物理のかぎしっぽ 記事ソース/任意の方向を向いた3/2スピンの固有状態

記事ソース/任意の方向を向いた3/2スピンの固有状態

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記事ソースの内容

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任意の方向を向いた3/2スピンの固有状態
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この記事では、スピン3/2粒子の固有状態を求めます。

スピン演算子
==============

角運動量演算子 $J$ の良く知られた関係

<tex>
\bm{J}^2 |J,M \rangle &= \hbar^2J(J+1) |J,M \rangle \tag{##} \\
J_z |J,M \rangle &= \hbar M |J,M \rangle \tag{##} \\
J_+ |J,M \rangle &= \hbar \sqrt{(J-M)(J+M+1)} |J,M+1 \rangle \tag{##} \\
J_- |J,M \rangle &= \hbar \sqrt{(J+M)(J-M+1)} |J,M-1 \rangle \tag{##}
</tex>

となります。この式の導出には、例えば、下記の小出昭一郎先生の本を参照してください。

これを $J=3/2$ として行列で書くと、

<tex>
\bm{J}^2 = \hbar^2 
\begin{pmatrix} 
\dfrac{15}{4} & 0 & 0 & 0 \\
0 & \dfrac{15}{4} & 0 & 0 \\
0 & 0 & \dfrac{15}{4} & 0 \\
0 & 0 & 0 & \dfrac{15}{4}
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

<tex>
J_z = \dfrac{\hbar}{2} 
\begin{pmatrix} 
3 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & -1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -3
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

<tex>
J_+ = \hbar 
\begin{pmatrix} 
0 & \sqrt{3} & 0 & 0 \\
0 & 0 & 2 & 0 \\
0 & 0 & 0 & \sqrt{3} \\
0 & 0 & 0 & 0
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

<tex>
J_- = \hbar 
\begin{pmatrix} 
0 & 0 & 0 & 0 \\
\sqrt{3} & 0 & 0 & 0 \\
0 & 2 & 0 & 0 \\
0 & 0 & \sqrt{3} & 0
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

となります。ここで、 $J_+ = J_x + i J_y$ , $J_- = J_x - i J_y$ の関係から、

<tex>
J_x = \dfrac{\hbar}{2} 
\begin{pmatrix} 
0 & \sqrt{3} & 0 & 0 \\
\sqrt{3} & 0 & 2 & 0 \\
0 & 2 & 0 & \sqrt{3} \\
0 & 0 & \sqrt{3} & 0
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

<tex>
J_y = \dfrac{\hbar}{2} 
\begin{pmatrix} 
0 & -\sqrt{3}i & 0 & 0 \\
\sqrt{3}i & 0 & -2i & 0 \\
0 & 2i & 0 & -\sqrt{3}i \\
0 & 0 & \sqrt{3}i & 0
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

です。任意の方向 $(\theta,\phi)$ を向いたスピノールは、

<tex>
J_{arb} = \sin \theta \cos \phi J_x + \sin \theta \sin \phi J_y + \cos \theta J_z \tag{##}
</tex>

として、 $4 \times 4$ 行列の固有値問題

<tex>
J_{arb} \chi = \lambda \chi \tag{##}
</tex>

を満たすスピノールの事になります。
この固有値 $\lambda$ を求めるのに、 $ \lambda -I J_{arb} $ の行列式を求めることは必要ありません。
固有値は任意の方向を向いていても、対称性が同じなので

<tex>
\mathrm{det}(\lambda I - J_z)  = (\lambda - \dfrac{3}{2}\hbar)(\lambda - \dfrac{1}{2}\hbar)(\lambda + \dfrac{1}{2}\hbar)(\lambda + \dfrac{3}{2}\hbar) \tag{##}
</tex>

より、 

<tex>
\lambda = \dfrac{3}{2}\hbar , \dfrac{1}{2}\hbar ,- \dfrac{1}{2}\hbar ,- \dfrac{3}{2}\hbar \tag{##}
</tex>

と分かります。

固有値問題を解く
===================

さて、 $J_{arb} \chi = \lambda \chi$ を書いておきましょう。

<tex>
\dfrac{\hbar}{2} 
\begin{pmatrix} 
3 \cos \theta & \sqrt{3} \sin \theta e^{-i \phi} & 0 & 0 \\
\sqrt{3} \sin \theta e^{i \phi} & \cos \theta & 2 \sin \theta e^{-i \phi} & 0 \\
0 & 2 \sin \theta e^{i \phi} & - \cos \theta & \sqrt{3} \sin \theta e^{-i \phi} \\
0 & 0 & \sqrt{3} \sin \theta e^{i \phi} & -3  \cos \theta
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix} 
\alpha \\
\beta \\
\gamma \\
\delta
\end{pmatrix}
=
\lambda
\begin{pmatrix} 
\alpha \\
\beta \\
\gamma \\
\delta
\end{pmatrix}
\tag{##}
</tex>

一般に固有値問題は根底にあるのは連立一次方程式なので、解けないことはありませんが、
美しい対称性を持った形を求めるのは、何らかの工夫がいります。
第一成分 $\alpha$ の決定でその後の値が決まるのです。

