物理のかぎしっぽ 記事ソース/SU(2)のリー群とリー環について

記事ソース/SU(2)のリー群とリー環について

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記事ソースの内容

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SU(2)のリー群とリー環について
============================================================

この記事ではパウリ行列

<tex>
\sigma_1 &= \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} \tag{##} \\
\sigma_2 &= \begin{pmatrix} 0 & -i \\ i & 0 \end{pmatrix} \tag{##} \\
\sigma_3 &= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

とリー群 $SU(2)$ 、リー環 $\mathfrak{su}(2)$ の関係についてまとめます。
記号は パウリ行列のwikipedia_ に合わせます。

リー環について
=======================

リー環 $\mathfrak{su}(2)$ はリー群のパラメータの無限小変化量に当たります。
(後で示すので、まだわからなくて大丈夫です。)
これが、パウリ行列を使うとうまく表せます。

今回はパウリ行列をそのまま使わないで、ちょっと小細工をして、
全てに $\dfrac{1}{2i}$ を掛けます。

すると、

<tex>
X_1 = \dfrac{1}{2i} \sigma_1 &= \begin{pmatrix} 0 & \dfrac{1}{2i}  \\ \dfrac{1}{2i}  & 0 \end{pmatrix} \tag{##} \\
X_2 = \dfrac{1}{2i} \sigma_2 &= \begin{pmatrix} 0 & -\dfrac{1}{2}  \\ \dfrac{1}{2}  & 0 \end{pmatrix} \tag{##} \\
X_3 = \dfrac{1}{2i} \sigma_3 &= \begin{pmatrix} \dfrac{1}{2i}  & 0 \\ 0 & -\dfrac{1}{2i}  \end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

となります。これらがリー環 $\mathfrak{su}(2)$ の全ての基底
です。 $\dfrac{1}{2i}$ を掛けると何がうれしいかというと、交換子 $[A,B]=AB-BA$ について、

<tex>
[X_1,X_2] =X_3 \tag{##} \\
[X_2,X_3] =X_1 \tag{##} \\
[X_3,X_1] =X_2 \tag{##}
</tex>

ときれいな関係になります。だから何?と言われそうですが、この辺のことに関しては EMANさんの解説_ を見るといいんじゃないでしょうか?

特殊ユニタリー群 $SU(n)$ に対応するリー環 $\mathfrak{su}(n)$ の元 $X$ は一般に

<tex>
\mathrm{Tr}(X) = 0 \tag{##} \\
X^\dagger = -X \tag{##}
</tex>

を満たします。上付きの $\dagger$ は物理よりの書き方で、複素共役を取って転置したものを
表します。 $X_1,X_2,X_3$ がこれらの関係を満たすことを確認してみてください。
この性質(式(10)と式(11))を言葉でいうと、トレースがゼロの歪エルミート行列と言います。

リー群について
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リー群の元 $g$ とはリー環の元 $X_i$ の線形結合の指数関数を取ったものです。
行列(例えば $A$ とする)の指数関数ということで、 $I$ を単位行列として、

<tex>
\exp A = I + \dfrac{A}{1!} + \dfrac{A^2}{2!} + \dfrac{A^3}{3!} + \dfrac{A^4}{4!} + \cdots \tag{##}
</tex>

となります。ここで $x_1 = x, x_2 = y, x_3 = z, r = \sqrt{x^2_1 + x^2_2 + x^2_3}$ として、

<tex>
X &= \sum_{i=1}^3 x_i X_i \\
&= \dfrac{1}{2i} \sum_{i=1}^3 x_i \sigma_i \\
&= \dfrac{1}{2i}\begin{pmatrix} z & x-iy \\ x+iy & -z \end{pmatrix} \\
&\equiv \dfrac{1}{2i} \Psi \tag{##}
</tex>

ここで( $\equiv$ )は $\Psi$ の定義を示すものと
します。 $\Psi^2 = r^2 I$ です。


ここで、リー環の指数関数を取ってリー群の元 $g$ を求めてみましょう。

<tex>
g &= \exp \left( \dfrac{1}{2i} \Psi \right) \\
&= I + \dfrac{1}{1!}(\dfrac{1}{2i}) \Psi + \dfrac{1}{2!}(\dfrac{1}{2i})^2 \Psi^2 +  \dfrac{1}{3!}(\dfrac{1}{2i})^3 \Psi^3 + \cdots \\
&= \left( I - \dfrac{1}{2!}(\dfrac{r}{2})^2 I + \dfrac{1}{4!}(\dfrac{r}{2})^4 I \cdots \right) \\
&+ \dfrac{1}{2i} \left( \Psi - \dfrac{1}{3!}(\dfrac{r}{2})^2\Psi + \dfrac{1}{5!}(\dfrac{r}{2})^4\Psi - \cdots \right) \\
&= \cos \left( \dfrac{r}{2} \right) + \dfrac{1}{2i} \dfrac{2}{r} \left( \Psi - \dfrac{1}{3!}(\dfrac{r}{2})^3\Psi + \dfrac{1}{5!}(\dfrac{r}{2})^5\Psi - \cdots   \right) \\
&= \cos \left( \dfrac{r}{2} \right) + \dfrac{1}{ir} \sin \left( \dfrac{r}{2} \right) \Psi \\
&= \cos \left( \dfrac{r}{2} \right) - \dfrac{i}{r} \sin \left( \dfrac{r}{2} \right) \Psi \tag{##}
</tex>

