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実格子と逆格子の対応
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ここでは物性物理をされている方の大半が悩むものであろう実格子(直接格子)と
逆格子の対応について考えていきます。単刀直入に言って、
この二つは点と面の対応(二次元なら点と線の対応)だったのです。
点と点の対応を探しても分からないはずです。
では、見ていきましょう。
実格子とは
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実格子 $\bm{R}$ は結晶の基本並進ベクトル $\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3$ と整数 $p,q,r$ に対して、
<tex>
\bm{R} = p \bm{a}_1 + q \bm{a}_2 + r \bm{a}_3 \tag{##}
</tex>
で定義されます。実際の空間中に点が規則正しく並んでいるイメージです。
逆格子とは
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今度は逆格子です。どう定義されるかと言うと、
式 $(1)$ で定義される全ての実格子ベクトルに対して以下が成立するベクトルの事です。
<tex>
e^{i \bm{K} \cdot \bm{R}) = 1 \tag{##}
</tex>
これを求めるには、基本並進ベクトルを用いて以下の基本逆格子ベクトル $\bm{b}_i (i=1,2,3)$ を考えます。
<tex>
\bm{b}_i = 2 \pi \epsilon_{ijk} \dfrac{\bm{a}_j \times \bm{a}_k}{\bm{a}_i \cdot (\bm{a}_j \times \bm{a}_k)} \tag{##}
</tex>
ここで、 $\epsilon_{ijk}$ は完全反対称テンソル(エディントンのイプシロン)です。
すると、クロネッカーのデルタ $\delta_{ij}$ を用いて、
<tex>
\bm{a}_i \cdot \bm{b}_j = 2 \pi \delta_{ij} \tag{##}
</tex>
という関係が成立します。
すると、逆格子ベクトルは、整数 $l,m,n$ を用いて以下の様に求められます。
<tex>
\bm{K} = l \bm{b}_1 +m \bm{b}_2 +n \bm{b}_3 \tag{##}
</tex>
どうやら、実格子ベクトルと逆格子ベクトルの関係は、
実格子の点一つに対して、逆格子の平面群(自由度2)が決まり、
実格子の点二つに対して、逆格子の直線群(自由度1)が決まり、
実格子の(同一直線上に無い)点三つに対して、逆格子の点群(自由度0)が決まるようです。
また、逆格子の逆格子は実格子ですから、
逆格子の点一つに対して、実格子の平面群が決まり、
逆格子の点二つに対して、実格子の直線群が決まり、
逆格子の(同一直線上に無い)点三つに対して、実格子の点群が決まると思います。
しかし、だとすると、これは矛盾です。
対応するものは点群と平面群、もしくは、点と平面の様に、
対応する空間が入れ替わっても、命題は変わらないはずだからです。
この辺は、まだ議論の余地がありそうですね。
実格子と逆格子の対応の具体例
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ここから、簡単の為二次元に話を制限しましょう。
これは式 $(3)$ に於いて、$\bm{a}_1,\bm{a}_2$ をxy平面内の
ベクトル、 $\bm{a}_3$ を $z$ 方向を向いたベクトル $\bm{a}_3 = c_0(0,0,1)$ として、
考えれば良いです。ここで、実格子ベクトルの次元(m:メートル)を考慮して、
格子定数 $c_0$ を設定してあります。
ここでは具体的な逆格子空間中の点を一つ選んで、実格子のどの直線に当たるかを考えます。
まず、六方格子を考え実格子空間を以下の様に定めます。
<tex>
\bm{a}_1 &= a_0 \begin{pmatrix} \dfrac{\sqrt{3}}{2} \\ -\dfrac{1}{2} \\ 0 \end{pmatrix} \\
\bm{a}_2 &= a_0 \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}
\tag{##}
</tex>
とします。
.. image :: chromel-directAndReciprocalLattice-01.png
すると、基本逆格子ベクトルは以下の様になります。
<tex>
