示す前に
 
 <tex>
   int n[2][2], *p[2], (*q)[][2];
 </tex>
 
 で宣言される n, p, q について説明します.Cの記法ではありませんが
 
 <tex>
  「int       & n[2][2];」&「int     & *p[2];」&「int       & (*q)[][2];」\\
  『int[2]    & n[2];   』&『int*    & p[2]; 』&『int[2][]  & *q;       』\\
  『int[2][2] & n;      』&『int*[2] & p;    』&『int[2][]* & q;        』\\
 </tex>
 
 と書き換えることにより,n は整数の2次元配列,p は整数へのポインタの
 1次元配列,q は整数の2次元配列へのポインタであることが分かりやすく
 なります.なお,「int m[2][3][4];」と宣言されているとき,
 
 <tex>
   \&m[i][j][k]-\&m[0][0][0]==4*(3*i+j)+k
 </tex>
   &m[i][j][k]-&m[0][0][0]==4*(3*i+j)+k
 
 であることは
 
 <tex>
 & for(i=0; i<2; i++)for(j=0; j<3; j++)for(k=0; k<4; k++){
 &   & printf("%d,", \&m[i][j][k]-\&m[0][0][0]);
 & }
 </tex>
 
 を実行することで確認できます.また &m[i][j][k] に対して
 
 <tex>
 m[i][j]+k==\&m[i][j][k], m[i]==m[i][0], m==m[0]
 </tex>
   m[i][j]+k==&m[i][j][k], m[i]==m[i][0], m==m[0]
 
 と定められています.ただし,k が 0 でないとき m[i][0] に m[i] を代入
 できません.m[0] と m についても同様です.
 
 
 例2.次のプログラムの出力は「5, 7」.
 
 <tex>
 & \#include <stdio.h>\\
 & int main(void)\\
 & {\\
 &   & int n[2][2]={{4, 5}, {6, 7}}, *p[2], (*q)[][2];\\
 &   & q=p[1]=&n[0][1];\\
 &   & printf("%d, %d\n", p[1][0], (*q)[1][0]);\\
 &   & return 0;\\
 & }
 </tex>
 
 問2.例2の n, p, q について
 
 1. ***q の値を示せ.
 
 2.「n[1]=p[1];」がエラーとなる理由を述べよ.
 
 
 以下では簡単のため「A==B && B==C && C==D」を
 
 <tex>
 『 A == B == C == D 』
 </tex>
 
 のように略記します.例2のプログラムでは p[1]==&n[0][1] ですから,
 
 <tex>
 『 p[1][0] == *p[1] == *(\&n[0][1]) == n[0][1] == 5 』
 </tex>
 
 です.q の方は初期値 &n[0][1] を用いて
 
 <tex>
   \&(*q)[0][0]==*(\&n[0][1]), (*q)[1][0]==*(\&n[0][1]+2*1+0)
 </tex>
   &(*q)[0][0]==*(&n[0][1]), (*q)[1][0]==*(&n[0][1]+2*1+0)
 
 と解釈され,
 
 <tex>
   **(*q) == n[0][1], (*q)[1][0] == n[1][1]
 </tex>
 
 となります.『 q == *q == **q == &n[0][1] 』であることは分かり難いの
 ですが,「(*q)[i][j]==q[0][i][j]」であり「int m[2][3][4];」のときの
 
 <tex>
 『 m == *m == **m == \&m[0][0][0], ***m == m[0][0][0] 』
 </tex>
 
 と類似の関係になっています.なお n[1] はアドレスであって(ポインタ
 とは異なり)メモリ上に領域が与えられていないので,値を代入することは
 できません.
 
 <tex>
 & n   &『n[0][0]=4;』&『n[0][1]=5;』&『n[1][0]=6;』&『n[1][1]=7;』\\
 & p   &『p[0]      』&『p[1]=(※);』\\
 & \&q &『q=p[1];   』\\
 &     & (※)==\&n[0][1], (*q)[0][0]==*p[1], (*q)[0][1]==*(p[1]+1)\\
 </tex>
 
 
 文字列とポインタ
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 Cには string 型がないため,文字列は先頭をアドレス,末尾を制御文字'\0'
 で表わします.例えば,宣言「char s[]="ABC";」は
 
 <tex>
   char s[4]={'A', 'B', 'C', '\0'};
 </tex>
 
 を略記したもので,先頭のアドレスが s で s[3]=='\0' になっています.
 「char *p="ABC";」という宣言は少し分かりにくいのですが,適当な場所に 
 "ABC" を格納する配列をつくり,その先頭アドレスを p に設定します.
 文法的には正しくありませんが『p==&"ABC", *p=='A'』という感じです.
 