よって、 $g$ の成分表示をすると、

<tex>
g = \begin{pmatrix}
\cos(r/2) -(i/r)\sin(r/2)z & -(i/r)\sin(r/2)(x-iy) \\
-(i/r)\sin(r/2)(x+iy) & \cos(r/2) +(i/r)\sin(r/2)z 
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

ここで、 $i$ 以外は実数ですから、 $\alpha = \cos(r/2) -(i/r)\sin(r/2)z$ 、 $\beta = -(i/r)\sin(r/2)(x+iy)$ と置くと、

<tex>
g = \begin{pmatrix}
\alpha & -\beta^\ast \\
\beta & \alpha^\ast 
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

ここで $\ast$ は複素共役です。

SU(2)の定義
========================

一方で、 $SU(2)$ の定義として、

<tex>
X^\dagger X &= I \tag{##} \\
\mathrm{det} X &= 1 \tag{##}
</tex>

となります。この定義に従った元が式(16)と一致することを見ましょう。
式(17)から、

<tex>
X^\dagger X &= 
\begin{pmatrix}
\alpha^\ast & \beta^\ast \\
\gamma^\ast & \delta^\ast
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\alpha & \gamma \\
\beta & \delta
\end{pmatrix} \\
&=
\begin{pmatrix}
|\alpha|^2 + |\beta|^2 & \alpha^\ast \gamma + \beta^\ast \delta \\
\alpha \gamma^\ast + \beta \delta^\ast & |\gamma|^2 + |\delta|^2
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
1&0 \\
0&1
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

また、式(18)から、

<tex>
\mathrm{det} X &= \alpha \delta - \beta \gamma  \\
&=1 \tag{##}
</tex>

よって、式(19)と(20)より、

<tex>
\alpha \delta - \beta \gamma &= 1 \tag{##} \\
\alpha^\ast \gamma + \beta^\ast \delta &= 0 \tag{##}
</tex>

この連立方程式を行列で書くと、

<tex>
\begin{pmatrix}
-\beta & \alpha \\
\alpha^\ast & \beta^\ast
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\gamma \\
\delta
\end{pmatrix}
&=
\begin{pmatrix}
1 \\
0
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

ここで式 $|\alpha|^2 + |\beta|^2 = 1$ を使って
、 $\gamma,\delta$ について解くと、

<tex>

\begin{pmatrix}
\gamma \\
\delta
\end{pmatrix}
&=
\dfrac{1}{|\alpha|^2 + |\beta|^2}
\begin{pmatrix}
-\beta^\ast & \alpha \\
\alpha^\ast & \beta
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
1 \\
0
\end{pmatrix} \\
&= 
\begin{pmatrix}
-\beta^\ast \\
\alpha^\ast
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

よって、

<tex>
g &=
\begin{pmatrix}
\alpha & \gamma \\
\beta & \delta
\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
\alpha & -\beta^\ast \\
\beta & \alpha^\ast
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

となり、式(16)に一致することがわかりました。

さて、僕がこの記事を書く切っ掛けを話しておきます。
式(25)について、今までの変数の設定をリセット
して、 $\alpha = w+iz,\beta = i(x+iy)$ とします。
すると、式(25)は

<tex>
g = \begin{pmatrix}
w+iz & i(x-iy) \\
i(x+iy)& w-iz
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

この形はリー環と似ています。

<tex>
g = 
w
\begin{pmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{pmatrix} 
+
ix
\begin{pmatrix}
0 & 1 \\
1 & 0
\end{pmatrix}
+iy
\begin{pmatrix}
0 & -i \\
i & 0
\end{pmatrix}
+iz
\begin{pmatrix}
1 & 0 \\
0 & -1
\end{pmatrix} 
\tag{##}
</tex>

なんだ?パウリ行列に $i$ が掛かっている?
単位行列も加わっているぞ?なんて、混乱されないでください。
あくまでこれがリー群 $SU(2)$ の元の一般形であって、
パウリ行列 $\sigma_i$ とより強く関係しているのは、リー環 $\mathfrak{su}(2)$ の方
です。まあ、 $X_i$ にした時に $-i/2$ を掛けていますけれどね。
ややこしいですけれど、リー環では単位行列は含まないのは決定的な違いです。
また、式(25)について $|\alpha|^2+|\beta|^2=1$ は注意です。

リー環トレースゼロの反エルミート行列 $X$ に対応する
のは、リー群デターミナント1のユニタリー行列 $g$ って訳ですね。

最後に
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ちょっと話が変わりますが、自分が確かなイメージを持っている例で、
リー群の無限小変化がリー環になる。と言うことを説明します。
リー環 $H$ として、リー群の元 $g = \exp (-iHt)$ を対応
させます。 $H$ とした理由は量子論のハミルトニアンを意識しています。
ここで $g$ から $H$ を求めるには、 $\left. \dfrac{dg}{dt} \right|_{t=0} = -iH$ として求まるわけ
です。 $\exp (-iHt) = I -i \dfrac{1}{1!}Ht - \dfrac{1}{2!}H^2t^2 + i \dfrac{1}{3!}H^3t^3 + \cdots$ ですから、
テイラー展開の1次の項を求めているわけです。
つまり、リー群のパラメータ $t$ の微小変化の接線(1次変化)の変化方向をリー環と呼んでいるわけです。

それでは今日はここまで、お疲れさまでした!

.. _パウリ行列のwikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A6%E3%83%AA%E8%A1%8C%E5%88%97
.. _EMANさんの解説: http://eman-physics.net/math/lie07.html

@@author:クロメル@@
@@accept:2018-09-29@@
@@category:物理数学@@
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