物理のかぎしっぽ 査読/導体・絶縁体・半導体(篠原著)/12

パウリの排他律

メッセージ

もう一つだけ質問させて下さい。

パウリの排他律が効いて準位の分裂が起こるとありますが、パウリの排他律は「一つの準位には一つの電子しか入れませんよ」というただの規則であって、何か物理的な力を生み出すものではないと僕は思っています。そのため準位の分裂は軌道の重なりから出てくるものでパウリの排他律の効果によるものではないと考えます。例えば、クロニッヒ・ペニーの問題を解いてバンドの形成を調べる時に、シュレディンガー方程式を解きますが、その時に粒子がフェルミオンであるかボソンかというような効果は入ってないと思います。

そこで質問なのですがパウリの排他律が効いて準位が分裂するというのは物理的に正しいのでしょうか?

返答

  • ご指摘ありがとうございます。いつも的をついた質問をなされてますね。本当に尊敬いたします。実は、この質問に対して私は明確に解答することができません。と言いますのも、このことに関しては、私が外から取り入れた情報をそのままうのみにしているだけで、自分で確認することが出来なかったからです。だから、私は「講義でこのように習った」としか言いようがありません。もちろん、「人が言っているから正しい」とか、「本に書いてあるから正しい」と言うべきでないことは分かっているのですが、学部3回生の今の私にはこのことを信じるほかありません。明確にお答えできなくて、本当に申し訳ないです。参考までに、私の大学の更家先生の講義ノートから引用いたします。『固体では原子が高密度に集まっている。→原子間で相互作用が生じる。:最外殻の電子軌道上で電子の波動関数が重なりを生じる。(内郭の電子は化学的、電気的性質にほとんど無関係)→パウリの排他律を満たすように準位がわずかずつ異なるエネルギーを持つように分裂して、準位が帯状に広がる。この中では事実上連続的に分布している。→これをエネルギー帯という。』 -- 篠原 2005-10-05 (水) 22:23:58
  • 今回の査読に当たって僕も勉強し直していたところ、僕の持っている本(半導体物性:小長井誠著)の中にも「パウリの排他律によって準位が分裂すると解釈してもよい」と書いてあり、疑問をもちました。僕としては上に書いた理由で違うと思っているのですが、もし僕の知らない、「電子がフェルミオンである」という効果がシュレディンガー方程式に入っていて、粒子をボソンとして解いたら準位の分裂は出てこないというなら、今のままで問題は無いのだと思います。今回は確信が無かったので質問という形にしました。もう少し調べて真相がわかるまで少々お待ちを…。固体物理や半導体物理は前提とする知識がとても多いので勉強が大変ですね…、時間がかかるとは思いますが地道にお互い頑張って行きましょう。良い教科書なんかあったらぜひ教えてください。 -- NOBU 2005-10-05 (水) 22:46:18
  • こんにちは。今日、学校で講義をされていた先生にこの質問をしてきました。結論から言うと、あまり分かりませんでした。その先生は、量子力学やボース粒子について、あまり詳しくは知らないので、ちゃんと答えることが出来ないが、問題を解くときに使う、(通常私が知っている)シュレーディンガーの方程式自体がフェルミ粒子であることを考慮して作られているのではないか?つまり、ボース粒子に関しての波動方程式は別にあるのではないか?とのことでした。このことに関して私は合っているか間違っているか、分からないのですが、このような可能性はありませんでしょうか?? -- 篠原 2005-10-06 (木) 19:08:55
  • クラインゴルドンの方程式とディラック方程式はそれぞれボソンとフェルミオンが満たす方程式だった気がするのですが、普通のシュレディンガー方程式にそのような粒子の効果が入っているか現在調査中です。 -- NOBU 2005-10-06 (木) 20:12:46
  • 私には正確な理論議論はできないのですが、直感的にとらえるなら、一つ量子状態を二つ以上の電子がとり得ないというパウリの排他律から、二つ以上の電子が存在する場合には、エネルギー、量子状態が異なる二つの軌道へと分裂し、縮退した状態との釣り合いをとるととらえることができるのではないでしょうか。 -- nooon 2005-10-06 (木) 21:11:58
  • 例えば、水素分子(ただし陽イオンで電子は一つ)の分子軌道を求めても順位は二つに分裂しますし、クローニッヒ・ペニーの問題でも解くのは一電子のシュレディンガー方程式です。なので二つ以上電子が存在する場合に分裂するというわけではありません。 -- NOBU 2005-10-06 (木) 21:25:51