\bm{b}_1 &= \dfrac{2 \pi}{a_0} \begin{pmatrix} \dfrac{2}{\sqrt{3}} \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix} \\
\bm{b}_2 &= \dfrac{2 \pi}{a_0} \begin{pmatrix} \dfrac{1}{\sqrt{3}} \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}
\tag{##}
</tex>
.. image :: chromel-directAndReciprocalLattice-02.png
対応1
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ここで、点 $\bm{b}_1$ に対応する面を見てみましょう。
式 $(2)$ の再掲をして、
<tex>
e^{i \bm{K} \cdot \bm{R}) = 1 \tag{##}
</tex>
これの意味するところは、整数 $\mu$ として、
<tex>
\bm{K} \cdot \bm{R} = 2 \pi \mu \tag{##}
</tex>
となります。式 $(4)$ からこの左辺は簡単に求まり、
<tex>
\bm{K} \cdot \bm{R} =
&= ( l \bm{b}_1 + m \bm{b}_2 ) \cdot (p \bm{a}_1 + q \bm{a}_2) \\
&= 2 \pi (lp+mq) = 2 \pi \mu
\tag{##}
</tex>
となります。今、 $\bm{b}_1$ つまり $l=1,m=0$ が対応する実空間の部分を求めたいのです。
それは、
<tex>
2 \pi (lp+mq) &= 2\pi \mu \\
p &= \mu
\tag{##}
</tex>
ここで、 $\mu$ は任意の整数でしたから、これは直線群 $\mu \bm{a}_1 + q \bm{a}_2$ です。
ここで、 $q$ は任意の実数です。図にすると以下の様になります。
.. image :: chromel-directAndReciprocalLattice-03.png
対応2
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また、今度はその一つ隣の $2 \bm{b}_1$ つまり $l=2,m=0$ を考えましょう。
<tex>
\bm{K} \cdot \bm{R} =
2 \pi (lp+mq) &= 2 \pi \mu \\
2p &= \mu \\
p &= \mu/2
\tag{##}
</tex>
となるので、今度はさっきの直線群の間隔が半分になったものです。
.. image :: chromel-directAndReciprocalLattice-04.png
対応3
----------------------
今度は $\bm{b}_1 + \bm{b}_2(l=m=1)$ の対応する直線群を求めましょう。
<tex>
\bm{K} \cdot \bm{R} =
2 \pi (lp+mq) &= 2 \pi \mu \\
p+q &= \mu \\
q &= \mu -p
\tag{##}
</tex>
これは直線群
<tex>
&\ p \bm{a}_1 + (\mu-p) \bm{a}_2 \\
&= \mu \bm{a}_2 + p (\bm{a}_1 - \bm{a}_2)
</tex>
です。これは $p$ が任意の実数なので、 $\mu \bm{a}_2$ を
通り $\bm{a}_1-\bm{a}_2$ に平行な直線群です。
.. image :: chromel-directAndReciprocalLattice-05.png
対応4(逆格子空間の逆格子点以外の点)
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ここまでは逆格子空間の逆格子点と実空間の対応を見てきました。
更には、逆格子空間の逆格子点以外の点も対応がある事にお気づきでしょうか?
例えば、 $1/2(\bm{b}_1+\bm{b}_2) \ \ (l=m=1/2)$ の時は、
<tex>
\bm{K} \cdot \bm{R} =
2 \pi (lp+mq) &= 2 \pi \mu \\
1/2(p+q) &= \mu \\
q &= 2 \mu -p
\tag{##}
</tex>
もう図は書きませんが、これは $2 \mu \bm{a}_2$ を
通り $\bm{a}_1-\bm{a}_2$ に平行な直線群です。
間隔が対応3の時の倍の実空間の直線群となりますね。
それでは今日はこの辺で、お疲れ様でした。
@@author:クロメル@@
@@accept:2017-12-10@@
@@category:固体物理学@@
@@id:directAndReciprocalLattice@@