今回のキーとなるのは、あまり論理的ではないのですが、
3つのスピン $1/2$ 粒子のスピンの合成では、テンソル積が
出てきて、それは $2^3$ この成分を持つものの第一成分は $\cos^3 \dfrac{\theta}{2} e^{-i \dfrac{3}{2}\phi}$ を持っているという知識でした。なお、そのスピン1/2のスピノールは、

<tex>
\begin{pmatrix}
\cos \dfrac{\theta}{2} e^{-i(1/2)\phi} \\
\sin \dfrac{\theta}{2} e^{i(1/2)\phi}
\end{pmatrix}
</tex>

と

<tex>
\begin{pmatrix}
- \sin \dfrac{\theta}{2} e^{-i(1/2)\phi} \\
\cos \dfrac{\theta}{2} e^{i(1/2)\phi}
\end{pmatrix}
</tex>

です。(拙記事 任意の方向を向いたスピンのxyz方向固有状態での展開_ 及び 交換相互作用と任意の方向を向いた二電子スピン_ 参照)

すると、 $\lambda = \dfrac{3}{2}\hbar$ に対して、この第一成分は確かに良い対称性を持っており、

<tex>
\chi_{3/2} =
\begin{pmatrix}
\cos^3 \dfrac{\theta}{2} e^{-i(3/2)\phi} \\
\sqrt{3} \cos^2 \dfrac{\theta}{2} \sin \dfrac{\theta}{2} e^{-i(1/2)\phi} \\
\sqrt{3} \cos \dfrac{\theta}{2} \sin^2 \dfrac{\theta}{2} e^{i(1/2)\phi} \\
\sin^3 \dfrac{\theta}{2} e^{i(3/2)\phi} 
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

が求まりました。これはスピン $3/2$ の粒子が $\bm{n} = (\sin \theta \cos \phi, \sin \theta \sin \phi, \cos \theta)$ 方向に対して、その方向の成分が $3/2 \hbar$ である解を表しています。

同様に $1/2 \hbar$ 〜  $- 3/2 \hbar$  の解は、

<tex>
\chi_{1/2} =
\begin{pmatrix}
\cos^2 \dfrac{\theta}{2} \sin \dfrac{\theta}{2} e^{-i(3/2)\phi} \\
\left( \sqrt{3} \cos \dfrac{\theta}{2} \sin^2 \dfrac{\theta}{2} - \dfrac{1}{\sqrt{3}} \cos \dfrac{\theta}{2} \right) e^{-i(1/2)\phi} \\
\left( -\sqrt{3} \cos^2 \dfrac{\theta}{2} \sin \dfrac{\theta}{2} + \dfrac{1}{\sqrt{3}} \sin \dfrac{\theta}{2} \right) e^{i(1/2)\phi} \\
-\cos \dfrac{\theta}{2} \sin^2 \dfrac{\theta}{2} e^{i(3/2)\phi} 
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

<tex>
\chi_{-1/2} =
\begin{pmatrix}
\cos \dfrac{\theta}{2} \sin^2 \dfrac{\theta}{2} e^{-i(3/2)\phi} \\
\left( -\sqrt{3} \cos^2 \dfrac{\theta}{2} \sin \dfrac{\theta}{2} + \dfrac{1}{\sqrt{3}} \sin \dfrac{\theta}{2} \right) e^{-i(1/2)\phi} \\
\left( -\sqrt{3} \cos \dfrac{\theta}{2} \sin^2 \dfrac{\theta}{2} + \dfrac{1}{\sqrt{3}} \cos \dfrac{\theta}{2} \right) e^{i(1/2)\phi} \\
\cos^2 \dfrac{\theta}{2} \sin \dfrac{\theta}{2} e^{i(3/2)\phi} 
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

<tex>
\chi_{-3/2} =
\begin{pmatrix}
\sin^3 \dfrac{\theta}{2} e^{-i(3/2)\phi} \\
-\sqrt{3} \cos \dfrac{\theta}{2} \sin^2 \dfrac{\theta}{2} e^{-i(1/2)\phi} \\
\sqrt{3} \cos^2 \dfrac{\theta}{2} \sin \dfrac{\theta}{2} e^{i(1/2)\phi} \\
-\cos^3 \dfrac{\theta}{2} e^{i(3/2)\phi} 
\end{pmatrix} \tag{##}
</tex>

となります。この固有ベクトルと $J_{arb}$ の積を計算してみて、確かに固有ベクトルであることを確認すると良いでしょう。興味深いのは、これらのスピノールは $\phi = 2 \pi$ の回転を行っても $1/2$ スピノールと同様に符号が反転し、スピンの二価性が容易に見て取れるところです。それでは今日はここまで、お疲れさまでした。

.. _任意の方向を向いたスピンのxyz方向固有状態での展開: http://hooktail.sub.jp/quantum/spinOfArbitraryDirection/
.. _交換相互作用と任意の方向を向いた二電子スピン: http://hooktail.sub.jp/quantum/arbSpinExchange/

@@reference: 小出昭一郎,量子力学(II)改訂版,裳華房,1969,p60,4785321334@@

@@author:クロメル@@
@@accept:2019-05-28@@
@@category:量子力学@@
@@id:3over2SpinOfArbitraryDirection@@
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