 
 例3.次のプログラムの出力は「B, DE」.
 
 <tex>
 & \#include <stdio.h>\\
 & int main(void)\\
 & {\\
 &   & char s[2][8]={"ABC", "DE"}, (*p)[8]=s;\\
 &   & printf("%c, %s\n", p[0][1], p[1]);\\
 &   & return 0;\\
 & }\\
 </tex>
 
 問3.例3の s, p について
 
 1. (*p)[2] の値を示せ.
 
 2. *(*p+1) の値を示せ.
 
 
 「char (*p)[8]=s;」で p に設定されるのは s です.p は『char[8]』
 へのポインタなので p[i]==s[i], p[i][j]==s[i][j] が成立し,
 p[0][1]=='B',p[1]==s[1] です.また
 
 <tex>
   (*p)[2]==p[0][2], *p+1==p[0]+1, *(p[0]+1)==p[0][1]
 </tex>
 
 ですから,(*p)[2]=='C', *(*p+1)=='B' です.「char (*q)[4]=s;」と
 宣言された q では q[1][0]==s[0][4], q[2][0]==s[1][0] です.
 
 
 
 
 仮引数での宣言
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 Cでは(値呼びしかできないため)関数の引数にポインタが多用されます.
 ポインタ p が配列と関係なければ単に *p と表わせばいいので,ここでは
 直接あるいは間接に配列を指すポインタについて考えます.実引数としたい
 配列と型を合わせたいときは
 
 <tex>
   & int n1[4];        & -->  (int p1[])        & または (int *p1)\\
   & int n2[4][5];     & -->  (int p2[][5])     &
   & int n3[4][5][6];  & -->  (int p3[][5][6])  &
   & int *m1[4];       & -->  (int *q1[])       & または (int **q1)
   & int *m2[4][5];    & -->  (int *q2[][5])    &
 </tex>
 
 のように宣言します.p1, p2, p3, q1, q2 がすべて配列ではなくポインタ
 であることは,関数内で sizeof(p1) 等を printf() で表示することによって
 確認できます.
 
 
 例4.次のプログラムの出力は「B, D」.
 
 <tex>
 & \#include <stdio.h>\\
 & void check(char p2[][8], char *q1[])\\
 & {\\
 &   & printf("%c, %c\n", p2[0][1], *q1[1]);\\
 & }\\
 & \\
 & int main(void)\\
 & {\\
 &   & char s[2][8]={"ABC", "DE"}, *r[2];\\
 &   & r[0]=s[0]; r[1]=s[1]; check(s, r);\\
 &   & return 0;\\
 & }\\
 </tex>
 
 問4.例4の p, q について
 
 1. **q1 の値を示せ.
 
 2. q1[1][2] の値を示せ.
 
 
 仮引数の宣言の [] を [N](N は適当な定数)で置換した大域変数や局所
 変数の宣言を考えると,配列要素のアドレスの計算に N は不要であることが
 分かります.「char s[2][8];」のとき &s[i][j]-s[0][0]==8*i+j ですが,
 仮引数の宣言「int p2[][8]」でも同様に
 
 <tex>
   \&p2[i][j]-\&p2[0][0]==8*i+j
 </tex>
 
 です.したがって p2[0][1]==s[0][1] となります.また「char *r[2];」の 
 r[i] は実在するポインタ,「char *q1[]」の q1[i] は計算したアドレス
 ですが,
 
 <tex>
   q1[i]==*(q1+i), q[i][j]==*(q1[i]+j)
 </tex>
 
 なので,q1==r であれば q1[i][j]==r[i][j] が成立します.このとき 
 *q1[1]==r[1][0], **q1==r[0][0], q1[1][2]='\0' です.宣言として [#t9cb0413]
 「char *q1[]」の代わりに「char **q1」を用いても同じですが,局所変数に
 対しては「char **q;」を「char *q[];」のように宣言することはできません.
 
 なお,必ずしも実引数と仮引数の型を合わせるのがよいとは限りません.
 一例を次に示します.
 