  • 確かにご指摘の通り一電子系でも軌道は分裂しますね。基本的なところを無視した乱暴な解釈でした。一電子系においても分裂が起こるのであれば、パウリの原理は軌道の分裂には本質的には関与していないということになりますね。あと、水素分子イオンの系での軌道の分裂は軌道の重なりによるものというよりも、原子核間の電子密度の増大と各原子の軌道の収縮による寄与が主だったような気がします。 -- nooon 2005-10-06 (木) 22:58:55
  • 準位の分裂に何が本質的に効いていると解釈したら良いのか、現時点で僕はわかりません。ただ近づいたポテンシャル(井戸型やクーロン型)のシュレディンガー方程式を解くと出てくるので、そのことによる何かだと考えています。 -- NOBU 2005-10-07 (金) 13:57:32
  • noooonさん、水素分子は陽イオンとはいえ、二つの波動関数の線形結合を考えて問題を解くので、一電子系とも言いがたいようです。勘違いしてました。ただ井戸型ポテンシャルを二つ並べてシュレディンガー方程式を解くと、準位が分裂するようなので、やはりフェルミオンというのはあまり関係ないみたいです。 -- NOBU 2005-10-07 (金) 18:40:11
  • 篠原さん、どうやらただのシュレディンガー方程式はフェルミオンかボソンかということを考慮していないようです。なので、この記事ではまず二つの原子が近づくと準位が二つ分裂し、N個の原子が集まった固体になるとN個に分裂する。という事実だけを説明し、その原理に関しては言及を避けるのはどうでしょうか。 -- NOBU 2005-10-07 (金) 18:42:14
  • 自分の中で「これが正しい」と思ってても、よく考えると根拠がないもので、それが間違っていると言うことがあるんですね・・・。NOBUさんの指摘で、そのような先入観を持って解釈していたことに気づきました。本当に感謝です!!NOBUさん、ありがとうございます。私も、シュレーディンガー方程式がフェルミ粒子を考慮して作られていないことを確認できました。ただ、私の中でまだ納得できていない部分があり、もう少しだけ勉強させてください。私としては、初めてバンド理論を学んだとき、このような説明を受けて、「あぁ、なるほど!わかりやすい!」と感じていて、「出来ればこのことが誤りのないことであって欲しい」というのと、この記事を読む人が、「わかりやすい!」と私が初めて学んだときと同じ感動を味わって欲しい、というのがあり、出来ればこの説明を残したいと考えています。しかし、「これが間違いである」ということが分かっていたり、「合っているかどうか分からない」といった情報を読者に与えるわけにはいきませんから、もう少しだけ勉強して、自分で確認したいというのが、今の私の気持ちです。私に勉強する機会を与えてくださったNOBUさんやこのプロジェクト自体に、本当に感謝します。 -- 篠原 2005-10-07 (金) 22:33:41
  • 私も「パウリの排他律の効果」で良いと思います。ただ根拠は私の直感ですけど。(PHSからなので細切れコメントです) なぜそう感じるかというと、フェルミオンである電子を近づけていったら、同じエネルギー準位を取れないという性質のために合成されたポテンシャル中で結果的に -- 山本明 2005-10-07 (金) 22:54:56
  • エネルギー準位がバラけてしまう。そのことを端的に「パウリの排他律のため」と表現しているのだろうし、上の定性的な議論はもっともそう。先に書かれている通りシュレディンガー方程式はフェルミオンとボゾンの区別をせずに成り立つ方程式です。ただ方程式に現れる波動関数を -- 山本 2005-10-07 (金) 23:03:06
  • フェルミオンと考えたり、ボゾンと考えたりするだけ。解析の途中でフェルミオンとしての交換関係を使ったりしていませんか?? 第二量子化してるときなどで。どこかでフェルミ統計というのを使ってるんじゃないかと思います。そしてフェルミオンであることを使っていたら、それ -- 山本 2005-10-07 (金) 23:09:33
  • を“排他律の効果”と表現できるだろうと思います。私はクロニッヒ・ペニーの議論というのを全く知らないのですが、どんなハミルトニアンで出発するんでしょうか?もしくはどんな教科書に載っていますか?(ここまで。乱文失礼) -- 山本明 2005-10-07 (金) 23:15:14
