物理のかぎしっぽ FrontPage のバックアップソース(No.36)
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国際単位系の分かり難さについて
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国際単位系(Le Système International d'Unités, 以下SI)では
$\unit{J} = \unit{N \cdot m}$ と定めていますが,モーメントには $\unit{J}$ を使いません.
また, $\unit{Hz} = \unit{1/s} = \unit{Bq}$ で,振動数と放射能の組み立て単位が等しく
なります.このような分かり難さを減らすための工夫を考えてみましょう.「モーメントの単位は
$\unit{J/rad}$ でもよい」等の根拠について説明します.




仕事とモーメント
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仕事を力と変位の内積,モーメントを力と変位の外積で定義すると,組立単位が等しくなることは
避けられません.そこで,力と外積をとるのは変位でなく新しい物理量「回転半径」であると考え,
支点から力の作用点までの距離が $1\unit{m}$ であるときの回転半径を $1\unit{rm}$ (radius of 
rotation in meter) とします.また,これに関連して $\unit{rad}$ の定義を

<tex>
\unit{rad} = \frac{\unit{m}}{\unit{rm}}
</tex>

に変更します.SIの $\unit{m}$ の一部を $\unit{rm}$ で置換することによって変わる点,変わら
ない点を以下に列挙します.

1. モーメントの単位は $\unit{N \cdot rm} = \unit{N \cdot m / rad} = \unit{J / rad}$ となり,
仕事の単位 $\unit{N \cdot m} = \unit{J}$ と区別できる.
2. 角速度の単位は $\unit{rad / s} = \unit{m / rm \cdot s}$ に変わる.
3. 角運動量の単位を $\unit{kg \cdot rm \cdot rad / s}$ と考えると,
$\unit{rm \cdot rad} = \unit{m}$ なのでSIと変わらない.
4. 立体角は回転半径が等しい点の集合(球面)の部分集合の面積なので,単位を
$\unit{sr} = \frac{\unit{m^2}}{\unit{rm^2}}$ に変更する.
5. 円や球に関連する量でも(角度と無関係の)長さ,面積,体積には $\unit{rm}$ を使わない.


この結果,モーメント $2\unit{J / rad}$ の偶力で $3\unit{rad}$ 回転させるのに要する仕事は 

<tex>
(2\unit{J/rad}) \cdot (3\unit{rad}) = 6\unit{J}
</tex>

と計算できます.また,回転半径 $2\unit{rm}$ の円周上を等速運動する質点が $3\unit{rad}$ 
回転したときの移動距離は $(2\unit{rm}) \cdot (3\unit{rad}) = 6\unit{m}$ となります.
一応つじつまが合っていますが, $\unit{rad}$ を無次元でないとすると

<tex>
y = A \sin \left( \omega t + \frac{\pi}{3}\unit{rad} \right)
</tex>

のように,実用上数式の表示が非常に煩わしくなります(無次元であれば単位不要). 
$\unit{rm}$ を用いると上記のようになるということを承知の上で $\unit{rm}= \unit{m}$ として 
SI に従うのが現実的でしょう. $\unit{rad}$ は無次元ですから,回転半径の単位を $\unit{rad}$ ,
モーメントの単位を $\unit{J/rad}$ と表しても差し支えはありません.




回数と個数
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$\unit{Hz} = \unit{1/s} = \unit{Bq}$ を当然と思うか否かは人によって異なります.当然と思う
人は組立単位とはその程度のものだということを理解している人です.力と変位の内積も外積も大きさは
力の大きさ,変位の大きさに比例し組立単位が等しくなりますが,式が変われば物理的性質が異なっても
当然でしょう(前節では苦し紛れに新しい単位 $\unit{rm}$ を導入しましたが, $\unit{rm} = \unit{m}$ 
と考える方が自然です).要するにSIの基本単位でなくても,固有の名称が定義されている単位は基本単位
と同等に扱う(例えば $\unit{V}$ を基本単位で表すのではなく $\unit{V} = \unit{J / C}$ と表す)
ことが望まれます.

$\unit{Hz} = \unit{Bq}$ を当然と認めても,なお議論の余地は存在します.それは回数や個数に対する
扱いです.SI系では,これらはすべて無次元としていますが,純粋な無次元の量は「倍」が適当な場合だけで,
「回」や「個」は無次元と考えない方がいいでしょう.物理の分野では「値が自然数である量はの単位は
すべて無次元」として扱われていますが,一般には「人/所帯」,「字/行」,「クロックサイクル/命令」
のように「SIの無次元/SIの無次元」でさえ「倍」とは言えない例をいくらでも示すことができます. 
$\unit{Hz}$ が制定される前は振動数を「サイクル/秒」で表していました.このように表すと周期の単位は
「秒/サイクル」となり,「振動する回数 × 周期 = 所要時間」の計算が分かりやすくなります.せめて,
値が自然数である無次元の量を一括した単位 $\unit{c}$(count)を採用して$1\unit{c}$ 当たりの量である
ことを明示してほしいと思いませんか [*]_ .$\unit{Hz}$,$\unit{Bq}$ のいずれも$\unit{c/s}$ に縮退
しますが,$\unit{1/s}$ よりは親切です.

.. [*] $\unit{kg/m}$ と書けば $1\unit{m}$ 当たりの質量(線密度)であることが分かりますが,
       $1\unit{kg/1} = \unit{kg}$ では1個当たりの質量であることを明示できません.




単位系の階層化
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SIで基本単位系の「精選」に拘るのは「より少ない基本単位でより多くの物理量を区別したい」ためです.
しかし,基本単位のべき乗の積で表された組立単位による物理量の次元とは何でしょうか.少なくとも自由度
とは無関係であることは「坪」が $\unit{m^2}$ と,「ガロン」が $\unit{m^3}$ と同次元である(比をとると
無次元になる)ことから明らかです.「倍」で表現できる量は無次元であること,比が無次元になる単位は
同次元であることは物理量の属性の説明に有効ですが,基本単位のべき乗の積で物理量の次元を表すことの
意義がよく分かりません.

物理学の多くの分野では基本単位の $\unit{cd}$ や $\unit{mol}$ は不要です.一方,量子コンピューティング
の関連分野も対象とするには「ビット」が必要になると思われます.学際的な分野,新しい分野にも柔軟に対応
するには単一の単位系 SI の洗練より階層構造の単位系を目指す方が現実的ではないでしょうか.オブジェクト
指向言語のクラスのように単位系を階層構造にすれば,下位クラスの単位系の追加・変更は上位クラスの単位系
には影響いしないので,$\unit{mol}$ を基本単位として認めるか否か」等も大した問題ではなくなるでしょう.




あとがき
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SIに何の疑問も持たないのは問題ですが,本文の主張をそのまま納得するのはそれ以上に問題であるといえます.
他人の資料を参考にして自分の見解をもつことが大切です.



@@reference: hooktail.maxwell.jp/kagi/d2b89ba2b80f4f789e24020003801aa7.html,国際単位系@@
@@reference: hooktail.maxwell.jp/kagi/b458e75b1f00ad260af2a79e05f90974.html,組立単位@@

@@author: pulsar@@
@@accept: 執筆中@@
@@category: 力学@@
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