 <tex>
 & \#include <stdio.h>\\
 & extern int sum, n[10][10][10];\\
 & void add(int k, int *p)\\
 & {\\
 &   & while(k>0){sum+=*p; p++; k--;}\\
 & }\\
 & \\
 & int main(void)\\
 & {\\
 &   & sum=0; add(1000, n); printf("sum=%d\n", sum);\\
 &   & return 0;\\
 & }\\
 </tex>
 
 
 
 構造体メンバの参照
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 構造体のメンバ x.m は p==&x であるポインタを用いて p->m で参照でき
 ます.このことに詳しくない人は,まず構造体の基礎を学んでください.
 
 
 例5.次のプログラムの出力は「ADC」.
 
 <tex>
 & typedef struct{char s[8], *p;} str2;\\
 & int main(void)\\
 & {\\
 &   & str2 x[2]={{"ABC"}, {"DE"}}, *q=x+1;\\
 &   & x[0].p=x[1].s; x[1].p=x[0].s; x[0].s[1]=q->s[0];\\
 &   & printf("x[0].s=%s\n", x[0].s);\\
 &   & return 0;\\
 & }\\
 </tex>
 
 問5.例5の x, p について
 
 1. q->s[1] の値を示せ.
 
 2. q->p[1] の値を示せ.
 
 
 「x[1].p=x[0].s;」実行後に x[0].s[i] を書き換えても x[1].p[i] も
 変わるので,q->p[1]=='D' です.
 
 
 
 補遺
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 ポインタの性質を理解するときの留意点は,ポインタが参照するデータ
 の構造はポインタの宣言のみで決まるということです.例えば
 
   int n[2][3], *p=&n[0][1];
 
 と宣言されていれば,『(int*) p=&n[0][1];』なので
 
   p[-1]==n[0][0], *p==n[0][1], p[1]==n[0][2]
 
 となります.つまり p から見れば p[i] は n に関係なく p+i にある
 データ *(p+i) に過ぎないのです.細かい補足は以下に列挙します.
 
 1. 「int n[][2]={4, 5, 6};」は「int n[2][2]={{4, 5}, {6, 0}};」
   として扱われます.「int p[];」や「int p[][2];」をポインタの宣言に
   使えないのはのは,このことが関係しているものと思われます.配列要素を
   参照するときは「(*p)[i][j]」より「p[0][i][j]」の方が分かりやすい
   でしょう.参照先によっては「p[k][i][j]」も使えます.
 
 2. 「char *p;」は「char* p;」と同じですが,「char* p, q;」は
   「char *p, q;」として処理されます.「char* p;」「char* q;」を
   まとめるには「typedef char *cptr; cptr p, q;」のようにします.
 
 3. Cのバイブル[1]に複雑な宣言の例として
 
   <tex>
     char (*(*x[3])())[5];
   </tex>
 
 が挙げられていますが,これを
   が挙げられていますが,これを
 
 
   <tex>
    「 char               & (*(*x[3])())[5]; 」\\
    『 char[5]            & *(*x[3])();      』\\
    『 char[5]*           & (*x[3])();       』\\
    『 ()(char[5]*)       & *x[3];           』\\
    『 (()(char[5]*))*    & x[3];            』\\
    『 (()(char[5]*))*[3] & x;               』\\
   </tex>
 
   と変形すると,x が「array [3] of pointer to function returning 
   pointer to array [5] of char」であることが少し分かりやすくなるかも
   知れません(すぐれた教育用言語である Pascal での表現に近づきます).
 
 4. 自分でプログラムを書くときは,なるべく素直な表現を使いましょう.
   scanf() で 変数 x[i][j] にデータを入力するとき,&x[i][j] の方が 
   x[i]+j より素直です.ポインタの更新も独立した文で行いましょう.
   言語仕様からいえば「printf("%d, %d\n", i++, n[i]);」の結果は処理系に
   依存します.
 
 
 
 あとがき
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 教科書・参考書を謙虚に学ぶことが基本ですが,疑問点を自力で解決しよう
 とする姿勢も重要です.このことを奨励するために,比較的取り組みやすい
 例を示しました.
 
 
 
 参考文献
 
 [1] B. W. カーニハン,D. M. リッチー著,石田晴久訳,プログラミング言語C
 第2版,共立出版,1989,ISBN4-320-02483-4.
 [2] 手抜き用チェックプログラム, 
 
 [2] 手抜き用チェックプログラム,/* text/plain はアップローダ不可 */ 
 
 [3](ほとんど文献調査を行っていません.引用すべき資料をご教示頂ければ
 幸いです.)
 
 @@author: pulsar@@
 @@accept: 執筆中@@
 @@category: プログラミング@@
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