物理のかぎしっぽ 記事ソース/ケプラーの3法則

記事ソース/ケプラーの3法則

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記事ソースの内容

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ケプラーの3法則
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ケプラーの発見した3つの法則についてです.なんですが,いままで少しだけ力学の歴史をみてきました.それで疑問に思ったことがあります.なんで過去の偉人たちは,こんなにまで自然について深く考えたのでしょうか.なんで知ろうと思ったのでしょうか.そしてなんで僕はだらだらとこのような文章を書いているのか,と.

まあ僕のことはどうでもいいですね.ケプラーや他の偉人たちですが,きっと彼らは,自然の美しさに魅せられたのだと思います.この世界は美しく,調和を保っている.その奥底には神秘的な何かがあって,それを知ることができるのならば,知りたいと.興味があるのだと.今も昔も,人々が科学を追求する姿勢の奥には,そんなものがあるのだと感じました.


ケプラーの3法則
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前置きが長くなりましたが,とりあえずケプラーの3法則を列挙します.

1. 惑星の軌道は,太陽を1つの焦点とする楕円である
2. 太陽から1つの惑星へ引いた動径が掃いて行く面積速度は一定である
3. 惑星が太陽の周りを一回する時間,すなわち公転の周期の2乗は軌道の長軸の長さの3乗に比例する

です.これらの発見の経緯と,その意味を見て行きます.

ケプラー以前には,天体の運動は真円であると思われていました.円という曲線は始めも終わりもなく,永遠につづく惑星運動の軌道にぴったりだと思われていました.ケプラーがティコの観測データから火星軌道の計算をするとき,先人たちの手法を作業仮説として用いています.それは軌道の形は円であり,太陽はその円の中心より少しずれたところ(偏心点)にあるというモデルです.

数年を費すほど,その計算は大変複雑でした.そしてついに,だいたいの計算を終えたのですが,ケプラーはティコの観測データとの食い違いを見つけてしまいました.角度にして8分(1分は1度の60分の1)の食い違いです.当時としては全然誤差範囲なのですが,ケプラーはこの誤差を許しませんでした.数年かかった計算も彼にとっては満足なものではなかったのです.

ケプラーはこれまでのモデルを捨てました.観測データから純粋に幾何学的手法で,天体の角度や時間関係を求める巧妙な手法を思いついたのです.その手法によって導き出された結果こそが,ケプラーの法則です.ここではケプラーの用いた手法はさておいて,結果のみお話します.

第1法則
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- 惑星の起動は,太陽を1つの焦点とする楕円である

楕円(だえん)というのはよく知っていますよね.長円と呼ばれることもあります.楕円とは,円をつぶしたような形のやつです.円には中心が1つありますが,楕円でそれに相当するものが焦点で,これは2つあります.惑星運動は楕円に沿って動き,その焦点の1つが太陽だというのです.

ただし楕円といっても,わずかなつぶれ具合のものです.地球の場合はほとんど円といっていいほどです.しかし火星の場合はもっと円よりもずれていました.だから,惑星が円軌道を描くという先ほどの作業仮説には誤差が生じたのでした.

第2法則
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- 太陽から1つの惑星へ引いた動径が掃いて行く面積速度は一定である

面積速度とは聞き慣れない言葉ですが,物理ではよく出てきます.普通,速度というと「進む」ですが,面積速度の場合は「掃く」です.面積速度は角速度×距離で表現されます.

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惑星の軌道は円に近い楕円で,太陽は中心にはありません.ですから,惑星が太陽に近いときと,太陽に遠いときがあります.最も近い点を近日点,最も遠い点を遠日点といいます.近日点で惑星の速度は速く,遠日点では遅くなります.この関係を表したのが,面積速度一定という法則です.

第1法則,第2法則は,惑星にとって太陽が非常に特殊な存在であることを示しています.ケプラーはこれを,惑星は太陽からの動力に支配されているからだ,と考えていました.ここまでのケプラーは発見は,彼の著書『新しい天文学』に記されています.

第3法則
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- 惑星が太陽の周りを一回する時間,すなわち公転の周期の2乗は軌道の長軸の長さの3乗に比例する

第3法則の発見は,『新しい天文学』から10年ほど後のことでした.第3法則はすべての惑星運動の比較から得られたものです.大きな軌道の惑星ほど,一周するのに長い時間がかかることは知られていましたが,その時間と軌道の大きさとのはっきりした関係は見つかっていませんでした.ケプラーはその関係を発見したのです.それが第3法則です.

第3法則の発見が10年も遅れたのには理由があります.一つはルドルフ帝の死によってプラハを去らねばならなかったこと,もう一つは天然痘の流行で妻子を失い,ケプラーの母が魔女の疑いを受けたことです.こういった不幸があったわけですが,ケプラーにとって惑星の法則を発見したことは,不幸を超えて最高のよろこびであったといいます.


そしてニュートンの発見へ
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ケプラーの3法則の完成までには,実に17年もの歳月が過ぎていました.第3法則までまとめた『世界の調和』という著書で彼は,「この本はおそらく100年もの間読者を待つだろう.しかし私にとってそれはどうでもよいことだ.」と記しています.実際,ケプラーの3法則がニュートンによって取り上げられたのは70年ほど後のことでした.

ニュートンは著書『プリンキピア』で,ケプラーの法則から,万有引力という森羅万象あらゆるものに働く法則を明らかにしました.何十年ものときを超えて,世界の法則が徐々に解き明かされているのです.物理学の発展は,なんともロマンに溢れたものではないですか( `ガリレオ・ガリレイ <http://www12.plala.or.jp/ksp/mechanics/galileo/>`_ へつづく).


@@author:崎間@@
@@accept:2004-07-19@@
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