  • 蛇足:第二量子化をしてないと、統計は見えにくいかもしれません。そのときはポテンシャルの部分に、考えているのがフェルミオンだという情報が含まれてるだろうと思います。いまのところ、推測の域を脱しませんが。 -- 山本明 2005-10-07 (金) 23:23:01
  • 山本さん、ご意見ありがとうございます。クローニッヒペニーのモデルは「周期的な井戸型」のようなポテンシャルと、「ブロッホの定理」と呼ばれる条件から求めることができ、その結果は電子のエネルギーと波数の関係を与えるものです。一見すると、電子がフェルミ粒子であることを考慮していないように思えます。しかし、その過程にフェルミ粒子であることを考慮した条件などがないか、調べてみているところです。クローニッヒペニーモデルは、固体物理や電子物性の本に載っています(例えばキッテル上巻)。私も、定性的に考えて記事の内容のものであっていると信じてきました。しかし、クローニッヒペニーのモデルなどの定量的な議論でフェルミ粒子である効果が効いていないのであれば、私は考えを変えざるを得ないと思っています。出来れば、今のまま考えを変えたくはないのですが・・・。 -- 篠原 2005-10-07 (金) 23:32:12
  • 買うだけ買ってほとんど読んでいなかった「固体物理学」の教科書を引っ張り出しました。いま読むと、学部生の頃には感じなかった面白さも感じられますね。今度ゆっくり読んでみよう…と思いました。 で、ブロッホの定理を軽く眺めてみたんですが、確かにこの定理はボゾン・フェルミオンの別なく成り立ちそうですねぇ。ようやくNOBUさんと篠原さんの疑問点を共有できたような気がします。なにかボーズ統計に従う粒子に対しても、周期的なポテンシャルの下ではエネルギーに禁制帯が出るのではないか?というような疑問点でいいでしょうか?? 私にはブリルアンゾーンとか、知らないことが多いので、かなり時間も掛かりそうですが、この辺のことゆっくり私も考えてみます。(差し当たりこれから生物学実験のレポートを書かなきゃいけないので、今晩は勉強おしまい…) -- 山本明 2005-10-08 (土) 03:18:10
  • 少し、勉強しなおしてみました。結論から言うと、あまり私が望んでいたようなことは分からなかったのですが、少し疑問が浮かび上がってきたので、それを書きます。それは、「クローニッヒペニーモデルは、本当にバンドが形成される事を説明できているのか??」と言うことです。エネルギーが連続的な値を取ることは、ゾンマーフェルトの自由電子論ですでに用いられていることで、クローニッヒペニーモデルはそれを拡張して、電子が取ることのできないエネルギー、つまりバンドギャップが現れることを説明しているだけなのではないか?つまり、「そもそも、なぜ電子が連続なエネルギーをとることができるのか?」を説明していないように思えるのです。また、自由電子モデルも、エネルギーが0から無限大において、「エネルギーが波数の2乗に比例する」と言うことを与えているのみで、同じく「なぜエネルギーが連続的な値をとるか」と言うこと自体は説明できていないような気がしました。また、「エネルギーが波数の2乗に比例する」と言うことも、古典的に考えると「エネルギーが速度(運動量)の2乗に比例する」と言うことを言い換えているだけで、自由電子モデルも「古典的な考え方を拡張しただけなのでは??もしそうであれば、古典的にはエネルギーが連続な値をとりえることは当たり前のことだから、当たり前の結果が得られただけなのでは?」と私には思えたのです。つまり、「クローニッヒペニーモデルは、単なる古典論の拡張に過ぎず、“本当の”量子力学から導かれた結果ではないのではないか?」というような考えが頭をよぎりました。もちろん、今書いたこのことが正しいかどうか、私にはまだ分からないのですが・・・。以上、私の勉強の中間報告でした。 -- 篠原 2005-10-09 (日) 21:50:14
  • クローニッヒペニーモデルではなくて、原子を1つ、2つ、3つと増やしたときにバンドが1本、2本、3本と分かれていくときのプロセスを考えるべきなのかもしれませんね。 -- 篠原 2005-10-09 (日) 23:41:32
  • 家の研究室に、井戸型やクーロン型のポテンシャルを並べて(個数は設定できる)、そのエネルギー固有値や波動関数を数値計算するソフトがあります。僕は使ったことがないのですが、去年の学生実験でそれを行っていて興味を持ちました。これを使うとどうやら、ポテンシャルの個数を増やしていくことによって、準位が分裂していく様子が見れるようです。固体物理の進行表にある「バンドの形成」というのはそれを記事にしてみようかなと思い項目だけ作りました。今、篠原さんが書いている記事は金属や半導体の違いを説明することが主なので、エネルギー固有値の分裂は結果だけ示すというのも手だと思います。 -- NOBU 2005-10-10 (月) 16:52:13
