物理のかぎしっぽ 記事ソース/ベクトルポテンシャルは接続であるとはどういうことか のバックアップ(No.30)

記事ソース/ベクトルポテンシャルは接続であるとはどういうことか

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記事ソースの内容

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ベクトルポテンシャルは接続であるとはどういうことか
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この記事では、電磁気学のベクトルポテンシャル $A_i(x)$ は、
なぜ接続(ゲージ場)と呼ばれるのか、それを説明します。
この記事はちょっと結論に自信が無いので、
正誤を判断しながら読んでいただければと思います。
(分からない点は明示しました)


接続とは
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「接続」とは、物理でいう「ゲージ場」の数学での名称です。
接続は多様体上の平行移動に関係します。
そこでは、基底が空間の曲がりの為一定ではなく、変化します。
接続の定義を確認しましょう。

<tex>
\partial_i e_j = \Gamma^k_{ij} e_k \tag{##}
</tex>

なんと、接続 $ \Gamma^k_{ij} $ には添え字が三つもあるではないですか。
一方で、ベクトルポテンシャル $A_i$ に添え字は一つです。
よって、これらを比較するには少し工夫が必要です。

ベクトルポテンシャルの正体
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ここでヒントがあります。
ゲージ場としてベクトルポテンシャルは $U(1)$ ゲージと呼ばれます。
基底を $e^{i \theta}$ とすればよいかもしれない、と言う考えが浮かびます。

試しに、下のように位相因子 $\theta(x)$ を定義してみます。

<tex>
\partial_i e^{i \theta(x)} = \dfrac{iq}{\hbar} A_i(x) e^{i \theta(x)}  \tag{##}
</tex>

ただし、 $q(>0)$ は粒子の電荷です。
また、 $i \theta $ の $i$ は虚数単位です。
すると、 $\theta$ を $A$ で表すことができます。

<tex>
\theta(x) = \dfrac{iq}{\hbar}\int^{x} A_j dx^j \equiv i \Gamma \tag{##}
</tex>

上で $\Gamma$ を定義しました。

波動関数の平行移動をしてみる
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波動関数 $\psi(x)$ の有限距離の平行移動を試みます。 $x_0 \to x$ だけ移動するとします。

平行移動の作用素を $M$ とすると、微小距離の平行移動 $1+ i \Gamma dx = 1 + \dfrac{iq}{\hbar} A_j(x) dx^j$ を用いて

<tex>
M 
&= \lim_{dx^j \to 0} (1 + \dfrac{iq}{\hbar} A_j(x) dx^j)^{x^j/dx^j} \\
&= \lim_{dx \to 0} (1 + i \Gamma(x) dx)^{x/dx} \\
&= \lim_{dx \to 0} \prod_{k=0}^{n} \left( 1 + i \Gamma \left( x_0 + (x-x_0)\dfrac{k}{n} \right) \right) \dfrac{1}{n} \tag{##}
</tex>

ここで $x_0$ に相当する点を $k=0$ 、 $x$ に相当する点を $k=n$ とし、 $dx = 1/n$ としました。
すると、対数を取って、

<tex>
\ln M &= \sum_{k=0}^n \ln \left( 1 + i \Gamma \left( x_0 + (x-x_0)\dfrac{k}{n} \right) \right) \dfrac{1}{n} \\
&\simeq \sum_{k=0}^n i \Gamma \left( x_0 + (x-x_0)\dfrac{k}{n} \right)  \dfrac{1}{n} \\
&\simeq i \int_{x_0}^x \Gamma(x) dx \\
&= \dfrac{iq}{\hbar} \int_{x_0}^{x} A_j(x) dx^j \tag{##}
</tex>

ここで、 $\ln(1+z) \simeq z $ と言う対数関数の解析接続と区分求積法を用いました。
よって、

<tex>
M = \exp \left( \dfrac{iq}{\hbar} \int_{x_0}^{x} A_j(x) dx^j \right)  \tag{##}
</tex>

となります。つまり、平行移動すると、

<tex>
\psi(x) = M \psi(x_0) = \exp \left( \dfrac{iq}{\hbar} \int_{x_0}^{x} A_j(x) dx^j \right) \psi(x_0) \tag{##}
</tex>

ゲージ理論より
====================

ここで $U(1)$ ゲージ変換を思い出しましょう。それは

<tex>
\psi^\prime(x) &= \exp(i \theta) \psi(x) \tag{##} \\ 
A_i^\prime(x) &= A_i(x) + \dfrac{\hbar}{q} \dfrac{\partial \theta}{\partial x^i} = A_i(x) + \dfrac{\hbar}{q}\dfrac{q}{\hbar}(A_i^\prime(x)-A_i(x))\tag{##}
</tex>

という局所位相変換で方程式が変わらないというものでした。
式 $(7)$ では点 $x_0$ では、左辺と右辺は同じになります。
また、 $x+dx$ で式 $(7)$ の平行移動を象徴的に表すと、 $\psi^\prime(x) = \psi(x+dx)$ 、式 $(8)$ の移動前の点で $\theta(x)=0$ とすれば、
式 $(7)$ と式 $(8)$ はつじつまが合います。 $\theta = \dfrac{q}{\hbar} \int_{x_0}^{x} A_j(x) dx^j$ となります。
また、式 $(9)$ は両端点を微分の変数として考えてあり、これももっともな結果です。

よって、ベクトルポテンシャル $A_i(x)$ は位置の移動と共に、
ゲージ $e^{i \theta}$ の変化を基底にした基底の曲がり具合を反映していることが分かります。

共変微分
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平行移動ができたので、 $U(1)$ ゲージでの共変微分についても触れておきましょう。
点 $x_0$ での波動関数 $\psi(x_0)$ を平行移動し $x_0+dx$ に持ってきたものを $\psi_\parallel(x_0+dx)$ とすると、
それには $1+\dfrac{iq}{\hbar}A_i$ を掛ければよいので、

<tex>
\psi_\parallel(x_0+dx) = (1+\dfrac{iq}{\hbar}A_j dx^j) \psi(x_0) \tag{##}
</tex>

この式ではアインシュタインの縮約記法を使っています。添え字は全ての $j$ にわたって足したものです。
すると、共変微分 $D_i$ は $dx^i$ のみを変化させたときの量であることに注意して、

<tex>
D_i \psi(x) &= \lim_{dx^i \to 0} \dfrac{\psi(x+dx)-\psi_\parallel(x+dx)}{dx^i} \\
&= \lim_{dx^i \to 0} \dfrac{\psi(x+dx)-\psi(x)}{dx^i} - \dfrac{iq}{\hbar}A_i \psi(x) \\
&= \left( \partial_i - \dfrac{iq}{\hbar}A_i \right) \psi(x) \tag{##}
</tex>

相対論ではスカラー関数の共変微分はただの偏微分のはずなので、
今回の共変微分は、スカラーの波動関数の $U(1)$ ゲージ理論の意味での共変微分として区別しなければならないものかと思います。(最初に自信が無いと言ったのはここの事です。)
もし何か間違えていたり、お読みになって分かったことがあったら、yshimada@hotmail.comへメールで教えてくださると嬉しいです。
今日はここまで、お疲れさまでした!

@@reference: 野村健太郎,トポロジカル絶縁体・超伝導体,丸善出版,2016,第2章,4621301039@@
@@reference: ファインマン他著;砂川重信訳,ファインマン物理学V,岩波書店,1979,p441-p.441,4000077155@@

@@author:クロメル@@
@@accept:2019-08-18@@
@@category:量子力学@@
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