  • クロニッヒペニーのモデルや、自由電子論では、シュレディンガー方程式を用いてエネルギー固有値を求めます。その結果、連続のエネルギーが出てくるのであるから、それで説明しているといえないでしょうか。(シュレディンガー方程式自体を認めないと言わない限り)。クロニッヒペニーのモデルではポテンシャルはかなり簡略してあり、それでもエネルギーのギャップが出てくるということは、周期的なポテンシャルはそのような効果を導くというふうに考えられるのではないでしょうか。あと自由電子論は波数が2π/Lの間隔でとびとびになるはずです。まあLが大きいので、ほとんど連続と考えらるとは思いますが。 -- NOBU 2005-10-10 (月) 17:01:44
  • クローニッヒペニーモデルも、自由電子論も、エネルギーと波数の関係を求めていますよね。どちらの場合も、波動関数を適当に仮定して、シュレーディンガー方程式を解いていますよね。その仮定において、波数kを用いていること自体が「原子をたくさん集めて、バンドが形成されている」という前提になっているのではないかな?と思いました。原子1個の場合について、電子の波数というものは定義できないですよね?原子1個だけなら、電子は伝わりようがないのですから。原子をたくさん集めて、電子が伝わることが出来るような「場」、つまりバンドが形成されて初めて「波数」と言うものが定義できるのではないでしょうか。つまり、波数kを用いている時点で、原子がたくさん集まり、ある程度のバンドが形成されていると言うことを認めていることにならないのかな?と思ったのです。 -- 篠原 2005-10-10 (月) 21:03:25
  • 篠原さんの主張はあまりよく分からないのですが、ブロッホの定理というのは勝手に仮定している訳ではなく、周期ポテンシャルのシュレディンガー方程式を満たす解はあのようにかけるという数学的な定理で証明もできます。あと電子の波数が決まるのは固有関数が平面波のときで、一般的には波動関数はいろいろな波数の重ね合わせになっています。これも原子がたくさんあるから導かれるものではありません。自由電子論で仮定されているのは電子同士の相互作用がないということで、波数は仮定している訳ではなく方程式を満たすように波動関数を求めるとあのようになるということです。アシュクロフト・マーミンの固体物理の2章なんかを読んでみてはどうでしょうか。 -- NOBU 2005-10-10 (月) 21:30:40
  • あまり、言いたいことがうまい事書けません・・・。う〜ん…。もう少し勉強してから書き込みします。ご紹介の本、探してみることにします。ありがとうございます。 -- 篠原 2005-10-10 (月) 21:50:50
  • このことに関して、少し時間かかりそうですね・・・。先に、ご指摘のとおり記事を修正して、公開希望にしてから勉強したほうが良いでしょうか・・・? -- 篠原 2005-10-10 (月) 21:52:54
  • そうですね、なかなかここでうまく書くのは難しいものです。会って議論できるといいなぁなんていつも思ってしまいます。そうすればもっとお互いに知識も共有できるだろうしなんて…。僕としては、せっかく記事を書き、いろいろな方々の査読を通してより良いものになったのだから、上に書いたようにとりあえずまとめて公開し、改訂版が書けるようになったら書くとか、補足の記事を書くなりすれば良いと思います :) -- NOBU 2005-10-10 (月) 22:01:20
  • そうですね。では、とりあえず記事を修正することにします。これに関して勉強は続けますが、答えが出るのが2日後か数年後かは分かりませんが、答えが出た時点でまた記事を修正することにします。NOBUさん、とてもたくさんの知識を持ってますね。一度会ってお話したいです。僕も負けないように勉強しなくては・・・。 -- 篠原 2005-10-10 (月) 22:10:39
  • 修正しました。確認をお願いしますm(__)m -- 篠原 2005-10-11 (火) 23:35:40
  • 確認しました :) お疲れ様でした。また議論しましょう! -- NOBU 2005-10-12 (水) 08:58:11

 
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